e-bike試乗レビュー

本命登場か!? クロスバイク5車種を試乗する【家電 Watch編集長、e-bike買うってよ!】

本気でe-bike購入を考えている家電 Watchの中林編集長を追いかける本連載。車種選びから購入までの過程を紹介することで、これからe-bikeの購入を考えている人の参考にしてもらえるはずです。前回はミニベロタイプのe-bikeに試乗しましたが、今回はクロスバイクタイプに試乗します。

今回もお世話になったのは代官山モトベロ。車両の説明をスーパーバイザーの大地さんに聞いています

e-bike選びには、どういう使い方をしたいかを明確にすることが大切。中林編集長の使い方をおさらいしておくと、街乗りがメインですが3駅分ほど離れた体育館にバスケをしに行くこともあるとか。その際の荷物が大きいのと、近所に坂道も多いためe-bikeがほしくなったとのことです。

もともとは長年クロスバイクに乗っていたため、スポーツタイプの自転車は経験あり。今回試乗するクロスバイクタイプがいわば本命となります。

U字フレームが特徴のVOTANI「Q5」

最初に試乗したのはVotani(ヴォターニ)「Q5」というモデル。BESV(ベスビー)のセカンドブランドで、またぎやすいU字型に湾曲したフレームが特徴です。中林編集長の使い方にはあまり合わないかもしれませんが、好みを掴んでおくためにも色んな車種に乗ってみるのは有効です。

女性でも乗りやすいフレーム形状のVOTANI「Q5」。価格は値下げされていて168,000円で購入できる
バッテリーは専用ケースに収められた独自のデザイン。容量は360Whで最大86kmの走行が可能
タイヤは26×2.0インチと太め。前後フェンダーやライトなど街乗り向けのパーツが標準装備されている

クロスバイクに乗り慣れた中林編集長にはU字のフレームや、アップライトな乗車姿勢はあまり好みではなかったようですが、「あまり頻繁に充電したくないのでバッテリーが大きめなのは好印象」とのこと。ただ、乗り降りのしやすさは今回試乗したモデルでは一番だったようです。

クロスバイクというよりオシャレな街乗りモデルといった見た目ですが、アシストはパワフルで坂道もラクラク

ドライブユニットは前輪のハブ(車軸)と一体になったタイプですが、アシストのフィーリングに不自然なところはありません。重量は23.1kgありますが、その重さをまったく感じさせない力強さもあります。この価格で、アシストモードを切り替えなくても最適なアシストに調整してくれるスマートモードにも対応しているのはお得に感じるポイントです。

実際に乗ってみても中林編集長は「やはりクロスバイクタイプがいいなと思った」とのこと。一般のクロスバイクに比べると上体が起きた乗車姿勢になるので、アシストのあるe-bikeでももう少し前傾姿勢で乗りたいと感じたようです。e-bikeだとあまり強くペダルを踏む必要はありませんが、速めのペースでペダルを回すような乗り方をするのなら前傾姿勢のほうがしやすくなります。

軽量な車体のBESV「JF1」

続いて試乗したモデルは、BESVのクロスバイクタイプである「JF1」。バッテリーをフレームに内蔵したインチューブタイプでスマートなルックスであることと、重量が16.1kgとかなり軽量に仕上がっているのが魅力です。制動力とコントロール性が高い油圧式ディスクブレーキを装備しています。

この「JF1」も現在値下げ販売されていて199,800円で購入できるので、かなりお得感がある
インチューブタイプのバッテリーは容量252Whで、最大105kmの走行が可能。ケーブル類もフレーム内を通されている
ドライブユニットは後輪のハブと一体化されたタイプ。変速ギアは外装タイプのシマノ製DEORE(デオーレ)10速

スタイルは今回試乗したモデルでは、一番クロスバイクらしいといえるもの。中林編集長も「知らない人はe-bikeと気づかないのでは? というくらいシンプルで好み」と評しています。インチューブタイプのバッテリーに加えて、ハブモータータイプのドライブユニットもシンプルな見た目を作り出している要因です。

車体の軽さもあって、キビキビした加速を味わえる。軽さのメリットは上り坂でも活きる

乗ってみて感じるのは、その軽さ。バッテリー容量が抑えられていることもあって、今回試乗したモデルでは一番軽量です。その軽さと、700×35Cという大径タイヤの組み合わせで、アシストが効かなくなる24km/h以上の速度でもラクに巡航できます。

「アシストが滑らかで、変速と合わせて違和感なく平地も坂道も移動しやすかった」と中林編集長が話すように、アシスト任せではなく変速も組み合わせることでよりキビキビとした走りを味わえます。ただ「サドルが硬めなので、長時間乗る時にはちょっと不安かも」という印象も持った様子。サドルは比較的手軽に交換できるパーツなので、クッション性の高いものに換えるという手もあります。

オートマチック変速も搭載したSMALO「LX2」

ベスビーの展開するスマートバイクブランドSMALO(スマーロ)のフラッグシップモデルが「LX2」です。28インチの大径ホイールと、トップチューブが地面と水平になったホリゾンタルタイプのフレームという組み合わせはオーソドックスですが先進的なデザイン。「AI ドライビングシステム」に加えて7段のオートマチック変速にも対応しているのが特徴です。

ライトをフレームに内蔵するなど未来的なデザインの「LX2」。重量は23.1kg。価格は398,000円
バッテリーはフレームと一体型で取り外しはできない。容量は504Whあり、120kmの走行が可能
ペダルを踏んだ力や回転数、車速、勾配などを考慮してAIが変速してくれるオートマチック変速を搭載する

デザインについての評価は「ちょっとバイクにも近い見た目がかっこいい。ステムと一体感のあるディスプレイも洗練されている」と上々。ホリゾンタルタイプの太いフレームなので、大柄に見えますがまたがってみると、それほど違和感はありません。

初体験のオートマチック変速は、予想外の部分もありおもしろかった様子。アシストも自動で調整される

AIによって自動で制御されるアシストのフィーリングはe-bikeの中でも独特のものです。ライダーは何も考えずにペダルを回していれば、e-bikeがアシストの切り替えや変速を行なってくれるという設計。ただ、坂道などで乗り手がペダルを踏む力を込めると、予想外の動きをすることもあります。

「平地では特に意識せず自転車が自分に合わせてくれる印象で快適。一方で上り坂で強く漕ぎ始めるとシフトが逆に上がって重くなるなど、慣れが必要に思えた」というのが中林編集長の感想。普通のクロスバイクに乗り慣れていると、上り坂で車速が落ちることを予測して手前からペダルを強く踏んだりしますが、それが予想外の動きにつながったようです。

パワーと滑らかさを両立したヤマハ「CROSSCORE RC」

ヤマハのe-bike「YPJ」シリーズのクロスバイクタイプのモデルが「CROSSCORE(クロスコア) RC」。インチューブタイプのバッテリーを採用し、最新の自社製ドライブユニット「PWseries S2」を組み合わせています。前後27.5インチのタイヤとフロントサスペンションで段差の多い街中の道も快適に走れることを狙った設計です。

クロスバイクらしいシルエットの「CROSSCORE RC」。重量は23.5kg。価格は341,000円
「PWseries S2」のドライブユニットは75Nmのトルクを発生。幅が狭く抑えられ、ペダリングもしやすい
太めのタイヤにサスペンションフォーク、油圧式ディスクブレーキという隙のない足回りに仕上がっている

500Whのバッテリーを内蔵したフレームはガッシリした印象。大きめのヤマハロゴが入っていますが、編集長的にはこれはあまり目立たないでほしかったとか。サイズ感などは今乗っているクロスバイクに近く「今回乗った中では一番違和感なく乗れた」とのことでした。

結構斜度のある坂道もスイスイ上れるパワーを持ちながら、自然なフィーリングを実現している

アシストの制御には定評のあるヤマハ製e-bikeだけあり、アシストは力強く、それでいて滑らかというフィーリングです。坂道では軽めのギアでペダルを回しているだけで上って行けますし、逆に少し重めのギアで力強く踏み込んでもグイグイ上ることができます。

このアシストは中林編集長も「アシストのパワーも滑らかさも好印象。遠くまでラクに行けそうと思えた」と、e-bikeらしい魅力を感じていたようです。「9段の変速やブレーキ、サスペンションなど乗り心地も良かった」とのこと。バランスに優れた完成度の高いモデルだといえます。

アシストが強力なパナソニック「XEALT S5」

パナソニックのe-bike「XEALT(ゼオルト)」シリーズのクロスバイクモデル「S5」は、フェンダーやリアキャリアも備えた街乗り向けの作りが特徴です。インチューブタイプのバッテリーを内蔵したフレームは太めで迫力を感じるもの。自社製のGXドライブユニットは90Nmという山道でも十分なほどのパワフルなトルクを発揮します。

太めのフレームには角度によって見え方の異なるペイントを採用。重量は25.4kg。価格は388,000円
前後タイヤは27.5×2.0インチという太めのサイズ。油圧式ディスクブレーキを採用する
リアには軽量なアルミ製キャリアを標準装備。前後にはフェンダーも装備し、泥ハネを抑える

フレームが太いこともあり「初見ではかなり大きい? という印象だったが乗ってみるとそれほど気にならなかった」というのが編集長の印象。カラーの好みは「メタリックだけでなくマットなものもあれば良かったかも」と話していました。

強力なトルクを活かして坂道もグイグイ上って行ける。車体の重さを感じさせないほどパワフル

MTB(マウンテンバイク)タイプにも採用されているドライブユニットなので、アシストは強力です。少し踏み込むだけで車体をグイっと加速させてくれます。特に坂を上る際には恩恵が大きく、角度のある坂道も気にすることなく走ることができました。

編集長も「平地でも坂道でもまったく不満なし」とアシストについては高評価。ただ、その分「ウィーンというモーター音がほかより大きめなのが気になった」と話していました。車体も「安定感があって快適」という評価。「40万円を切ってこれだけしっかりしたモデルを出せるのはすごいと思えた」とのことで、全体的に印象はかなり良かったようです。

MTBは候補外でしたが、最後にe-bike Watch清水氏の私物であるキャノンデールのe-MTB「Trail Neo(トレイルネオ)4」にも乗せられていました(笑) が、ハードテイルMTBと街乗りの相性の良さに気付いた!?

前回のミニベロ編から今回のクロスバイクタイプまで、多くのモデルに試乗してもらいましたが、やはり「クロスバイクのほうが長時間乗っても疲れなそうという印象」だったよう。アシストのフィーリングも全体的にクロスバイクタイプの方が良かったとのことです。

意外と気になったのがサドルの硬さで、モデルによって違うものの硬めのスポーティなモデルは短時間でもお尻が痛くなったとか。このへんの感じ方は人によってだいぶ違いがありますが、試乗の際には長時間またがっていた場合のことも考慮しておいたほうがいいかもしれません。

見た目的に一番好みだったのはキャノンデールのe-MTBだったそうで、クルマでいうSUVのような雰囲気が気に入ったようです。タイヤは少しオフロード向けのもので舗装路では抵抗が大きいのですが、アシストがあるとその点は気にならないということでしょう。e-bike Watchにはe-MTB好きが多いので、こっち方面を推してみたいところです。今後は、この試乗経験を活かして、購入モデルを絞り込んでいく過程をお届け予定ですのでお楽しみに!

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。