家電レビュー

オーブンレンジでトーストおいしく焼ける? 2人暮らしに象印がちょうど良かった

象印マホービンの「EVERINO(エブリノ) ES-KA18」。本体サイズは、459×426×333mm(幅×奥行き×高さ)。本体背面を壁にぴったり寄せて設置できるのも、小さいながら嬉しいポイントです

近年、進化の著しい家電分野のひとつ“オーブンレンジ”。筆者も、1台に様々な自動調理機能を搭載する高性能オーブンレンジには憧れてきました。

しかし、大きめサイズの製品が多いのと、逆に多機能すぎて、夫婦2人暮らしの我が家にはオーバースペックな気がして手が出せていません。結局、我が家のキッチンでは「単体オーブントースター+単機能電子レンジ」のスタイルで食材の温めや調理を行なっています。

……なんて言ってたら、「トーストも焼けておかずも作れる、少人数世帯用の小型オーブンレンジが出ましたよ」と、家電 Watch編集部からアツい情報が。象印マホービンの「EVERINO(エブリノ) ES-KA18」です。

スペックとしては、一般的な“1人暮らし用の単機能レンジ”に多い18Lサイズ。しかし詳細をよく見ると、そのコンパクトな本体に「レンジ機能」と「グリル機能」の両方を搭載していて、赤外線センサーによる自動加熱機能や、おかずの自動調理メニューも備えています。

店頭予想価格は70,000円前後とのことで、それなりのグレード。なるほど、少人数世帯向けのコンパクトな機能性オーブンレンジということですね……これ、我が家にドンピシャかもしれない!

というわけで、象印さんからこの「ES-KA18」をお借りして、筆者宅でリアルに1カ月使ってみました。先に結論的なことを言うと、現在の「単体オーブントースター+単機能電子レンジ」スタイルから、「ES-KA18」だけに変えるのもアリだな……とマジで思い始めています。それくらい、有能で使いやすい1台でした。

“日常的な使いやすさ”がウケたEVERINO、初の18Lサイズ

せっかくなので、製品の基本的なプロフィールからざっと見ていきましょう。そもそも、象印がオーブンレンジ市場に参入(正確に言うと再参入)したのは2022年。めちゃくちゃ最近です。

記念すべき市場参入第1弾の“EVERINO”シリーズ「ES-GT26」(と、その派生モデル「STAN. ES-SA26」)は、上級者向けのスチーム機能などは省略し、“日常的に使いやすい調理メニュー”を押し出しました。結果、最初の1年で一気に市場の評価を獲得。これにより象印は、オーブンレンジの主要4社として君臨してきたシャープ、東芝、パナソニック、日立に続く5番手のメーカーに躍り出たのです。

今回の「ES-KA18」も、この“日常的な使いやすさ”の流れを汲んだモデルです。普段から手軽に作れるレシピメニューを多く搭載。そして、従来の“EVERINO”がファミリー向けの26Lや23Lサイズだったのに対し、初めて18Lのコンパクトサイズとして登場しました。

端的に言うと、「ちょうど良い性能」と「コンパクト化」、我が家のニーズを2つ同時に突いてきたモデルです。いつの間に、私の気持ちが象印さんに届いていたんだろう……?

基本スペックをチェック! 新搭載の「パンレジ」機能とは?

オーブンレンジとしての基本スペックは、上述の通り18Lサイズで、ドアが縦開きのフラット庫内を採用。赤外線センサーと温度センサーを内蔵し、庫内上部に2本のヒーターを搭載しています。

フラットな庫内。上部に2本のヒーターを搭載
視認性が高く見やすいディスプレイ
本体の底面を引き出すと、自動調理メニューの番号が確認できるのがスマート
製品には、角皿(セラミック製)と焼きプレートが付属。こちらは後述するトーストや自動調理で使います。どちらも丸洗い可能

従来の“EVERINO”と共通の特徴的な機能は、レンジとグリルを自動で連携させることで、すばやい時短調理が叶う「芯までレジグリ」。また冷めた揚げ物をレンジですばやく中まで温め、グリルで表面を焼き上げる温め直しモード「サクレジ」や、赤外線センサーによって食材を設定温度に自動で温める機能も搭載しています。

“EVERINO”の代表的機能「レジグリ」。まずレンジ機能で食材の芯まですばやく熱を通し、その後は自動でグリル機能に切り替え、食材の表面にこんがり焼き色をつける。なおグリル→レンジの順番で自動加熱するモードに手動設定も可能
赤外線センサーが食材の温度を1秒ごとに検知し、スープやごはん、調理済みのおかずなど、おいしい温度に自動加熱してくれるモードも(自動メニューの調理・手動メニューの調理は除く)

そして「ES-KA18」だけの注目機能が、新搭載の「パンレジ」です。簡単に言うと、食パンを自動でおいしく焼くトースター機能。トーストだけでなく、パンのリベイクもできます。

調理モードはフロント左側のダイヤルで、簡単に切り替え可能。その中でも「パンレジ」だけ、専用のボタンが搭載されている。公式に推されてる感ある!

もちろんパン焼きやリベイクの機能自体は、以前から様々なオーブンレンジに搭載されているので、目新しいわけではないのですが……。「ES-KA18」がすごいのは、「トースターいらず」を謳っているところです。

つまり「トースターと同じくらい美味しいトーストが焼けるよ」という、クオリティ重視のアピール。スチーム機能は非搭載で、これを言い切るところに注目です。

……さて、本当にトースター並みにおいしくパンが焼けるのか? ずっと単体オーブントースターを使ってきた筆者には気になるところ。さっそく試していきましょう!

すごいぞ「パンレジ」

「パンレジ」でトーストする時は、角皿プレートの上に焼きプレートを乗せ、その上に食パンを置いて、庫内にセットします。1回に焼ける枚数は、最大2枚まで。

庫内底面から拡散されるマイクロ波による下火と、上面に搭載する2本のヒーターによる上火を自動で切り替えることで、パンの両面を焼き上げていく仕組みです。なので、途中でパンを裏返す必要はありません。

焼き上がり具合は、「弱/中/強」の3段階から選択可能。6枚切りの食パン1枚を、4分ほどで焼き上げてくれます。

角プレートの上に焼きプレートを乗せ、その中央に食パンを置いて、庫内の上段にセット。2枚焼く場合は、中央寄りに1.5cmほどのすき間をあけて並べる
【パンレジ】キーを押して、加熱スタートすればOK。このまま何もしなければ【仕上がり・中】で焼き上がる。仕上がりを変更したい場合は、加熱スタート後にすばやくダイヤルで【仕上がり・弱または強】を選択する
まず、焼きプレート裏面の発熱体(フェライト)がマイクロ波を吸収して高温になり、パンの裏面を焼く。続いて、上部のヒーターがパンの表面を焼く流れ

そして焼き上がったトーストは……。

【仕上がり・中】設定で焼いた状態。早速表面にサクサク感が!
裏面もちゃんとこんがり
食べるとわかるが、内部にモチモチ感が残っていて美味しい~

正直、トースト中から香ばしい匂いが漂ってきて、「これは勝った」と思いました。実際に焼き上がったトーストを食べてみると、見事に表面がサクサク、中身はフワフワかつもっちり感も残っており、もう大変美味しかったです。

確かに、約4分で焼けることも合わせて「トースターに準ずるクオリティ」と言っても過言ではないかも。少なくとも筆者的には、普段から食べるトーストとして十分に満足する出来栄えでした。長年、トースター市場で人気メーカーのひとつであり続ける象印の力が、しっかり生かされているのを実感。

なお、冷凍した食パン用のトーストモード【冷凍パンレジ】もあります。こちらは1枚を約4分40秒で焼き上げてくれるのですが、試してみたら、よりモチモチ感が強まる印象になって美味しかったです。

そして、パンのリベイクも文句なく優秀。クロワッサンやロールパンを温め直すと、加熱している約3~4分の間、キッチン中に甘いバターの香りが漂ってきてたまりません!

【パンレジ】キーを押した後、【あたためパンレジ】【仕上がり・弱】で加熱。ロールパンは、外の薄皮はサックリと優しく、中身はふ~んわり仕上がります

トースト用の「焼きプレート」は、料理にも活用できる

さて「ES-KA18」でトーストがおいしく焼けることを、心の底から実感した筆者。しかしまあ欲を言えば、トーストのためだけに「焼きプレート」という部品が1点多くなっているのは、いまいちスマートじゃないような……。

と思っていたら、このプレートはちゃんとグリル料理にも活用できることが発覚。そうですよね、むしろプレートが増えたら、その分できる料理の幅が広がるに決まってる。

ということで、「焼きプレート」を使ったグリルレシピ「お好み焼き」を作ってみました。材料の準備を終えて「ES-KA18」にセット。「グリル」で調理すれば、約20分で表も裏もおいしく焼き上げてくれます。

手順としては、プレートに豚バラ肉を敷き、そこにお好み焼きの生地を乗せるだけ。あとは庫内にセットし、切替ダイヤルを【グリル】に合わせ、設定ダイヤルで【グリル 下火・火力中・8分】→【上火・11~12分】を選択して焼く
表も裏もしっかり焼き上がっている
何もしないと不恰好な形だけど、ソースや鰹節を乗せたら見た目もバッチリ。中までふっくら火が通った美味しいお好み焼きができた

完成したお好み焼きを食卓に出したら、夫から「これがオーブンレンジで作れるの?」と感動の声をもらいました。おいしくてあっという間に平らげ、すぐに2回目も焼きました。

ちなみにプレートに油を引かなくて良いのが地味に楽でした。こういう小さなポイントが、“普段使い”には大事なのです。

そのほか、「焼きプレート」を使用してグリル調理したらシンプルに美味しかったのが、冷蔵ピザや厚揚げなどの食材。ただ焼くだけなのですが、外側がカリっと、しかし焦げ付かずちょうど良く仕上がるのが◎。

厚揚げは約15分半かけてじっくり焼き上げるためちょっと時間がかかるが、外がカリカリ、中身もムラなく均一に温まってめちゃめちゃ美味しかった
冷蔵ピザは約7分でこんがり。トーストもそうだったが、生地の中がモチモチに焼き上がる印象

時短メニュー「チャチャッと」が便利! 豚肉となすの甘辛煮を作ってみた

「ES-KA18」は、今どきの高機能オーブンレンジが対応する「時短系のレシピ」もしっかり搭載しています。【レンジ】設定の自動調理メニュー【9:チャチャッと】です。この「チャチャッと」を使い、約10分間の加熱で完成するおかずの例として、「豚肉となすの甘辛煮」を作ってみました。

手順としては、耐熱容器(直径約25cmの耐熱ガラス製ボウル推奨)に、醤油・酒・みりん・しょうが・ごま油・鶏がらスープの素・砂糖を入れて混ぜ、そこに切ったなすと豚バラ肉を入れて混ぜ込んだら、あとはふんわりラップをして「ES-KA18」で加熱するだけです。

【レンジ】の設定で、【自動】【9:チャチャッと】を選択し、【仕上がり・強】に合わせて加熱スタート
オーブンレンジで10分加熱しただけとは思えぬ出来栄え。なすが綺麗な紫色のまま仕上がるのが嬉しい

爆発的にご飯が進む甘辛味で、ちゃんと豚肉にもなすにも味が染みていて美味しい! この、普通のおかずが時短で作れる“普段使い”な感じ、ちょうど良いですね。

なおこれ、公式レシピにある「豚となすの中華風」をベースに、筆者がアレンジしたレシピです。元はオイスターソースを使うのですが、わたくし牡蠣アレルギーで……。なので、オイスターソースの代わりに砂糖と鶏がらスープの素を入れて、甘辛に仕上げました。

つまり「ES-KA18」は、公式レシピにちょっとしたアレンジを加える余白もあるんです。ただレンジとグリルの自動切り替えによって簡単&時短を叶えるだけでなく、“レシピ”という料理の本質的な部分で、多少の使いこなしがいもあるのが良いですね。

なお、26Lサイズの上位モデル「ES-GW26」には、付属ボウルを使ったおかず調理機能「うきレジ」がありますが、「ES-KA18」は対応していませんのでご注意を。しかし「うきレジ」がなくとも、「チャチャッと」の時短メニューで十分に使いがいがありました。

夫婦2人暮らしには色々“ちょうど良い”

そんなわけで「ES-KA18」を使ってきましたが、40代夫婦の2人暮らしには色々とちょうど良いオーブンレンジでした。特にトースター機能「パンレジ」がちゃんと優秀だったのが素晴らしい。実際、我が家で最も活躍した機能がこの「パンレジ」です。トーストはもちろん、パンのリベイクも良くて何度も使いました。

冒頭でお伝えした通り、現在の我が家は「単体オーブントースター+単機能電子レンジ」スタイル。「ES-KA18」を導入したら、この1台に置き換えられるので、省スペースにもなってめちゃくちゃ良いんですよね。割と本気で「ES-KA18」への置き換えを迷っています。

大前提として18Lサイズで、一度に焼けるパンの枚数も2枚までなので、3人以上の世帯には不向きな製品でしょうが、我が家のような2人暮らし環境・DINKS世帯の方にはぜひ注目していただきたい逸品です。

杉浦みな子

オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀……と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハーです。