e-bike試乗レビュー

南伊豆の穴場でクルマ+e-bike+ソロキャンを楽しむ。e-MTB乗り必見の林道キャンプ場も

ミヤタのグラベルロードe-bike「ROADREX 6180」。今回はキャンプツーリングへ

e-bikeを購入した人、これから購入しようという人それぞれに「自分はこうしてe-bikeを楽しみたい」という考えはあるだろう。筆者の場合は、トランスポーターとしても使えるホンダのN-VANに乗っているので、このクルマにe-bikeを積んで出かけることで、e-bikeライドをいろいろなスポットで楽しもうと考えている。

前回は一般車両も走行可能な林道へのショートツーリングに出かけたが、今回は緊急事態宣言発令前に、キャンプを交えたクルマ+e-bikeライドを楽しんできたので、その模様を紹介しよう。

筆者が購入したミヤタのe-bike「ROADREX 6180」は、オンオフどちらも楽しめるグラベルロードバイク。
購入後はサドルやペダル、ハンドルのバーテープなど交換してカスタマイズも楽しんでいる
ROADREX 6180が搭載するドライブユニットはシマノSTEPS「E6180シリーズ」
バッテリー容量は418Wh(36V/11.6Ah)
今回は約40kmの行程を最大アシスト力(HIGHモード)の状態で使用したが、バッテリー消費を表示するメモリはひとつも減らなかった
N-VANにROADREX 6180とキャンプ道具を積みこむ。出かけたのは緊急事態宣言前の4月。夜はまだ少し寒い感じだったので、毛布も用意するなど荷物はちょっと多め。だけどクルマだと荷物が増えても苦ではない
キャンプをするだけでなくe-bikeライドもセットなので、キャンプ地周辺の地理も重要になってくる。そこで選んだのが、サイクリングの人気エリアである伊豆半島のなかでも南端の南伊豆。とはいえ決めたのはそれだけ、あとは成りゆきのノープラン

南伊豆は伊豆半島の南端、自然が多いエリアならではの立地を活かした魅力的なキャンプ場が多い。利用する場所に迷うところだけど、今回は「ある特徴」を持つ「ぼっちの森キャンプ場」にオジャマすることにした。

こちらのキャンプ場は名前のとおり、ソロキャンパーがひっそりのんびり過ごすことを意識して作られているが、現在はソロキャンパー向けサイトに加えて、家族単位、グループキャンプにも対応するサイトも用意している。とはいえ、山の中にあって敷地はとても広いので、繁忙期であってもサイトごとにプライベート感を保てる作りになっている。

山の中にあるキャンプ場なので、現地に行くまでの道もがっつり山道。自転車で乗り入れるつもりならひと汗かく気でいること。また、一般道からキャンプ場へ向かう山道は道幅が細いので、クルマで行く際も十分ご注意を
敷地は広い。画像の場所はキャンプ場の中心エリア。斜面の木が生えているところそれぞれにサイトがある。また、周辺の木に囲まれたエリアにもサイトが多数ある。興味のある人はぼっちの森キャンプ場のHPを参照してほしい。利用料金は5,000円~

ぼっちの森キャンプ場はオーナーが所有する山の中にあるが、キャンプ場として使用している土地はごく一部。ほかは広大な山林で、そこには山の管理を行なうための10数キロにわたる林道が通っているのだが、キャンプ場利用者であればこの林道をe-bikeで(もちろんふつうのMTBなども)走ってもいいのだ。

日本各地にある山林は、たいていが私有地(国有地)なので許可なく入山はできないし、そこを通る林道も同様に勝手に走ることはできないが、私有地であるぼっちの森キャンプ場内にある林道なら問題ない(キャンプ場利用者に限るが)。これはe-MTBなどオフロード系自転車に楽しむ人たちには魅力的だと思うので、興味がある人はぜひぼっちの森キャンプ場を利用してもらいたい。

キャンプ場は11:30からチェックインできるので、さっさとテントを立てれば午後の時間は林道ライドに回せるし、連泊すればテントをベース基地に丸一日林道ライドを楽しむこともできるだろう。かくいう筆者もこの林道には興味があるので機会があればROADREX 6180での林道ライドにも挑戦してみたいと思っている。

画像の路面は状態がいい箇所。山の奥へ行くと荒れてくるし、コース脇には岩が剥き出しになってたり、転んだりしたら身体に刺さりそうな背の低い木などがある。そして、山奥なので何かあっても救急車は入れないだろう。あくまでも山林管理用の道なので、整備された安全なコースでないことを自覚した上で走りたい。でも、それだけ本格的な林道を走れる場所はそうそうないだけに存在は貴重だ
林道の脇を整地してテントが張れるようにした林道サイトがあちこちに作られている。サイトといっても炊事場、トイレ、照明が一切ない山の中なので、ここの利用は「野営」だ。でも、そんなことが味わえるのもぼっちの森キャンプ場の特徴

筆者が行った日は、他の利用者が2組だけという状況だったので、ずいぶん距離があるサイトで焚いている焚き火のはぜる音が聞こえるくらい夜はシーンとしていた。そんななか、レトルトとコンビニのパック売り惣菜で簡単に夕食を済ませて、あとはボケッとして過ごす。

翌日は南伊豆の海岸線を中心にROADREX 6180で走る予定だけど、どのへんを走るかとか、N-VANを駐められる駐車場の場所などは調べていない。まあ、この夜に段取りを考えることもできたのだろうけど、そんなことをする気にならないのが静かな夜のキャンプ場。焚き火に薪をくべながら、ひたすらボーッとするのであった。

テントは張らずにN-VANの中で寝るスタイル。食事等は車体側面に展開するキャンパルジャパン製のカーサイドタープ内で済ます
「映える」ことを意識してないので散らかっているが、寝床とタープ内はこんな感じ。床長は2m以上あるので頭側も足側も余裕がある。タープは老舗のテントメーカー製で作りは良く強風にも強いので、夜に風が強まるような日でも倒壊を心配せずに安心して寝ていられる
夜は少し冷えたので焚き火がちょうどいい感じだった。なお、ぼっちの森キャンプ場ではウッドデッキサイト以外は焚き火シート不要。なおかつ借りたサイトの地面が土だったので今回、焚き火シートは使っていない。ただしすべてのサイトで直火は禁止

キャンプ場を出て目指すは海岸線。石廊崎でROADREX 6180を降ろす

気候も良く居心地もよかったので、朝の出発はついついのんびりになってしまったけど、ぼっちの森キャンプ場をあとにした。とりあえず海岸線を目指して走り出し、N-VANを駐められる場所を探していたところ、目に入ったのが石廊崎港への入口看板だった。

観光地もあるような表記だったので駐車場がありそう。脇道に反れて石廊崎港へ向かうと、見えたのが遊覧船利用者と石室神社へ向かう人向けの有料駐車場。良かった、早めに見つかった。係の方に駐車のみの利用でもいいかを尋ねると問題ないという回答だったので、こちらにN-VANを駐めさせてもらうことにした。

駐車場だが非常に景色がいい。イスを出せばボ~っと1日過ごせそう。湾内の海は静かに見えるが、この日は季節外れの台風2号の影響で湾の外は荒れ気味、遊覧船は欠航していた
石室神社への参道入口。石廊崎灯台へも行ける道だが、歩行者専用で自転車通行禁止だ。しかし通行禁止の看板があり、係の方の口頭による注意があっても無視して入っていく自転車乗りもいるとのこと。ROADREX 6180で出発する際に係の方と雑談中に聞いたことなので、ちょっと恥ずかしい気持ちになった

いよいよROADREX 6180の出番。石廊崎港から表の県道へ戻るにはさっそく坂を上がる。でも、これは序の口だ、伊豆の海岸線は山が海ギリギリまで来ている地形が多いので、基本的にアップダウンの繰り返しで平地が少ない。それに海岸線ゆえに向かい風が強いときもあるため、自転車ではかなり走りごたえがある。でも裏を返せば、e-bikeのアシスト能力が有効に機能する地域ともいえるだろう。

今回はアシストモードをもっとも強い「HIGH」にセットしたうえで、20km/hを超えないペースで景色や周辺の空気感を楽しみながら走った。

海岸線はどこも風光明媚といえる感じなので、ときおりROADREX 6180を停めて海をのぞき込んだりもした。さらに、思いつきで山側へ向かう小道に入ったり、進入可能な港に降りてみたりとノープランライドを楽しんだが、前にも書いたように、行ってみたいと思うようなスポットはたいていアップダウンがあるので、e-bikeでなければ「わざわざ立ち寄らないかも」とも感じることもあった。ホントにe-bikeは行動範囲を広げてくれる乗り物だ。

県道16号線を石廊崎から下田方面へ向かう。連休前の平日だったので、クルマの通行量も少なくのんびりした雰囲気のなか走れた
山へ向かう道へも入ってみた。細い道沿いに民家があったり、地元の方の生活感が見えるような場所。海沿いとはまた違うのんびりした空気を感じた
伊豆半島の先端なので前の海は大平洋。台風の影響で白波が強めに立っていたけど、それもまたいい
道路から見える小さい港などにも立ち寄る。場所によっては関係者以外立ち入り禁止の看板があるので、それを見落とさないよう入口で確認。興味より「よそ者としてのマナー」を重視したい
弓ヶ浜海岸へも行ってみた。ここは砂浜は砂が白いことでも有名。夏は多くの海水浴客で賑わうが、4月はまだガラガラで海岸線の広さを堪能できた
弓ヶ浜海岸がある湾へ注ぐ川に沿って上がっていく
川沿いにこのような遊歩道が整備されていた。南伊豆はどこを走っても気持ちがいい

海鮮丼からの山越え。南伊豆のいろいろを味わう

昼過ぎになったので昼食に。場所的に魚系が食べたいと思っていたので、実はぼっちの森キャンプ場の管理人さんにオススメのお店を聞いていた。そこが国道132号線、日野交差点近くにある「地魚料理 信」というお店。観光客も来るが地元の方の利用も多いようだ。

いただいたのはオススメメニューの海鮮丼。日によって使う魚が違うそうだけど、この日は尾長鯛、まぐろ、かんぱち、ヒラメ、シマアジ、真鯛、甘エビ、イクラが載っていた。お刺身は厚めに切ってあるし、もちろん魚自体もおいしい。そして、みそ汁に入っている昆布も歯ごたえあって「さすが伊豆の海鮮」という感じ。南伊豆に行ったら立ち寄ってみてはどうだろう。

「地魚料理 信」さんでいただいた海鮮丼。日によって使う魚が違うとのこと。お店は135号線から下賀茂温泉へ向かう交差点近くにある。ぼっちの森キャンプ場も下賀茂温泉方面だ

昼食を終えたら南伊豆ライド後半戦へ。ナビで地理を確認すると、国道136号線を半島の内陸方面へ向かい、途中で海側に折れるとN-VANを停めている石廊崎港へ抜けられるようだ。そこでROADREX 6180を内陸方面へ向けて漕ぎ出した。

海沿いから山あいに曲がった国道136号は、平地に沿って通っているようで海岸線のようなアップダウンがなく走りやすい。

国道自体も走りやすかったが、弓ヶ浜海岸からの道のりで利用した川沿いの遊歩道も続いているので、主にこちらを通ってみた。平日ということで歩いている人もほぼいないし、天気もいい。そして、荒々しさもあった海岸線の景色とは一転、とてものどかな風景が広がる。伊豆がサイクリストに人気ということがよくわかった気がした。

遊歩道を走っていると、地元の方の生活道路も見えるのでフラフラと寄り道。民家やお店が出てくるけど東京近郊のようなすし詰め感はないし、塀など含む建造物や空き地に放置されているクルマの姿に時間が感じられて、これはこれでいい雰囲気である。

川沿いの道を走る。コンパクトバーナーとか持ってくればよかった。コーヒー休憩をしたいくらいの風景
国道136号沿いには道の駅・下賀茂温泉がある。e-bikeでのんびり走っているから、道沿いにある何気ないけど味のある風景に気づけるのだろう。それにしても3ドアのK11マーチとはけっこう稀少だ
下賀茂温泉には日帰り入浴ができる温泉施設もある。ぼっちの森キャンプ場からも来られる(クルマで)ので、キャンプ時の入浴はここへ

国道136号沿いを寄り道しながら進んで途中「差田」という交差点から県道16号線に入る。この道を進むと、ちょうど石廊崎港の入口に出るようだ。

ただ、ここから海へ出るのは山越えルートになるので待っているのは、上り坂だ。どれくらいの勾配かちょっとどきどきしながら進んだが、幸いそれほどきつい勾配はなく、ROADREX 6180のアシスト力に頼りながら前へ進む。

ちなみに、南伊豆は海ギリギリまである山あいを抜ける道が多いため、大小トンネルが多いのも特徴だ。そして、たいていのトンネル内は照明がない。そのため少し距離があるトンネルになると、目の前の路面が見えないくらい暗いのだ。そんなわけで昼間であってもヘッドライトやテールライトを装備し、常時点灯or点滅させておきたい。

国道らしくないがここも国道136号。この先で石廊崎方面へ折れる
山越えの入口にあった石廊崎まで8kmの看板。ということは、少なくても4kmは上りということ。ここもe-bikeでよかったと思ったポイント
こうしたトンネルがとても多い。真っ暗なので灯火類は装備して常時点灯
サイクリストに優しいといわれる伊豆だけに、たいていの道路にこのように自転車ナビラインが引いてある。サイクリストに優しくしてくれているのなら、サイクリストも状況に合った適切な判断&気づかいで伊豆に優しくありたい
山越えルートの途中で見えた風景。大平洋ギリギリまで山や森があるのは、南伊豆ならではのダイナミックさ

日の色に黄色みが強くなる頃、石廊崎港へ戻ってきた。寄り道しながら約40km、アップダウンの繰り返しのコースを走ってきたので疲れはあるが、アシストのおかげもあってへばるというものではない。「サイクリングしてきたなぁ」という充実さを感じる疲れなので、気持ち的にはむしろいい。

N-VANにROADREX 6180を積んでいると、駐車場の係の方がちょうど帰るタイミングで、帰り際に「出入りは夜でも大丈夫だからゆっくり休んでいってね」と声をかけてくれたことが、また気持ちがいい。

今回の南伊豆でのN-VAN+e-bike+キャンプツーリング、ノープランだったが、どのシーンを思い出しても来てよかったと感じる内容だった。

最後に立ち寄ったのが、石廊崎港から県道16号を下田方面に向かったところにあった「南伊豆特産センター」。干物のお店だが、地元の方が自分たちの食材として買いに来るお店だそうだ。人気はアジの干物とムロアジの干物とのことだったので購入。自宅へ帰って食べたけどどちらもおいしい。とくにムロアジがよかった。干物についてやさしく教えてくれるご主人がいるので、南伊豆に行ったらここも立ち寄ってみては
深田昌之