e-bike試乗レビュー

電動モビリティから水素で動く自転車まで「乗り物の未来」を実感

4月19~20日の2日間、東京ビッグサイトで開催された「サイクルモード東京2025」。近年はe-bikeの出展が目立っていましたが、今回はそれに加えて特定小型原付カテゴリーの電動モビリティが注目を集めていました。電動キックボードタイプだけでなく、自転車のようにまたがるタイプの特定小型原付も増えています。

電動キックボードの試乗レーンも設けられ、大きな潮流になっていることが感じられます

e-bike主要メーカーの動きは!?

パナソニックやヤマハ、BESV(ベスビー)などe-bikeの主要メーカーももちろんブースを出展していました。パナソニックとヤマハについては、新モデルの出展はありませんでしたが、試乗コーナーには多くの人が列を作っていて、関心の高さを感じさせました。

パナソニック「XEALT(ゼオルト)」シリーズは従来どおり4モデルのラインナップ
オーダーメイド・チタンフレームの試乗が多数でしたが、XEALTに試乗する人も数多く見かけました
ヤマハ「YPJ」シリーズの人気モデル「WABASH RT」は相変わらずの注目度
試乗も大人気だったようです

新モデルを展示していたのはベスビーで、人気の小径モデル「PS」シリーズに新たに加わったアルミフレームの「PSA2」と、フォールディングモデルの「PSF2」に注目が集まっていました。試乗したe-bike Watch清水氏によると、発進時や走行時のアシスト制御がジェントルなフィーリングとなっていたとのこと。内部の電装システムを一新しているとのことですが、そこまでフィーリングが変わるというのは、ベスビーのソフトウェア技術の高さが感じられます。新たにライダーの走りを学習するAI機能も搭載されているそうで、こちらはあらためて、じっくり乗り込んだレビューでお届けしたいと思います。

新モデル「PSA2」の価格は258,000円で、「PSF2」は318,000円。従来モデルの「PSA1」「PSF1」も併売されるとのこと
デザイン性の高さを活かしたアーティストとのコラボレーション「MAISON BESV」のモデルも展示されていました

最近、e-bikeにも力を入れているYADEA(ヤディア)も大きくブースを展開。e-bikeだけでなく、特定小型原付モデルも多数出展しており、この分野でも存在感を発揮しています。個人的にはやはり自転車のようにまたがるタイプに注目してしまいますが、e-bikeベースのモデルでも特定小型原付モデルはペダルがなくなっているのがおもしろいポイントです。

手前に置かれているのはe-bikeの「TRP-01」。筆者も試乗しましたが、完成度は高いです
こちらは特定小型原付の「TRP-01T」。ペダルがなくなり、固定式のステップになっていて、バイク乗りからも注目度が高いとか
特定小型原付の「CC-01T」ですが、見た目は明らかにe-bikeがベース。こちらも固定式のステップとなっています

ホンダ「SmaChari」の世界が広がりそう

ホンダが手がける"後付け”でe-bike化できるシステム「SmaChari(スマチャリ)」のブースも充実。初代モデルKhodaabloom「RAIL ACTIVE-e」が発売された際に試乗しましたが、シンプルなシステムの割にe-bikeらしい乗り味に仕上がっていました。その後、ディスクブレーキを装備した「RAIL DISC-e」が加わり、このほど初のロードバイクモデル「FARNA DISC TIAGRA-e」がリリースされました。

ドロップハンドルを装備した「FARNA DISC TIAGRA-e」。具体的な発売時期や価格は未発表ですが、車体重量は14.6kgなのでかなり軽量!

さらに、ブースにはMTBや折りたたみ、生活自転車まで、さまざまな車体にスマチャリのシステムを組み込んだモデルが展示されていました。車体に後付けできるシステムのメリットを活かした展開です。どれも収まりが良く、このまま市販されても違和感のない完成度。実際にテスト走行なども行なわれており、市販化の可能性が高いものを展示しているとのことでした。

NESTO(ネスト)のMTB「X-VALLEY」にスマチャリシステムを組み込んだもの。価格はだいたいベース車の10万円アップ程度になると予想されるので、手頃なe-MTBになるかも
こちらは子供向けMTBであるKhodaabloom(コーダーブルーム)の「tanken20/22」に組み込んだもの。子供用e-MTBがほしい人には魅力的な選択肢になりそう
TECH1(テック・ワン)の小径モデル「Chalet-COZ」がベース。20インチタイヤですが、ホリゾンタルフレームが魅力的です
5LINKS(ファイブリンクス)の折りたたみ「5LINKS2.5」というコンパクトなモデルに組み合わせることもできるよう。ご覧のように問題なく折りたためます
京都のハンドメイドフレームブランドであるE.B.S(イービーエス)の「LEAF451」がベースで、前カゴを装備しているので生活を彩ってくれそう
GROWN(グロウン)の「EVERY」という20インチモデルですが、これもクロモリのフレームを手がけるのはE.B.S

さまざまなタイヤサイズのモデルが揃っていましたが、システムに車速などを計測し、自動でアシストを24km/hまでに抑える機能も組み込まれているとのことで、法規に対応させるのもそれほど難しくないのだとか。すでに販売している2車種で、型式認定取得のノウハウも蓄積されているので、その点でも期待ができそう。販売も、従来はワイズロードに限られていましたが、今後は拡大していく見通しとのことで、e-bikeの世界が広がっていきそうです。

自転車がエネルギー源になる時代に

太陽誘電のブースで注目を集めていたのが「FEREMO(フェリモ)」という回生充電機能を備えた電動アシストシステム。ブレーキ時に電力を回生することによって"最大1,000km走行可能"という謳い文句が目立っていました。

このシステムのおもしろいポイントは、ブレーキだけでなく、走行中でも回生機能を使って発電ができること。電動アシスト自転車なのにペダルが重くなるというのは本末転倒な気もしますが、発電することによってアシスト走行距離を伸ばすことが可能。体力があるときや、カロリーを消費したいときに発電しておいて、上り坂や疲れたときにアシストを利用するという使い方ができるほか、バッテリーから外部に給電することができるため、停電時などにその電力を利用することもできます。

「FEREMO」の発電機能を体験できるコーナーも用意されていたので清水氏が挑戦
筆者も体験しましたが、一番発電するモードだと少しペダルを回すだけで相当疲れます
発電した電力はメーター部で確認することができます。消費カロリーなども表示可能
バッテリーには外部に給電できるUSBポートが装備されているので、いざというときにポータブル電源のように使えます

「FEREMO」を搭載した電動アシスト自転車は、生活自転車のようなデザインのモデルが中心ですが、クロスバイクタイプも登場しています。ドライブユニットは前輪に装備されていて、下り坂などでのブレーキ時に効率的に電力を回生できる設計。軽快に走れるe-bikeとは設計思想が異なりますが、発電機能を使って別の意味でスポーツすることもできそうです。

「FEREMO」を搭載するevol(エヴォル)の「GNU(ヌー)」というモデル。309Whのバッテリーで最大1,000kmの走行が可能で、価格は239,800円
丸石サイクルの「Re:BIKE」シリーズのクロスバイクタイプ
今秋までには発売したいとのこと
上記のモデルに清水氏が試乗。回生機能を使って発電しながら走行
発電量と消費量、消費カロリーなどを見ながら走れます

同じく、いざというときにエネルギー源になる自転車という意味で興味を惹かれたのがYOUON(ユーオン)というブランドが手がける水素燃料電池自転車。バッテリーの代わりに水素ボンベ(固体水素カートリッジ)を搭載し、燃料電池で発電した電力でアシストするというシステムです。

水素を生成し、このボンベに充填してくれる機器も販売しているので、自宅で精製水を補充し、電源につなげば水素を補充することができます。このボンベ1本で走行できる距離は50~60kmで、水素の生成・充填にかかる電力はだいたい500Whとのこと。500Whのバッテリーで走行できる距離と比較すると効率が良いとは言えませんが、水素ボンベはそのまま放置しておいても放電することがないため、しばらく乗らずにいたらバッテリーが上がっていたというようなことが起きないのがメリットです。

水素燃料電池自転車。スポーティなモデルから折りたたみ可能な小径車まで4タイプが用意されています
それぞれ1本の水素ボンベを搭載でき、この1本に約200L分の水素を貯蔵できるのだとか。高圧充填するのではなく、金属に吸着するかたちで貯蔵するしくみ
こちらが家庭用の小型水素生成・充填一体機。家庭用電源につなぎ、精製水を注ぐと約5時間でボンベを満タンにできる

こちらも清水氏に試乗してもらったところ、乗り心地は通常の電動アシスト自転車と同等の感覚だったそう。ときおり水素が蒸気機関車のような「ボシュ」という音を上げるのもおもしろかったとか。販売価格はエントリークラスのe-bikeくらいを想定しているそうですが、水素生成・充填機を用意しなければならないので、導入コストは高くついてしまいます。移動手段としては、まだ改善の余地がありますが、水素ボンベを活用する家庭用の燃料電池なども手掛けているとのことなので、水素ボンベを活用して非常時の電源を賄うなどの活用法は広がりそうです。

その他も気になる展示が

上述以外にも気になる展示がいくつかあったので、まとめて紹介しておきます。個人的に期待したいのはカーゴバイク。アシストがあることのメリットは、重い荷物を運んだときに実感できるものなので、大きなボックスを備えたカーゴバイクとe-bikeの相性は良いと考えているからです。CLAMBAR(クランバー)のカーゴバイクは、車体の中央部の荷物を積む設計なので、走行時のハンドリングが安定しそう。バーファン製のドライブユニットを採用し、夏頃の発売に向けて準備を進めているとか。

かなりの積載能力がありそうなクランバーのカーゴバイク
中国では電動カーゴバイクの実績がかなりあるブランドのようだ

パナソニックのブースで最も注目度が高く、試乗したe-bike Watchメンバーの評価も高かったのが、同社のオーダーメイド・チタンフレームです。なかなか試乗する機会のないモデルなので、多くの自転車ファンが集まっていました。せっかくの機会なので筆者も乗らせてもらいましたが、軽量でよく進むロードバイクらしい特性に加えて、しなやかなチタンらしい乗り味でずっと乗っていたくなるような仕上がりです。

"速さ"という点ではカーボンが最高峰ではありますが、チタンならではの乗り味は多くのサイクリストが"最後はチタンフレームに乗りたい"という気持ちが理解できるものでした。

こちらが試乗したスタンダードモデルの「FRTD11」。価格は550,000円~で、フレーム単体での販売ですが、試乗車は完成車のかたちに組み上げられています
熟練の職人がハンドメイドするフレームだけに溶接の仕上がりも美しい
チェーンステー部は位置によって縦横に潰したような加工がされ、しなやかな乗り味に貢献
手前はトップグレードの「FRTD05」で、剛性が高く反発を活かしたような乗り味。フレーム価格は624,000円~
3段階に厚みの異なる「3Dオプティマム・Xバテッド」加工が施される
カラーリングなどのデザインもオーダーが可能なので、自分だけの1台を作り上げられる

メーカーとしての出展はなかったシマノですが、7月26~27日に長野県の富士見パノラマリゾートで開催される「シマノバイカーズフェスティバル」のブースは展開。ペダルバイクはもちろんですが、e-bikeやe-MTBでも楽しめるイベントなので、e-bike Watchでも参加を予定しています。

MTBだけでなくグラベルや、子供向けのアクティビティまで用意され家族で楽しめるイベント
増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。