e-bike試乗レビュー

まずはミニベロ6車種を試乗する【家電 Watch編集長、e-bike買うってよ!】

家電 Watchの中林編集長が本気で自身のe-bikeを購入するとのことで、相談を受けたe-bike Watch。これからe-bikeの購入を考えている人たちにも参考になることが多そうなので、購入に至るまでの過程を追いかけてみることにしました。理想のe-bikeに出会うために、できるだけ多くの車種に試乗してから好みや使い方に合ったモデルを購入するべく、まずは代官山モトベロにお邪魔していろいろなミニベロを試乗してもらいます。

電動アシスト自転車専門店ならではの充実した試乗車。対応してくれたのはスーパーバイザーの大地さんで、丁寧にモデルごとの特徴や操作法を教えてくれました

e-bikeを選ぶには、どのような使い方をしたいかを明確にすることも大切です。中林編集長は、長年クロスバイクに乗っていて、その代替としてe-bikeを考えているとのことで、スポーツバイクには乗り慣れています。近所の足としての利用が主ですが、坂道が多い地域に住んでいること、趣味のバスケのために3駅分くらい離れた体育館に通っているのでe-bikeが欲しくなったとか。その際の荷物も登山用35Lバックパックに詰め込んでいるほど多めなので、アシストがあったほうがラクになることは明らかです。

現時点で候補にしているのは、ミニベロかクロスバイクタイプのe-bike。まずはミニベロタイプのe-bikeをいろいろ試乗することに。

パナソニックのロングセラーモデル「EZ」

最初に試乗したのはパナソニックのミニベロタイプの電動アシスト自転車「EZ」。ドライブユニットは一般の電動アシスト自転車と同じなのでe-bikeではありませんが、専用ドライブユニットのe-bikeとの違いを体感するためにも、このモデルから試乗をスタート。

発売から10年以上経過しているロングセラーモデル「EZ」。価格は152,000円
バッテリーのホルダーまで一体となった「カルパワードライブユニット」を採用。バッテリー容量は約201Whで走行可能距離は55km
タイヤはブロックタイプで前後とフレーム中央にキャリアを装備

デザインについては「ママチャリぽくないため、外付けタイプのバッテリーでも好印象」と中林編集長の評価も上々。ただ、バッテリー残量などを表示する液晶スイッチのデザインが買い物向けのモデルと変わらない点は少し気になったとのこと。

e-bikeではないが、アシストはパワフルで21.7kgある車体もしっかり加速させてくれる

実際に乗ってみると、このドライブユニットらしい出だしからの強力なアシストを感じます。e-bike向けのスポーツタイプのドライブユニットに比べると、高いケイデンスでのアシストは苦手とされていますが、ミニベロでの街乗りレベルではそうしたネガもあまり感じません。

中林編集長の感想も「アシストのおかげで坂も負担なく、平地でも思ったより速度が出て快適」と悪くないもの。ただ、走っていると車速やペダルを踏む強さに合わせてアシストの強さが変わりますが、その変わり方がe-bikeに比べると滑らかではないという印象を受けたと話していました。

街乗りに向いたVotani「Q3」

続いて試乗したのはVotani(ヴォターニ)「Q3」。BESV(ベスビー)のエントリー向けブランドの小径モデルです。小柄な女性でもまたぎやすい低く抑えられたフレーム形状が特徴で、フェンダーやライト、サークル錠などが装備されているので街乗りには向いています。

U字に大きく湾曲したアルミフレームが特徴の「Q3」。重量は20.4kg。価格は163,000円
バッテリーはシートポスト後方の縦長のケースに収められるという独特の設計。容量は252Whで72kmの走行が可能
モーターはフロントの車軸(ハブ)と一体になっている。サスペンションも装備

「バッテリー部分が目立つ印象はあるものの、一体感があってスッキリ収まっている」というのが中林編集長の評価。カラーバリエーションも4色と豊富です。また、この価格でフロントサスペンションが装備されていることも好印象だったようです。

小径タイヤだが、フラットな路面ではアシストは十分で加速感もe-bikeっぽい

あらためて試乗しみると、アシストの制御が細やかでe-bike的なフィーリング。具体的には漕ぎ出した瞬間のアシストは穏やかですが、ペダルを回していくとアシストが増してくるので街乗りがしやすい印象です。中林編集長の感想は「アシストに不満はなかったが、後から乗った他モデルと比べるとちょっと物足りない印象も」というもの。大きな荷物を積んで坂道も走るという使い方にはちょっと合わなかったかもしれません。

DAHONの折りたたみモデル「Fu-Com」

試乗した中で唯一折りたたみ機構を有していたモデルがDAHON(ダホン)「Fu-Com(フューコム)」。バッテリーがシートポストに内蔵されているタイプで、スッキリとしたデザインも魅力です。

バッテリーの目立たないスマートなデザインが魅力。重量は18.5kg。価格は220,000円
リアのハブと一体となったタイプBAFANG(バーファン)製ドライブユニットを搭載。スッキリとした見た目に貢献
シートポスト一体型バッテリーの容量は360Whで、最大120kmのアシスト走行が可能

当初は折りたたみモデルにそれほど魅力を感じていなかったという中林編集長も「あったらあったで用途が広がるかと思い始めた」とのこと。クルマや電車に積んで移動する輪行は想定していなかったとしても、自宅での置き場所が限られるユーザーなどにはありがたい機構です。

車体が軽量で、アシストパワーもあるので上り坂も余裕が感じられます

ここまでに乗った2車種に比べると車体がコンパクトで軽量。取り回しもしやすく、中林編集長もその点は好印象だったようです。アシストはe-bikeらしく自然なフィーリングですが、パワフルさも兼ね備えるバーファンのドライブユニットらしい乗り味。「小径車ですが、パワフルなアシストのおかげでスピードも出しやすく快適」と中林編集長の評価も上々でした。ただ、バッテリーの接続ケーブルがシートポストの下端にあって引っ掛けてしまいそうなところが気になったようです。

BESVの人気モデル「PSA1」

ミニベロタイプのe-bikeでは人気が高いのがBESV(ベスビー)。今回はアルミフレーム「PSA1」と、その後継モデル「PSA2」を乗り比べてもらいました。まずは先行モデルの「PSA1」から試乗して、その違いを確認します。

「PSA1」はベスビーらしいフレームデザインに前後サスペンションを装備し、重量は19.6kg。価格は238,000円
コンパクトなバッテリーですが容量は378Whあり、走行可能距離は約90km
ドライブユニットはリアのハブと一体となったタイプ。変速機構は外装の7速

2017年にグッドデザイン賞を受賞しているロングセラーモデルですが、あらためて見ても古さを感じない車体です。e-bikeならではのデザインで「先進感がありつつもシンプルなのがいい」と中林編集長にも好印象だった様子。ディスプレイは中央部の視認性が良い位置に装備されています。

結構な上り坂でもペダルを回転させていればラクに上れてしまうのはe-bikeならでは

アシストフィーリングはベスビーのe-bikeらしい緻密な制御が感じられるもの。車速やペダルを踏む力に合わせて適切なアシストをしてくれるので、ペダルを回しているだけでスイスイ進めます。中林編集長も「コンパクトに見えるけどアシスト力など不満なし。変速も7速あるし、前後のサスペンションも装備されていて乗り心地もいい」と気に入ったようでした。小径のタイヤはギャップに弱いので、サスペンションが付いていると段差を乗り越える際なども安心です。

ベスビー最新モデル「PSA2」

今年6月にデビューしたばかりの「PSA2」にも試乗。外観上は先代モデルと大きな違いはありませんが、バッテリーやディスプレイのほか、トルクセンサーやコントローラーなどアシストに関わる部分がブラッシュアップされています。

価格は「PSA1」から3万円アップの268,000円。重量は19.6kgと変わっていません
バッテリーの鍵は抜いた状態でも走れるように。容量は少し大きくなって381Whで、走行可能距離は約90km
ディスプレイは中央から左手側に移設され、操作スイッチ一体型となりました

デザインに大きな変更はありませんが、カラーは「PSA1」と異なります。中林編集長はブルーが気に入ったとのこと。「ディスプレイが左手側になったのも一体感があっていい」との評価です。

アシスト制御に関わるセンサーやコントローラーが一新され、フィーリングがより上質になっています

実際に走らせてみると、アシストのフィーリングが進化しているのを感じます。一言でいえばより自然で上質になっている。センサーやコントローラーという制御の要が新しくなったことで、ペダルを踏む力に対してより適切なアシストが上乗せされる感覚です。これは中林編集長も感じたようで「アシストが何となく滑らかな気がした」と話しています。

さらにAIラーニング機能が追加された「ラーニングスマートモード」に対応しているので、ユーザーがペダルを踏む力やケイデンス、速度や斜度を数値化して分析。乗るたびにユーザーの特性に合わせたアシストに進化してくれるのです。

SMALOのAIスマートバイク「PX2」

最後にBESVが展開するスマートバイクブランドSMALO(スマーロ)の小径モデル「PX2」に試乗しました。シルエットは「PS」シリーズに似ていますが、AIドライビングシステムとIoT技術を採用しているのが、スマートバイクと呼ばれる所以です。

シルエットもスマートな「PX2」。重量は21.4kg。価格は348,000円。バッテリー容量は365Whで走行可能距離は約80kmです
「PS」シリーズのようなフレーム形状ですが、フロントライトがビルトインされているのが特徴
ディスプレイもステム部分にビルトインされ、スマートなシルエットに貢献している

デザイン面では「PS」シリーズと比べても先進的な雰囲気。中林編集長「せっかくのe-bikeだから、普通の自転車とは異なる未来感は好みに合う」と高評価でした。バッテリー部の形状は「PS」シリーズと共通するシンプルなものです。

シルエットは似ていますが「PS」シリーズよりもハンドルとサドルが近いようなライディングポジション。中林編集長はその点が気になったようで、ちょっと上半身が窮屈な印象を受けたとのことです。

坂道を上る際はペダルに力を込めて踏まないほうが、むしろラクに上れる不思議な感覚

アシストの特性も「PS」シリーズとは異なります。AI機能によるスマートアシスト制御はペダルを踏む力と速度などから最適なアシストを提供してくれますが、速度を維持するのに必要な力に対して足りない部分をアシストで補ってくれるような制御。スピードを上げようとペダルを踏み込むと、むしろアシストが弱くなっているように感じられるシーンもあり、むしろ「シンプルに何も考えず漕いでいれば不満なく快適に乗れる」(中林編集長)ような乗り味です。

ブレーキは油圧式ディスクブレーキなので、軽い力で強力な制動力を得ることが可能。IoT技術でスマホアプリから解錠や電源のON/OFF、GPSで位置情報を確認できるなど、見た目だけでなく機能的にもスマートバイクと呼ぶのにふさわしいモデルです。

合計6台のミニベロモデルに試乗しましたが、モデルごとにアシストのフィーリングや乗り味が異なることは中林編集長にもしっかりと感じてもらえたようです。同じモデルを選ぶにしても、多くの車種に試乗したうえで選べば納得感が違うでしょう。次はクロスバイクタイプに試乗してもらいます。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。