e-bike試乗レビュー

二度見される圧倒的な存在感にどこでも走れる走破性!! BRONXのファットバイクe-bikeが楽しかった

ファットバイクタイプのe-bike「BRONX(ブロンクス) e-bike TRX-2WD」

これは……非常におもしろいのでは? と惹かれたe-bikeがあります。BRONX CYCLES(ブロンクスサイクルズ)の「TRX-2WD」という、ファットバイクタイプのe-bikeです。とにかくタイヤが太い!! 存在感も凄いっ!!

ファットバイクとは、21世紀になって生まれた新タイプの自転車です。非常に太い(ファットな)タイヤを装着している自転車(バイク)だから、ファットバイク。タイヤ幅は10センチ前後からそれ以上あり、これにより独特の快適な乗り心地があったり、悪路や雪道も平気で走れたりします。強烈な外見のファットバイクですが、実際はほかの自転車にない走行性能があったりもするわけです。

なお、BRONXは湘南発祥の自転車メーカー「RAINBOW BIKE」のファットバイクブランドです。ビーチクルーザーブランドの「RAINBOW BEACH CRUISERS」もあります。

筆者もファットバイクに乗ったことがありますが、ほかの自転車にはない走行感が非常に楽しい乗り物です。また、段差の走破性が非常に高く、凸凹や小溝の多い道でも安心して走れます。ただ、タイヤが太いことから走行抵抗が大きく、スピードはあまり出ませんし、やや長距離を走るとけっこう疲れたりもします。

そんな特性のファットバイクですが、これがe-bikeになったら非常にイイのでは? いや、タイヤの走行抵抗などをドライブユニットがカバーしてくれて、とても快適に走れるのでは? と期待を込めて、実車をお借りして試走してみました。というわけで以降、「BRONX e-bike TRX-2WD」のレビューをお届けします。

「BRONX e-bike TRX-2WD」って、どんなe-bike?

まずはTRX-2WDの主なスペックを見ていきましょう。

TRX-2WDはファットバイクタイプのe-bike。リジット(サスなし)マウンテンバイクのような雰囲気です。なお、車体は型式認定を取得したプロトタイプでで、発売時のモデルとは異なる場合があります。5~6月頃の発売予定で、予価は220,000円
こちらは「BRONX TRX」というファットバイク。e-bikeのTRX-2WDはこの車体がベースとなっているように見えます。価格は94,600円
タイヤの太さが際立ちます。一瞬「モーターサイクル?」と思ってしまいそう
タイヤはフロント・リアともにVEE Tireの「BULLDOZER」で、サイズは26×4.7インチ。約12センチの幅があります
タイヤのブロックパターン
ドライブユニットはバーファン製で、フロントハブ位置にあります。型番は「FM G060.350.DC」で、定格出力は250W、最大トルクは80Nmです
バッテリーはダウンチューブ上に外装されており、容量は約313Wh。着脱可能で、車載したままでも取り外した状態でも充電できます。ケーブルが見えていますが、発売時はこのあたりも変更になるそうです
ギアは9段変速で、チェーンリングは38T、カセットスプロケットは11-32T(シマノCS-HG200-9S)。リアディレイラーはmicroSHIFTの「Marvo LT」
フロントは油圧式ディスクブレーキ
リアも油圧式ディスクブレーキ。コンポーネンツはどちらもTEKTROブランド品です
ハンドル周り
操作スイッチ兼ディスプレイは左側。アシストモードは、0(オフ)/1(最弱)/2/3/4/5(最強)を切り替えられます
サドル周辺。シートクランプはクイックリリース式
比較的柔らかく幅が広めのサドルが装着されていました
それにしてもタイヤが太くて迫力があります
さっそくこんなところを走ってみました。河川敷でブロックが敷き詰められたエリア
普通の自転車ならすぐにタイヤをとられてしまう凹凸ですが、TRX-2WDだと何事もなかったかのように走破できます。タイヤの空気圧を少し下げると突き上げもわずかなものになる。どんな道でも走れそう……これは楽しい試走になりそうです!

マウンテンバイク的に走れるかな?

まずは、いきなりですが、TRX-2WDがマウンテンバイク的に走れるかどうかを試してみました。たぶん街乗りはラクで楽しいはずだと予測できましたので、激坂や悪路をどんな感じで走れるのか、先にそのあたりを試してみたかったというわけです。

そこで近所の裏山のようなところへ。ちょっと小高い丘まで上りつつ、丘の林の中にあるダートロードを走ってみることにしました。

裏山のようなところへ行く道中にはアップダウンがあり、ところどころに激坂も。展望台のような高さのある場所まで一息で走れました。ギア比の関係で、e-MTBほどは激坂が得意という感じではありませんが、普通の自転車なら押して歩きたくなるような坂でもグイグイと上って行けます
さらに激坂を通過しつつ小高い丘へと進みます。荒れた道でも、タイヤのエアボリュームが非常に大きいので、地面の突き上げをあまり感じることなく安楽に走れます。泥の路面でもグリップが良好なのは、タイヤの良さだと思います。それと、TRX-2WDに装着されているサドルも快適。このサドルの快適さとファットバイクならではの乗り心地の良さから、今回の試走ではお尻が痛くなることはまったくありませんでした
枯れ草の上でもタイヤを取られることなく走れます
グラベルロードバイクでも気をつけないとタイヤが取られるようなふかふかの路面ですが、この太いタイヤだと危なげなく安定的に走れます。砂地や雪上にも強いかもしれません
ところどころに木の根が張り出したようなオフロードでも、ほとんど問題なく走破できます。ただ、e-MTBと違い、TRX-2WDはハンドリングが少々重いので、ハンドル捌きで悪路を乗り越えるようなことは苦手。悪路をまっすぐ進むのは得意ですが、曲がりくねった悪路だと走りにくい気がしました。また、フロントタイヤにドライブユニットがあるため、凸凹の激しい道でとくに上り坂だったりすると、凸凹を乗り越えるときにフロントタイヤがホイルスピンすることが何度かありました
楽しんで走っているうちに丘の上に到着。e-MTBやグラベルロードタイプでなら来る気になる丘の上ですが、人力のファットバイクだとまず行こうと思わない高所です。でもファットバイクe-bikeのTRX-2WDだと、楽しくラクに上ってくることができました

太いタイヤで乗り心地がよく、やや前のめりという感じのアシスト特性を持つバーファン製ドライブユニットのパワフルさで、楽しく心地よく登坂できました。またダートロードやトレイル風の道にも意外なほど強い。TRX-2WDはけっこうオールマイティなe-bikeかもしれません。

ただし、とても目立ちます。太いタイヤに誰もが視線を送りますし、タイヤが放つロードノイズも「ヴォォォ~」とけっこう大きめ。丘の上ですれ違ったハイカーに「すごいの乗ってるね~」とおもしろがられてしまいました。存在感抜群ですが、視線もたっぷり浴びてしまうe-bikeです。

街乗りがラクで楽しい! 安全性もしっかりある

今度は街乗り。TRX-2WDに合いそうな場所に行き、街中で走ってみました。場所は米軍横田基地がある福生市です。

横田基地のゲート前にて。TRX-2WDはこういう雰囲気の場所によく合います。そしてやっぱり目立ちます。アメリカ人ソルジャーという感じの人たちがみんなTRX-2WDをガン見していきました
横田基地前の通りを走ってみました。段差や凸凹があっても難なく安定的に走行できるのは、さすがのファットバイク。普通の自転車なら要注意という感じの段差や溝があっても、ファットバイクだとまったく問題なく通過できることが多いです。路面を問わず非常に安全に走れるe-bikeという印象。ただし、それに慣れすぎて段差や溝に対して無頓着になるのは危険ですね。しかしまあどんな路面状況でも本当に気楽に走れて、とても快適です
走っていて感じるのは、TRX-2WDはスピードに乗せて走るのは苦手ということ。路面抵抗が大きいからか、スピードを出してもすぐに減速してしまいます。筆者的な感覚ですが、写真のような平坦な道では、多くのe-bikeで22~24km/hで巡航できるという印象があります。しかしTRX-2WDの場合、最高アシスト速度の24km/hまですぐ到達するものの、そこからのスピードの落ち方が早く、だいたい20km/h以下、のんびりしていると18km/hくらいの巡航速度になるというイメージです。やはり速く走ることにはあまり向かないe-bikeだと感じられました
タイヤが極太なので「小回りがあまり利かなそう」と思い込んでいましたが、そうでもないようです。クイックなハンドリングは得意ではないものの、安定的に小回りすることもできました。直進安定性が高く、普通に取り回しもいいので、外見よりずっと扱いやすいe-bikeだと思います

福生市の基地前の道路は平坦なので、そこを走るならTRX-2WDのアシストはそんなに必要ではないかな、という印象はあります。ただ、走り出しはやはり非常にラクなのと、低速での小回りもアシスト力が加わるので安定的に行るあたりは、やはりe-bikeの良さですね。

横田基地はやや高台にあり、そこから福生市中心部に行くと下り坂。福生市中心部は多摩川と横田基地に挟まれた斜面の途中という位置で、坂もわりと多いエリアです。こういう場所はやはりe-bikeだと快適に走れます。また、TRX-2WDのような乗り心地良さがあると、とても気楽かつ安楽に街乗りができてイイ感じ。

目立ち度の高い、風変わりなファットバイクタイプのe-bike。当初はそんな印象があったわけですが、意外なほど実用的です。激坂にもそこそこ強く、路面を選ばず安定的に走れて、実はダートロードもけっこう得意。意外なほど活用幅が広いTRX-2WDかもしれません。また乗っているだけで楽しい気分になれるe-bikeでもありますので、機会があればぜひご試乗を!

スタパ齋藤