トピック

e-bike購入に向けて不安だらけの初心者が初めての試乗へ

この数年のe-bike市場の盛り上がりで、スポーツバイクとは無縁だった人たちがe-bikeに非常に興味を持っています。前回はe-bikeが欲しいけれど不安もたっぷり……な初心者の伊藤さんが「バイクプラス所沢店」を訪問。店長の宮﨑 早香さんに後悔しないe-bikeの選び方や購入時のお店の選び方のポイントなどを教えてもらいました。今回は、気になる防犯対策やバッテリーを長保ちさせるコツなどを学んで、遂に街乗りでe-bikeの魅力を体感します。

e-MTBの正しい乗り方をレクチャー

いよいよe-MTBでも人気モデルのトレック「Rail 9.7」を体験することに。前回も試乗ポイントなどはご紹介しましたが、自分の体格に合ったフィッティングを行なってもらえることもプロショップの魅力のひとつ。正しい姿勢で乗れないと、せっかくのスポーツバイクの高性能を引き出せず、疲れやすく感じてしまう可能性もあります。

自転車好きが高じてバイクプラスで働き始めて10年以上、3年前のオープンから所沢店で店長を務める宮﨑さん

「かかとをペダルに載せ、一番下にきた時に脚が伸び切るくらいがサドルのちょうどいい高さになります。停車時は地面に足がつかなくなるので、サドルの上ではなくトップチューブの上に跨るようにし、立ち漕ぎしながら座るようにするのがコツです」とアドバイス。

トレック「Rail 9.7」もそうですが、最近のMTB(マウンテンバイク)にはハンドルを握ったままでサドルの高さを調整できるドロッパーシートポストを搭載するモデルが多いです。トレイルを走る時に非常に便利ですが、街乗りでの快適さもアップします
伊藤さんの体格に合わせたサドル高を調整

e-bikeデビューに必要なアイテムとは?

e-bikeを楽しむためには、車体だけでなくいろいろアイテムが必要になります。まずは頭を守るヘルメット。最近はヘルメット内側の機構が動くことで頭の位置や衝撃が加わる方向を調整し、脳震盪や事故後の障害リスクを低減させる効果を高めたMIPS(ミップス)と呼ばれる低摩擦レイヤーを使用したタイプが増えています。

「ロードバイク用のヘルメットでは空気抵抗が少なく、熱がこもらないつくり。一方で後頭部を深く覆ってガードできるものはMTBの用途です。バイザー付きのものは、目に雨や虫、泥が直接入るのをガードしてくれるため、街乗りでもオススメです」

今回は街乗りメインでの遊び方を予定している伊藤さんですが、せっかくなのでe-MTBスタイルも体験したいとのことで、MTB向けのヘルメットをチョイス。

ボントレガーのMTB用ヘルメット「Rally WaveCel(ラリー ウェーブセル)」

また、スポーツバイク自体を初めて購入する人はスポーツ自転車用の空気入れは必須。フレンチバルブというシティサイクルとは違う形状のバルブなので注意が必要です。日頃から適切な空気圧にすることでパンクのリスクも軽減されます。

「マウンテンバイクの場合、タイヤが太いので一度にたくさん空気が入れられるものがラク。携帯用のパンク修理セットや空気入れ、替えのチューブなどもお守りがわりにあると安心です」

ライトは前方の路面状況を見るためだけでなく、遠くのクルマなどからも自分の存在を知ってもらうためのアイテムなので、前後に1灯ずつ必ずつけましょう。

「ライトのバッテリーは充電式が多く、価格が高いほどバッテリー容量が大きかったり、ライトが小型で明るかったりします。また、e-bikeのバッテリーから給電できるタイプのライトであれば、ライトの充電の手間が省けます」

伊藤さんも気にしていましたが、高級自転車ゆえに盗難を懸念する人も多いでしょう。防犯対策についても宮﨑さんに伺ってみました。

「実際に盗難被害にあったと相談をしにくるお客様は年間、数名程度です。エリアにもよるとは思いますが、こまめに鍵を正しくかけるという基本的なことをしっかり実践すれば、過度に怖がりすぎる必要はないと思います。ポイントは 自宅や駐輪場に柵など地面に固定されたものがあれば、それを巻き込んだ“地球ロック”がオススメです」

e-MTBは未舗装路を走るための幅が広いタイヤが標準装備されていることが多く、通常のレール式の自転車ラックには入らない可能性があることも理解しておきましょう。

「同じ時間帯・場所に長時間駐車していると狙われやすいので、街中では長時間駐輪しないようにしましょう」

また、一般的なMTBに搭載されているハンドル幅は60cmを超えることが多く、歩道を走行できません。そのため、街乗りが多い人はハンドルを短く加工するか、走行ルートを見直すと良いともアドバイスを受けました。

カスタマイズする楽しさも

車体のカラーに合わせたベル、オフロードを走る際にサスペンション部分を泥などから保護する役目があるフェンダー、グローブも一緒に購入するといいでしょう。用途に応じてキックスタンドもあると便利です。最初に揃えるべきアイテムとしては、予算感としては車体代と別に4万円前後は見込んでおくといいでしょう。自転車保険の加入もお忘れなく。

また、荷物の積載については「スポーツバイクでもカゴをつけて荷物を積載させられますが、ハンドルが取られやすくなります。背負ったり、リアキャリアをつけたりするほうがいいですね」とのアドバイスも。

今回のトレック「Rail 9.7」でカラーカスタムを意識したアイテム例。伊藤さんも興味津々でした

どんな趣味にも"沼”は存在しますが、それは自転車でも同じ。e-bikeも幅広いカスタマイズを楽しめて、一気に愛着が湧きます。自分だけの1台を持てるのは、スポーツバイクの部品/規格をベースとしているからこその魅力でしょう。

「自分好みの1台にするなら、大胆に印象を変えられる大きいパーツの色を変えるのがオススメ」と宮﨑さん

我々e-bike部メンバーも完全にe-bikeの楽しさにハマっていますが、楽しみ方は人それぞれです。街乗りをはじめ、自分の趣味と組み合わせたり、e-bikeなら楽しさや遊び方の幅が広がります。ますますe-bikeへの関心が高まっている伊藤さんですが、もうひとつ気になっていることがあるそうです。それが「バッテリーの寿命」。どれくらい持つのか宮﨑さんに尋ねていました。

「6〜7年のサイクルでの買い換えが目安でしょうか。スマホと同様のリチウムイオン電池なので、1回の充電で走れる距離が徐々に短くなって買い換えるイメージです。バッテリー代は約7万円とそれなりの金額になります。長持ちさせるポイントは、満充電の状態にあまりしないことと、高温の状態で放置しないこと。夏場はバッテリーだけ涼しい室内に入れるといいですね。自動車と同じで、定期的なメンテナンスや細かな消耗部品の交換を行ないながら大切に扱うことで、末永く使用できます」

カスタマイズしたトレック「Rail 9.7」。グリップ、ペダル、フェンダーのカラーを水色に合わせたオシャレな仕上がりに

初めてのe-bike体験。その感想は?

5月某日、伊藤さんはトレック「Rail 9.7」で上野からお台場まで片道約12キロのサイクリングへと出かけたそうです。その感想を伺ってみました。

e-bikeとはいえ、いきなり10km以上走れるのか心配だったそうですが……

「まず印象的だったのは、街乗りの宿命といえる信号待ちからの発進のラクさ。台東区や中央区は坂道の少ない街ですが、ちょっとした路面の盛り上がりや段差、信号などが多く地味に疲れます。でも、e-bikeは漕ぎ出してからスピードに乗るまでの負担感がまったく違うのに驚きました。車道を順調に走行している感覚も快適で軽い漕ぎ心地でスッとスピードが出るところは、スポーツバイクならではの特徴なのかと実感しました」

勝鬨橋や豊洲大橋といった勾配の大きな橋も体験したそうです。

「向かい風も強く自転車にはツラいシチュエーションでしたが、電動アシストの力が加わり、キツい坂も非常に気持ちよく上れました。上り坂での発進も軽いギアを選択し、アシストモードをTURBOにすると、ほぼ負担感なく漕ぎ出せるのでめちゃめちゃ楽しかったです」

アシストのあるe-bikeはラクなんでしょ? と聞かれることもまだまだあります。確かに快適ですが、あくまでも自転車です。自転車に乗る楽しさ、身体を動かしている感覚はしっかりありますし、たっぷり走れば疲労もあります。電動と聞くと単純にモビリティとしてのラクさが前面に打ち出されがちですが、伊藤さんはその点をどう感じたのでしょうか。

「確かに軽い漕ぎ心地でしたが、しっかり“自転車感”も味わえて楽しいです。スポーツバイクをベースとするe-bike、少なくとも今回乗ったトレック Rail 9.7のドライブユニットは自分の意思でギアやアシストモードを切り替えることで、最適な乗り方ができた気がします」

e-bikeのメリットについて「運動がしたいのか?」「ラクな自転車に乗りたいのか?」という疑問を抱く人もいるとは思いますが、伊藤さんは「甘えたい時に甘えさせてくれるe-bikeの魅力を長距離乗ることで非常によく体感できました」とも話しています。そして、帰り道に対するテンションがこれまで乗ってきたシティサイクルとは段違いすぎて、これまで味わったことのない楽しさだったそうです。

最初は10km以上走れるのか心配だったものの、平気で往復20km以上走れて驚いたそう

e-bikeで望むようなアシストを発揮させるにはスポーツ自転車同様で路面状況に応じたマニュアル的なギア操作が必要です。普段ギア操作をしない人には少々慣れや意識も必要ですが、初心者にもけっして難しくはありません。

e-bikeはすでにMTBに乗る人で追加買いするパターンのほか、体力的に不安のある“おじさんライダー”も多いと聞きます。我々もそんなオーナーさんにお会いしています。伊藤さんのように運動や体力に自信がない人でも楽しみやすい入り口の広さがありつつ、カスタマイズなどを突き詰めていくこともできます。伊藤さんも「e-bikeがあれば生活スタイルや行動範囲もだいぶ変わってくるに違いない」と実感していました。

多くのメーカーで在庫不足の状況が続いていますが、e-bikeに興味がある人は「じっくり検討できる期間」と考えて、近所のショップやレンタルなどで試乗や相談をしてはいかがでしょうか。

e-bike部