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ソニーが冷温ウェアラブルデバイス支援募集、ペルチェ素子で首元を冷却/温め

 ソニーは、ペルチェ素子とファンで首周りを冷却/温めできる、冷温ウェアラブルデバイス「REON POCKET(レオンポケット)」の事業化に向けて、クラウドファンディングサイト「First Flight」にて、支援募集を開始した。価格は、本体1個と専用インナーウェア1枚のセットで税込14,080円(7月22日11時現在、以下同)。期間は2019年8月19日までで、商品の発送は2020年3月を予定(目標金額6,600万円達成の場合)。目標金額を達成しなかった場合は製品化されず返金される。

冷温ウェアラブルデバイス「REON POCKET」

 ペルチェ素子を採用した、冷温ウェアラブルデバイス。専用インナーウェアとセットで使うもので、インナーウェアの肩甲骨部分に備えられたポケットに本体をセットして使用する。

 操作はBluetooth経由でスマートフォンから行ない、ワンタッチで「COOL/HEAT/OFF」に切り替えられる。COOLとHEATはそれぞれ温度を5段階に調整可能。ペルチェ素子を用いているため、HOT→COOLの切り替えもスピーディーに行なえる。

インナーウェアの肩甲骨部分に備えられたポケットに本体をセットして使用する
スマホから「COOL/HEAT/OFF」に切り替えられる
それぞれ温度を5段階に調整可能
肌に接触する面はシリコン製で滑りにくい
首元にフィットする設計で冷温感が得やすいという

 同社が体表面温度の変化を調査したところ、COOLモードでは室温30℃の環境で5分後に、体表面温度36℃から23℃になり、-13℃の温度低下を実現できたという。HEATモードでは室温15℃の環境で5分後に、体表面温度31.5℃から39.8℃になり、+8.3℃の温度上昇を記録した。

 実際に冷却/加熱面を触ってみると、HOT→COOLもCOOL→HOTの切り替えも瞬時に行なわれていた。COOLはしっかり冷えており、ひんやり感が心地よい。

 端末本体のファンの風量調整機能も備える。風量を強くして、手持ちでハンディ扇風機のように使うことも可能。このほか「オートモード」も用意。センサーが温度状態や行動(静止/歩き)を感知し、自動で適切な温度に調整されるという。冷温の繰り返しや、オフタイマーを自分で設定できるマイモードも搭載。

COOLでは-13℃の温度低下、HEATでは+8.3℃の温度上昇を記録
実際に冷却/加熱面を触ってみると、COOL/HEATはスピーディーに切り替わった

インナーウェアは東レ提供、本体を装着しても違和感なし

 専用インナーウェアは、東レインターナショナルが提供するもので、S/M/Lの3サイズを用意。吸水速乾性を持つポリエステル素材を採用し、極細繊維がやわらかな風合いを実現する。フラットシーマ縫いで、着用時のごろつきを軽減したという。

 インナーウェアのカラーはホワイトとベージュの2色を用意。クラウドファンディングでは主にスーツ着用のビジネスパーソンをターゲットとしているが、事業化の際には女性向けやカラー展開なども検討するという。

 本体サイズは、約54×116×20mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約85g。小型設計で、首元に装着しても着用感は問題ないという。

 バッテリーはリチウムイオン電池を採用。フル充電時の連続使用可能回数は、15分の使用で6回(約90分)。充電時間は約2時間。USB Type-C⇔USB Type-Aケーブルが付属する。1回15分という使用時間は、通勤時など屋外を徒歩で移動する時間を想定している。

専用インナーウェアは、東レインターナショナル提供
REON POCKET装着中。違和感はない

デジタルとアパレルの融合に可能性、ペルチェ素子は人体のために新開発

 同製品は、ソニーの新規事業創出プログラム「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」のオーディションを通過し、クラウドファンディングでの支援募集に至った。

 REON POCKETを企画した、ソニー・伊藤 陽一氏は、これまでホームオーディオのソフトウェア設計に従事。2014年からは、SSAPにてデジタルファッション事業のソフトウェア設計を担当していた。REON POCKETの開発背景について次のように語った。

 「デジタルファッション事業でアパレルとデジタルの融合に関わったときに、衣服の拡充に可能性を感じました。何ができるかを考えていたときに、今回ハードウェアの設計を担当してもらった伊藤 健二氏とブレストを重ね、ペルチェ素子に着目しました。2018年にハードが完成し、そこからさらに冷たい/温かいを持続させる研究などを進め、SSAPのオーディションを通過して今に至ります。REON POCKETで個々の体感温度を快適にするだけでなく、空間全体の空調にも変化をもたらし、省エネにつなげられたらと思います」

ソニー・伊藤 陽一氏
ペルチェ素子に着目

 ペルチェ素子は片側が発熱してるときは片側が冷えるという特性を持っており、REON POCKETに採用。しかし一般的なペルチェ素子は、人に使うには冷えすぎ/熱すぎるという。

 今回REON POCKETのために人体に使用するのに適したペルチェ素子を新開発。モバイル機器で積み重ねてきたソニーの熱設計技術を応用し、中の素子やレイアウトを新設計した。数百回のシミュレーションを経て放熱機構が完成。人の皮膚を冷温するために開発されたサーモデバイスのパフォーマンスを最大限に引き出すとしている。

 ハードウェア設計を担当したソニー・伊藤 健二氏は、ソニー入社時よりカメラの商品設計・ハードウェア設計に従事。REON POCKETについて次のように語った。

 「もともとデジカメのハード設計をしており、カメラは画質はもちろん放熱技術も向上させなくてはいけません。特に私は4Kカメラや業務用カメラなどを担当していたので、熱を発生しながらも小型化させるという設計をしてきました。熱設計はソニーの根幹技術といえます」

ソニー・伊藤 健二氏
人体に使用するのに適したペルチェ素子を新開発。数百回のシミュレーションを経て放熱機構が完成

 クラウドファンディングでの支援コースは、本体1個と専用インナーウェア3枚のセットや、本体1個と専用インナーウェア5枚のセットなども用意。価格は順に、17,380円、19,030円。

 このほか、オートモードや風量調整機能を省略し、温度調節を5段階にできるマニュアルモードのみ搭載した「ライトモデル」も支援募集コースに用意。価格は、本体1個と専用インナーウェア1枚セットで12,760円。

支援コース例