家電レビュー
洗濯機はドラム式とタテ型どっちがいい? 東芝ZABOONでタテ型のメリット再確認
2024年2月19日 08:05
昨年、東芝、日立、パナソニック、アクアの最新ドラム式洗濯乾燥機をレビューし、各製品の特徴を実体験として把握することができました。一方でよく聞かれるのが「タテ型を買うか、ドラム式を買うか迷っている」という声です。
確かにドラム式は高機能でかっこいいイメージがありますが、値段がとても高かったり、本体が大きかったり、洗浄方式の面からもメリットばかりではありません。人によってはタテ型のほうが合っている場合もあるのです。
そこで今回はタテ型ならではの魅力を再認識すべく、ドラム式4連続レビューの番外編として、タテ型洗濯乾燥機の最新モデルをレビューさせていただくことにしました。お借りしたのは東芝ライフスタイルの「ZABOON AW-12VP3」(以下、タテ型ZABOON)、実売価格は194,000円前後です。
ドラム式とは異なるサイズ感、設置条件
今回試用したタテ型ZABOON「AW-12VP3」は洗濯容12kg/乾燥6kgの大容量モデル。以前レビューした東芝のドラム式「TW-127XP2」は洗濯12kg/乾燥7kgでしたので、乾燥容量が1kg少なくなっていますが、ドラム式同様たっぷり洗えます。
一方でやはりサイズ感は大きく異なり、ドラムは本体が防水パンから大きくはみ出ていましたが、今回は防水パンにスッキリ収まりました。数字で見ると、ドラム式「TW-127XP2」の本体サイズが645×720×1,060mm(幅×奥行き×高さ)であるのに対し、タテ型「AW-12VP3」は637×650×1,107mm(同)。特に奥行きがスリムであることがわかります。
一方で高さが今までより高く、フタも一枚板で大きいため、開ける時は上部にかなりスペースが必要です。今までドラム式を使ってきたので意識していませんでしたが、フタを開けると、水栓が引っかかってしまったのです。
このような場合、水栓の高さを上げる「壁ピタ水栓」と呼ばれる部材と交換するといいとのこと。自分でも取り付けられるそうですが、得意でない人はプロに依頼したほうがよさそうです。今回は短期間の試用だったため、交換はせずに頑張って使いました。
ちなみにタテ型の中にはフタが折れて開閉しやすい機種もありますので、それなら今の水栓でも問題なかったかもしれません(設置してみないとわかりませんが)。いずれにしても今回試用したタテ型ZABOONのフタが一枚板であるのは、デザイン性に留まらない理由がありました。フタ自体が操作パネルになっているのです。
電源を入れるとフタ全体にカラーで大きくメニューが表示されるので、とにかく見やすい。ドラム式は設定項目が多いため、機種によっては何ができるか、どの設定にしたらいいか迷うことも多いですが、タテ型はシンプルなぶん、使いこなしに迷うことは少なそうです。
タテ型にも洗浄力を高めるウルトラファインバブルを搭載!
ここで改めて、ドラム式とタテ型の違いを簡単に確認したいと思います。
ドラム式は、ドラムを回転させながら衣類を上に持ち上げ、重力で下に落ちる力を利用した「叩き洗い」。少量の水で洗濯ができますが、水が少ないため色移りや黒ずみが起こることがあります。一方の縦型は、大量の水を回転させながら洗濯物同士をこすり合わせて「もみ洗い」します。そのため泥汚れなどの固形汚れに強く、洗浄力はタテ型のほうが強いとされています。ただしドラム式に比べて衣類の傷みや絡まりが起こりやすい傾向もあります。
ちなみに筆者は4つのドラム式を使ってきましたが、汚れ落ちが悪いと感じたことはありません。最近はドラム式も、弱点を補足する機能を搭載しているからかもしれません。ただタテ型は大量の水でじゃぶじゃぶ洗うので、繊維の間を水が通過して汚れを水に引き出し、汚れの再付着を防いでくれるため、汚れやニオイが気になるものには強そうですね。
ドラムにするかタテにするか、決め手となるのは、やはり乾燥機能でしょう。ドラム式は、ドラム内でふわっと衣類を踊らせながら乾燥させるので、比較的シワが少ないですが、タテ型は回転時に遠心力がかかるため、どうしてもシワが多くなりがち。またドラム式の多くは低温で乾かすヒートポンプ式を採用しているため、布縮みが少なく電気代も抑えられますが、タテ型は消費電力を多く必要とするヒーター式を採用しているため、電気代がヒートポンプ式の2〜3倍かかってしまいます。
そのため基本的には、「毎日乾燥機能を使いたい人はドラム式」「洗浄力がもっとも重要で、念のため乾燥機能もほしい人はタテ型」と考えつつ、それぞれのメリット・デメリットを吟味していくといいでしょう。今回はそれを前提としたレビューになります。
まずは東芝のタテ型ZABOONの特徴をチェックします。東芝といえば、やはり「ウルトラファインバブル」ですね。直径1μm未満というナノサイズの泡と洗剤を混ぜ合わせた洗濯水を利用するので、通常の泡では入りきれない繊維の奥の汚れもスッキリ落とすことができます。特に、気づかないうちに蓄積して黄ばみの原因となる皮脂汚れも落としてくれるので「1年後の白さが違う」が謳い文句です。
また洗濯水には、銀イオンが溶け出した抗菌水を採用。洗濯のたびに衣類を抗菌し、部屋干し臭の原因菌が衣類に繁殖するのを防いでくれます。特別な洗剤やお湯を使わずに、洗浄力アップと抗菌を実現しているのは、東芝ZABOONの大きなメリットではないかと思います。
強烈な泥汚れもかなり落ちた
まずは液体洗剤・柔軟剤自動投入タンクの補充から。タンクは、フタを開けたところに引き出し式で搭載されていました。一度に入れられる量は、液体洗剤が約400ml、柔軟剤が約500mlと、洗剤はドラム式の半分ほど。
さらに洗剤の種類によって必要な洗剤量が異なりますので、洗剤容器の後ろを見ながらタッチパネルで設定します。ちなみにドラム式にはWi-Fi機能が搭載されており、スマホから銘柄を選べば簡単に設定できたので、手動は少し面倒に感じました。
洗濯時の操作は、左から順に選んでいくだけと、実にシンプル。タテ型ZABOONは設定すべき項目がすべて一画面に表示されているので、迷わなくて済むのがいいですね。ドラム式は多機能がゆえに、設定画面が複数ページにわたる場合もあり、使いこなせるまでに時間がかかることもありますが、これはまさに直感的です。
実際に洗濯してみましたが、何しろサラリーマンの夫と家電ライターの私、高校生で軽音部の息子と小型犬の3人と1匹暮らしのわが家。そんなに強い汚れがないため、気になるニオイや汚れもなく、とても満足度の高い洗い上がりです。
そこでどれほど泥汚れに強いか試してみようと思い、廃棄予定の夫のTシャツに、泥をたっぷりつけて洗ってみました。しかし加減を間違えて泥をつけすぎてしまったので、さすがに厳しいか? と思いましたが、予洗いなしでも、かなりきれいになりました。一度でここまで落ちたのはすごい!
ちなみにタテ型ZABOONの洗浄力が強いのは、ウルトラファインバブルのおかげだけではありません。独自のパルセーター「ザブーンパル6」を回転させながら、2本の循環シャワーで勢いよく洗剤液を放出することで、洗剤液を衣類全体に浸透させているのです。特別にデモモードで、フタを開けたまま洗濯する様子を見せてもらいました。この勢いなら、汚れもスッキリ落ちそうです。
なお食べこぼしをイメージした汚れも、一度の洗濯で見えるか見えないかというところまで落とせました。もし汚れ落ちが悪いと感じた場合は、コースの中に「二度洗い」や「予洗い」、さらに洗剤水に温風を当てて温め、洗浄力を高める「温か洗い」コースもあるので、これらを活用してもいいかもしれません。
ちなみにおしゃれ着コースでは、付属の「おしゃれ着トレー」を槽内に浮かせた状態でセットし、その上に衣服を乗せます。こうすることで、パルセーターに衣服が直接触れず、水流だけで優しく押し洗いでき、布傷みを抑えられます。
Tシャツはシワシワ、タオルはふっくら
続いては乾燥機能をチェック。タテ型ZABOONには「ハイブリッド乾燥」と呼ばれる乾燥機能を搭載しています。これは乾燥時に発生した湿気を冷却水で冷やして除湿し(水冷除湿)、槽内の温度の上昇を抑えるために、吸気ハッチを開いて外気を導入して仕上げるもの(外気仕上げ)。湿気と温度をコントロールし、布傷みを抑えるほか、乾燥時間を短縮するなどの効果があるそうです。
とはいえ、ドラム式に比べるとかなりシワになりました。特にTシャツなどはとてもとても着られないレベル(笑)。脱水でシワになった状態がそのまま残ってしまったような感じです。
一方で驚いたのが、タオルのふんわり感! 空気を含んで繊維がふっくら立ち上がっており、外干しするより断然気持ちのいい仕上がりになりました。タオル乾燥にはおすすめです。
このように、タテ型洗濯乾燥機ですべての乾燥を済ませるのは厳しいかもしれませんが、向き不向きを理解し、外干しするものと乾燥するものを分けるだけでも、だいぶ家事の手間は省けます。特にお子さんがいたりすると、急いで乾燥させたい衣類が出てくることもありますので、やはりタテ型でも乾燥機能はあったほうが便利ですね。
“タテ型からタテ型”への買い替えは大いにあり
タテ型洗濯乾燥機の試用は久しぶりでしたが、やはり使いやすさや洗浄力はだいぶ進化していると思いました。また乾燥自体も、乾ききっていないといった不満もほぼありません。とはいえ、やはり素材によってはシワになりやすい、ヒーター式なので電気代が高い点で、毎日乾燥機能を使うならドラム式洗濯乾燥機でないと厳しいと思います。
ちなみに今、ドラム式が注目されているとはいえ、シルミル研究所のWebコンテンツ「ウーマンリサーチ」が2022年に行なった調査によると、乾燥機能付きの洗濯機を所有している人は、51.9%と約半数。言い換えれば、約半数は乾燥機能のないタテ型の全自動洗濯機を使っていることになります。つまり洗濯物は干す生活習慣が身についている人も多いと思いますが、やはり季節的には外干しできない、繁忙期で家事時間が取りにくいなど、乾燥機能が欲しいときもあるでしょう。
いきなりドラム式への移行は抵抗があるかもしれませんが、タテ型洗濯乾燥機ならスムーズに使いこなせ、家事時間の短縮に一役買ってくれるのではないでしょうか。