e-bike試乗レビュー

ヴィンテージのバイクみたいにファットなe-bikeに乗ってみた。型式認定も取得で安心

近年、街中でも一見するとモーターサイクルのように見えるe-bikeを目にする機会が増えています。太いタイヤに、大きめのフロントライト、ガソリンタンクのように見えるバッテリー配置などが特徴で、今やe-bikeの1ジャンルを形成しつつあります。こうした“太足系”e-bikeも、これまでいくつか乗って来ましたが、従来の自転車とは明確に異なる乗り味。タイヤが太くなると路面の抵抗も大きくなるので、アシストのあるe-bikeだからこそ成立する乗り物だといえます。

モーターサイクル黎明期の雰囲気を再現

そんなファットバイクのカテゴリーにオーストラリア生まれのMichael Blast(マイケル ブラスト)というブランドが新たに加わりました。日本に上陸したのは3モデルですが、サイクルモード東京2023の会場で目にしたときから気になっていたのが「Greaser Classic(グリーサー クラシック)」というモデル。モーターサイクルのような雰囲気ですが、1920年代のモーターサイクル黎明期のマシンを思わせるヴィンテージなデザインが特徴です。

ホイールベースが長めの車体で、ヴィンテージな雰囲気の「Greaser Classic」。価格は396,000円で型式認定を取得しているのもポイント

黎明期のモーターサイクルは、その名のとおり自転車のフレームにエンジンを積んだような作りでした。つまり、自転車にモーターとバッテリーを積んだe-bikeで再現するには適したデザインと言えるかもしれません。個人的には、1919年にイギリスで誕生し、品質と性能の高さから「モーターサイクルのロールスロイス」と称されたブラフ・シューペリアを思わせる雰囲気がグッと来ます。

太足系のe-bikeは20インチ程度のタイヤ径が多いのですが、「Greaser Classic」は26インチと大径のタイヤを装備し、スマートな印象に仕上がっています。独特の造形のフレームはアルミ製で、そのフレームに抱え込まれるようにマウントされるガソリンタンクのようなケース内にバッテリーが収められています。

ロー&ロングなスタイルを作り出しているフレーム。バッテリーケースを抱え込むような独特のデザイン
ガソリンタンクのような造形のバッテリーケースには、ニーグリップパッドのようなものも装備される
26×3.0インチのタイヤを履く。タイヤだけでなく、リムも幅広でエアボリュームも大きい
デザイン上のポイントともなっているLEDヘッドライト。クラシカルな砲弾型のシルエット
ハンドルは手前にベンドした形状で、グリップがやや下がったシルエットになっているのがユニーク

ドライブユニットはバーファン製のリアハブモータータイプ。ユニークな車体のデザインを邪魔しない作りになっています。アシストモードは5段階に調整可能で、アシスト走行が可能な距離は最大70km。型式認定を取得しているので、安心して選べるのもポイントです。変速コンポーネンツはシマノ製の7速で、ブレーキは前後とも油圧式ディスク。車体車重が28kgあるので、制動力を確保するためには油圧式ディスクブレーキが必要だったのでしょう。

バーファン製リアハブモータータイプのドライブユニットを採用
コントローラーディスプレイは左手側に装備。カラー表示で見やすく、アシストモードの切り替えもしやすい
変速ギアはシマノ製Altus(アルタス)グレード。7段の変速が可能で、フロント側には変速機構は搭載しません
前後とも油圧式ディスクブレーキ。ディスク径はフロント180mm、リア160mmとなっている

各部のパーツセレクトも、クラシックなイメージを掻き立てるのに一役買っています。レザー製のグリップやサドル、ウッド製の天板を採用したリアキャリアなどを装備。前後にはタイヤ径に合わせた幅広のフェンダーが装着されており、こうした装備もヴィンテージモーターサイクルのような雰囲気を高めています。

幅広のサドルはレザー製の表面にステッチが施され、クラシックなモーターサイクルのようなイメージ
サドルの裏側には大きめのスプリングが装備されています。これもリジッド時代のモーターサイクルで採用されていたもの
リアキャリアにはウッド製の天板を装備。水平基調のシルエットに一役買うとともに、リアタイヤからの泥跳ねもカバーしてくれそう
前後には幅広のフェンダーが装着される。フロントにはブランドロゴも配置。デザイン重視でカバー範囲はやや短い
フレーム中央に近い箇所にサイドスタンドを標準で装備。接地面も広くて安定感も高い
フレーム下辺部分には補強のパイプが追加されている。ホイールベースが長いため、剛性を確保するためと思われる
フロントフォークのトップブリッジ部分もモーターサイクルのような構造。ステムにはブランドロゴが入っている

ユニークな姿勢でスピード感のある乗り味

サドルの高さは調整可能ですが、またぎやすい高さに調整しても、ハンドル位置は相対的に低く、乗車姿勢は思ったより前傾姿勢になります。ペダルの位置は、サドルに比べると前方にあるクルーザーっぽい配置ですが、上体は前傾になるので、これまでに乗ったどのe-bikeとも似ていません。

ペダルは前方に踏み降ろすような着座位置ですが、上体は前傾姿勢になるユニークなライディングポジション

ペダルを前方に踏み降ろす感じになるので、自分の体重をかけにくく自転車としてはちょっと漕ぎにくい姿勢。ただ、実際に漕ぎ出してみると脚への負担はそれほど感じません。これは完全にアシストの恩恵。バーファン製ドライブユニットらしく、漕ぎ出しからグイグイ引っ張ってくれるようなアシストフィーリングと相性が良いと感じました。

着座位置が低めで、ハンドル位置も低いので乗っていると結構スピード感があります。タイヤが太く、重量重重もあるのでアシストのなくなる24km/h以上で巡航するのはあまり得意ではありませんが、15~20km/hくらいの速度で走っていても、疾走感があるので爽快です。

風を切って走って行く感覚が気持ちいい。ロードバイクなどに比べると速度は出ていないのにスピード感があります

効率的にペダリングできるライディングポジションではありませんが、サドル形状がお尻を受け止めてくれて、ハンドル角度も手首に沿う形状なので、体にかかる負担は見た目ほど大きくありません。長時間乗っていると、体重のかかる手のひらが疲れてくるくらい。グリップもエルゴノミック形状なので、ロードバイクで出かけるような長距離ツーリングはともかく、ちょっと遠出するくらいの距離であれば問題なく走れます。

坂道も上ってみましたが、アシストを最もパワフルな「5」に入れておけば、結構な激坂でも上れてしまいます。ライディングポジション的に、立ち漕ぎはしにくく、スタンディング姿勢になってもあまり効果はありませんでしたが、座ったままでもペダルを回し続けていれば上って行ってくれます。アシストを切っても試してみましたが、早々に諦めるくらいキツかったので、アシストの効果は絶大です。

この坂が上れれば、たいていの坂は上れるだろうという角度のある坂ですが、座ったまま上り切ることができました

筆者はモーターサイクルにも乗りますが、「Greaser Classic」の乗り味はこれまで乗ってきたe-bikeやモーターサイクルと比べても、似ているものが思いつきません。さすがに1920年代のものには乗ったことがないので、もしかするとその時代のモーターサイクルとは似ているのかもしれないと想像するのもなかなか楽しい経験でした。

独自性のあるデザインだけに、走っているときの注目度は抜群。試乗中もかなり多くの人に見られたので、目立ちたがりの人には格好のアイテムでしょう。e-bikeだからこそ実現できたスタイルと、独自の乗り味で、こういう選択肢が増えていくとe-bikeはさらにおもしろくなりそうです。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。