家電製品レビュー

オートキャンプに防災に! JVCソーラーパネルと大容量ポータブル電源が色々と使えた

今回お借りしたセット

この夏、ソーラー発電に挑戦!

長かった梅雨もようやく明け、待望の日差しが戻ってきたと思っていたら、世の中はもうお盆に。とはいえいつもの夏とは違い、故郷への帰省も「帰れない」「帰ってくるな」ということで、違った風景になっていたかもしれない。

夏のレジャーも、人が多く集まるところではなく、手軽なベランピングから人里離れた山奥へオートキャンプまで、さまざまなパターンを楽しむ人も増えているようだ。外出もままならない中、例年以上にアウトドア製品がよく売れているというのも、やはり家の中だけでは息が詰まる、と考える人が多いということだろう。

一方で今年の梅雨は、大きな水害に見舞われた地域も多かった。普段なら避難所へすぐに駆け込むところだが、このコロナ禍ではなかなか躊躇してしまうところである。そんなことから、防災の備えの形もまた変わらざるを得ないのかなと思うところである。

今回はそんな思いもあって、7月下旬にJVCから発売されたポータブルソーラーパネル「BH-SP100-C」(オープンプライス/実売36,000円前後)とポータブル電源「BN-RB10-C」(同136,000円前後)をお借りしてみた。高効率のソーラーパネルと大容量ポータブル電源で、夏の生活はどう変わるだろうか。

現時点ではベストな組み合わせ

今回JVCブランドで発売されたソーラーパネルとポータブル電源は、米国Jackery(ジャクリ)との共同開発である。Jackeryは2012年に元Appleのバッテリーエンジニアを迎えて創業されたバッテリーメーカーで、2019年に戦略的パートナーとしてJVCケンウッド社と提携を始めている。今回の製品は、「JVC Powered by Jackery」として販売されているシリーズの最新モデルということになる。

まずポータブルソーラーパネル「BH-SP100-C」だが、展開すると1,225×25×540mmとなる単結晶シリコンパネルを採用したモデル。真ん中から折りたためるので、移動時は半分のサイズとなる。両端のハンドル部分に磁石が内蔵してあり、閉じるとピタッとくっつくので、移動中に開いてしまってあーもうという事にはならない。重量は4.2kgで、まあまあ重めだ。

ポータブル、といいつつ展開するとかなり大きい「BH-SP100-C」
ハンドル部に「JVC Powered by Jackery」のロゴ

変換効率は23%を謳っており、これはかなり高いほうだ。屋根に載せるタイプのソーラーパネルでも、単結晶で20%を超えるものはそれほど多くはない。価格が安い多結晶パネルや化合物系パネルでは、15%ぐらいが平均である。

最大出力は100Wで、定格電圧は直流18V。専用バッテリーへのDC出力以外にUSB Type-C端子とUSB Type-A端子があり、そこにケーブルを繋げばスマホやモバイルバッテリーを直接充電することもできる。DC出力は18V/5.5A、USB Type-Cでは5V/3A、USB Type-Aでは5V/2.4Aの出力が可能だ。

背面から充電用ケーブルが延びる
ケーブルの付け根にUSB Type-C端子とUSB Type-A端子がある

パネル表面には高耐久性フッ素樹脂「ETFA」でコーティングされており、高い対候性、耐久性を実現した。背面にはポケットがあり、ここに専用バッテリー用8mm径のケーブルが収納できるほか、USB端子から充電しているスマートフォンなどを格納できる。また背面には2つのスタンドもあり、パネルを約45度に立てることができる。

パネル表面はETFAでコーティングされている
背面のスタンドを立てれば角度も付けられる

続いてポータブル電源の「BN-RB10-C」を見ていこう。これまでJVCではJackeryと共同開発モデルとして、BN-RB3-C、RB5-C、RB6-Cを製品化してきたが、本機はそれに続いてもっとも大容量の1,002Wh/278,400mAhモデルという事になる。

ラインナップでは最大容量の「BN-RB10-C」

サイズはよくピクニックに持っていくバスケットぐらいのサイズだが、重量は10.9kgと結構な重さだ。丈夫なハンドルが付いているので、持ち運びには不自由はない。側面がスリットになっており、ファンで温度管理するようになっている。

両側面がスリットになっており、大出力の際には放熱ファンが回る

入力は2つあり、同軸の12V-24V DC 180WのほうがソーラーパネルBH-SP100-Cと繋がる端子だ。もう一つPV 18V DC 100Wは、いわゆるPVシステムとして設計されている他社製太陽光パネルを接続する際に使用する。中央部にディスプレイがあり、入力及び出力ワット数やバッテリー残量が確認できる。

端子類はすべて前面

出力は多彩で、12Vのシガーソケット、PD18WのUSB Type-Cポートが2つ、5V 12WのUSB Type-A端子1つ、Max18WのQualcomm Quick Charge 3.0対応のUSB Type-A端子が1つ。AC出力はトータル1,000Wの出力が3つある。ただし瞬間最大だと2,000Wまでいけるので、加熱調理器具も使えるのがポイントだ。

コンセントからも充電可能
シガーソケットからの充電にも対応する

十分な発電能力、余裕の出力

ではさっそくこの組み合わせで発電である。まずベランダにソーラーパネルを設置し、発電状況を観察した。筆者が住む宮崎の日差しでは、太陽光に対して垂直にパネルを設置すれば、最大で64Wぐらい発電できる。ふだん使用しているMacBook ProのUSB Type-C充電アダプタは61Wなので、感覚的にはそれぐらいの出力が得られるわけである。ただBH-SP100-C自体のPD出力は18Wしかないので、USB Type-C端子に直挿しでMacBook Proが充電できるわけではない。

またパネルも常時64Wが出⼒できるわけではない。なぜならば、常時太陽の向きに合わせてパネルを動かし続けるのは現実的ではないからだ。一般的には地面に平置きするか、多少の角度を付けて放置という事になる。この場合は、平均でだいたい40W前後となる。

パネルを平置きした状態だと40W程度

筆者宅であるマンションのベランダは南向きではあるが、夏場は太陽の位置が高いので、常時直射日光が差し込むわけではない。それでも1日外に出しておいただけで、BN-RB10-Cの30%ぐらいは充電できた。3日で90%ぐらいという計算になる。確かにパネルは高効率だが、バッテリー容量も大きいので、フル充電するには数日かかると思っておいた方がいいだろう。

日中の利用であれば、発電しながら電源としても利用するという事になる。というわけで近くの海岸にいって、発電しながら電器製品を利用してみた。AC電源からはMacBook ProとAmazon Echo、扇風機、USB Type-C端子はiPhoneとiPad Proを充電している。この状態で、入力64Wに対し、出力が75Wであった。多少発電が足りないが、外で数時間原稿を書いても全然間に合う。

海岸でフルに電器製品を使いながら原稿が書ける
消費電力に対して発電もなかなか頑張っている

夕方に家に戻り、今度はAmazon Echoの代わりに4Kテレビを接続して、MacBook Proと大型のエアサーキュレータを回して仕事してみた。出力だけで134Wぐらいになったが、バッテリー残量62%で、4時間程度の作業が可能であった。この調子でいくと、4日に1度ぐらいはソーラー発電だけの電力で仕事ができそうだ。

とはいえ、実際には仕事のためだけに使うわけではないだろう。オートキャンプや災害時には、調理家電を使う事になるはずだ。試しに炊飯器を繋いで炊飯してみた。これまで炊飯器がどれぐらい電力消費するのか気にしたこともなかったが、実際に試してみると、炊き始めは1,000Wを超える電力を使うことがわかった。1,000Wを超えるとさすがにポータブル電源もファンが回り出してうるさくなるのだが、それでも早炊きの36分間を問題なくクリア。バッテリーは20%ぐらいの消費であった。

炊飯器も問題なく使える
炊き始めは1,000Wを超える電力を消費する

瞬間的にせよ1,000Wを超える電源が使えるとなると、使える家電も色々な選択肢がありうる。停電時にもエアコンを動かしたり、冷蔵庫の温度をキープする事もできるだろう。加えてテレビで災害情報を確認するなど、復旧するまでの何時間かを凌ぐことができる。

コラボ元のJackeryも日本法人(Jackery Japan)があり、直接製品を販売しているところではあるが、JVCブランドと価格はそれほど違わない。アウトドアでは多少荒っぽい使い方になるのはやむをえないところだし、JVC製品なら日本の主要都市に必ずあるJVCのサービスセンターで修理対応してくれるのも強みだ。

2つ合わせると17万円となり、なかなか手が出しにくい価格ではあるが、せっかくの夏の太陽だ。とりあえずソーラーパネルを使ってモバイルバッテリーに蓄電するというあたりから始めるという手もある。製品をお借りしている筆者も、今のところモバイルバッテリーはコンセントから充電したことがない。昼に充電し、夜寝ている間にモバイルバッテリーからスマホやタブレット等を充電している。モバイル機器は、ほとんどソーラー発電だけで動いている事になる。

ただ、発電能力は40Wぐらいあるのに、USB出力は2つ合わせても27Wしかないので、勿体ないのは事実だ。やはり小型でもいいから、18Vが受けられるバッテリーは欲しいところである。

あるいはオートキャンプを楽しみたい、災害用に備えたいというなら、ポータブル電源だけ買うという手もある。コンセントから充電すれば、約7.5時間で充電が完了する。なおシガーソケットから充電できるアダプタも付属するので、普段は車に乗せっぱなしで充電しておくという手もある。シガーソケットからだと、フル充電に約14.5時間かかる。

いつもとは勝手が違う特別な夏となりそうな今年、ソーラーパネルとポータブル電源で、普段とは違った楽しみ方にトライしてみてはどうだろうか。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。