e-bike試乗レビュー

e-bikeで廃トラックを目指して山へ!! バイクパッキングはキャンプや自転車好きにオススメ

近年、世界中の自転車ファン、そしてアウトドアを楽しむ人たちの間で人気を集めているのが“バイクパッキング”と呼ばれるスタイル。スポーツバイクの運動性能を犠牲にしない専用バッグを装着し、最小限の装備でキャンプを楽しむスタイルです。このバイクパッキングはe-bikeとの相性が良いのでは? とずっと思っていたので、実際に7月末に試してみました。

同行してもらったのは、最近e-bike部に加わったカシワギユウタロウ氏。メリダ「eONE-SIXTY 9000」を入手して以来、すっかりe-MTBにハマり、休日ごとに山を走り回っているe-bikeフリークです。

山梨県のとある山の中に向かいました。ここには朽ち果てかけた古いボンネットトラック(ダッヂ製らしい)があり、2人とも大昔に訪れたことがあるので、現在どんな姿になっているのかを見に行くことにしました。

全行程をe-bikeで行くと、予備バッテリーが2つくらい必要になるので、今回は途中まではトランスポーターにe-MTBを積んでアクセス。山中の“おいしいところ”だけをe-MTBで楽しむスタイルです。

メリダ「eONE-SIXTY 9000」とミヤタ「RIDGE-RUNNER 8080」でバイクパッキングへ。どちらも前後にサスペンションを装備した“フルサス”タイプ。ドライブユニットはハイエンドモデルのシマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載しており、トレイルを満喫できるスペックです

フルサスe-MTBにもキャンプグッズを積める

トランポしてスタート時点に到着したら、さっそく車体にバッグを取り付けます。自転車×キャンプといえば、リアキャリアの左右に大きなバッグを取り付けるスタイルを思い浮かべる人が多いでしょう。でも、その方法だとフルサスのe-MTBではキャリアが装着できるモデルは皆無に近いので難しい現実があります。

バイクパッキングはシートポストやハンドル、フレームなどにバッグを装着するスタイルなので、だいたいどんなモデルでも装着が可能。キャリアなどが必要なく、ベルクロなどで装着できるので脱着も簡単です。

今回はブラックバーンのバイクパッキング向け「アウトポストハンドルバーロール&ドライバッグ」とシートポストに装着する「アウトポストシートパック&ドライバッグ」を使用しました。フルサスe-MTBの場合、バッテリーとサスペンションがあるので、フレームバッグの装着は難しそうです。

ハンドルバーバッグはハンドル側にアタッチメントの取り付けが必要。工具も付属していて取り付けは簡単です。このアタッチメントのおかげで、ハンドルとバッグの間に隙間ができるので、ブレーキワイヤーなどの取り回しにも無理がありません
シートポストへの装着はベルクロとベルトで固定するだけ。装着してからできるだけ締め上げるのがポイントです
車体に装着して荷物を入れるとこんな感じ。リアのサスペンションが沈み込んでも当たらない位置に着けられました
荷物を入れるドライバッグの部分が別体になっているので、本体側は取り付けたまま、荷物だけを持ち歩けます。これは便利

テントはモンベルのソロ用「ムーンライトテント1」を持って行きました。かなりコンパクトになるので、フロントバッグに収納できます。寝袋やクッカーはシートポストバッグに収まり、基本的なキャンプグッズはすべて車体に装着できました。食材や水、撮影に必要なカメラなどを持つためにバックパックも背負いましたが、キャンプ場付近で食材を調達できるなら必要ないので、かなり軽快にサイクリングとキャンプを楽しめますね。

前後にバッグを装着した状態。これでテントや寝袋、クッカーなどキャンプ用品はほとんどすべて収まっています
ステムの部分にはブラックバーン「アウトポストキャリーオール」も装着。ペットボトルやサイクルボトルを入れられるので、水分補給に便利。フルサスe-MTBはボトルケージが装着できないモデルもありますが、これなら大丈夫
出発前に駐車場でテスト。フルサスe-MTBの運動性がほとんど損なわれていないことに感動!!

e-MTBだからこそ味わえる爽快感

荷物を準備したらさっそく出発します。実は渋滞に巻き込まれて出発地点に到着するまでに結構時間がかかってしまったので、時間はすでに夕方。急がないと山の中なので、あっという間に暗くなってしまいます。

まずは舗装路を上りますが、キャンプグッズを積んで食材を背負っても、e-MTBはアシストがあるので快適。普通のMTBだと苦行にしかならない舗装路も、2人で喋りながら上っていけました。

2Lのペットボトルと食材などを背負っているので、バックパックはそれなりの重量ですがアシストがあるので大丈夫
まだ舗装路ですが、これから始まるトレイルを思うとワクワクが止まらない
徐々に路面は砂利の林道に。楽しくなって下りではe-MTBを振り回してみますが、多少重さを感じるくらいで運動性に不満はナシ!

そして、路面がだんだんトレイルっぽくなるとともに、険しさも増してきます。しかし、それが楽しい!! 2人ともテンションが高くなってきました。普通のMTBでは絶対上りたくないような坂道ですが、これだけの荷物を持ってもスイスイ上って行けます。ややテクニカルな部分もあって、体力的にはラクだけどチャレンジングな場面があるのが、なお楽しい。ひとけのない山の中におっさん2人の笑い声がこだまします。

トレイルに入るとフルサスe-MTBの本領発揮!! 斜度は気にせずグイグイ上れるし、多少のギャップは気にならない。キャンプ道具を積んでいるとは思えない楽しさ
ゴツゴツした岩でガレてて水も流れているような場面も。そういう場所は素直に降りて押します

ただ、だいぶ暗くなってきて崖から落ちてしまいそうで危険なので、この日は目的の廃トラックまで行くのは諦めて、キャンプができそうな場所を探すことに。やや開けていて、キャンプの跡もある場所を見つけて、この日はそこで泊まることにしました。

すでに暗くなっている中でのテント張りでしたが、モンベル「ムーンライトテント1」は直感的に張ることができました。コンパクトに収納できるし、重量はペグなどまで含めても1.71kg。バイクパッキングに持って行くのには最適ですね。

暗くて写真はうまく撮れませんでしたが、そんな中でもスムーズにテントを張ることができました
e-bikeで走れるとこまで行ってテントを張ってキャンプ
こういう時間が過ごしたかった!!

持って行った食材はラーメンに各種缶詰、ソーセージなど、コンビニで調達できるものばかりでしたが、山の中でキャンプしながら食べると、どれも最高の味わい。適度に運動して体も疲れていたので、e-bikeだからこその楽しみ方で大変満足度が高かったです。この日はそのまま気持ち良く眠りについてしまいました。

どうってことない食材ばかりですが、山の中で食べると美味い!!
それなりにがんばって走ったので、お腹が空いていたのも最高の調味料でした。e-MTBだからこそ楽しめる貴重な時間
ソーセージを炙ってみたり
オイルサーディンを缶のまま火の上で温めたり、ちょっとしたことですが味わいが変わります

念願の廃トラックにも遭遇!! そして幻と言われた2台目にも

次の日は日の出とともに目覚めて……と思っていたのですが、モンベルの寝袋の寝心地が良くて予想以上に長く寝てしまいました。目覚めると、日は完全に昇っています。気持ち良い木漏れ日を浴びながらお湯を沸かしてコーヒーを飲むと、それだけで「来てよかった」と思えますが、まだ目的の廃トラックには出会えていません。

木々の間から差し込んでくる日の光で目覚めるなんて最高の朝です
こんな朝の光の中で飲めばインスタントのコーヒーだって美味い。モンベル「JETBOILスタッシュ」は素早くお湯を沸かせるうえ、シリーズ史上最軽量の200gというのがバイクパッキングの強い味方
ついつい寝すぎてしまったのは、モンベルの寝袋「シームレス ダウンハガー800 #5」「U.L. コンフォートシステム アルパインパッド25 90」の寝心地が快適だったのも要因。コンパクトに収納できるのもありがたいところ

2人の記憶とスマホのマップを頼りに目的地の廃トラックを目指します。途中、おもしろそうなトレイルを見つけては寄り道をしながら走って行くと、ゲートに突き当たりました。この奥に廃トラックはあるようなのですが、ここからは徒歩で行く必要があるみたい……。

新たなルートから目的地を目指すも、ついつい寄り道してしまう……。こういうルートを探索しながら走るのもe-MTBが得意とするところ。体力の心配をしないで、おもしろそうなトレイルに入って行けます
自転車も入れないゲートが設置されていたので、ここからは徒歩で廃トラックを目指します

そして、ついに念願の廃トラックに巡り合えました!! たぶん、以前に来たのは10数年前ですが、変わらない姿でそこにありました。まるで映画やアニメの中に出てきそうな雰囲気。

いったい何年くらいこの場所に放置されているのか? 記憶の中と変わらない姿を見せてくれた廃トラック
ボンネットのあるデザイン。荷台のところからちょうど生えている樹など、絵になるシチュエーション
ハンドルなどもしっかり残っているのは、鉄製のこの時代ならでは
どれほどの時間ここにいたのだろう

しばし、感傷に浸りながら写真を撮ったり、廃トラックの周りで過ごしますが、置きっぱなしも心配なのでe-MTBのところに戻ります。目的も果たしたので、あとはせっかく来たので周囲のトレイルを走り回りましょう。この周辺はスマホも圏外なので、ルートは当てずっぽうですが、とりあえず楽しそうなほうに行ってみました。

昔はクルマも通っていたようなルートを見つけ、奥へ上って行ってみることに
倒木もあり、結構荒れているルートなうえ、上り基調のルートですが、フルサスe-MTBだとグングン上って行けます
結構奥まで上って行ったところで、突然目の前に2台目の廃トラックが姿を現しました!!

実は廃トラックがもう1台あるらしいという話は耳にしていましたが、ここで出会えるとは……。1台目の廃トラックと車種は違うようですが、ボンネットがある構造や木製の荷台などの構造は同じ。どれくらいの年数、ここに放置されているのか、よくわかりませんが思わぬ出会いに2人ともテンションが上がります。

道から落ちてしまったのか、故障して邪魔だったので道から撤去されたのか、半分崖下に落ちたような状態で放置されていました
ハンドルやコックピットの構造も1台目とは違っています。こんなトラックが山の中を走っていたんですね

予定外の出会いもありましたが、こんな場所まで上って来られたのもe-MTBのアシストがあったから。正直、自分の脚だけでここまで登坂できた気がしません。バイクは入れない場所ですし、徒歩でたどり着ける気もしないのでe-bikeだからこその出会いだったと思います。その後は、道に迷ったりもしましたが、なんとか下れそうなルートを見つけて舗装路まで戻ることができました。

途中は押しが入る場面も。たっぷり荷物も積んでいるので慎重に進みます
そんな中でも、ご褒美のようなシングルトラックにも出会えました。荷物を積んでいても、こういうシーンも楽しめます
舗装路に戻り、スマホの電波も通じるようになったので、クルマを置いてある駐車場まで戻ります。結構上らなければいけない様子……

舗装路をひたすら上っていると、バッテリー残量が不安になってきたので、2人ともECOモードで走ります。前日からの走行距離は40km程度ですが、獲得標高は1,000mくらいあって、バッテリーをかなり消費していたようです。かなりハードな上りで、2人とも後半はHIGHモードに入れっぱなしだったので……。それまでにアシストモードを使い分けていたので、ここまでバッテリーが持ったともいえます。

途中で美味しそうなわらび餅を発見したので、寄ってみることに。かなり走ったのでお腹も空いています
かなりエネルギーを消費していたこともあって、味は最高でした。今までで食べたわらび餅の中でNo.1かも
休憩中に雨、それも結構激しいやつが降り出してしまいました
しかも、このタイミングでバッテリーがゼロに! アシストなしで残りの道程を走らなければなりません
残りのルートはほぼ上り……。少しはがんばってペダルを漕いで上りましたが、力尽きて2人とも押して上ることになりました

最後のバッテリー切れで体力も使い果たしましたが、なんとかクルマのところまで戻れました。2人ともビショ濡れですが、ドライバッグに入れてあったテントや寝袋はまったく濡れていなかったので、図らずも防水性能を試すことができてしまいました。

最後の最後でハードな旅になりましたが、帰りのクルマの中は「また来よう!!」「e-bike最高!!」という会話ばかり。キャンプグッズを積んでも運動性能をスポイルしないバイクパッキングスタイルと、e-bikeの相性の良さを体感することができました。

普通のMTBだと我々の体力だとあんなところまで上れないし、廃トラックまで行くことも難しかったでしょう。しかも、行き帰りの結構荒れたルートも、フルサスe-MTBなら楽しみながら走破できます。MTBとキャンプの楽しさ、どちらも満喫できたのはこの組み合わせだからこそ。キャンプも走りも、どちらも楽しみたいという人には、このコンビは最高だとオススメしておきます。

[e-bikeバイクパッキングその他の写真]
増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。