e-bike試乗レビュー

バイク? ミニベロ? これは新感覚のe-bike!? ロカフレーム「MAKAMI」に乗ってみた

圧倒的に個性的なルックスのRocka Flame(ロカフレーム)のe-bike「MAKAMI(マカミ)」

e-bikeといえば、クロスバイクやe-MTBなどスポーツタイプのモデルをイメージする人が多いと思いますが、e-bikeの波はスポーツバイクにとどまらず広がり続けています。今回は、エンジン付きのバイクのような個性的なルックスのRocka Flame(ロカフレーム)「MAKAMI(マカミ)」の試乗レビューをお届けしたいと思います。

個性的な車体にバーファン製ドライブユニットを搭載

ロカフレームというブランド名を聞いたことがないというe-bikeファンも少なくないことでしょう。それもそのはず。ロカフレームは元々アパレルブランド。そんなブランドがe-bikeを手掛けるようになったのは、通勤や買い物などの移動でも個性を主張できる乗り物を提供したいという思いから。e-bikeであれば、それが可能だと考えたそうです。

ロカフレームの「MAKAMI」。車体サイズは全長1,710mm、全幅590mm、ハンドル高は1,111mm、シート高は800mm。車重は28kg(バッテリー含む)で、サイズ展開は1サイズのみ。ヘッドライトは別売のオプション
メーカー名Rocka Flame
製品名MAKAMI
実売価格199,000円

第1弾モデルである「MAKAMI」を見ると、確かに個性的なデザイン。現在、国内で乗れるe-bikeの中でも見た目のインパクトという点では一番ではないでしょうか。一見するとバイクのようですが、エンジン音がしないので走行シーンを見た人は戸惑うはずです(試乗中に「これ、なんですか?」と何度か尋ねられました)。ハンドルやライトのデザイン、そして小径なのに極太タイヤなど、従来のe-bikeでは見たことがないようなパーツがいろいろと付いています。

見た目の重要なポイントになっているバイクのようなLEDヘッドライト。実は別売のオプション。価格は8,000円
前後の太いタイヤも見た目のインパクトを与える要素。サイズは20×4.0インチというほかでは聞いたことがないようなスペックです
バイクのチョッパーなどを思わせるハンドルのデザインも個性的。グリップの位置は高めで横一文字の形状になっています
シート形状もバイクに近い感じ。クッションは厚めで、高さ調整はできない構造です。オプションでダブルシートも用意
こちらがオプションのダブルシートを装着した車両。カラーはブラックとブラウンが選べ、価格は38,000円です

スタイルは個性的ですが、車重もあってタイヤが太いので、アシストがなければかなりペダルが重くなりそうな設計。「MAKAMI」のドライブユニットは、バーファン製の「H400シリーズ」を搭載しています。モーターは後輪のハブ部分に装備されているので、いわゆるミッドドライブ式と違ってモーターが目立たない仕上がりです。バッテリーはシート下に収められており、こちらも目立ちにくいデザイン。一見しただけでは、e-bikeと気付かない人も多そうです。

バーファン製のハブモーター式ドライブユニットを後輪に搭載。コンパクトながらパワフルなことが選択の理由だとか
バッテリーはSAMSUNG製で容量は36V-10.4Ah。残量ゼロからの充電時間は約6時間で、アシスト走行が可能な距離は最強のモードで約50km
バッテリーの後部にはテールライトも装備。バッテリーから給電される前後ライトは街乗りにはありがたい装備ですね
コントローラー兼ディスプレイは左手側に装備されています。走行モードは1~5が用意され、5が最強モード。クラクションのマークはライトのスイッチ
リアの変速ギアはシマノ製の7速となっています。グレードの表記はなし
フロントに変速機構はなし。ボトムブラケットにはトルクセンサーが入っているので、バーファンのロゴが
変速操作は右手側のボタンとレバーで行ないます。ボタンを押すとシフトアップ、レバーを押すとシフトダウンするしくみ
街乗り向けのe-bikeなので、当然サイドスタンドも装備されています。スタンドを立てた際の安定感も高いほう
ブレーキは前後ともテクトロ製の機械式ディスクブレーキ。車重もあるので、確かな制動力のディスクブレーキ安心できます

e-bikeだから実現できたゆったりした乗り味

筆者はバイクも好きなので「MAKAMI」のデザインには結構グッと来るものがありました。ファットバイクと呼ばれる極太タイヤのMTBも所有していますし、クルーザータイプの自転車にも何台か乗ったことがありますが、正直なところ「MAKAMI」の乗り味については想像がつきませんでした。小径の極太タイヤとバーファン製ドライブユニットの組み合わせが、どんな走行性能になるのか? 固定式のシートとハンドルはどんなライディングポジションになるのか? ほかに似たモデルがないので、疑問ばかり頭に浮かんでちょっとワクワクします。

乗車姿勢はこんな感じになります。身長175cmの筆者は座ったまま両足のかかとがベタッと接地しました。この姿勢でペダルを回すと、ヒザは結構深く曲がります

シートが固定式でトップチューブがあるフレーム形状なので、小柄な人は乗るのがキツイかなと思い、身長145cmの娘にも跨がらせてみましたが、難なく乗れていたので体格についてはあまり心配する必要がなさそうです。心配な人は、トップチューブのないミキスト形状のフレームを採用した「FUMA」というモデルも用意されているので、そちらを選ぶこともできます。

こちらがミキストフレームの「FUMA」。価格やスペックは基本的に「MAKAMI」と同一です

まずは、アシストOFFの状態で走り出してみましたが、意外と太いタイヤの抵抗は気になりません。タイヤの細いロードバイクなどに乗っている人には信じられないかもしれませんが、ゆっくり足を回している分には、太いタイヤもそれほど抵抗を感じるわけではないんですよね。ただ、スピードを出そうとすると、途端に足にきます。あと、タイヤ径が小さいので速度を維持するのも得意ではありません。何よりも車体が重い!! やはりアシストなしで乗るものではないと思いました。ただ、出先でバッテリーが切れたとしても、置いて帰りたくなるほどの重さではありません。

バッテリーの右側に主電源のスイッチがあるので、アシストを入れるにはこれを予めONにしておく必要があります。奥に見えるのは充電口

アシストをONにして走り出し、モードを1から順に試してみましたが、すぐに最強の5に入れてしまいました。アシストのフィーリングを云々言うよりも、とにかくパワーが欲しいという感じ。ギアを変えるのもだんだん面倒になってきて、ほとんど5速に入れっぱなしにしていました。それくらいのギア比でゆっくりと足を回して乗るのが、このモデルには合っているのです。

スピードを出すような乗り物ではないので、細かくギアを変えたりするより、気持ちのいいモードとギアで自分のペースで流すのが似合います。アシストはかなりパワフルなので、停止状態で5速ギアに入れっぱなしでも余裕を持って走り出すことが可能。そこから15km/hくらいまでが、気持ちいい速度域です。一度、がんばってアシストが切れる24km/hまで出してみましたが、スピードを出しても楽しくないので二度目はありませんでした。

一番アシストがパワフルな10km/h前後でゆっくり走るのが一番気持ちいい感じ。乗っていると急がされる気分がどんどんなくなります

どれくらい坂道が上れるのかも気になったので、近所にあるかなり斜度も長さもある坂にチャレンジ。ママチャリに乗っている人は、たいてい押して上っているくらいの場所です。でも、アシストがかなり強力なのでゆっくり足を回しているだけで上りきれてしまいました。しかもギアは5速のまま。思った以上に登坂性能も高いようです。

この程度の坂なら、立ちこぎをする必要もなく、ギアもそのままで上れてしまいます

あっさり上れてしまったので、自宅周辺では一番の激坂でも試すことにしました。かなり長さもあって、非力な原付では上りきれないのでは? と思うような坂なのですが、ギアは2速まで落としたものの、特に苦労することなく上れました。こいつはスゴイ。

アシストのない自転車では絶対に上りたくないような激坂でしたが、苦もなく上りきれました。ちなみに同じ道を下ったのですが、制動力の高いブレーキのおかげで安心して下れました

アシストが強力なので、その気になれば20km/hオーバーでの巡航も難なくこなせてしまう「MAKAMI」ですが、乗っているうちにどんどん急ぐ気がなくなっていくという不思議な乗り物でした。しばらく乗っていると、スピードメーターすら見なくなってくるぐらい。そんな気にさせられる要因のひとつがライディングポジションでしょう。

椅子に座っているような姿勢で上体が起きているので、ゆっくり走っていても気持ちいい風を感じられますし、周囲の景色がよく見えるので、いつもよりスピードを落として風や景色を楽しみたいという気分になります。太いタイヤは乗り心地もいいので、そのタイヤと一緒に転がって行くような速度が一番気持ちいいようです。

個人的に気に入ったオプションパーツが、フレームの中央に設置するドリンクホルダー(2800円)。サイズが調整できるので、ペットボトルでも缶コーヒーでも入れておけます

あと、このデザインは街中での目立ち度は抜群です。すれ違った人はだいたい目で追っていきます。今まで、いろいろなe-bikeに乗ってきましたが、こんなに道行く人に声をかけられたのは初めてでした(それも自転車マニアではない人に)。

このデザインはe-bikeだからこそ成立するものだと言うこともできます。低い着座位置で上体が起きたライディングポジションは、ペダルを踏む力は入れづらいですし、極太のタイヤも抵抗になります。強力なアシストがなければ、たぶん余裕を持った気持ちで出かけることはできないでしょう。そして、日本の国内法規は10km/hを超えるとアシスト力が落ちていき、24km/hでゼロになる決まりなので、この自転車で走るような速度域が一番パワフルで気持ちいいとも言えます。ロードバイクやクロスバイクの前傾姿勢に疲れてきた人は、一度乗ってみると新たな世界が開けるかもしれません。

カスタムパーツが豊富なのもロッカフレームの魅力。写真のロゴ入りレザーグリップは7,980円
20×4.0インチのオフロードタイヤもオプションで用意されています。これを履けば砂浜もクルーズできるとか
増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。