家電ラボの徹底「本音」レビュー

一番高いルンバと安いルンバ、なにが違う? 徹底検証

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
左が「Roomba Max 705 Combo ロボット + AutoWash 充電ステーション」、右が「Roomba 105 Combo ロボット」

アイロボットから、水拭き対応のロボット掃除機の最上位モデル「Roomba Max 705 Combo ロボット + AutoWash 充電ステーション」(以下、705)が登場しました。アイロボットとしては初めてローラーモップを採用したモデルで、価格は179,800円。ラインナップはこれで全7種類となりました。

一方、もっとも手ごろな「Roomba 105 Combo ロボット」(以下、105)も水拭きが可能ですが、価格は39,400円。つまり、705は105の4倍以上の価格になります。価格差ほどの違いがあるのか、気になりますよね。そこで今回は、一番高いルンバと一番安いルンバを比べてみました。

どちらもゴミの吸引、水拭き掃除はできるが、性能は大きく異なる

どちらにも共通しているのは、吸引掃除と水拭き掃除ができること。ただし、それぞれの清掃方法や機能は大きく異なります。

左が705、右が105。705は木目調のプレートが使われたラグジュアリーなデザインもポイント。高級感があり、部屋にも馴染みます。105は充電ステーションがないため圧迫感がなく、スッキリしています

705には、充電ステーションにゴミ回収機能が搭載されています。掃除が終わると、ロボット掃除機内部に溜まったゴミを自動で回収し、充電ステーション内のダストバッグに溜めておけます。最大で約75日間、ゴミ捨て不要です。

一番左にダストバッグ、右に汚水タンクと水タンク
引っ張ってポイッと捨てるだけ。とてもラクです

一方、105は従来通り、ロボット掃除機本体のダストボックスにゴミを溜める方式。そのため、こまめにゴミを捨てる必要があります。

掃除を始める前に、まずアイロボットのアプリをインストールして部屋のマッピングを行ないます。マッピング精度も705のほうが優れており、AIによって家具の位置まで細かく表示されます。向きは少し異なりましたが(後から直せます)、ソファやテーブルの位置も正確に認識されていました。

705では、マップに家具の位置まで表示されている
105では家具は表示されない。マップもシンプル
大きくて重いのは705(左)。女性は片手で持つのも大変です

吸引(掃除機がけ)

705は、アイロボット独自の「ゴム製デュアルアクションブラシ」を採用しています。柔軟性のあるゴムでカーペットや硬い床に密着しやすく、効率的にゴミをかき取ることができます。上位モデルに搭載されるこのブラシは、髪の毛が絡みにくいのも特徴です。

一方、105は「毛とゴムのシングルアクションブラシ」を1本だけ搭載しています。毛があるためフローリングの溝に入り込んだゴミを取ることはできますが、705のように2本のブラシで効率よく掃除することはできません。そのため、清掃力は劣ります。

左が705、右が105。ブラシの形状が全く異なります

水拭きモップ

705はルンバで初めて「PowerSpin ローラーモップ with PerfectEdge」を搭載したオールインワンタイプのロボット掃除機です。ルンバ初の温水拭き機能を備え、伸縮するローラーモップが壁際まで自動で伸びるため、隅までしっかり水拭きできます。さらに、掃除中に本体でモップを常時洗浄するので、清潔な状態で使い続けられます。

ローラーモップを搭載
幅が広いので、広範囲を一気に拭き取れます

一方、105は水タンクと着脱式のマイクロファイバーモップパッドで水拭きを行ないます。吸引掃除のみの場合はモップパッドを外し、水拭きする際に取り付けて使用します。吸引のみ、水拭きのみ、吸引+水拭きが選べますが、705のようにモップを自動で洗浄・乾燥する機能はないため、掃除のたびに手で洗います。

105のモップパッド
外すことで吸引のみの掃除となります。装着したままでは吸引のみのモードは使えません

目に見えない「ざらつき」まで取りきってくれる705

アプリは705と105で共通なので、マップ作成の手順は同じ。ただし、705は高機能なためアプリのメニューが多く、「スマート清掃」があります。これはAIやセンサーを使って効率的に掃除する仕組みで、無駄なく掃除できます。

スマート清掃があるのは705(左)の特徴。105(右)にはありません

どちらも部屋の隅々までまわり、コーナーはしっかり掃除できます。12畳+6畳のスペースでは、705のスマート清掃で21分、105の標準的な清掃で19分でした。

試しに砂やペットのトイレ砂を落としておきましたが、吸引+水拭きできれいになりました。細い脚のサイドテーブル下も、705は脚を検知してスムーズに掃除。105は少しぶつかりながらもゴミを取り除きます。

砂とペット用トイレ砂を置いておきました
705で掃除した後
105で掃除した後
サイドテーブルの下にも同じように多めの砂とペット用トイレ砂
705で掃除した後
105で掃除した後

705の水拭きローラーモップは状況に応じて飛び出したり引っ込んだりします。壁際に近づくと自動でローラーモップが伸びて、キワまで拭き掃除が可能です。コーナーの仕上がりは肉眼や写真で見ると大きな差はありませんでしたが、105は一見きれいに見えても、ざらつきが少し残ることがありました。

705は壁際も、ローラーモップが飛び出てしっかり掃除していました

105は水拭きの際、自動でカーペットを検知し、カーペットの上には移動しません。そのため、カーペットを汚したり濡らしたりする心配はありませんが、掃除はしないので「そのまま」になります。後からモップパッドを外すことでカーペットも吸引掃除ができますが、ロボット掃除機だけで全てを完了させるには、2度掃除する必要があります。カーペットのあるご家庭で、フローリングもカーペットもロボット掃除機におまかせしたい場合は、少し手間に感じるかもしれません。

105はカーペットを認識し、上にのぼることはありませんでした。少し引きずってしまいましたが、これは賢い!

一方、705には床面を検知してカーペットを保護する業界初のカバー機構があります。カーペットにのぼるとローラーモップが止まってカバーがかかり、吸引力が上がる仕組みです。こちらも、正確に認識して動作していました。

ただ、前方のセンサーがフローリングに着地したと判断すると、後ろのローラーモップが動き始めてカーペットをこすってしまうことがありました。フローリングを検知した後に、1秒ほど待ってからローラーモップを回転させてほしいところです。

705はカーペット上で、ローラーモップが停止していることがわかります

こぼした醤油をすっきりキレイにしてくれる705と、拭き取りが甘い105

広い範囲に醤油をたらして、水拭き性能をチェックしてみました。705は、一度通るだけでもキレイに拭き取り、筋も残りません。モップを洗浄しながら掃除を続ける705は、液体汚れも得意です。

一方の105は、醤油の跡が筋状に残っており、汚れを拭くというよりも、全体的に広げている印象。一般的にこの量をこぼすこともないので仕方ないのかもしれませんが、明らかに違いがありました。

しっかり掃除したいなら、本体を前後しながら水拭きする「スマートスクラブ」に設定するとよさそうですが、705のようにモップを洗いながら拭き掃除をするわけではありません。そのため、ひどい液体汚れを拭き取るという掃除に関しては、効果は限定的になりそうです。

広範囲に醤油をたらしてみました
705は拭き筋が一切残りませんでした
105は醤油の跡が筋状に残っている
705は一度通るだけで拭き取れます
105は筋状に跡が残ってしまいました

水拭き終了後に、醤油をたらした場所をキッチンペーパーで拭き取ってると、705はキッチンペーパーに何もつきませんでしたが、105は醤油がしっかりついてしまいました。

キッチンペーパーで拭いてみました
705が掃除した後はキッチンペーパーは汚れず
105は汚れがついてしまいました。砂なども混じっています

障害物の回避能力にも明らかな差

床にスリッパや細いコードを置いて動かしてみたところ、705はこれらをしっかり認識して回避しながら掃除を行ないました。細いコードは他のロボット掃除機だと巻き込んでしまうことが多いですが、705は問題なく避けることができます。

705は障害物を見分けてきちんと避けます

一方、105はスリッパを押しながら移動し、細いコードも巻き込んでしまいました。障害物の認識能力には大きな差がありそうです。ただし、105も薄いカーペットはきちんと認識し、水拭きの際にはのぼらなかったので、その点では安心して使えます。

105は何事もなかったかのようにコードを巻き込み、スリッパを遠くへ運んでいきました……

705はお手入れがカンタン

お手入れに関しては、705は吸い込んだゴミを充電ステーションのダストバッグにまとめておけるので、毎回ゴミを捨てる必要がなく、とてもラクでした。105はロボット掃除機のダストボックスに溜まったゴミを、こまめ捨てる必要があります。

105のゴミ捨て頻度は高い

705のデュアルアクションブラシには、髪の毛は一切からまっていません。ただ、外してみると、軸の部分にからんでいました。外からは見えにくい場所なので、数回に1度はチェックしたほうがよさそうです。ローラーモップにも、髪の毛が少しついていました。デュアルアクションブラシを外した本体部分は砂やホコリが少々ある状態でしたが、構造がシンプルなので、すぐにお手入れも終わりました。

外してみると、軸の部分に髪の毛が……
ローラーモップもすぐに外せる。ここにも髪の毛がからまっていたので、定期的に外してチェックしたほうがよさそう
デュアルアクションブラシを外したところは比較的キレイな状態

105のブラシには全体的に髪の毛がからんでおり、本体部分も汚れていました。水拭きができるゆえに、濡れたホコリや砂が本体に入り込み、貼り付いていました。構造が複雑なので、取るのもなかなか大変です。

髪の毛はかなりからまった状態
ここの掃除が一番厄介でした。構造が複雑です
モップパッドを洗うのは、そんなに大変ではありませんでした

サイドブラシは、どちらも髪の毛がからんでいました。大量にからんで動かなくなると故障の原因にもなるので、このあたりも掃除後にチェックする必要がありそうです。

705のサイドブラシ
105のサイドブラシ。どちらも髪の毛がからまっていました

しっかり汚れを取りたいのなら、やはり上位モデルのほうが優秀

ひと通りテストを終えて全体を見ると、どちらも一見キレイになっています。しかし、裸足で歩くとザラつきやベタつきの差は明らか。砂や液体汚れで試しましたが、705で掃除した後はサラサラの状態で、裸足でも気持ちよく過ごせました。

今回はゴミが多めで、液体汚れも広範囲だったということもあり、105では全体的にザラザラ・ベタベタ感が残り、最後に705で掃除をし直すほどでした。ただ、運転音は705のほうが大きいです。

赤ちゃんがいたり、ペットを飼っていたり、介護で汚れやすい家庭では、やはり上位モデルの705がおすすめです。逆に、1~2人の少人数世帯であまり汚れない家庭であれば、105でも十分対応できる印象でした。

どちらも吸引+水拭きが可能ですが、構造や機能が異なるため、掃除の仕上がりにも差がありました。価格差も大きいので悩むところですが、ロボット掃除機は長く使うもの。後悔のないよう、ライフスタイルに合ったモデルを選びたいですね。

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」を開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/