e-bike試乗レビュー
BESVのグラベルe-bike専用レンジエクステンダーを試す! アシスト距離と充電性能の実力は?
2025年9月19日 15:05
ベスビーのグラベルロードe-bike「JGR1.1」。ベスビージャパンが販売するオールラウンダースポーツeバイクのJGR1.1。ダウンチューブに内蔵しているバッテリーは360Wh(36V/10Ah)でアシストの走行可能距離は130kmとなっている。
これだけの容量があれば日帰りライドでバッテリー切れを起こすことはほとんどないと思われる。ただ、強めのアシストを多用する峠越えのルートや、泊まりがけのロングライドを走る場合は、帰り道でバッテリーが足りなくなったり、バッテリーの残量が気になり平地ではアシストをオフにするような乗り方をすることもあるだろう。
そこで今回紹介するのがベスビーが発売を開始した「JGR1.1専用レンジエクステンダー」である。
レンジエクステンダーとは追加バッテリーのこと。ドリンクボトルのような形状になっていて、フレームに専用のアタッチメントを介して固定するようになっている。バッテリー容量は198Wh(36V/5.5Ah)で重量は1.1kg。防水基準は1PX5と雨天のライドにも対応。充電にかかる時間は2.5時間だ。
公式サイトによると、アシスト走行距離を65km延長する能力があるとされているので、このレンジエクステンダーを装着すると、車体側バッテリーの容量とあわせて195kmのアシスト走行距離になるということ。これだけの能力があれば峠越えのルートでもバッテリー切れの心配はないだろう。また、泊まりがけのサイクリングにも充分対応するはずだ。
充電環境を大きく変えるe-bike用モバイルバッテリー?
レンジエクステンダーを装備することでアシストの可能距離は伸ばすことができるのだが、JGR1.1はスタンダードの状態でも十分なバッテリー容量があるので「レンジエクステンダーまでは必要じゃない」と思う人もいるだろうが、これにはもうひとつ、注目してほしいポイントがあるのだ。
一般的なエクステンダーは車体側のバッテリー容量がなくなったときに機能するもので、あくまでも追加バッテリーでしかないのだが、JGR1.1専用レジエクステンダーはベスビー独自の技術により「レンジエクステンダーから車体側バッテリーへ電気を充電することができる」のだ。
さらに「車体側バッテリーはレンジエクステンダーから給電を受けながら、ドライブユニットへ電気を送ることができる」というバッテリー技術の世界において高度な制御を可能とするものになっていた。こうした制御ができるe-bike用レンジエクステンダーは他には存在しないはずだ。
このような特徴を持つレンジエクステンダーの登場で大きく変わったことがある。それが充電環境だ。JGR1.1はバッテリーをフレームに内装していて容易に取り外すことができない構造。そのため充電するには、車体を電源の側に持っていく必要があったので、電源のない駐輪場に置くという条件では、充電環境的にJGR1.1を所有するのはちょっと難しいところがあった。
しかし、レンジエクステンダーから車体側バッテリーに充電できるとなれば、車体の側に電源はなくても構わない。乗るときには自宅で充電をしたレンジエクステンダーを装着すればいいのである。
あまりにもシンプルな問題の解決法であるためピンとこない部分もあるが、充電環境でJGR1.1の購入を悩んでいた人にとって、レンジエクステンダーがあればいいという事実は青天のへきれき、状況が一気に変わるものである。
実際にどんな感じで機能するのか?
とても興味深い機能を持ったJGR1.1専用レンジエクステンダーではあるが、発売されたばかりなので実際に使用した人はまだいないと思われる。
そこで今回はベスビーから取材用に貸し出してもらい、レンジエクステンダーから充電しながらJGR1.1を走らせてみることにした。
まずはレンジエクステンダーの装着だが、これは単なる追加バッテリーでなく車体側と協調して動作することから、車体側の制御プログラム更新と通信用端子でもある充電端子交換が必要となる。なお、これらの作業をベスビーではリワークと呼ぶ。
リワークはレンジエクステンダーを購入した場合、そのショップにて行なうものだが、今回はベスビーに車両を持ち込んで作業をしてもらった。作業時間は充電端子交換と車体にPCをつないで行なうソフトウェアのアップデートを含めて1~2時間といったところだ。
レンジクステンダーは、ドイツ製のマウントシステム「フィドロック」を使用してフレームのシートやチューブ、ダウンチューブなどに装着するが、今回はダウンチューブに装着してみた。形状はドリンクボトル似ているし、装着するところも普段ボトルケージを付ける場所なので取り付け後のスタイルに違和感を感じないものだった。
なお、レンジエクステンダーの電源ボタンや残量インジケーターは本体の頭の部分にあるので、シートチューブに取り付けるよりダウンチューブに装着するほうが乗車中でも首を少し下に向けるとインジケーターの確認がしやすいと思った。
レンジエクステンダーが車体側に充電を開始するには車体側バッテリーの残量が90%以下であることが条件となっているが、筆者は普段から充電しておくクセがついていたので、いざ試そうと思ってもバッテリーはフルの状態だった。
そこでバッテリーを減らそうとアシストモードを最も力強いパワーにセットし、さらにアシストが強めに発生する乗り方、速度域で数日走ってみたけどなかなか減らず、なんとか残量が約74%までしたところで、テスト走行開始することにした。電費がいいのはもちろん利点であるのだけど、意図的に減らしたいとき(ふつうはそんなことしない)には「まだ減らないのかぁ」と思ったりするものである。
レンジエクステンダーを動作させるには車体本体の電源が入ってることに加え、本体の電源をオンになっていることが条件。これを確認したあと、JGR1.1用に設定されているスマホアプリ「BESV SMART PLUS APP」を立ち上げると、車体側バッテリー、レンジエクステンダーそれぞれのバッテリー残量の表示が出る。
さらに、レンジエクステンダーから車体側バッテリーへ電気を送っていることを示すバーも表示され、それに伴い車体側バッテリーの残量が増えていき、本格的に走行を開始する頃には車体側バッテリー残量が89%まで復活。レンジエクステンダーから車体側バッテリーへの給電を早速確認することができた。
このレンジエクステンダーを制御するプログラムは車体側、レンジエクステンダー側のバッテリーを保護するためにフル充電と使い切りを避けるような制御があるのでレンジエクステンダーを繋いで充電した場合は約9割の充電量でストップするようになっている。そして電気を送るほうのレンジエクステンダーも残量が約5%になると給電を止める制御が働く。
今回の試走ではレンジエクステンダーを装備することでどれくらいアシスト走行距離が増えるかをチェックしたかったので、ほぼ全行程で速度を24km/h以下にして常時アシストを使う乗り方をしてみた。ちなみにアシストモードは一般的に多用するであろう「スマートモード」にセットした。
コースは、東京のお台場や有明、そして若洲といった海沿いのエリアを走ることにした。ここは自転車レーンや歩道の自転車走行帯がしっかり整備されているので走りやすいし、海沿いまで出られるところが多いので、ひたすら走り続けるようなライドじゃなく、適当に休憩をしながらののんびりライドが楽しめるので、東京近郊に住んでいてe-bikeに乗っている人であれば、ぜひ走ってみてもらいたいところだ。
試走ではアシストを常時使う速度で走り続けるのでなく、撮影のためにちょこちょこと止まっている。そのため走り出すごとに強めのアシストがかかっている。これは信号でのストップ&ゴーを繰り返すようなものなので、走行可能距離のデータ的にはメーカーが測定した数値より厳しいものになるだろう。でも、ユーザーとしてはよりリアルなデータが知りたいのでこの試し方はありだと思っている。
試走中はちらちらとスマホアプリに表示されるバッテリー残量を見ていたが、走行中であっても車体側バッテリーの残量が約90%になるような制御がされていたので、フレームのトップチューブに付いているLEDのバッテリー残量インジケーターはいくら走ってもまったく減らない状態だ。
そして、スタートから27~29kmほど走ったところで、レンジエクステンダー側のバッテリー残量が5%を表示したので、ここから先のアシストは、車体側バッテリーの電気で行なうこととなる。なお、29kmでエクステンダー側を使い切ったといっても、スタート時点で車体側バッテリーの残量が70%だったので、ここから車体側バッテリー残量が70%になるまでが、エクステンダーの容量でカバーできるアシスト可能距離ということになる。
引き続き、アシストを使う速度域をキープしつつ、撮影のためのストップも行ないながら残りの行程を走ってみた。そして、車体側バッテリーの残量が約70%になったところでストップ。その時のトリップ(走行距離)は58kmとなっていた。
ベスビーが公称している数値は65kmだけれど、走行条件的にはストップ&ゴーが多い今回の試走のほうが厳しいことを考えると公称値と今回の実測値に大きな違いはないだろう。また、実際に走った感覚から言うと、河川敷のサイクリングコースのような平坦でストップ&ゴーの機会が少ないところであれば公称値と同じ数値は比較的簡単に出そうな気がする。それにJGR1.1本来の巡航速度で走ることができれば、アシストを使わない時間帯も増えるので走行可能距離は伸びるという感覚であった。
このような結果になった今回の試走。情報として事前に聞いてはいたが、レンジエクステンダーから車体側バッテリーへの給電できる機能はとても興味深く、冒頭でも書いたようにこの機能があれば駐輪場に電源がなくても充電に困らない。このことはJGR1.1にとって扱いやすさを向上させるものである。
また、走行していてわかったこととして、エクステンダーを装備すると車体側バッテリーは常に90%の充電状態になるので、例えば車体側バッテリーが減っていた状態であっても、毎日の通勤や買い物と言った短い距離の移動を続けていれば、数日で車体側バッテリーはフル充電される。すると、しばらくはレンジエクステンダーを装備しなくても問題なく乗れてしまうのだ。
e-bikeを所有することにおいてバッテリーの充電をどうするかは重要な部分であるが、このJGR1.1専用レンジエクステンダーはそうした問題を解決できるものであった。もし、充電環境の問題でJGR1.1の購入をためらっている人がいるならば、少し多めの出費にはなるがレンジエクステンダーの同時購入を検討してはどうだろうか。




































