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小型低速EVは社会をどう変える? ヤマハのコンセプトモデルでワクワクする未来を想像した

EV(Electric Vehicle)と聞くと、乗用車サイズの電気自動車をイメージすることが多いかもしれませんが、もっと小型で気軽に乗れるモビリティが登場することも期待されています。ヤマハは、「東京オートサロン2024」に小型低速EVの汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」と、そのプラットフォームを用いた7種類のコンセプトモデルを出展していました。どんな使い方ができて、社会をどう変えるのか? を探ります。

電源にはホンダ製のバッテリーを活用

モーターサイクルメーカーとして知られるヤマハ発動機ですが、e-bikeや4輪バギー、モーターボートなども製造・販売しているモビリティメーカーでもあります。「トヨタ2000GT」やレクサスの「LFA」などのエンジンを手がけていたり、4輪とも縁の深いメーカー。昨年の「ジャパンモビリティショー2023」では、3輪EVの「TRICERA」水素エンジンを搭載した4輪バギー「YXZ1000R」を出展したことでも話題となりました。

ヤマハが「ジャパンモビリティショー2023」に出展した3輪パッケージのフルオープンEVのコンセプトモデル「TRICERA」

東京オートサロンには今回が初出展ですが、ユニークな乗り物が並ぶブースには多くの人が集まっていました。出展されていた「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」は1~2人乗りの低速パーソナルモビリティでの活用を想定した研究開発中のモデル。動力は電気で、バッテリーはホンダ製の「Honda Mobile Power Pack e:」を採用し、車体サイズや航続距離などに応じて搭載数を変えることも想定しているようです。

こちらが「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」。車体を複数連結する使い方もできるとのこと
バッテリーの「Honda Mobile Power Pack e:」はホンダが製造していますが、ヤマハ、スズキ、カワサキなど他の国内メーカーとも共通規格として採用されます

オートバイ・e-bike乗り的にグッと来るのは……

出展されたコンセプトモデルは7種類。かなりバリエーションに富んでいて、形状や活躍しそうなシーンも様々です。それぞれのコンセプトモデルには“共創”パートナーがいて、こうしたパートナーとともに、活用シーンなどコンセプトを考えたのだとか。そんな中で、オートバイ乗りでもある筆者が、一番グッときたのは「Concept 682」と名付けられたモデル。4輪ですが、オートバイのように車体にまたがるホースライド型となっているのが特徴です。

「Concept 682」は電動の4輪駆動で、カラーリングもヤマハが海外のレースで活躍した際のモデルを思わせるパターンになっています
ハンドルまわりの造形もバイクに近いもの。乗る楽しさや所有する喜びを味わえることがコンセプト
足を置くステップは、リアサスペンションの近くに配置されています。モジュラー構造になっていてカスタムも楽しめるとのこと

ヤマハは世界で初めて電動アシスト自転車を市販したメーカーで、e-bikeブランドとしても評価が高いのですが、そのノウハウが感じられるモデルも展示されていました。前が2輪になっているカーゴバイクのようなスタイル。ヤマハはLMW(Leaning Multi Wheel)と呼ばれる車体を傾けて曲がる3輪以上の乗り物を製品化していますが、こちらも3輪ですが車体を傾けて曲がる構造です。

「Concept 294」というe-bikeのようなモデル。共創パートナーにはソニーグループの名前も挙げられていました
大きめの木製のカーゴボックスが装備されていました。荷物を運べるカーゴバイクは、e-bikeとしての可能性を大きく広げてくれそう
フロント2輪にそれぞれモーターが組み込まれていて、なおかつLMWのような傾ける機構が組み込まれています
リアホイールにもモーターを搭載。サスペンション機構も装備されています。バッテリーはもちろんホンダ製

北欧の家具を思わせるデザインは、ぜひこのまま製品化してほしいと思えるもの。近未来的都市型3輪パーソナル電動モビリティというコンセプトですが、こういう乗り物が走るようになれば都市の風景も変わりそう。買い物に行くのに大きなクルマを動かす必要がなくなるので、渋滞の解消や環境的にも良い影響が期待できます。

4輪の乗り物の可能性も広げる

4輪のパーソナルモビリティも。電動車椅子的なサイズ感から、屋根付きの小型車のようなモデルまでバリエーション豊か。現状のカテゴリーでは、原付ミニカーや国交省の進める超小型モビリティなどがありますが、どのカテゴリーにするかも含めてニーズや反応などを見極めていきたいとのことでした。

「Concept 350」はリゾート向け1人乗り電動モビリティという位置付け。シニアカーのようなサイズ感ですが、ヤマハらしく風を切る爽快感が味わえ、十分な積載スペースが確保されているので使い勝手も良さそうです。

ゴルフバッグなども積めるので、リゾート施設内での自由な移動を実現。共創パートナーにはリゾート会社が入っていました

オフロードビークルのようなデザインの「Concept 451」は、農地や山間地での作業をより軽快で楽しくすることがコンセプト。4輪バギーを手がける同社らしく、作業車にも走る楽しさを演出しています。パワフルな動力性能を持ち、不整地での牽引作業などもできるとのこと。

オフロードでの走破性が高そうな「Concept 451」。農道の足としては軽トラが普及していますが、こういうモデルがあったら事が足りそうですね
屋根も装備されていて、上にはドローンが積まれていました。バッテリーを載せているので充電などにも活用できます

「Concept 310」はマリンレジャー用途の2人乗り電動ユーティリティモビリティ。フィッシングボートを搭載するトレーラーの牽引ができます。モーターは車軸やデフの部分と一体化したe-Axleを採用していて、高電費を実現しているとのこと。

軽トラより少し小さいサイズで積載性を確保しつつ、スポーティなシートが装着されていて走りも楽しめる
バッテリーはもちろん「Honda Mobile Power Pack e:」。荷台にはマリンスポーツ用品なども積載可能

電動4輪バギーのようなルックスの「Concept 580」は多様な路面環境での走破性だけでなく、敏捷性も確保しているとのこと。軽量・コンパクトな設計で電費も優れています。ロールバーも装備されていて、オフロードで遊んだら楽しそう。

砂地などで高いグリップを発揮するバルーンタイヤを履いた「Concept 580」。ビーチなどでも走破性を発揮しそう
ハンドルなどの操作系は普通のクルマと同じ。ナンバープレートのホルダーも装備されていますが、どのカテゴリーとなるかは未定

ボックスのようなキャビンを装備した「Concept 160」はミニマムサイズ の1人乗りオフロード電動モビリティ。車体の中央部を横切るようにLEDのストライプが配置されていて、テールランプやウインカー以外にも様々な機能を持たせられるとか。こういう乗り物が連なって走っている社会になったらワクワクさせられそう。

パーソナルな空間ごと移動できるようなユニークな乗り物。オフロードも走行できますが、都会も似合いそう

"小さなEVを、社会を変える力に。"というテーマのもと、様々な形のプロトタイプモデルを展示していたヤマハブース。想定される使い方も様々ですが、そうしたパーソナルなニーズに合わせやすいのもEVのメリットだといえます。こういうユニークな乗り物が走り回る社会はおもしろいものになりそうでワクワクします。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。