家電製品レビュー

少量炊きでも美味しいご飯! 炊き込みおこげも魅力のタイガー「炊きたて」

タイガー魔法瓶「炊き立て ご泡火炊き JPD-G060」

ステイホームが続く昨今、自宅でご飯を食べる機会が増えている。そうなると毎日のご飯を美味しくしたい、と家電の買い替えを考える人も多いはず。せっかくなら家でおいしいご飯を食べたい! という人に、コストパフォーマンスが高い最新の炊飯器と、炊き込みご飯などの活用方法を紹介しよう。

現在、一般的な家庭用炊飯器は1万円前後から10万円超まで非常に幅広い価格帯で販売されている。炊飯容量は3.5合炊き、5.5合炊き、1升炊きの3段階で、5.5合炊きが一般的だ。しかし、近年はひとまわり小さな3.5合炊きがシェアを伸ばしている。今回取り上げるのはタイガー魔法瓶の「炊き立て ご泡火炊き JPD-G060」。3万円台後半から購入できる、3.5合炊きのミドルクラスとなる炊飯器だ。価格はオープンプライスで、記事掲載時点の実売価格は47,000円前後。

コンパクトサイズでバランスの良い炊飯器

「炊き立て ご泡火炊き JPD-G060」は圧力IH機能を搭載した炊飯器。炊き上げ時と炊き上げ後で圧力を変えて仕上げる「可変W圧力炊き」によって、100℃を超える高温で炊飯できるのが特徴だ。

光沢感のある塗装でシルバーのラインが入っている。凹凸がほとんどないデザイン

製品名にもなっている「ご泡火炊き」とは、炊飯の加熱により細かい泡を発生させ、その泡でお米を包み込んで炊く仕組みによるもの。お米同士がぶつかって傷つくことがなく、甘みをしっかりと閉じ込めることができるという。

ボディカラーは、つや有りのピュアブラックとオーガニックホワイトの2色。360度デザインのようにも見えるが、背面から見ると、警告表記や使用上の注意などのシールが大きく貼られている。また、ハンドルは搭載していないので、炊飯後にダイニングテーブルに移動するような使い方にはやや不向きだ。

左右の側面。同じくツルッとしたデザイン
家に来たお客さんから見える場所にも置きやすい
やや残念な背面。必要な情報ではあるが、各種注意書きが大きく貼られている。このためキッチンカウンターなどに置く場合は、気になる人もいるかもしれない
付属のしゃもじと計量カップ、麦用の計量カップも2つ付属する

3.5合炊きなので本体もコンパクト。本体サイズは幅22.7×奥行き30.5×高さ19.4cm、質量は5.0kg。最大消費電力は705Wとなっている。

高価格な上位モデルとの最も大きな違いは内側にある。最上位グレードでは土鍋でできた内なべを採用しているが、JPD-G060ではアルミとステンレスによる合金製の内側を採用している。

ステンレスとアルミの合金に様々なコーティングを施した内なべ。外側のコーティングは上部が銅で下部が土鍋素材となっている

とはいえこの内なべも、こだわりの仕様だ。合金アルミと純アルミを複数の層に重ねており、内なべには遠赤土鍋コーティングを、外側上部には熱伝導性の高い銅素材を用いた「かまどコーティング」を、外側下部には土鍋素材による「土鍋蓄熱コーティング」を施している。これらによって蓄熱性を高め、沸騰時の火力をアップ。また、内なべ底面には約2,250個もの細かな凸を配置することで表面積を大きくし泡立ちを高めている。

JPD-G060の内なべは左右に取っ手があるのが特徴。このため、炊飯直後でも熱いが持ちやすい。鍋底には細かなディンプルがデザインされている

続いて炊飯ソフトと使い勝手の部分を見ていこう。メニューとして用意しているのは、エコ炊き/白米/極うま/早炊き/すし・カレー/冷凍ご飯/炊込み・炊込みおこげ/おかゆ/玄米/雑穀/麦めし/おこわ/調理の全13コース。使用頻度の高い白米関連だけで6コースあり、使用シーンによって使い分けることが可能。ただし、各コースの中でご飯の柔らかさなどを炊き分ける機能は搭載していない。

上部に配置しているディスプレイとボタン類。メニューボタンで利用するメニューを選んで、炊飯ボタンを押すだけでいい。なお、無洗米の場合は炊飯ボタンを2回押す

操作は非常にシンプルだ。フタ部分には、大きなモノクロディスプレイを配置。その下に各種ボタンが並んでいる。主に使うのはメニューボタンと炊飯ボタンだ。メニューボタンの左右を押して、利用するコースを選び、炊飯ボタンを押す。予約炊飯を行なう場合は「予約」ボタンを押したあと、「時/分」ボタンで時間を設定し、「炊飯」ボタンで確定できる。細かい設定が必要ないため、子供や高齢者にも使いやすい印象だ。

甘みのある白米は粒感と柔らかさを両立した炊き上がり

早速ご飯を炊いてみた。まずは、標準となる白米コース。北関東産のコシヒカリを2合セットする。ディスプレイに表示される時間は炊飯44分で、実際の炊飯時間は約46分30秒。白米の炊飯時間としては標準的だ。

炊き上がりのご飯は非常につややかな印象。ご飯粒が潰れることもなく、しっかりと粒感が感じられる。それでいて噛んだときは柔らかさを感じた。「しゃっきり」から「柔らか」まで10段階で評価すると6~7ぐらいの柔らかさで、非常にバランスの良い炊き上がりだといえる。また、ご飯の甘味もしっかりと感じられた。

内なべにお米をセットして水位線まで水を入れる。水位線の表記がはっきりしているのでわかりやすい。
「白米」モードで炊いたお米。つややかでご飯粒が大きくしっかりしている
お茶碗によそってみると、ご飯粒がしっかり給水して膨らんでいるのがわかる

なお、炊飯メニューを「早炊き」にすると、柔らかさと甘みがやや失われ、水っぽさが増した。その割に炊飯時間は30分と早炊きにしては長く、あまりメリットを感じられなかった。逆にしっかりとご飯に水を吸水させる「極うま」コースでは柔らかさはそのままにシャッキリ感と甘みが増していった。

こちらが「早炊き」メニューで炊いたご飯。「白米」メニューとの違いがわかる

面白いのが「冷凍ご飯」メニューだ。吸水時間を長くとることで含水率を高めて炊飯し、冷凍ご飯の乾燥によるパサつきなどを抑えることができる。もちろんそのまま食べてもおいしいので、夕食で食べた後に残ったご飯を冷凍したいといった場合に利用したいメニューだ。

「冷凍ご飯」で炊いたご飯は、パックに入れるか、ラップに包んで冷凍庫へ。乾燥を防ぎつつ、ベチャッとしない印象だ

おこげが魅力! 多彩なアレンジご飯やおかず調理にも

JPD-G060では白米以外にも様々な炊飯、調理が可能だ。なかでも個人的に気に入って多用していたのが「麦めし」メニューだ。JPD-G060には専用の麦めし用計量カップが付属しており、麦を1割もしくは3割混ぜた麦めしが炊ける。お米を研いだあと、麦を足して炊くだけでいい。

炊きあがった麦めしは、プチプチとした麦の食感が手軽に楽しめて小学生の子供たちからも評判だった。なお、麦めしを炊くときは上限が2合となる。1割は物足りなかったので3割がおすすめだ。

付属の麦めし用計量カップを使って麦を追加して炊くだけ。水位線は「麦めし」に合わせる
こちらが炊きあがった麦めし。麦は3割で炊いた。大麦は上に溜まっているので、しっかりと混ぜ合わせて食べよう

続いて玄米も炊いてみた。JPD-G060は圧力IH方式を採用しているので、短時間で玄米も美味しく炊ける。玄米は最大で2合まで炊くことができ、炊飯にかかる時間は約66分。柔らかい食感で、白米に慣れていても比較的食べやすい印象。なお、白米を混ぜたブレンド玄米の炊飯もできる。

炊き込みご飯は、タイガー魔法瓶の得意なメニューだ。メニューには「炊き込み」と「炊き込みおこげ」があり、おこげの有無が選べる。具に合わせて調味料と水をセットして、「炊飯」ボタンを押すだけ。非常に香ばしい炊き込みご飯が炊けた。

おこげが魅力的な炊き込みご飯。タイガーの炊飯器を選ぶ理由のひとつ
ご飯と鶏肉を一緒に炊く、シンガポールチキンライスも美味しくできた

JPD-G060はおかず調理にも対応している。しかし、残念ながら用意されているレシピは多くはない。タイガー魔法瓶のWebサイトでレシピ検索すると、JPD-G060で作れるレシピは8つ、そのうち炊き込みご飯などを除いたおかずは豚の角煮と、野菜とチキンのポトフの2品だった。おかず調理機能は基本的には圧力を使わず、60分間、沸騰しない温度で加熱するシンプルな機能なので、複雑な調理はできない印象。あくまでも、おかず調理機能はおまけと考えたい。

Webサイトに掲載されていたレシピで作った「豚の角煮」。ちゃんと下茹でして脂やアクを抜くレシピなので手間と時間はかかるがとろりと仕上がった
ポトフのレシピを少しアレンジして作ってみたが問題なくできた。シンプルな味付けなのでちょっといい粒マスタードなどを用意して食べるとより美味しい

圧力タイプでも手入れは簡単

炊飯器を選ぶ上で重要なのがメンテナンス性だ。炊飯器はほぼ毎日使う家電製品だけに洗いやすさもポイントとなる。

JPD-G060では、炊飯した後に毎日洗う必要があるのは、内なべ以外では内ぶたとスチームキャップの2つ。圧力タイプのため、内ぶたには調圧ボールなどもついているが、流水で流すだけで簡単に洗うことができた。スチームキャップはふたを開けることができ、内部までしっかりと洗える。

内ぶたとスチームキャップは取り外して丸洗いできる

また、炊き込みご飯やおかず調理をした後、匂いが気になったときは、水とクエン酸を入れて炊飯することでクエン酸洗浄が可能。パッキンへの匂い移りなども解消できる。

シンプルな使い勝手で、確実に美味しいご飯が炊ける

JPD-G060は非常にシンプルな使い勝手が魅力の炊飯器だ。他の3万円以上の炊飯器や上位モデルと比較すると、決して機能が多いとはいい難い。たとえば同じく3.5合炊きの上位モデル「炊きたて 土鍋ご泡火炊き JPJ-G060(実売87,000円前後)」には、3段階の食感炊き分け機能やおこげが作れる火加減調整機能が搭載されているが、JPD-G060では省かれている。

火加減調整機能は、内なべや消費電力が異なるため仕方がない部分もあるが、食感の炊き上げ機能は多くの炊飯器が搭載している。今回紹介したJPD-G060は、それらをあえて搭載していないため、炊飯時の細かな設定操作が必要ない。しゃっきり食感のご飯が炊きたいときは「すし・カレー」メニューを選ぶだけなのもわかりやすい。

白米の炊き上がりのレベルは高く、1~2万円台の炊飯器と明らかな差が感じられる。明確な白米のおいしさを求めるときはこのクラス以上の炊飯器を選びたい。前述のJPJ-G060は実売価格で約4万円の差がある。内なべや炊飯機能に差はあるが、コストパフォーマンスに優れているのはJPD-G060だと感じた。

とはいえ多機能モデルではないので、いろいろと設定して自分好みに使いこなしたいと考える人にはやや不向き。シンプルな使い勝手で美味しいご飯が炊きたい、という人におすすめの炊飯器だといえるだろう。

コヤマタカヒロ

フリーランスライター。1973年生まれ。学生時代より雑誌ライターとして活動を開始。PC、IT関連から家電製品全般までに造詣が深く、製品やビジネスを専門的ではなく一般の方がわかるように解説するスタンスで執筆活動を展開している。近年は、デジタルとアナログ、IT機器と家電が交差、融合するエリアを中心に取材活動を行なっている。雑誌やWebに連載多数。企業のアドバイザー活動なども行なっている。 Twitter: @takh0120