家電ラボの徹底「本音」レビュー

温めもトーストもこれ1台! 日立トースターレンジは省スペース派におすすめ

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
130L冷蔵庫の上に置いた「2 in 1トースターレンジ MRT-F100」。コンパクトです

最近は調理家電が登場し、キッチンスペースが足りないという方も多いのではないでしょうか。特に場所をとるのが電子レンジですが、さらにパンを食べるときはトースターもほしくなり、置き場所に悩むことがあります。

そんな悩みを解消できるのが、電子レンジとトースターが合体した日立グローバルライフソリューションズの新製品「2 in 1トースターレンジ MRT-F100」(以下、トースターレンジ)です。これまでもトースト機能を搭載したオーブンレンジはありましたが、何が違うのでしょうか。実際に使ってみました。

ひっくり返さず、トーストを美味しく焼ける

扉を開けて驚いたのは、庫内が狭いこと。一見、そんな印象を受けたのですが、庫内サイズは349×279×132mm(幅×奥行き×高さ)で、実際には狭いというよりも庫内が低くなっています。スペックだけ見ると容量は15Lなので、1人用と思われそうですが、底の面積そのものは2~3人用の電子レンジとほぼ同じで、大きなお弁当も余裕で入るサイズです。

正面。背が低いことが特徴です
大きなお弁当も入ります

庫内上部にはヒーター管があり、上から食材を加熱します。食材との距離が近いので、予熱不要で、素早く庫内の温度が上昇し、短時間でトーストすることも可能です。一般的なオーブンレンジでトーストしようとすると10分程度時間がかかることもありますが、小さい庫内だから短縮できるのです。

扉を開けるとヒーター管が上部に見えます
ダイヤル式で操作はシンプル
タイマーの表示部もコントラストがハッキリしていて見やすい

もうひとつのポイントは、グリルプレートです。このグリルプレートは、電子レンジのマイクロ波で底面を発熱させることができます。特殊な発熱体が貼り付けられており、このグリルプレートが瞬時に加熱されることで、トーストの裏側にも焦げ目がつきます。赤外線を放射する管ヒーターで食材上面を、マイクロ波で発熱するグリルプレートで食材裏面を加熱するので、調理中に途中でひっくり返す必要がありません。

これまでは、オーブンレンジでトーストをする場合、ミトンを使ってプレートを引き出し、トングでパンをつまんでひっくり返し、トータルで10分以上待つ必要がありましたが、トースターレンジは3~5分で焼き上げられます。ひっくり返さずに済むので、市販のトースターとほぼ変わらない使い勝手で焼けるようになったのです。

色々活用できるグリルプレート

ふわサクトーストが4分で

運転モードはトースト、アレンジトースト、パンリベイク、ピザ、グリル、電子レンジ、予熱。電子レンジと予熱をのぞくすべてのモードでグリルプレートを使って調理します。なお、電子レンジモードは1,000W(最大3分)/600W/500W/200Wの4段階で出力を調節できます。

トースト

実際に「トーストモード」で食パンを焼いてみました。パンはグリルプレートの中心に置きます。

グリルプレートの中心に置きます。最大2枚まで焼くことができます

トーストモードは素早く庫内の温度を上げ、マイクロ波でグリルプレートを高温にし、上下から加熱して食パンを焼くモードです。今回は4分加熱しました(レシピでは3~5分)。

グリルプレートを入れてみたところ。高さが低いことがわかります

オーブンレンジでよくある、途中でひっくり返す手間がないのはとても便利です。加熱終了後、取り出す際はグリルプレートが熱くなっているため、ミトンなどでの取り扱いに注意が必要ですが、最後まで一気に焼けるのは嬉しいポイントです。裏面にも焦げ目がついていますが、もう少し焼き色を濃くしたい場合は30秒ほど加熱を追加するとよいでしょう。

最新のトースターにはセンサーで庫内の温度を計測しながら、焼き色を「薄め」「濃いめ」から選んで焼けるタイプもありますが、このモデルにはそういった機能はありません。そのため、何度か焼いてみて、自分好みの調理時間を見つける必要があります。

食べてみると中心部分はふんわりした食感。表面はサクッとしていますが、オーブンレンジで焼いたようなカサカサした感じはありませんでした。ただ、耳の周辺は若干水分が失われている感じもありました。最近流行りの高級トースターと比較するとモチモチ感はないので物足りないのですが、一般的なトースターで焼いた状態とほぼ同じという印象です。

トースト表
トースト裏
白い部分はふんわり。耳周辺は水分が少し抜けてザクッとした食感

冷凍食パンのトースト

次に、冷凍しておいたパンを焼きました。こちらも同じ食パンモードでOKですが、時間を延ばします。常温の食パンを焼いたときに、ちょっと色が薄かったので、6分で設定しました(レシピでは4~6分)。表はムラなくこんがりと焼けていますが、裏側は少々白っぽい仕上がり。

焼き色が濃いこともあって、常温トーストよりも、よりサックリとしています。耳まわりも少々かたい印象でした。もう少しやわらかめが好みなら、時間を短くする必要があります。

表はムラがないが、裏側は少し白っぽい仕上がり

チーズトースト

アレンジトーストモードでは、チーズトーストを焼いてみました。ピザ用チーズをたっぷりのせて10分(レシピでは10~11分)。トーストモードよりも時間がかかりましたが、チーズにも焦げ目がついていて、しっかり焼けていました。時間がかかったのでトーストの裏側は焼き色が濃いのかと思っていましたが、ほどよく焼けています。

チーズトースト。表面がカリッとしていて美味しい!

クロワッサンのリベイク

パンのリベイクモードも試しました。パンリベイクモードは、冷めてしまったクロワッサンや惣菜パンなどを再加熱するための機能です。クロワッサンのリベイクは4分(レシピでは3~5分)。ふんわりと、中まで温かく加熱することができました。表面はもう少しハリや食感が欲しいところですが、焦げずに中まで温められるのは嬉しいですね。

表面のさっくりした感じがもう少しほしいところ
中心までまで温まっていました

ソーセージパンのリベイク

コンビニなどでよく売っているソーセージパンを6分リベイクしたところ、パン部分がふわふわでちょうどよい温かさでした。ただ、ソーセージは加熱されているもののアツアツではなく、少々物足りない印象です。

焼き上がり後。表面は焦げていません
ソーセージはもう少しアツアツだと嬉しい

他社の最新オーブンレンジでは、マイクロ波を使って中を加熱し、上からヒーターで加熱することでサクッとした食感を保ちつつ、温められるものもあります。トースターレンジはヒーターとマイクロ波を同時に使えますが、基本的にマイクロ波はグリルプレートを加熱するために使われるので、食品を直接温めることはできません。その点は、少々残念なところです。

トースト、目玉焼き、ウインナーが同時に焼ける

パンとウインナー、目玉焼きを一度に焼くこともできます。クッキングシート(一辺15cm)の四隅をねじり、高さ1cm程度の正方形の容器を作り、卵を落とします。あとはパンとウインナーを並べ、トーストモードで5分調理しました(レシピでは4分10秒~4分50秒)。

同時に一度で調理が終わるので忙しい朝も短時間でできます
見事な半熟。ただ、容器を作るのが少々面倒かも……

トースターで目玉焼きを焼くと、白身が固まらなかったり、黄身が固くなりすぎたりして難しいのですが、完璧な仕上がりでした。黄身はとろりとしており、理想的な半熟状態です。

気になったのは、目玉焼き用の容器作りです。専用の容器で代用することはできません。慣れれば手早く作れるものの、クッキングシートで容器を作る作業は少々手間に感じました。作る頻度が高い方は、先にクッキングシートを切ってまとめて用意しておくと、忙しい朝もすぐにできそうです。

餅を焼いたり、魚を焼いたり、ちょっとした調理が手軽で便利

グリルモードを使えば、鮭や鶏肉、餅を焼くなど、ちょっとしたおかずやおやつの調理が手軽にできました。

焼き鮭

鮭は2切れをグリル(強)で焼きました。調理時間は14分(レシピでは13分30秒~14分30秒)。グリルプレートが加熱されるため、ひっくり返す必要はありません。

鮭はグリルプレートにくっつくことなく、調理後はトングでサッと取れました。大きいオーブンレンジで焼くと少しパサつくことがありますが、ふっくらと美味しく焼き上がっていました。グリルプレートに少し跡が残るものの、中性洗剤をつけてやわらかいスポンジでサッとこするだけで落ちたので、お手入れも簡単です。

2切れ焼きました。ふっくらとした仕上がり
裏も焼けています
グリルプレートの汚れもこの程度。サッと落ちます

鶏肉のグリル

次に、鶏肉のグリルを試してみました。鶏肉に塩胡椒をして、好みでオリーブオイルをかけ、グリル(強)で28分(レシピでは27~29分)。皮の部分はパリッとしてジューシーに仕上がりました。

驚いたのは脂がグリルプレートにたくさん溜まっていたことです。グリルプレートは中央が少し高くなっているため、脂が周囲に落ちて溜まります。そのため、鶏肉は脂っぽさがありませんでした。

まわりの脂がすごい! 落ちていくので鶏にべたつきはありません
皮はパリッとしていて美味しい

いそべ焼き

グリル皿にクッキングシートを敷き、その上にサラダ油を薄く塗ってから餅を置きます。筆者は面倒だったのでサラダ油を塗らずに置いてみました。

「両面に十字の切れ目を入れる」ということでしたので、市販の切れ目入り餅を使用しました。グリル(強)で9分(レシピでは9~10分)。みるみる膨らんでいきました。

餅をつかんだところ、クッキングシートからスルッととれました。これなら、お手入れも簡単です。

クッキングシートを使います。中央に2個並べて置きました
みるみる膨らんでいきます
焼き上がり。少し丸くなっていました
海苔を巻いて完成

さつまいもが甘くてほっくり、絶品に

焼き芋に挑戦です。さつまいもは皮をつけたまま洗い、拭かずにクッキングシートで包みました。その後、グリル皿の中央に寄せて横向きに並べ、グリル(弱)で60分間焼きました(レシピでは58~60分)。

こんな状態で焼きます
ほくほくで激甘!

焼き上がりは美味しく、感激しました。蜜があるねっとり系ではなく、ホクホクとした食感で、甘さがしっかりと感じられました。あまりの美味しさに、さらに数本焼いておやつに。複数本をまとめて焼くよりも、1本ずつ焼いたほうがより甘さが引き出せた気がします。

じっくり時間をかけて、最適な温度で加熱された焼き芋は絶品。ぜひ一度試していただきたいメニューです。とても気に入っています。

オーブン機能はないけどグリルでケーキを焼いてみる

トースターレンジには、グリル機能はあるものの、オーブン機能はないので、温度の設定ができません。そのため、スポンジケーキなどの本格的なお菓子作りは厳しいと言えるでしょう。

ただ、日立のサイトには、いくつかお菓子の作り方が掲載されていました。そこで、その中からブラウニーをレシピ通りに作ってみました。

小麦粉、ココアパウダー、チョコレート、無塩バターなどの材料を混ぜます。工程に関しては一般的な作り方と同じです。調理時間は予熱5分後、グリル(弱)で34分加熱してみました(レシピでは32~34分)。

一般的なブラウニーの作り方です
焼き上がり後。よく焼けました
家族からも大好評。冷蔵庫で冷やすのがおすすめ

グリルプレートを入れてみると、高さはギリギリといった感じです。途中膨らみましたが、上のヒーターに当たるほどではありませんでした。よく膨らむシフォンケーキやスポンジケーキでは、やはり高さが足りなくなりそうです。

しっかり焼けていたので、粗熱をとってから冷蔵庫で冷やし、しっとりしたブラウニーを楽しみました。ふだんはオーブンで焼いていましが、グリルでもケーキが焼けることに感動しました。

省スペースでトースターと電子レンジ使いたい方に

トースターレンジの実売価格は46,540円です。オーブンレンジにもさまざまな価格帯がありますが、3万円程度でオーブンとグリル機能を搭載した製品も購入可能です。また、2万円ほど出せば、美味しく焼ける高級トースターも手に入ります。価格だけで判断すると、それほど「お得」ではないかもしれません。

仕上がりを重視する場合、スペースに余裕があればオーブンレンジとトースターを別々に設置したほうが、機能的にも優れているともいえます。しかし、スペースの問題があり、1台にまとめたい方には、トースターレンジが非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

「電子レンジ機能とトースター機能があれば十分」という方や、自動メニューなどをあまり使わない方、操作がシンプルで使いやすいトースターレンジを求めている方におすすめです。

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/