e-bike試乗レビュー

BESVのグラベルe-bike専用レンジエクステンダーを試す! アシスト距離と充電性能の実力は?

BESV(ベスビー) JAPANが発売を開始したJGR1.1専用レンジエクステンダーを実走行でチェックしてみた

ベスビーのグラベルロードe-bike「JGR1.1」。ベスビージャパンが販売するオールラウンダースポーツeバイクのJGR1.1。ダウンチューブに内蔵しているバッテリーは360Wh(36V/10Ah)でアシストの走行可能距離は130kmとなっている。

これだけの容量があれば日帰りライドでバッテリー切れを起こすことはほとんどないと思われる。ただ、強めのアシストを多用する峠越えのルートや、泊まりがけのロングライドを走る場合は、帰り道でバッテリーが足りなくなったり、バッテリーの残量が気になり平地ではアシストをオフにするような乗り方をすることもあるだろう。

そこで今回紹介するのがベスビーが発売を開始した「JGR1.1専用レンジエクステンダー」である。

レンジエクステンダーとは追加バッテリーのこと。ドリンクボトルのような形状になっていて、フレームに専用のアタッチメントを介して固定するようになっている。バッテリー容量は198Wh(36V/5.5Ah)で重量は1.1kg。防水基準は1PX5と雨天のライドにも対応。充電にかかる時間は2.5時間だ。

公式サイトによると、アシスト走行距離を65km延長する能力があるとされているので、このレンジエクステンダーを装着すると、車体側バッテリーの容量とあわせて195kmのアシスト走行距離になるということ。これだけの能力があれば峠越えのルートでもバッテリー切れの心配はないだろう。また、泊まりがけのサイクリングにも充分対応するはずだ。

JGR1.1用レンジエクステンダーの価格は59,800円。また、新車のJGR1.1にレンジエクステンダーを標準装備した「バッテリー+エディション」も設定されている。価格は450,000円(JGR1.1単体の車両価格は398,200円)となっている

充電環境を大きく変えるe-bike用モバイルバッテリー?

レンジエクステンダーを装備することでアシストの可能距離は伸ばすことができるのだが、JGR1.1はスタンダードの状態でも十分なバッテリー容量があるので「レンジエクステンダーまでは必要じゃない」と思う人もいるだろうが、これにはもうひとつ、注目してほしいポイントがあるのだ。

一般的なエクステンダーは車体側のバッテリー容量がなくなったときに機能するもので、あくまでも追加バッテリーでしかないのだが、JGR1.1専用レジエクステンダーはベスビー独自の技術により「レンジエクステンダーから車体側バッテリーへ電気を充電することができる」のだ。

さらに「車体側バッテリーはレンジエクステンダーから給電を受けながら、ドライブユニットへ電気を送ることができる」というバッテリー技術の世界において高度な制御を可能とするものになっていた。こうした制御ができるe-bike用レンジエクステンダーは他には存在しないはずだ。

JGR1.1専用レンジエクステンダーを装備すると、レンジエクステンダーから車体側バッテリーに給電しつつ車体側バッテリーはドライブユニットに放電するという高度なバッテリー制御が可能になる

このような特徴を持つレンジエクステンダーの登場で大きく変わったことがある。それが充電環境だ。JGR1.1はバッテリーをフレームに内装していて容易に取り外すことができない構造。そのため充電するには、車体を電源の側に持っていく必要があったので、電源のない駐輪場に置くという条件では、充電環境的にJGR1.1を所有するのはちょっと難しいところがあった。

しかし、レンジエクステンダーから車体側バッテリーに充電できるとなれば、車体の側に電源はなくても構わない。乗るときには自宅で充電をしたレンジエクステンダーを装着すればいいのである。

あまりにもシンプルな問題の解決法であるためピンとこない部分もあるが、充電環境でJGR1.1の購入を悩んでいた人にとって、レンジエクステンダーがあればいいという事実は青天のへきれき、状況が一気に変わるものである。

マンションなどの集合住宅では、駐輪場に自由に使える電源がなかったりすることが多いが、そういったところでも充電に困らないという環境が作れる

実際にどんな感じで機能するのか?

とても興味深い機能を持ったJGR1.1専用レンジエクステンダーではあるが、発売されたばかりなので実際に使用した人はまだいないと思われる。

そこで今回はベスビーから取材用に貸し出してもらい、レンジエクステンダーから充電しながらJGR1.1を走らせてみることにした。

まずはレンジエクステンダーの装着だが、これは単なる追加バッテリーでなく車体側と協調して動作することから、車体側の制御プログラム更新と通信用端子でもある充電端子交換が必要となる。なお、これらの作業をベスビーではリワークと呼ぶ。

リワークはレンジエクステンダーを購入した場合、そのショップにて行なうものだが、今回はベスビーに車両を持ち込んで作業をしてもらった。作業時間は充電端子交換と車体にPCをつないで行なうソフトウェアのアップデートを含めて1~2時間といったところだ。

ベスビーに筆者のJGR1.1を持ち込みリワークをしてもらった。作業内容は充電端子交換とプログラムのアップデート
電気を流すだけではなく、制御のための信号のやり取りも増えるので通信ポートを兼ねる充電端子を交換する

レンジクステンダーは、ドイツ製のマウントシステム「フィドロック」を使用してフレームのシートやチューブ、ダウンチューブなどに装着するが、今回はダウンチューブに装着してみた。形状はドリンクボトル似ているし、装着するところも普段ボトルケージを付ける場所なので取り付け後のスタイルに違和感を感じないものだった。

なお、レンジエクステンダーの電源ボタンや残量インジケーターは本体の頭の部分にあるので、シートチューブに取り付けるよりダウンチューブに装着するほうが乗車中でも首を少し下に向けるとインジケーターの確認がしやすいと思った。

ダウンチューブのボトル台座にフィドロックのベースを取り付けレンジエクステンダーを装着。脱着はレンジエクステンダーをひねるだけの簡単さだ
レンジエクステンダーと車体は専用のケーブルを使って充電端子で接続される。ダウンチューブ、シートチューブのどちらでも長さが足りるようになっている

レンジエクステンダーが車体側に充電を開始するには車体側バッテリーの残量が90%以下であることが条件となっているが、筆者は普段から充電しておくクセがついていたので、いざ試そうと思ってもバッテリーはフルの状態だった。

そこでバッテリーを減らそうとアシストモードを最も力強いパワーにセットし、さらにアシストが強めに発生する乗り方、速度域で数日走ってみたけどなかなか減らず、なんとか残量が約74%までしたところで、テスト走行開始することにした。電費がいいのはもちろん利点であるのだけど、意図的に減らしたいとき(ふつうはそんなことしない)には「まだ減らないのかぁ」と思ったりするものである。

バッテリーを減らすため仕事の合間に走りに出かける。そういえば取り外しができる簡易的なフェンダーを装着してみた。本来はフロント用ではあるが、リアにもつけてみた。結果は……あとで紹介しよう

レンジエクステンダーを動作させるには車体本体の電源が入ってることに加え、本体の電源をオンになっていることが条件。これを確認したあと、JGR1.1用に設定されているスマホアプリ「BESV SMART PLUS APP」を立ち上げると、車体側バッテリー、レンジエクステンダーそれぞれのバッテリー残量の表示が出る。

さらに、レンジエクステンダーから車体側バッテリーへ電気を送っていることを示すバーも表示され、それに伴い車体側バッテリーの残量が増えていき、本格的に走行を開始する頃には車体側バッテリー残量が89%まで復活。レンジエクステンダーから車体側バッテリーへの給電を早速確認することができた。

車体側の電源の他にエクステンダー側の電源も入れる。赤色のLEDはバッテリー残量の表示。バッテリーが減るとLEDが1つずつ消えていく。なお、車載側バッテリーの残量がない状態ではレンジエクステンダーの機能が立ち上がらないので、車体側バッテリーを使い切る前にレンジエクステンダーの電源を入れること
「BESV SMART PLUS APP」の表示。車体側バッテリーが左側、レンジエクステンダーが右側でそれぞれリアルタイム容量が表示される。エクステンダーから車体側バッテリーへ給電していることを示す表示が出ている

このレンジエクステンダーを制御するプログラムは車体側、レンジエクステンダー側のバッテリーを保護するためにフル充電と使い切りを避けるような制御があるのでレンジエクステンダーを繋いで充電した場合は約9割の充電量でストップするようになっている。そして電気を送るほうのレンジエクステンダーも残量が約5%になると給電を止める制御が働く。

レンジエクステンダーを使う給電では車体側バッテリー、エクステンダーの両方を保護する機能もある。これは家庭用の充電器にも備わる機能

今回の試走ではレンジエクステンダーを装備することでどれくらいアシスト走行距離が増えるかをチェックしたかったので、ほぼ全行程で速度を24km/h以下にして常時アシストを使う乗り方をしてみた。ちなみにアシストモードは一般的に多用するであろう「スマートモード」にセットした。

JGR1.1にはモードなどを表示するディスプレイはついていない。そのかわり新たに設定された。HMIパネルのモード切り替えボタンの色でどのモードかを表示している。縦に並ぶ青色LEDは車体側バッテリーの残量の表示

コースは、東京のお台場や有明、そして若洲といった海沿いのエリアを走ることにした。ここは自転車レーンや歩道の自転車走行帯がしっかり整備されているので走りやすいし、海沿いまで出られるところが多いので、ひたすら走り続けるようなライドじゃなく、適当に休憩をしながらののんびりライドが楽しめるので、東京近郊に住んでいてe-bikeに乗っている人であれば、ぜひ走ってみてもらいたいところだ。

お台場、有明、若洲のエリアはポタリングするには絶好なルート
公園内の道も多いし、公道に出ても自転車レーンの設定がある。また、歩道も広く歩行者用と自転車用に分かれているので、安心して走れるところだ

試走ではアシストを常時使う速度で走り続けるのでなく、撮影のためにちょこちょこと止まっている。そのため走り出すごとに強めのアシストがかかっている。これは信号でのストップ&ゴーを繰り返すようなものなので、走行可能距離のデータ的にはメーカーが測定した数値より厳しいものになるだろう。でも、ユーザーとしてはよりリアルなデータが知りたいのでこの試し方はありだと思っている。

ここからは、途中で止まって、撮影した画像を載せていこう。e-bikeは走り出しがアシストの力により楽なので「止まる」ということに抵抗がない。だからあちこち寄ったり写真を撮ったりするライドには向いている
青海地区のシンボルでもあった船の科学館はすでに解体されていた。同じく、日本財団が管理する南極観測船「宗谷」の係留展示は継続して行なわれている
青海埠頭にある大型クレーン。埠頭のすぐ横まで公園があるので、間近で見ることができる
青海や有明は植樹も多いので、暑い日でも日陰のあるところを走れる。休憩する場所もとても多い
ここは暁ふ頭公園。最近、キレイに整備されてバーベキューなどができるようになっている
暁ふ頭公園から見た東京湾。前の埠頭に大きな船がつくことも多く、タイミングが合えば接岸や離岸のシーンが見られる
途中にちょうどいい水たまりがあったので、フェンダーの効果を試してみた。フロント用ということでフロントに付けた分はしっかり機能していたが、リアに付けたものに関しては、予想どおり長さが足りずの結果
20km/hでは盛大に跳ね上げた。次に15km/hも試してみたが、こちらもフェンダーの意味はなし。そして10km/h以下にスピードを落とすと何とか効いているという印象。やはりリアにはリア用が必要だ

試走中はちらちらとスマホアプリに表示されるバッテリー残量を見ていたが、走行中であっても車体側バッテリーの残量が約90%になるような制御がされていたので、フレームのトップチューブに付いているLEDのバッテリー残量インジケーターはいくら走ってもまったく減らない状態だ。

そして、スタートから27~29kmほど走ったところで、レンジエクステンダー側のバッテリー残量が5%を表示したので、ここから先のアシストは、車体側バッテリーの電気で行なうこととなる。なお、29kmでエクステンダー側を使い切ったといっても、スタート時点で車体側バッテリーの残量が70%だったので、ここから車体側バッテリー残量が70%になるまでが、エクステンダーの容量でカバーできるアシスト可能距離ということになる。

走行中でも車体側バッテリーは約90%になるように給電制御されている
有明エリアから新木場まで移動。奥に見えるのは葛西臨海公園の観覧車。ここからは海沿いの道を走っていく
途中にちょっと寄り道。地下鉄の車両基地の上を通る歩道橋は通路の部分に車内の座席などをモチーフにしたペイントがされている
鉄道マニアというわけではないが、車両基地とは見ていておもしろい
この日は風がかなり強く、向かい風になるところでは「e-bikeで良かった」という感じ。こういう部分でも強めのアシストを余計に使っていただろう
新木場には東京ヘリポートがあり、遊歩道からヘリポートの様子がよく見える。見学用のベンチまで用意されている
新木場エリアを抜けると若洲エリアになる。ここも海沿い自転車も走れる遊歩道が整備されている。とても走りやすいところだが歩行者優先なので、スピードは控えて走ること
スタートしてから27~29kmあたりでレンジエクステンダー側の電気が5%となりバッテリー保護のために給電を停止した
ここから先は、車体側バッテリーの残量が減っていくのみとなる。ちなみ速度の表示があるのはスクショの撮り方を変えたから、これまでは止まってから画面操作でスクショを撮っていたが「Siriに頼めばいいじゃない?」といまさら気がついたわけだ

引き続き、アシストを使う速度域をキープしつつ、撮影のためのストップも行ないながら残りの行程を走ってみた。そして、車体側バッテリーの残量が約70%になったところでストップ。その時のトリップ(走行距離)は58kmとなっていた。

ベスビーが公称している数値は65kmだけれど、走行条件的にはストップ&ゴーが多い今回の試走のほうが厳しいことを考えると公称値と今回の実測値に大きな違いはないだろう。また、実際に走った感覚から言うと、河川敷のサイクリングコースのような平坦でストップ&ゴーの機会が少ないところであれば公称値と同じ数値は比較的簡単に出そうな気がする。それにJGR1.1本来の巡航速度で走ることができれば、アシストを使わない時間帯も増えるので走行可能距離は伸びるという感覚であった。

豊洲の公園からレインボーブリッジを見る。のんびり走っているので夕方になってきた
クルマを駐めてあるスタート地点に近づくが、車体側バッテリーの残量が狙ったところまで減ってなかったので、あちこち遠回りしてみる
スタート時のバッテリー残量になったところで(少々オーバーしたが)、トリップを確認すると58kmとなっていた。ストップ&ゴーが多くバッテリーの消費を気にしない走り方をしていたわりに公称値近くの数値になった

このような結果になった今回の試走。情報として事前に聞いてはいたが、レンジエクステンダーから車体側バッテリーへの給電できる機能はとても興味深く、冒頭でも書いたようにこの機能があれば駐輪場に電源がなくても充電に困らない。このことはJGR1.1にとって扱いやすさを向上させるものである。

また、走行していてわかったこととして、エクステンダーを装備すると車体側バッテリーは常に90%の充電状態になるので、例えば車体側バッテリーが減っていた状態であっても、毎日の通勤や買い物と言った短い距離の移動を続けていれば、数日で車体側バッテリーはフル充電される。すると、しばらくはレンジエクステンダーを装備しなくても問題なく乗れてしまうのだ。

e-bikeを所有することにおいてバッテリーの充電をどうするかは重要な部分であるが、このJGR1.1専用レンジエクステンダーはそうした問題を解決できるものであった。もし、充電環境の問題でJGR1.1の購入をためらっている人がいるならば、少し多めの出費にはなるがレンジエクステンダーの同時購入を検討してはどうだろうか。

レンジエクステンダーを装着すれば車体側バッテリーは常にフル充電の状態をキープできる。それだけに普段はレンジエクステンダーなしで乗っていて、バッテリー残量が半分くらいになったら、レンジエクステンダーを装備し走りながら充電するといった使い方が便利そうだ
フレーム内蔵バッテリーだったため、住んでいる環境によっては選びにくいe-bikeだったJGR1.1だが、レンジエクステンダーがあれば、その問題も解決。オーナーとしていいe-bikeだと思っているので悩んでた人はもう一度、購入を検討してみてほしい。いずれは、読者のJGR1.1を取材してみたい
この日の走行ルート。近場を回ってるような印象だったけど、距離はけっこう伸びた
深田昌之