e-bike試乗レビュー

e-MTBとオートバイの中間な乗り物!? 電動原付一種GE-N3が思った以上に楽しかった!!

ダートフリークの電動原付一種「GE-N3」

2025年は電動モビリティが盛り上がる年になるかもしれません。というのは、50ccエンジンの原付一種がなくなることが予想されるからです。排出ガス規制が厳しくなることが理由ですが、その穴を埋めることを期待されているのが電動バイク。そんな状況で登場したダートフリークの電動原付一種「GE-N3」に試乗してみました。

エンジン付きのバイクよりe-bikeに近い!?

ダートフリークというメーカー名を聞き慣れない人もいるかと思いますが、オフロードバイクやMTB向けのパーツやアイテムをリリースしている国産ブランドです。電動バイクについては「ヨツバモト」というブランド名で子供向けのマシンを開発・販売しています。また、e-bikeとしては「eEDIT 275」というモデルを昨年発売しているので、記憶している人もいるかもしれません。「GE-N3」は、そんなダートフリークが初めて手掛ける公道走行可能な電動バイクです。

全長は1,820mmで、重量は58kgとかなり原付一種のエンジン車と比べても軽量。価格は396,000円

2024年のグッドデザイン賞を受賞した外観は、シンプルですが親しみやすいテイストです。社内では「カセットテープみたい」という声もあるとのことですが、直線と円形を組み合わせ、どこかレトロさを感じさせるデザインは、たしかにそんな雰囲気です。

直線を多用した車体デザインですが、角は取れていてオフロードバイクなどと比べて尖っていないシルエット
丸目のLEDライトにはガードが装着されていて、親しみやすさの中にもアウトドアのイメージを採り入れています

モーターは車体の中央に搭載され、その上にバッテリーが配置されています。モーターの定格出力は原付一種の最大値である0.6kW。最高出力は2.8kWあるので、結構パワフルです。バッテリーの容量は1,728Wh(72V/24Ah)。電圧が72Vというのはe-bikeと比べるとかなり高めですね。航続距離は実測で50~60km程度とのことです。

モーターの部分には車名のロゴが入ったガードが装着されています。チェーンを介して後輪を駆動
バッテリーは黒いカバーに覆われています。重量のあるものを車体中央に集めた設計
充電は車体に搭載したままでも、取り外した状態でも可能。取り外しには工具が必要で、バッテリー本体は重いので、できれば搭載したままにしたいところ

ホイール径はフロント17インチでリアが14インチ。小排気量のオフロードバイクではよく使われているサイズです。細かいブロックが配置されたオンロードもオフロードも走れるタイヤを履いています。前後のサスペンションや油圧式のディスクブレーキは、e-MTBなどに使われるものを採用しています。車重や走行する速度域を考えると、合理的なセレクトといえるでしょう。

17インチのフロントホイールにダートフリークの自社製フロントフォークの組み合わせ
リアホイールは14インチ。タイヤはKENDA製でオフロードも走れるタイプになっている
ブレーキは前後ともMTB向けの4ポッドキャリパーを採用。ディスク径は前203mm、後160mm
サスペンションは前後ともイニシャルと伸び減衰の調整が可能。リアはサスペンションの取り付け位置を変更して特性を変えられる
ハンドルも自転車用の規格で「eEDIT 275」と同じクロスバーを装着。アクセサリーも付けやすい
ブレーキレバーも自転車向けの規格ですが、長めのものが装着されています。フルードはDOT規格ではなく自転車と同じミネラル

ライディングポジションは自転車よりもオフロードバイクに近いものです。シート高は790mmでハンドルが高めでアップライトな乗車姿勢。オフロードバイクと違うのは、変速ギアがなく、リアブレーキも自転車同様に左手で操作するので足での操作が必要ないこと。そのため、ステップ位置を大きく変更することができるのがユニークなところです。

細身で前後に長いオフロードバイクっぽいシート。長時間座り続けるとちょっとお尻が痛くなりそう……
ステッププレートには4つの穴が設けられていて、ライディングポジションを変更可能
ハンドル位置は高めで中央にメーターディスプレイを配置。アクセルは右手を捻る一般的なタイプ

e-bikeに乗ってると馴染みが早いかも

ここからは実際に乗り回してみてのインプレッションをお届けします。電源の起動はNFCのカードキーをタッチする方式。鍵穴がないたえ、いたずらをされたり暗いところで見つけにくいといった心配がなさそう。起動した時点ではアクセルをひねっても動かず、走行モードに切り替えると動くようになります。

NFCのタッチで電源のON/OFF操作ができるところが現代的。電動らしい機能といえます
走行モードは穏やかな加速の「1」とレスポンスが鋭くなる「2」が選べます
走行モードの切り替えは右手側のボタンを上下に押して操作
左手側にはライトのハイ/ロー切り替えスイッチと、ウィンカー、ホーンのボタンを装備
テールライトを取り外すと、クローズドコース専用(公道走行不可)のモード「3」が選択できるようになる

電動バイクは速度ゼロからの加速が鋭いのが特徴ですが、モード「1」だとかなり穏やかに調整されていて、初めてバイクに乗る人でも乗りやすそう。モード「2」になると、加速が鋭くなるのでベテランライダーはこちらを選びたくなるでしょう。どちらのモードでも最高速度やピークパワーは変わらないので、ちゃんと使えるモードになっています。バッテリーの消費もほとんど変わらないとのこと。バッテリーを長持ちさせるためのエコモードが選べる電動バイクもありますが、実際にはあまり使う機会はなかったりするので、この設計は好感が持てます。

舗装路ではキビキビした加速が楽しめて、乗り心地も良好。オフロード向けのタイヤだとゴツゴツした感触になったりしますが、そういうネガもありません

車体が軽く、ハンドルの切れ角が大きいので、取り回しはかなり良くて小回りが効きます。最高速度は55km/hで航続距離も限られているので、長距離ツーリングをするバイクではありませんが、街中の移動手段としてはかなりのポテンシャルを持っていると感じられました。

ハンドル切れ角は45°以上あるので、自転車のように取り回しがいい。狭い道での方向転換もラクな印象です

オフロード好きが集まったメーカーが作っているだけあって、街中だけでなくオフロードでの走行性能も確保されています。トルクは230Nmもあるので、グリップの悪い未舗装路でもグイグイ加速できます。サスペンションの性能は決して高くないのですが、タイヤのグリップや車体の軽さとのバランスが取れているようで、オフロードコースを走っても確かな走破性が感じられました。

砂利道などの軽めのオフロードは何の問題もなく走れる。ライディングポジション的にはスタンディングがしっくりきます
アクセル開け始めからトルクフルなので、後輪を滑らせるアクセルターンなども簡単

エンジン付きのバイクよりも自転車に近いと感じたのがブレーキのフィーリングです。対抗4ポッドのキャリパーですが、自転車のブレーキを手掛けるkarasawa製だけあって、バイク用のガツンと効く感じではなく、握り込んでいくほど効力が立ち上がってコントロールしやすい感覚でした。このへんは、e-bikeやMTBの経験がある人のほうが馴染むのが早そうですね。
言うなれば小排気量のエンジン付きバイクと、e-bikeの中間的な乗り味だった「GE-N3」。変なクセがなく、基本設計が優れているので、初めてバイクに乗る人でも怖い思いをすることなく楽しめそう。ある程度、オフロードバイクやMTBの経験があるライダーなら、より馴染みが早いだけでなく、軽さと高すぎないスペックのおかげでいろいろなことにチャレンジしてみようという気にさせてくれます。普段は街乗りで使用し、週末にはオフロードに持ち込むような使い方が似合うでしょう。電動だとガソリンやオイルが漏れたりしないので、気軽にクルマにも積み込めますしね。個人的にもかなり欲しくなった1台でした。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。