e-bike試乗レビュー

ジャイアントの「ESCAPE R E+」は快速系で安心感もあってシアワセな気分になるe-bike

世界最大の自転車メーカーGIANT(Giant Manufacturing/ジャイアント)。まさに自転車界の“巨人”ですが、そんなメーカーが作った大ヒット・クロスバイクがあるのをご存じでしょうか? 「ESCAPE(エスケープ)」シリーズです。

世界でもっとも売れていると言われているクロスバイクシリーズで、日本でも非常に人気があります。実際に多数のESCAPEクロスバイクが走っているので、おそらく、知らずのうちに何度も目にしていると思います。

ESCAPEにはe-bikeバージョンもあります。これまでに発売されたジャイアント製のクロスバイクタイプe-bikeとしては、ロードバイクライクな走行性能を備えた「FASTROAD E+」や、バーサタイルな走行に対応できる「ESCAPE RX E+」がありました。

高いケイデンスにも対応する“フラットバーeロードバイク”こと「FASTROAD E+」。価格は462,000円。カラーは写真のブルーのほか、マットブラックもあります
幅広い用途に対応する「ESCAPE RX E+」。価格は308,000円。カラーは写真のアイスグレイのほか、ブラックもあります

このラインナップに新車種となる「ESCAPE R E+」が追加。2022年3月の出荷予定で価格は297,000円。このモデルは初心者にも扱いやすいジオメトリ(フレーム寸法)であり、比較的に軽量で、価格も抑えめ。多くの人にとってリーズナブルなe-bikeとなりそうな存在です。今回は発売前の実車で試走する機会を得ましたので、ESCAPE R E+のレビューをお届けしたいと思います。

2022年3月発売予定の「ESCAPE R E+」。価格は330,000円で、カラーは写真のマットダークシルバーのほか、サファイアとホワイトがあります

なお、ジャイアントのe-bikeは現在6車種あります。ロードバイクタイプとして
「ROAD E+」、クロスバイクタイプとして「FASTROAD E+」「ESCAPE RX E+」「ESCAPE R E+」、MTBタイプとして「TRANCE E+ PRO」「FATHOM E+ PRO」。車名に“E+”が付くのがe-bikeですね。

また、ジャイアントには“女性チームによる女性のためのサイクリングブランド”の「Liv」があります。女性向け自転車ブランドですね。バイクラインナップも非常に豊富。女性向けe-bikeとしては「ESCAPE RX W-E+」のほか、今回レビューする「ESCAPE R E+」の女性向け車体となる「ESCAPE R W E+」があります。

ESCAPE R E+って、どんなe-bike?

まずはESCAPE R E+の概要から。軽量アルミフレームのクロスバイクe-bikeで、スマートでシンプルな外観が特徴的です。ヤマハと共同開発した新型ドライブユニット「SyncDrive Core」(最大トルク50Nm/最大追従ケイデンス100rpm)を採用し、最長で200kmのアシスト走行が可能。以下、ESCAPE R E+の詳細を写真とともに紹介していきます。

ESCAPE R E+はクロスバイクタイプのe-bikeで、サイズはXS(445mm)とS(485mm)とM(525mm)があります。重量は19.7kg(XSサイズ)。カラーは写真のマットダークシルバーのほか、サファイアとホワイトがあります。価格は330,000円
ジャイアントといえばスローピングフレーム(トップチューブの後方が下がっている)。スローピングフレームには、低重心化や軽量化や高剛性化などのメリットがあります。停車時にトップチューブをまたぎやすく、サドル高を低く設定したい場合にも有利です。1996年にジャイアントがコンパクトロードの名のもと量産自転車に初めて採用し、その後、世界のスポーツ自転車フレームの多くがスローピングフレームになりました
ドライブユニットはヤマハと共同開発したGIANT SYNCDRIVE COREモーターで、最大トルクは50Nm、最大追従ケイデンスは100rpm
バッテリーはGIANT ENERGYPAK SIDEPULL 400で、容量は約400W(36V-11.3Ah)。ダウンチューブと一体化するタイプで付属の専用キーを使って脱着できます
バッテリーを外した様子。容易に外せます
専用充電器で充電しますが、車体にバッテリーを搭載したままでも、バッテリーを外した状態でも充電できます
バッテリー上部のLEDランプで電池残量を確認することができます(ディスプレイでも確認可能)
主要コンポーネンツはシマノ ALIVIOおよびシマノ ALTUSで、ギアは11-36Tの9段変速(ギアクランクは44T)
前後輪とも、タイヤは700x38Cで、油圧式ディスクブレーキを搭載しています
ハンドル周辺
左側に操作ボタン一体型のディスプレイがあります。外部機器に給電可能なUSB-C端子付き
右側にシフターなどがあります
サドルはGIANT CONNECT COMFORT。クイックレバーで容易に高さ調節ができます
ダイレクトマウントのキックスタンドを標準装備
軽快な印象があるデザインですね

走りは“快速系”、静かなモーター、気軽でスポーティーなESCAPE R E+

さっそく試走してみます。今回は主にサイクリングロードと街中を走ってみました。

その走行感をまず書いてしまいますと、非常に軽快に走れるe-bikeです。軽い感じがするし、速い感じもする。そして乗り心地もいい。

その理由となっているのは、まず車体がそこそこ軽いこと。具体的には重量は19.7kg(XSサイズ)で、このクラスのクロスバイクe-bikeとしてはけっこう軽いと思います。タイヤがよく転がる感じがあり、スピードが落ちにくいという実感があります。そんな要素から軽快さや速さが感じられたのでしょう。

タイヤは700x38C。38Cはタイヤ幅が38mmであることを示しますが、ロードバイクよりだいぶ太く、エアボリュームもありますので、それが乗り心地の良さにつながっていると思います。タイヤのパターンによるものか、スピードが落ちにくいように感じられます

それと操舵性が良いこと。無理なくクイックなハンドリングが可能という印象があります。今回走った川沿いのサイクリングロードは、途中に90度かそれ以上急にカーブする箇所がいくつかあります。そういう箇所で危なげなくクイッと曲がれるESCAPE R E+。重心の低さもその操舵性の良さに寄与しているのだと思いますが、安定感がありつつヒラリヒラリとカーブを通過できる感じです。

重心が低いという印象があり、走行中の安定感があります。安心感を伴いつつカーブをスイッと曲がれるという軽快な走りを楽しめます

それから走行前にちょっと気になっていたことがあります。それはESCAPE R E+のドライブユニット。GIANT SYNCDRIVE COREモーターを搭載していて、その最大トルクは50Nm、最大追従ケイデンスは100rpmとなっています。これについて「トルクがちょっと弱いのかな?」とやや危惧していました。

というのは、上位車種となるFASTROAD E+やESCAPE RX E+の最大トルクなどがより大きいからです。具体的には、FASTROAD E+(GIANT SYNCDRIVE SPORTモーター)の最大トルクは70Nm、最大追従ケイデンスは140rpm。ESCAPE RX E+(GIANT SYNCDRIVE SPORTモーター)の最大トルクは70Nm、最大追従ケイデンスは110rpm。ESCAPE R E+は、これら上位2車種よりトルクも最大ケイデンスも低いんですね。

筆者の場合はケイデンス100rpmで踏みまくるような走りはできませんので、まあ最大追従ケイデンスはESCAPE R E+の100rpmで問題ないと思います。でも最大トルク50Nmだと足りないような……。

と思っていたんですが、杞憂でした。実際は十分なトルクがあります。サイクリングロードの土手を上る急坂や、街中に時折現れる短い激坂なら、口笛を吹きつつ余裕で上れます。9段変速で、もっとも軽くするとリア36T×フロント44Tとなるので、そのギア比にしてアシストを最強のSPORTモードにすれば、まあたいていの坂は楽に上れます。

……もっとも、長距離の激坂を攻略ということになると、より大きなトルクが欲しくなることはあるかもしれません。ただ、そういった走りを前提とするなら、よりトルクのある車種を選ぶべきですね。最適解はe-MTBだと思います。

ほかの車種より最大トルクが低く設定されているESCAPE R E+ですが、そこにはけっこう大きなメリットがありました。モーター音が非常に静かなんです。

ESCAPE R E+に搭載されているドライブユニットは、ヤマハと共同開発のGIANT SYNCDRIVE COREモーター。最大トルクは50Nm、最大追従ケイデンスは100rpmで、上位機種と比べるとやや見劣りするスペックですが、そのかわり静音性に優れています。とても静か

軽くペダリングしつつサイクリングロードを走っていると、モーターが回転していることを忘れるほど非常に静か。ロードノイズも少なく、鳥の声や風が林を揺らす音がよく聞こえます。ESCAPE R E+は、おそらく日ごろ多用する身近なe-bikeになるケースが多いと思いますので、こういう静粛性は「長く続く嬉しいメリット」となりそうです。

あと、このe-bikeは平坦なサイクリングロードや街中の舗装路では、わりと高い巡航速度で走れるという印象があります。すぐに20km/hくらいの速度が出て、そこから軽くペダルを回していると22~24km/hくらいの速度にすぐ達します。ほとんどアシストが加わらない速度域にすぐなるe-bikeという印象なんですね。なので電力消費も少なめ。

ちなみに、ESCAPE R E+のアシストモードは、強い順からSPORTモード、ACTIVEモード、TOURモード、ECOモードの4つのモードがあります。それぞれの最大アシスト走行距離は、SPORTモードが80km、ACTIVEモードが95km、TOURモードが132km、ECOモードが200kmとなっています。

今回筆者が試した範囲ですと、平坦なサイクリングモードならECOモードやTOURモードで全然苦しくなく走れるというイメージです。強い向かい風だとACTIVEモードにしたくなる感じ。SPORTモードは「だいぶ走ってもう疲れたから、あとはモーター任せで家までの上り坂を走ろう」みたいな場合にありがたい。まあ、人それぞれの使い方があると思いますが。

走るのが楽しくなる……それがESCAPEなのか?

以降は理解されにくいかもしれない、根拠がやや曖昧な、かなり個人的な雑感です。でも、ご参考になるかもしれないので誤解を恐れずに書いてみます。

ジャイアントの自転車ってあまり乗ったことがない筆者です。今年の春先にGIANTのe-ロードバイク「ROAD E+」に試乗して「あ~ら速い!!」と驚いたんですが、ほかはほとんど乗ったことがありません。あ、自転車のリターンライダーとなったきっかけは、GIANTの「Great Journey」でしたが。

ジャイアントのロードバイクタイプe-bikeの「ROAD E+」。速いe-bikeです。乗り味は、今回試乗したESCAPE R E+に、ところどころ似ているように思います

ジャイアントのESCAPEシリーズ・クロスバイクは有名なので知ってはいましたが、実は乗ったことがない。ROAD E+試乗時の速さに対する驚きもあり、「初めてESCAPEに試乗できる」と今回の試走を楽しみにしていました。

結果、なるほどさすがのジャイアントだ完成度高いな~的な納得がありました。そして、それとは別に「そっかーESCAPEってこうだから人気あるのかもな~」と思いました。

それは、乗ってると楽しくなっちゃう感じ。はい目的地に到着、ってところで「もうちょと乗りたい」という気分になる。軽快さやラクさなんかもそう思わせる要素だとは思うんですが、ESCAPE R E+に乗っているとなんかこう少し別の世界を味わっているような気分になるんです。

走り始めると、もっと走りたくなるような感じがするESCAPEのe-bikeバージョンことESCAPE R E+

今回も仕事としてESCAPE R E+で試走したわけですが、我ながら珍しいことに、夕方過ぎてもまだESCAPE R E+に乗り続けたくて走っていました。いつもは夕方になると「今日はもう切り上げよう」って感じで試走をサッサと終えちゃうんですけどね。

試走を続けて予定外の公園まで。ちょっと日が傾いてきたなあ……でももうちょっと走りたい! そんな気分にさせるESCAPE R E+です

なんかこう、独特の解放感があるんですよね、ESCAPE R E+。気軽だし軽快だし速いし、安心感もあるような。「このサイクリングロードってこんなイイ所だっけ?」と思っちゃうような。

ジャイアントのESCAPEシリーズって、「脱出」の「ESCAPE」ってことだそうで、日常からの脱出するという意味が込められている、と、ネットで読んだ気がします。そしてESCAPE R E+で走っていると、走るのを止めていつもの日常に戻るのがちょっと寂しいようなそんな気分になる。ESCAPEという車名と、走ると別世界へちょっと飛び出せたような感じがすることが、相乗効果でライダーをハイにする?

やべえ~日が暮れてきた~でももうちょい走りたい~!

ESCAPEシリーズはコストパフォーマンスの高さで世界的に売れているのだと思います。が、それと同時に、ESCAPEという夢のある車名と、ポジティブともいえる走行感で、ライダーに幸福感をもたらすから、大ヒットモデルとなったのかもなぁ、と思った次第。

乗ってるとなーんかシアワセな気分になるESCAPE R E+なのでした

ともあれ、いろいろな観点から「いいe-bike」といえる車種だと思います。なので、店頭にESCAPE R E+が並ぶ頃、ぜひご試走を!!

スタパ齋藤