家電レビュー
「膨らまない」アイリスのファン付きウェア。涼しくスタイリッシュに着こなせる?
2022年8月19日 08:05
厳しい猛暑が続く夏は、屋外でもできる限り涼しく過ごしたいものです。電動の空冷ファン、つまりは扇風機を内蔵する「ファン付きウェア」を上手に着こなせれば暑い夏を爽やかに乗り切れるはず。
でもファン付きウェアは、どちらかといえばデザインが作業着っぽかったり、ファンを回すと膨らんでしまうものが多く、何気なく普段着として使えるものが少ない印象があります。
今回はアイリスオーヤマが“膨らみにくいファン付きベスト”として発売した「クールウェアFNCT(ファンクト)ベストセット FC22300」を試してみました。デザインも普段着として使えそうな期待の製品です。
買ってすぐに使える、バッテリー付きの3点セット
アイリスオーヤマのクールウェアFNCTはノースリーブスタイルのフード付きベストと、9枚羽根構造でパワフルかつムラのない風が送れるファンを2基、そして6,700mAhのモバイルバッテリーをセットにした製品です。メーカー公式通販サイトのアイリスプラザでは12,800円(8月19日記事掲載時点の価格)で販売されています。
ベストの形とデザインは男女兼用ですが、サイズはS/M/L/XL/3Lの5種類を展開しています。カラーバリエーションはいずれもパステル調のライトグレー/ライトブルー/ライトグリーンの3色。筆者が着ているのはライトグリーンのベストです。
ファンとモバイルバッテリー、それぞれをつなぐケーブルはベストから着脱できます。部品を外したベストは水洗いも可能。使わない時にベストを畳んで収納できるポーチが付属しています。
ベストだけ色違いの着替えを揃えたくなりますがが、残念ながら2022年の夏現在ではファンとモバイルバッテリーのセット販売しか扱われていないそうです。
ファンによる送風強度は強/中/弱の3段階から選べます。右側ポケット下のボタンを押すと強度が切り替わり、ランプの色が青/緑/白に点灯します。付属のバッテリーがフル充電の状態からの連続運転は、それぞれレベルが強で約5時間、中で約9.5時間、弱が約34時間となります。
モバイルバッテリーはUSB Type-A端子で接続するスタンダードなものです。スマホの充電にも使えました。反対にアイリスオーヤマのクールウェアFNCTを、もう少し軽いモバイルバッテリーを身に着けて使いたい場合もあり得ると思います。筆者が持っているモバイルバッテリーで試したところファンは動きます。ただメーカーが動作を保証する対象外の使い方となるため、故障等を避けるために純正品を使った方が良さそうです。
気になる「動作音」と「重さ」は?
クールウェアFNCTのファンは、オンにすると当然ながら回転音が鳴ります。強度を中や強にすると、なかなか大きなファンノイズが聞こえてきます。カフェや電車など近くに人がいる屋内で使うと迷惑に感じられてしまうレベルでした。涼しさも控えめになってしまいますが、周囲に気を遣わなければならない屋内環境では「弱」設定が基本になります。自宅に一人でいる時や、屋外を歩きながら使う場面などではレベルを自由に変えても大丈夫だと思います。
クールウェアFNCTの「重さ」も気になるポイント。ベスト自体はとても軽量ですが、モバイルバッテリーは約175g、ファンは約117g/1台あります。総重量は約409g。ジャケットにiPhone 13 Pro(1台約203g)を2台入れて持ち歩く感覚に近いです。
着てしまえば重さは適度に分散されますが、外出の際にバッグなどに入れて持ち歩くことを考えると、重さもさることながらセット一式がバッグの中で結構な場所を占有することが煩わしく感じるかもしれません。
涼しさを最大化するための「上手な着こなし方」を考えた
筆者がクールウェアFNCTを試した7月末から8月上旬、東京都内は不安定な天候が続きました。気温が異なる日、屋内外などクールウェアFNCTが最も心地よく使える生活シーンを探してみました。
今回テストしたクールウェアFNCTはノースリーブタイプです。身に着けてファンをオンにすると服の中に空気が巡り、さらに首もとや両脇、裾まわりの隙間から抜ける空気が涼しさを感じさせてくれます。
涼感を最大化するために気を配りたい上手な着こなし方のポイントがいくつかあります。まず首もとのジッパーはあごの辺りまで目一杯上げるとベストの中の気密性が高くなり、空気が効率よく循環します。首もとを抜けてくる空気も涼しく感じられるでしょう。
本製品のフードは着脱ができません。特に生地が防水・防滴加工されているわけではないため、屋外では雨よけになるほど強力に水をはじいてくれません。だったら特に夏の暑い日などは首まわりを涼しくしたいので、不要な時にはフードを外したくなります。
ただ、フードをかぶると首もとの背中側の隙間から抜ける空気がフードの中を循環して、涼しさを感じられる効果もあります。風呂あがりに汗をさっと引かせたい時にはフードをかぶると効果的でした。
クールウェアFNCTは裾まわりのゴム紐を絞って、ウエスト部分の風が抜ける隙間を調整できます。少しきつめに絞った方が、ベストの中でより多くの空気が循環して涼しく感じられます。ただ気密性が高まることによってベストが膨らんで、見た目がミシュランのキャラクター“ムッシュ・ビバンダム”に近づいてしまいます。暑さと状況に応じた使い分けが必要です。
ゴム紐を絞らず、ベストの中に一時的でも素早く空気をためて涼感をアップさせたい場面では、左右のポケットに手を入れて裾の絞りを調節する方法もあります。
キッチンでの料理、スタジアム野球観戦が涼しく過ごせる
クールウェアFNCTが活きる場面は、例えば食事の支度中です。夏場はキッチンで火を使うと汗だくになりますが、本製品があれば汗を効率よく引かせることができました。キッチンの換気扇も回っているので、ベストのファンノイズがさほど気になりません。着ている本人がうるさく感じられるようであれば、ノイズキャンセリングイヤホンを併用してもよいでしょう。
屋外での野球観戦にもクールウェアFNCTが重宝しました。シートピッチがタイトなスタジアムでは、隣に座る人に空気が当たらないか、ファンノイズがうるさく感じられないレベルか気を遣いますが、涼しいナイトゲームならファンのレベルが「弱」でも涼感が得られました。問題は応援するチームのユニフォームがベストの上から羽織れないことです。
寝苦しい夜はベッドに横になりながらクールウェアFNCTで涼みたくなります。試してみましたが、背中の腰の部分にファンがゴツゴツと当たって気持ちよく寝られませんでした。ベッドルームではやはり扇風機の方がベターです。
クールウェアFNCTはベスト本体、およびファンやモバイルバッテリーが防水・防滴仕様ではないため、屋外で使っている時に突如強い雨が降りはじめたら、すぐに使用を中止することをおすすめします。
ソニーの“着るエアコン”を併用してみた
クールウェアFNCTはベストの中で空気を循環させて涼感を得るアイテムです。そのため涼しさの度合いは、ファンがベストに取り込む空気の温度にも左右されます。例えば最高気温が35℃を超える猛暑日には、屋外で本製品を使うと“ぬるい空気”がベストの中で回り、首もとからムッとした温かい空気が吹き出してくると、あまり気持ちよく感じられませんでした。
そこでソニーの“着るエアコン”「REON POCKET 3」を併用してみたところ、暑い日の外歩き中にも首もとの不快感が取り除けました。
REON POCKETはCOOLモードでの動作時に、冷感効果を得るために欠かせないパーツであるペルチェ素子の熱を逃がすための空冷ファンを本体に内蔵しています。排気口は本体の天面に配置されていますが、ここを衣服で塞いでしまうとREON POCKETの冷却効果が損なわれ、本体が徐々に温まってしまいます。
アイリスオーヤマのクールウェアFNCTと一緒に装着する際には、背中のフード等でREON POCKETの排気口を塞がないように気をつけましょう。排気口からの空気抜けをサポートするREON POCKET専用アクセサリー「NECKBAND 2」を併用すると、REON POCKETが温まりにくくなります。
防寒具にもなるが目立つことなく使いたい
夏は屋外が暑くても、商業施設などに入ると冷房がとても強く効きすぎていて、逆に寒さが辛く感じられることがままあります。
アイリスオーヤマのクールウェアFNCTはデザインがスタイリッシュなので、カフェなどに入った時には“防寒具”としても使えそうです。
ただファンは目立ってしまうので、手間はかかるものの取り外して使いたくなります。防寒具としても併用するならば、ファンが目立ちにくいブラックのカラバリが揃うアイリスオーヤマの「クールウェアFNCT半袖セット」を選んだ方が良いかもしれません。ノースリーブよりも半袖の方が肩や二の腕の露出が抑えられるので防寒効果が高いと思います。
普段着っぽいデザインをさらに極めたい
数年前にファン付きウェアが話題になり始めた頃、屋外作業用を想定したデザインの製品が中心でした。アイリスオーヤマのクールウェアFNCTは、デザインがより一般的な普段着に近いところが大きな魅力です。スポーツウェアっぽいデザインの「クールウェアCASUAL」というラインナップもあります。夏の夕涼みの散歩やアウトドアレジャーの際にも積極的に使いたくなります。
室内でもクールウェアFNCTを着れば、エアコンの設定温度を少し上げて省エネ効果も引き出せそうです。仕事にいっそう集中できたり、食事やゲームを楽しむリラックスタイムもより快適になりました。
筆者の個人的な感想ですが、デザインは柄を加えたり、生地の質感など目に見える部分をもっとスタイリッシュにブラッシュアップできる余地があると思います。これからさらにラインナップが増えることも期待したいと思います。