e-bike試乗レビュー
電動モビリティから水素で動く自転車まで「乗り物の未来」を実感
2025年5月9日 08:05
4月19~20日の2日間、東京ビッグサイトで開催された「サイクルモード東京2025」。近年はe-bikeの出展が目立っていましたが、今回はそれに加えて特定小型原付カテゴリーの電動モビリティが注目を集めていました。電動キックボードタイプだけでなく、自転車のようにまたがるタイプの特定小型原付も増えています。
e-bike主要メーカーの動きは!?
パナソニックやヤマハ、BESV(ベスビー)などe-bikeの主要メーカーももちろんブースを出展していました。パナソニックとヤマハについては、新モデルの出展はありませんでしたが、試乗コーナーには多くの人が列を作っていて、関心の高さを感じさせました。
新モデルを展示していたのはベスビーで、人気の小径モデル「PS」シリーズに新たに加わったアルミフレームの「PSA2」と、フォールディングモデルの「PSF2」に注目が集まっていました。試乗したe-bike Watch清水氏によると、発進時や走行時のアシスト制御がジェントルなフィーリングとなっていたとのこと。内部の電装システムを一新しているとのことですが、そこまでフィーリングが変わるというのは、ベスビーのソフトウェア技術の高さが感じられます。新たにライダーの走りを学習するAI機能も搭載されているそうで、こちらはあらためて、じっくり乗り込んだレビューでお届けしたいと思います。
最近、e-bikeにも力を入れているYADEA(ヤディア)も大きくブースを展開。e-bikeだけでなく、特定小型原付モデルも多数出展しており、この分野でも存在感を発揮しています。個人的にはやはり自転車のようにまたがるタイプに注目してしまいますが、e-bikeベースのモデルでも特定小型原付モデルはペダルがなくなっているのがおもしろいポイントです。
ホンダ「SmaChari」の世界が広がりそう
ホンダが手がける"後付け”でe-bike化できるシステム「SmaChari(スマチャリ)」のブースも充実。初代モデルKhodaabloom「RAIL ACTIVE-e」が発売された際に試乗しましたが、シンプルなシステムの割にe-bikeらしい乗り味に仕上がっていました。その後、ディスクブレーキを装備した「RAIL DISC-e」が加わり、このほど初のロードバイクモデル「FARNA DISC TIAGRA-e」がリリースされました。
さらに、ブースにはMTBや折りたたみ、生活自転車まで、さまざまな車体にスマチャリのシステムを組み込んだモデルが展示されていました。車体に後付けできるシステムのメリットを活かした展開です。どれも収まりが良く、このまま市販されても違和感のない完成度。実際にテスト走行なども行なわれており、市販化の可能性が高いものを展示しているとのことでした。
さまざまなタイヤサイズのモデルが揃っていましたが、システムに車速などを計測し、自動でアシストを24km/hまでに抑える機能も組み込まれているとのことで、法規に対応させるのもそれほど難しくないのだとか。すでに販売している2車種で、型式認定取得のノウハウも蓄積されているので、その点でも期待ができそう。販売も、従来はワイズロードに限られていましたが、今後は拡大していく見通しとのことで、e-bikeの世界が広がっていきそうです。
自転車がエネルギー源になる時代に
太陽誘電のブースで注目を集めていたのが「FEREMO(フェリモ)」という回生充電機能を備えた電動アシストシステム。ブレーキ時に電力を回生することによって"最大1,000km走行可能"という謳い文句が目立っていました。
このシステムのおもしろいポイントは、ブレーキだけでなく、走行中でも回生機能を使って発電ができること。電動アシスト自転車なのにペダルが重くなるというのは本末転倒な気もしますが、発電することによってアシスト走行距離を伸ばすことが可能。体力があるときや、カロリーを消費したいときに発電しておいて、上り坂や疲れたときにアシストを利用するという使い方ができるほか、バッテリーから外部に給電することができるため、停電時などにその電力を利用することもできます。
「FEREMO」を搭載した電動アシスト自転車は、生活自転車のようなデザインのモデルが中心ですが、クロスバイクタイプも登場しています。ドライブユニットは前輪に装備されていて、下り坂などでのブレーキ時に効率的に電力を回生できる設計。軽快に走れるe-bikeとは設計思想が異なりますが、発電機能を使って別の意味でスポーツすることもできそうです。
同じく、いざというときにエネルギー源になる自転車という意味で興味を惹かれたのがYOUON(ユーオン)というブランドが手がける水素燃料電池自転車。バッテリーの代わりに水素ボンベ(固体水素カートリッジ)を搭載し、燃料電池で発電した電力でアシストするというシステムです。
水素を生成し、このボンベに充填してくれる機器も販売しているので、自宅で精製水を補充し、電源につなげば水素を補充することができます。このボンベ1本で走行できる距離は50~60kmで、水素の生成・充填にかかる電力はだいたい500Whとのこと。500Whのバッテリーで走行できる距離と比較すると効率が良いとは言えませんが、水素ボンベはそのまま放置しておいても放電することがないため、しばらく乗らずにいたらバッテリーが上がっていたというようなことが起きないのがメリットです。
こちらも清水氏に試乗してもらったところ、乗り心地は通常の電動アシスト自転車と同等の感覚だったそう。ときおり水素が蒸気機関車のような「ボシュ」という音を上げるのもおもしろかったとか。販売価格はエントリークラスのe-bikeくらいを想定しているそうですが、水素生成・充填機を用意しなければならないので、導入コストは高くついてしまいます。移動手段としては、まだ改善の余地がありますが、水素ボンベを活用する家庭用の燃料電池なども手掛けているとのことなので、水素ボンベを活用して非常時の電源を賄うなどの活用法は広がりそうです。
その他も気になる展示が
上述以外にも気になる展示がいくつかあったので、まとめて紹介しておきます。個人的に期待したいのはカーゴバイク。アシストがあることのメリットは、重い荷物を運んだときに実感できるものなので、大きなボックスを備えたカーゴバイクとe-bikeの相性は良いと考えているからです。CLAMBAR(クランバー)のカーゴバイクは、車体の中央部の荷物を積む設計なので、走行時のハンドリングが安定しそう。バーファン製のドライブユニットを採用し、夏頃の発売に向けて準備を進めているとか。
パナソニックのブースで最も注目度が高く、試乗したe-bike Watchメンバーの評価も高かったのが、同社のオーダーメイド・チタンフレームです。なかなか試乗する機会のないモデルなので、多くの自転車ファンが集まっていました。せっかくの機会なので筆者も乗らせてもらいましたが、軽量でよく進むロードバイクらしい特性に加えて、しなやかなチタンらしい乗り味でずっと乗っていたくなるような仕上がりです。
"速さ"という点ではカーボンが最高峰ではありますが、チタンならではの乗り味は多くのサイクリストが"最後はチタンフレームに乗りたい"という気持ちが理解できるものでした。
メーカーとしての出展はなかったシマノですが、7月26~27日に長野県の富士見パノラマリゾートで開催される「シマノバイカーズフェスティバル」のブースは展開。ペダルバイクはもちろんですが、e-bikeやe-MTBでも楽しめるイベントなので、e-bike Watchでも参加を予定しています。