e-bike試乗レビュー
ビアンキから本気のe-bikeが日本上陸! 「E-Omnia」に乗ったら自転車版の高級SUVだった
2022年11月4日 16:00
サイクルヨーロッパジャパンがビアンキの新型e-bike「E-Omnia(イーオムニア)」2車種を発表しました。最近e-bikeでも増えているコミュータータイプの「誰でも乗りやすい」e-bikeですね。T-TYPEとC-TYPEが用意されており、価格は順に935,000円と880,000円。
価格を二度見して記事を閉じようとしているあなた、もう少しだけお待ちください! 私も金額だけを聞いたら同じように驚いたでしょう。が、実は発表前に試乗車をお借りしてじっくり見て、実際に乗ってみると、こうした価格設定も理解できましたし、何よりもビアンキが日本市場でもe-bikeに本気なんだなとも感じました。なので、もう少々お付き合いくださいませ。
自転車が趣味でなくてもビアンキを知っている人も多いのではないでしょうか。ブランドを知らなくても「あのカラーのオシャレな自転車」でピンと来るのでは。爽やかなチェレステカラーが印象的ですね。
また、「ビアンキがe-bike?」という人もいるかもしれませんが、実は2018年モデルで電動アシスト自転車「CAMALEONTE E(カメレオンテ イー)」を、2019年モデルではミニベロe-bike「Lecco-E(レッコ イー)」を発売しています(いずれも生産終了)。ビアンキバイクストアでの販売だったのであまり目にすることもなかったかもしれません。街中で気づいた人はe-bikeマニアですね。
日本では久しぶりのe-bikeですが、ヨーロッパでは「E-ROAD」「E-GRAVEL」「E-MTB」「E-TOURER」「E-URBAN」「E-OMNIA」というカテゴリーごとに複数の車種を展開しています。ヨーロッパでは毎年のように続々とさまざまなe-bikeを積極的に展開しているのです。
日本にやってきたのは「E-Omnia」となります。現存する最古の自転車メーカーとしての立場からモビリティの未来を見据えたとき、既存のスポーツ自転車だけでなくe-bikeがこれからの社会に必要だと考えているそうです。そんなビアンキが以下の3つの柱で考えるのが「Bianchi Lif-e(ビアンキ ライフイー)」。
・【イノベーション】もともとビアンキの自転車に備わっているものでLif-e製品群はすべてイノベーティブで、すべての人に自転車を提供できる可能性がある
・【ウェルビーイング】自転車に乗ることでもたらされるもの
・【サステナビリティ】環境に優しい未来を実現するための努力
このLif-eのコンセプトのもと、ビアンキが作ったe-bike「E-Omnia」。“Omnia”はラテン語で「すべて」の意味でC/T/Xの3種類をラインナップし完璧なe-bikeであらゆるタイプのライダーからの要望に応えるとしており、E-Omniaはビアンキからの未来への回答だとしています。日本ではC/T-TYPEが発売されましたが、オフロードタイプのXも近い将来ラインナップに加わりそうな気がします。
E-Omniaはどんなe-bike?
コミューターバイクと言われるような、スポーツバイク未経験者でも乗りやすいモデルです。T-TYPEもC-TYPEも実用的なモデルですが、C-TYPEはトップチューブのない跨ぎやすいステップインモデルになっています。試乗したC-TYPEの写真とともに見て行きましょう。
まずはe-bikeの核となるドライブユニットとバッテリーから。ボッシュ製ハイエンドの「Performance Line CX」を搭載しており、最大トルクが75Nmから85Nmにアップデートされています。バッテリーも最新の大容量625Whをダウンチューブに内蔵。走行距離の参考値はEcoモードで約170km(ライダー70kg+バイク30kgで20km/h走行)となっています。e-bikeはカタログスペック以上に走れることがほとんどなので、625Whというバッテリー容量を考えるともっと長く走れるでしょう。ちなみに、ボッシュの公式サイトではドライブユニットやバッテリー、車体の種類、タイヤトレッドで航続距離を算出することもできます。
バッテリーを電源とする前後ライト、アルミフレーム一体型のリアキャリア、調整可能なステム、前後フェンダー、ベルトドライブ、フロントサスペンション、バッテリーと共通キーのサークルロック、キックスタンドなど装備も充実しています。街乗りで便利なのはもちろんですが、荷物をもって趣味や旅をより楽しむためのe-bikeでしょう。専用のパニアバッグなどのオプションも用意されています。ドライブユニットやバッテリー以外にもすべてのパーツにこだわっています。高品質なパーツで最高のe-bikeにしてやるぜ! といった印象です。
タイヤはSCHWALBE(シュワルベ)Marathon E-Plus(マラソン イー プラス)。e-bikeの重量や長距離走行での安全性、快適性などを考慮して開発されたe-bike専用のタイヤです。サイズは29インチ(28×2.15)。
C-TYPEの車体サイズは1,890×650mm(全長×全幅)、車体重量は約30kg。カラーはBLACK/BORDEAUX/CELESTE/WHITEの4色。T-TYPEの車体サイズは1,930×700mm(全長×全幅)、車体重量は約32kg。カラーBLACK/BLUE/EMERALD GREEN/GREY MIRROR/WHITEの6色。
E-Omniaで走ってみた
別企画のロケもあって白馬岩岳エリアに持ち込んで40kmほど走ってみました。約30kgの重量なのでクルマへの積み込みは正直大変でした。何度もやりたくない。e-MTBよりも重たいので何度もトランポするのには向きません。どこか拠点を決めてそこから自走するのがベストでしょう。
e-bikeは重量があっても走り出したら、その重さを感じさせない軽快な走りが特徴です。とはいえ、約30kgあるのでボッシュ製「Performance Line CX」を搭載していても、他のモデルよりは重たさやキツさを感じるかなとも考えていました。が、やっぱり良くできたe-bikeでした。
アシスト領域内で気持ち良い走りや移動を楽しむe-bike。e-bikeは24km/hを超えたら、その先は重たくてツラい自転車という印象を持たれる人もいるかもしれませんが、車体によっては漕ぎ出し以外はほとんどアシストを使わずに、平坦はアシスト領域外の速度で走ったり、上り坂や向かい風のときだけアシストに頼って走りを楽しめるモデルもあります。
また、e-bikeは停車時にアシストモードを最強モードにしたままで漕ぎ出すと「ドン」と飛び出してしまうケースもあります(そのためいつも停車時はギアもアシストも落として自転車と同じような発進を伝えていますが)。試しに「Turbo」モードでスタートしてみましたが、E-Omniaは車体重量もあるため(やや強めの)自然な感じで走り出せる印象(個人差ありますが)。
実はバーレーのペット用トレーラー「バークレンジャー」を持って来ていて、犬たちを待つ間に自分のPCやカメラが入った荷物を積んで重量を追加し、急坂エリアを走ってもまったく問題ありませんでした(予想どおりですが)。ただし、アシスト領域外でのスピードで走りたい場合は疲れます。いつもe-bike試乗の際にはアシストを切ったり、24km/h以上も試します。C-TYPEでも試しましたが、すぐにやめました(笑)。アシスト領域内で完全にクルージングを楽しむe-bikeだと実感。
別記事でもお伝えしますが、e-bike初体験の人にいくつかの車種を乗り比べてもらったところ「安定感」「安心感」が凄い。それでいてスイスイ上って、車体の重さは一切感じないと驚いていました。また、e-bike専用タイヤやフロントサスペンションも搭載しているので、オフロードも走ってみましたが、不安もなく走れました。ヨーロッパでアドベンチャーバイクと呼ばれているのも納得です。冒険しながら絶景やとっておきのキャンプスポットなどに出会えそうです。
クルマで例えるなら高級SUVといったところでしょうか。走る道も選ばずにさまざまな目的を叶えてくれる多目的e-bike。通勤や買い物などの日常使いには「価格が高すぎる」となりますが、e-bikeでのアウトドアレジャーや旅をもっと楽しみたい人には満足度の高いe-bikeになる気がします。