e-bike試乗レビュー

BESVの折りたたみミニベロ新モデル"自分好みに育てられる"AI機能がおもしろい

間もなく発売されるBESVの折りたたみミニベロe-bike「PSF2」

ミニベロタイプのe-bikeの中でも人気の高いBESV(ベスビー)「PS」シリーズに、新たに折りたたみタイプ「PSF2」と「PSA2」が加わりました。従来モデルの「PSF1」「PSA2」も併売され、見た目もぜんぜん変わっていませんが、どんな違いがあるのか? さっそく試乗してその違いを体感してみました。

AIによるラーニング機能が追加に

ベスビー「PS」シリーズはグッドデザイン賞を受賞したフレームデザインもあって、幅広いユーザーから支持を集めているe-bike。新しい「PSF1」と「PSA2」は、評価の高い基本デザインはそのままに、バッテリーやディスプレイのほか、トルクセンサーやコントローラーなどアシストに関わる電装部品を一新しています。

折りたたみができる「PSF2」の価格は328,000円、「PSA2」は268,000円。従来モデルの「PSF1」と「PSA1」も併売され、価格は298,000円と238,000円となっているので、性能や乗り味にどんな違いがあるのか気になるところです。

外観で見分けるポイントはディスプレイ。「PSF2」は左手側に操作スイッチ一体型のディスプレイをコンパクトに装備
「PSF1」はディスプレイを中央に搭載し、操作スイッチは左ハンドル部
バッテリーも見た目に違いはわからないが、「PSF2」はイグニッションキーが不要となり、キーを抜いた状態で走れる
走行中にキーを挿しておく必要がある「PSF1」

アシストを司るトルクセンサーやコントローラーが一新されたことで、アシストの制御はブラッシュアップされていることが予想できます。先に試乗したe-bike Watch清水氏によると「めちゃくちゃ良くなっている」とのことなので、大きな期待を抱きながら試乗しました。

試乗したのは折りたたみが可能な「PSF2」。重量は18.9kgで「PSF2」の18.3kgより少し重くなっている
折りたたみ時のサイズは840×770×340mmと前モデルと変わりはない。オプションのリアキャリアを装着すれば、たたんだ状態で転がして移動できる
ドライブユニットはインホイールタイプで、変速ギアはシマノ製Altus(アルタス)の7速とともに変更はない
前後タイヤは20×1.5インチ、ブレーキはPROMAX(プロマックス)製の機械式ディスクブレーキでこれらも前モデルと同様
フロントはリジッドフォークだが、リアにはKindshock(カインドショック)製A5-RE L150/51mmトラベルのサスペンションを装備する

新型になって最も注目すべきポイントは、ベスビー独自の「スマートモード」にAIラーニング機能が追加され「ラーニングスマートモード」に進化したことです。ユーザーのペダルを踏み込むトルクやケイデンス、速度や斜度などの情報を分析・蓄積し、走行を重ねるごとに"ユーザー専用"のアシスト制御に進化していくのです。また、スマホに「BESV Smart Plus APP」をインストールし車体と連携させれば、ファームウェアの更新やエラー履歴の確認などもユーザーがアプリ上でできるようになります。

新しくなった操作スイッチ一体型のディスプレイ。スマート(S)モードを選ぶとAIのラーニングがスタートする
新しくなったバッテリーは容量382Whで、前モデルの378Whから若干アップしている。80%までの充電速度も向上
「BESV Smart Plus APP」の画面。スマートモードのラーニング機能はアプリからON/OFFの切り替えが選べる。ファームウェアの更新があれば、それもアプリから操作可能

走れば走るほど好みのアシスト特性に

新しくなったアシストの制御がどんな進化を遂げているのか? 期待に胸を膨らませながら試乗しましたが、漕ぎ出しからいきなり変化を感じることができました。前モデルはペダルを踏み込むとグイッと車体を押し出すようなアシスト感でしたが、新型の「PSF2」ではそこがスムーズになっていて、スーッと車体が進み出す感じ。前モデルのほうが漕ぎ出しの"アシストされてる"感は強かったともいえますが、新型のほうがより上質にアシストが上乗せされるような感覚です。

アシストがスムーズで上質になっているのを実感。加速にガサツ感がなく、より高級なe-bikeになったような印象

発進時に強く押し出すようなアシストは弱まったように感じられるかもしれませんが、ケイデンスが高まるとアシストも強くなりグイグイ加速していきます。こういうアシスト感は、最近のe-bikeに共通する傾向で、各社のドライブユニットを乗り比べても、新しいモデルほど以前より出だしのアシストをスムーズにして、スピードが伸びるようなセッティングになってきています。短時間の試乗だと、漕ぎ出しで強く押し出してくれるほうがアシストされているように感じやすいのですが、長く乗れば乗るほど後者のアシスト制御のほうが乗りやすいことが感じられるので、各社ともその方向に進化しているのでしょう。

坂道も上ってみましたが、斜度も検知してアシストを制御しているだけあって、急な上り坂もスイスイと上ることができます。こちらも、ペダルを強く踏み込むより"回す"ようにペダリングするほうが楽に上れました。急坂の途中でわざと止まって、再発進もしてみましたが、そういう意地悪な乗り方をすると、前モデルの出だしが強力なアシストのほうが楽かもしれません。

急な坂道もグイグイというよりはスムーズに上っていける印象。高いギアで走るより低めのギアでケイデンスを上げたほうがスムーズ

坂道を何度か上ったり下ったりしていると、ディスプレイに表示されている残りのアシスト走行可能な距離が急に短くなっているのに気付きました。ベスビーのスマートモードでは、過去の走行記録から1Ahで走行できた距離を算出し、それに基づいて走行可能距離を表示してくれるのですが、今回借りた「PSF2」はまだほとんど走行していなかった車体。消費電力の大きい登坂を繰り返していたので、一気に走行可能距離が短くなったようです。

さっきまで50km以上の表示だった走行可能距離がいきなり45.5kmとなっていて驚く

そして、この走行可能距離の算出にも「ラーニングスマートモード」の学習結果は影響しているとのこと。つまり、効率のいいペダリングができていて、同じ消費電力でも長い距離を走れると判断されれば走行可能距離も伸びるかもしれません。そんなテストも含めて、20kmちょっとの距離を走ってみました。

しばらく平坦な道を走っていると、走行可能距離は58kmまで伸びていました

残りの走行可能距離の算出は、だいたい15分ごとに行なわれていて、AIによる学習はそれよりも高頻度だとのこと。走行可能距離への影響の度合いは不明ですが、実際に走っているとバッテリーは消費しているはずなのに表示される距離はだんだん長くなって来るのがおもしろいところです。

実際には20kmほど走っているにも関わらず、最終的に走行可能距離は65km以上にまで伸びた

目に見える走行可能距離に意識が向きがちになっていましたが、気が付くと乗り始めた頃よりアシストのフィーリングもスムーズになっているように感じます。

筆者は、どちらかというと強く踏み込むよりも回すようなペダリングが好みなのですが、アシストの制御もそれに適したものになっているような印象でした。25km/hまでフルパワーでアシストする海外仕様に比べて、10km/hから徐々にアシストを落として24km/hでゼロにしなければならない日本仕様では「ラーニングスマートモード」の影響は感じにくいとのことでしたが、学習の成果はきちんと反映されているようです。

日をあらためて、わざと踏み込むようなペダリングで走ってみたりしましたが、そうするとアシストのフィーリングも自分の好みとはちょっと違うものに変化するように感じられました。普段とは違うペダリングをしていたので、そのせいで違和感を覚えていた部分もあるでしょうが、いつものペダリングに戻すと乗りやすくなったように感じたので影響は確実にあるようです。乗れば乗るほど"自分好みのアシスト"に育てて行けるというのは、今までのe-bikeになかった機能で、かなりおもしろい。従来モデルとの価格差は3万円ありますが、個人的にはその差であれば新型を選びたいと感じる完成度でした。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。