家電製品レビュー

レンジ自動調理が優秀! 日立の「ヘルシーシェフ」を使い続けたい理由

電子レンジ、オーブン、グリル、スチーム、過熱水蒸気の5種類の調理に対応した多機能な過熱水蒸気オーブンレンジ「ヘルシーシェフ MRO-W10X」

現在はさまざまな「調理家電」がありますが、高機能な調理家電の代表といえばやはりオーブンレンジ。オーブンレンジとひとくちに言っても、プレミアムモデルならば電子レンジ、オーブンのほかに過熱水蒸気調理、蒸し調理、グリル調理など、ほとんどの加熱調理を網羅してくれます。ただし、多機能なだけに気になるのが使い勝手。機能が多すぎて、結局「電子レンジ以外使わない」という家庭も意外と多いものです。

そこで、今回は日立の過熱水蒸気オーブンレンジの最上位機種「ヘルシーシェフ MRO-W10X」を3カ月じっくり長期使用。長く使ったからこそわかるメリット・デメリットについて紹介していきたいと思います。

現在、大手家電メーカー各社が多機能な過熱水蒸気オーブンレンジを発売しています。前編となる今回は、多くの高機能オーブンレンジの中から日立の「ヘルシーシェフ MRO-W10X」(以下MRO-W10X、実売価格65,000円前後)を選んだ理由について解説します。

そもそも置く場所は確保できるのか?

多機能・高機能なオーブンレンジは、30Lの大容量サイズがほとんど。こうなると気になるのが、狭くモノが多くなりがちなキッチンに製品を設置できるかです。一般的なオーブンレンジは背面に排熱口があり、背面から熱風を逃がすため、本体左右と背面に10cm前後の隙間を開ける必要がありました。

ただし、最近の高機能プレミアムオーブンレンジの一部は、排熱口を本体上部に配置することで本体背面、左右を壁にピッタリと密着させることができます。もちろん、MRO-W10Xもこの壁ピッタリ配置ができる製品。MRO-W10Xの本体サイズは幅497×奥行442×高さ375mmなので、この本体サイズが入る幅と奥行きがあれば、ほとんどのスペースに設置可能です。

我が家の食器棚。オーブンレンジを置くための幅と奥行きはギリギリ。左右と背面を壁ピッタリに置けるMRO-W10Xだからこそ設置できました。日本の狭いキッチンだと、意外とこういったギリギリスペースの家は多いのでは?
別角度から
排熱口からの熱風が本体上部から前方向に吹き出す仕組み。このため、上部に10cm以上の隙間が必要となります

電子レンジの「自動あたため」機能がとにかく優秀

とはいえ、実はこの「壁ピッタリ」設置はパナソニックや東芝、シャープなどのフラッグシップモデルにもある機能です。MRO-W10Xを選んだ最大の理由はオーブンレンジの自動あたため調理の優秀さ。高機能なオーブンレンジは、庫内に食材を入れてボタンを押すだけで最適な加熱パワーと加熱時間を自動的に計算して実行してくれます。MRO-W10Xはこの自動調理で失敗することがほとんどないのです。

その理由はセンサーに赤外線センサーと重量センサーの2種類を利用する「Wスキャン」にあります。一般的に、高機能オーブンレンジはセンサーに赤外線センサーを利用します。これは食材の表面温度を検出するセンサーで、オーブンレンジは自動あたため運転時に食材の表面温度を定期的にチェック。時間と温度の上昇率などから最適な火力と加熱時間を自動的に割り出すのです。

ただし、赤外線センサーは、その名の通り赤外線が当たる部分しかセンシングできません。また、オーブン使用後など庫内が熱い状態では正確なセンシングができないなど、さまざまなシチュエーションで問題が起きる可能性があります。そこで、日立の「Wスキャン」では赤外線センサーと重量センサーを併用し、失敗の少ない自動あたため調理を実行するのです。

テーブルプレートを外したところ。3つの突起が重量センサーです
庫内奥上部にあるのが赤外線センサー。センサーが中央にあるので、センシングの死角ができにくいという特徴があります

「Wスキャン」の自動あたため機能の優秀さがよくわかるのが肉の解凍です。多くの電子レンジには「解凍」モードがありますが、よくあるのが「肉の一部が煮えてしまう」「肉の周りが焼けてしまったのに、中心は凍ったまま」「自動モードだと解凍に30分近くかかる」などの問題。実は、肉や魚の解凍を短時間で絶妙に仕上げてくれる製品は意外と少ないのです。

MRO-W10Xで300gサイズの豚ミンチ肉を「ひき肉の解凍」モードで解凍したところ、標準モードの約12分だと少し解凍が甘かったのですが、3分追加加熱したところどこも煮えた様子がなく絶妙な具合に解凍されました。一部に細かな氷の粒子が残りシャリっとした部分もありますが、指でつまめば簡単にほぐれる柔らかさ。肉をまとめ買いする家庭にはかなり心強い機能です。

約300gの豚ミンチ肉を解凍モードで解凍したところ。端部分に少し氷の粒子が残っていましたが、手でほぐれる柔らかさ
分厚い中心部にしっかりと指が入るにもかかわらず、どこにも煮えによる変色がないのはかなり優秀!
ブロック肉の解凍ももちろん優秀です。「鶏ブロック肉の解凍」でカチコチの鶏もも肉を一枚解凍
約8分20秒で写真のようにしっかり中まで解凍できました。端1cmほどは半冷凍でシャリシャリした部分がありますが、調理には問題ない柔らかさ。ドリップがほぼ出ていなかった点にも驚きました
解凍モードは肉の形状をメニューから選ぶだけ。肉の大きさはMRO-W10Xが自動的に判断して火力や加熱時間を自動的に切り替えてくれます

掃除が簡単で長くキレイに使えそう!

電子レンジは家族全員がよく使う家電。このため、メンテナンスのしやすさも重要です。そして、MRO-W10Xならではの特徴に「テーブルプレート」があります。なんと電子レンジ底面が、トレーのように取り外せるのです。電子レンジによくある「牛乳を温めたら吹きこぼれた!」などの失敗があっても、サッとテーブルプレートを引き出してシンクで水洗いできます。

電子レンジで利用する底面がなんと取り外し可能。電子レンジは全製品この方式を取り入れてほしいと思うレベルで便利です

もうひとつ、メンテナンス面で意外と重要に感じたのが庫内側面が「白い」こと。一般的なオーブンレンジは庫内が濃いグレーか黒色であることが多いのですが、濃い色は汚れが目立ちません。このため、汚れが飛び散ったことに気付かなかったり、ちょっとした汚れなら「今度時間があるときにふき取ろう」などとメンテナンスを後回しにしがちです。

一方、MRO-W10Xは左右の壁が白いので汚れがかなり目立ち、汚れたらすぐにふき取るようになりました。汚れは時間とともに落ちにくくなるので、白い壁の効果で「すぐに掃除する」癖がついたのは嬉しいところです。MRO-W10Xには大量のスチームで汚れを落としやすくする「お手入れコース」といった運転モードもありますが、白い壁やテーブルプレートのおかげでこまめに掃除をするので、2カ月間使用してもあまり汚れませんでした。

庫内左右の壁面は、汚れがわかりやすい白色! 庫内奥と天井部は一般的なダークグレーです

ソフトウェアアップデートによるモデルチェンジに対応

MRO-W10Xを選んだ最後のポイントが、スマートフォンとの連携可能なIoT家電であること。IoT連動により本体にメニューを追加したり、本体アップデートを自分で行なうことができます。もちろん、スマートフォンの専用アプリでレシピを検索したり、選択したレシピの運転メニューをMRO-W10Xに送信することも可能です。

いつものスマートフォンでレシピを検索し、そのまま送信できます。このあたりは他メーカーのIoTオーブンレンジにもある機能ですね

ここまで書くと「IoTのオーブンレンジなら他メーカーにもあるじゃないか」と思うかもしれません。しかしMRO-W10Xが凄いのは「本体アップデート」により本体機能を強化し、2020年はあえて新モデルを発売しなかったところにあります。実は今回レビューしたMRO-W10Xは、2019年6月に発売された日立のフラッグシップモデルなのです。

大手家電メーカーは毎年オーブンレンジの最上位モデルをモデルチェンジしていますが、正直なところ「この機能が追加されただけ?」といった製品もなかにはあります。しかし、そんなマイナーチェンジのような製品でも新モデルとして従来モデルより高い値段で売れてしまうのが実情です。

MRO-W10Xはソフトウェアアップデートで機能を追加することで、2019年に製品を購入した人も、最新機能を享受可能。また、ハードウェア的には2019年モデルと同じため、高機能なのに他社のフラッグシップモデルよりも高いコストパフォーマンスで購入できるという消費者にとっては嬉しい製品なのです。「無駄にハードウェアを増やさず、機能だけをアップグレードする」という意味でエシカルな製品でもあり、IoT家電の目指すべき姿といえるかもしれません。

自宅でソフトウェアアップデートをしているところ。約15分ほどかかりました。アップデート内容は、自動メニューの追加のほか、「ボウルメニュー」での、軽くて扱いやすいプラスチックボウル対応メニューの拡大。スチームを充満させることで庫内の汚れが落ちやすくなる「お手入れコース」のスチーム量の増加など
ソフトウェアアップデート中のスマホアプリ画面

【訂正】初出時、ソフトウェアアップデート内容について「従来まではガラス製のボウルしか利用できなかったボウルメニューでのプラスチックボウル対応」としていましたが、実際は、従来から一部メニューがプラスチックボウルに対応していたため「プラスチックボウル対応メニューの拡大」に変更しました(2月28日)

ここまではMRO-W10Xを選ぶべき理由と本製品の特徴について解説しました。後編となる次回は、実際に自宅で調理をし、毎日使ったからこそわかる便利なところ、苦手とするところを詳しくレビューしたいと思います。

倉本 春