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あの格之進が「ハンバーグ焼き器」を作った!? 肉おじさんとライソン社長に理由を聞いた
2022年10月14日 08:05
熟成肉のステーキや焼き肉が楽しめる「格之進」。そのクオリティを手軽に楽しめる、格之進の冷凍ハンバーグが人気だ。
そして今年、格之進の冷凍ハンバーグをより美味しく焼くために開発した「ハンバーグ焼き器」がMakuakeの応援購入に登場。目標の578%となる289万円の支援を集めて成功を収めた。この「ハンバーグ焼き器」の一般販売がいよいよスタート。大手雑貨店や家電量販店での販売が順次始まっている。
肉の販売や外食事業などを展開する格之進がなぜ「ハンバーグ焼き器」を作ったのか? 格之進を運営する門崎の代表であり「熟成肉の伝道師」「肉おじさん」として活動する千葉祐士さんと、共同開発を行なったライソンの山 俊介代表取締役に、開発の経緯や、ハンバーグ焼き器で目指したことについて話を聞くとともに、実際にハンバーグを焼いて食べてみた。
きっかけはメガたこ焼き器でハンバーグを焼いたこと?
一般販売がスタートした「ハンバーグ焼き器」開発のきっかけとなったのが、千葉さんのハンバーグへのこだわりだった。格之進では様々なレシピの冷凍ハンバーグを用意しており、お店で食べるようなレベルのハンバーグを自宅で手軽に楽しめる。しかし、千葉さんが納得できていなかったのは「焼き」だった。
「前から、ハンバーグ自体はものすごく進化しているのに、焼き方が変わってないなって考えていました。昔は端切れになったお肉を集めてハンバーグを作っていたので、衛生面を考えてしっかり加熱する必要がありました。俵型に成形して真ん中を凹ませて、最後はフタをして蒸し焼きにして完全加熱していたのはそのためです。しかし、今は肉の衛生管理も進んで、端切れを使うことも減っています。ならば肉汁を閉じ込めて噛んだときにあふれるようなジューシーなハンバーグの焼き方を実現したいと考えていました」(千葉さん)
肉汁をしっかり閉じ込めて、それ自体をソースのように味わえるハンバーグで重要なのが焼き方だ。通常、ハンバーグは小判型に成形して裏表を焼く。しかし、この焼き方では側面から肉汁が漏れてしまったり、場所によって焼きムラができやすい。そこで千葉さんは側面を焼いたり、ハンバーグを立方体にして六面焼いたり、さらに角を焼くことで14面焼きまで、様々な形状を試したという。
さらにいい方法はないかと考えていたなかで、出会ったのが「メガたこ焼き器」(ピーナッツクラブ)だった。
「2020年の4月頃に、知人から『これを改良したらいいんじゃない?』ってこのたこ焼き器を教えてもらったんですよ。早速、買いまして。ハンバーグを球体のまま焼く研究を進めました。ハンバーグを美味しく焼くにはとにかく肉汁が溢れなくすること。そのためには球体が一番肉汁を留められます。これを改良すればいける、ということで、すぐにメーカーに連絡を取りました」(千葉さん)
金型を始めゼロからの開発がスタート
この千葉さんからの連絡を受けたのが、ライソンの山さんだ。「メガたこ焼き器」は親会社であるピーナッツクラブが販売している製品だが、現在は家電の企画販売を子会社であるライソンが担当している。そこで、千葉さんと山さんによる「ハンバーグ焼き器」の開発がスタートした。
「正直、最初はどうしよう? と思いました。すでに製造も終了していましたし、外部からの『こういう商品を作ってくれ』というお話にあまり対応していませんでした。ただ、面白そうだなという思いもあり、悩んだんですがやってみることにしました」(山さん)
最初は半年ぐらいでできると考えていた山さんだが、テストを進めていくと、いろいろな課題が出てきたという。その一つがフタだ。たこ焼き器にはフタがなく、当初はそれでもできると考えていたが、ハンバーグの中までしっかり加熱するために、フタをつけることにした。
「開発を進める中で、焼き方によってハンバーグの中が生になってしまう可能性があるのは問題だと考えました。うちのハンバーグは衛生管理をしっかりしていますし、肉の鮮度もいいので、レアでも問題はないのですが、嫌がる人もいます。また、『ハンバーグ焼き器』はうちのハンバーグが美味しく焼けるように開発していますが、専用ではありません。なので、完全加熱を確実にするために、フタを用意して、蒸らし工程を入れられるようにしました」(千葉さん)
こだわりの「絶品球体ハンバーグ」が簡単に焼ける
そして、開発がスタートしてから約2年が経った22年9月。球体ハンバーグが焼ける「ハンバーグ焼き器」はMakuakeでの販売を経て一般販売がスタートした。
「当初はちょっと改良するぐらいで……と思っていましたが、メガたこ焼き器はプレートが本体に固定されている構造なので、プレートが水洗いできませんでした。肉を焼くのに拭くだけなのは問題です。フタや、そういう構造を見直す必要があり、金型も新たに起こして、ゼロからの開発になりました。しかも、コロナで深センがロックダウンしていたのも、開発に時間がかかった理由の一つです」(ライソン 山さん)
実際に「ハンバーグ焼き器」で格之進の「薫格ハンバーグ」を焼いてみた。焼き方はいくつかある。基本は120gのハンバーグ1つを丸めて焼く方法だ。ハンバーグ2つを1つの球体にすることで240g、直径約8cmの巨大ハンバーグも焼ける。さらにハンバーグの中にチーズなどを入れて焼くこともできる。
丸めたハンバーグをプレートにのせたらHIGHモードで約3分半、フタをして蒸し焼き、更にひっくり返して3分蒸し焼きにする。あとはMIDに切り替えて、90度ずつ回転させながら2分ずつ、3~4カ所に焼き目を付けていく。トータル12~15分ぐらいの焼き時間で完成だ(240gの場合は20分ほど)。
球面焼きした薫格ハンバーグは、お箸で割っただけで肉汁が溢れてきた。さらに千葉さんが言う通り、ソースなどがなくても、特製塩麹の下味と肉汁だけで十分な味がついていて最高のハンバーグが堪能できた。
また、スーパーなどで売っている市販の生ハンバーグ種でも球面焼きはできた。肉質やつなぎなどの味付けにもよるが、これもきれいに焼けた。ただし、リファレンスでもある格之進のハンバーグに味の面では叶わなかったので、ソースなどを用意して食べた。
ハンバーグのサブスクやセット販売も視野
Makuakeでの販売では、冷凍ハンバーグが定期的に届くサブスクリプションプランも用意されていた。今後もハンバーグとセットで販売したり、定期購入できるプランを検討していきたいという。
「家電は売ってしまうと終わりですが、どうやって継続的に楽しんでもらうか。ソフトの部分でどうやって売っていくのか、お客様へアプローチしていくことが大切だと考えています」(千葉さん)
「ただ家電を作って売るだけではなく、ハンバーグを組み合わせて定期的に販売していくビジネスのアイディアなども面白いなと考えました」(山さん)
メインはハンバーグ焼き器ではあるが、付属のレシピブックにはアヒージョやチーズフォンデュなど様々なメニューを掲載しており、ハンバーグ以外にも使えるようになっている。とはいえ、格之進のハンバーグが絶品なのは間違いない。定期的に開催される、冷凍ハンバーグのセールを今か今かと待ち、たっぷり買い占めたくなるほどだ。
格之進の千葉さんはこの球面焼きのハンバーグのことを「ハンバーグイノベーション4.0」と呼んでいる(両面焼きが1.0、サイコロ状の6面焼きが2.0、角も焼く14面焼きが3.0)。実際に食べる前はそんな大げさな……とも思ったが、食べてみるとその意味はわかる。肉汁があふれる球面焼きが、これまでのハンバーグと異なることは間違いない。