e-bike試乗レビュー

メリダのフルサスe-MTBユーザーが、ハイエンドのeONE-SIXTYを比較試乗してみた

メリダの最新フルサスe-MTB「eONE-SIXTY 10K」。1,210,000円

昨年秋頃、仕事の都合で試乗することになったメリダ「eONE-SIXTY 9000」。これは……理想の乗り物に近い……!! と奮発してからはや半年。しっかりe-MTB沼にハマってしまい、SNSで情報をディグりまくる日々です。そして、気がつけばe-MTBのインプレ記事を書くところまでやってきました。

はじめまして、カシワギと申します、本業はCMとか撮ってる人です。もともとは根っからのダートバイク乗りですが、自転車もキャンプツーリングからBMX、トライアルにダートジャンプまで、ロード以外はおサワリ程度にこなしてきた万年中級者。モーターバイク乗り&グラビティスポーツ大好きなので、今回はそんな目線から「eONE-SIXTY 10K」をインプレッションしていきますね。

先日、歴代乗ってきたバイクを数えたら嘘偽りなく53台でした。すべて中古車、9割オフ車。現在は本気で走るバイクよりもファンライドな気分。キャンプがてらTTR125改で愛娘と戯れる日々が楽しいのです

愛車のメリダ「eONE-SIXTY 9000」を半年乗って感じたこと

僕が所有しているeONE-SIXTY 9000は、オールマウンテンと呼ばれるジャンルのe-MTB。その名のとおり、山で遊ぶなら上りも下りも全部これでOKな感じのモデルです。

半年乗ってきましたが、あらためてその完成度の高さを実感しています。特にドライブユニットであるシマノSTEPS「E8080シリーズ」には驚かされています。通常の登坂はもちろんですが、荒れた激坂を10km/h以下のスピードでトライアル的にヒルクライムチャレンジするのが、かなり面白いんです。

基本的には初期装備のママ乗ってますが、自分のライディングに合わせて少しパーツを変えています。空気圧を下げて走れるように、タイヤはCushCoreを入れてチューブレスに変更。サドルはWTBのWTB Pure Steelにしていますが、お尻心地最高
想像よりも効果を感じられたFORMOSA(フォルモサ)のカーボンハンドル、ライズやハンドル幅は操縦性にめっちゃ影響します。最近一番のお気に入りは、Granite Design(グラナイトデザイン)のGranite Cricket Bell。トレイルに入る時はパチンと引き下げて常時音が出るように、引き上げれば固定できるので鳴り続けることもなく快適。マジいいです

アシストパワーを上手に引き出せる足の回転数というのがあって、そこを探りながらグイグイ上るのは今までの自転車にはない遊びだと思います。そして、もうひとつ感動してるポイントが前後サスペンション。具体的に言えば、頭の位置がブレずにいつでも自転車の真ん中に乗れてるイメージです。今までいろいろな自転車やバイクに乗ってきましたが、ここまでサスペンションの動き出しやリバウンドを実感できたモデルは初めてかも、です。ホントFOX、すげーです。

eONE-SIXTY 10Kに乗ってみると……

そんなeONE-SIXTY 9000(以下、9000)の正常進化版となるeONE-SIXTY 10K(以下、10K)ですが、大きな変更点はバッテリー大容量化(500→630Wh)とコンポーネンツ強化のようですね。フロントサスペンション径が36mmから38mm、リアサスペンションもFLOAT X2へ変更するなど、サスペンション剛性強化も意識しているようです。最高峰グレードのXTR、カーボンホイール、電動ドロッパーシートなど、詳細はスペック表を見てもらうとして実走行はどうなのか? 前モデルのユーザー目線でインプレしてみました。

個人的にはかなり惹かれるカラーリング。太陽直下、曇り空、トレイルの木漏れ日、それぞれの場所で違った表情を見せてくれます。組み合わせるパーツの色で乗り手のセンスが問われますよね

まず試乗前にサスペンションのサグを設定します。サグ出しというのは、前後サスペンションの基準点を作り、機械的パフォーマンスを最大限に引き出すために必要な工程です。これを取らないとライダーが正しい重心位置に乗ることができず、車体コントロールも難しくなってきます。ちょっとした工具は必要ですが、10分程度の作業で劇的にサスペンションと仲良くなれますので、ぜひお試しください。あとはタイヤの空気圧のチェックも忘れずに。

早速試乗してみると、予想外だったのは漕ぎ出しが軽くなっていること。例えば2~3km/hまで減速してタイトターン、そこからの立ち上がりなどでは、10Kのほうがグッと加速が良くなっていることが感じられるのです。勘違いかな? と思って即座に何度も9000と乗り比べましたが(多分10回以上)、やっぱり10Kが力強く感じるのです。

ドライブユニットのシマノSTEPS「E8080シリーズ」は継続されているので、前モデルと同じはずなのにコレはなぜ……。コンポーネンツの違い? カーボンホイールの違い? いやいや、ドライブユニットに何かしらの変更があったのでは? と感じるほどのアシストの立ち上がりなんです。詳しいことは分かりませんが、現場の印象としては本当に「変わった感じがする」です。教えてシマノさん。

漕ぎ出しの軽さの理由は、ドライブユニットではなくアルミホイールとカーボンホイールの違い? ってことで9000と10Kのホイールを入れ替えてテストもしてみましたが、やはり漕ぎ出しの軽さは10Kに軍配が上がりました。ちなみに僕の9000も前後ホイールはチューブレス化、さらにCushCoreというインサートが入っています。これも乗り心地に大きく影響するパーツなので、ホイール交換してのインプレッションはやってよかったと思います。カーボンホイールの軽快感も捨てがたいですが、CushCoreを入れるとタイヤにもうひとつのサスペンションが追加される感覚も最高です。ぜひお試しあれ

最高級パーツがe-MTBの魅力をさらに引き出す

シングルトレイルを走って感じたのは、最高級パーツの実力。変速はチャキチャキと小気味良く、ブレーキはしっかり奥までコントロールできます。シマノ「XT」と「XTR」のはこんなに違うのか!! と驚かされました。そして、9000を所有する自分にはちょっと悔しい。サスペンションは9000同様に、細かいギャップからコーナーリング中の踏ん張りまでフワフワすることなくガッチリ地面を捉えてくれます。「さらにしっとり」と表現できる剛性の上がり方です。

今回は峠道で高度を上げて山頂付近から下り降りるトレイル。そこを2往復させてもらいました。2往復目は同じラインを通っても面白くないねってことで、トレイルを登坂することに。ペダルバイクなら絶対に嫌だし無理だけど、e-MTBなら面白い遊びに変えられます。結果的には担ぎ上げもあって凄く大変だったのだけど(笑)。上り切った時の充実感は格別!!
FOX最高グレードのFACTORY FLOAT X2は、ゴールドに輝くカシマコートが特徴的。僕の腕では使い切れない……と思ったのですが、とっても懐が深いので幅広いユーザー層が性能を感じ取れると思います。標準設定のセッティングでも規定サグさえ出せれば、基本性能の8割は引き出せます。よく働くサスペンションは、ライダーが良い位置に乗り続けられるので上手くなった気になっちゃいます
初めて使った電動ドロッパーシート、9000よりも“スコーン”と勢い良く上がってくるし、下げるためのテンションも小さくて好印象。ただ、バッテリー管理が増えるのが僕的にはちょっと難(笑)。純正シートは結構硬めのレース向きです
こちらもお初のシマノ「XTR」。値段なりの理由があるのねという納得の気持ち良さ。XTRではありませんが、新しく発表になったe-bike向けコンポーネンツ「リンググライド」も早く使ってみたいな

ただし、バッテリーが大容量化されて重量が1.1kg増加されたこともあり、フロントは少し重く感じちゃいました。例えば、下りでフロントを上げて通過したいなと思った時に、少しだけ早く落ちてくるイメージです。前述したように僕はもともとモーターバイク乗りということもあって、自分の体重より重い乗り物をコントロールすることに慣れています。その感覚からすると、むしろ安心して身を任せられるといえるのかもしれません。上り坂では重さを感じることはなく、むしろ荷重ミスでフロントが「浮いてきてしまう=めくれて後転」というe-MTBあるあるが起きづらいのかなと。

当然ですが500Whと630Whのバッテリーは大きさが違います。ステムヘッド方向に大きくなっているので、そのへんがフロントの上げづらさに繋がっているのかなと。同時にタイヤの接地感にも貢献してはいるのですが
操作スイッチは旧モデルが使われています。ライトとかを手元でコントロールするためだと思いますが、9000に採用されてる小さいモデルのほうがクリック感も見た目も良いです

バッテリー容量に関しては、半日ほどしか乗らなかったのでその恩恵に預かることはありませんでしたが、起伏の激しい山遊びをしていると、9000だと午前中早くから乗り始めて夕方前にはバッテリーがギリギリになってしまった経験があります(まぁ体力もギリギリになるのですが)。この日のライディング終わりも僕の9000が50%以下になってるのに対して、10Kは80%程度の余裕があったので、スペアバッテリーを持たないという選択肢は羨ましいです……。

余談になりますが、e-bikeはバッテリーが減っていくじゃないですか。いや使えば減るのは当たり前ですが(笑)。ペダルバイクの時にはなかった走行可能距離が減っていくという感覚は、あと何kmでアシストが切れるのか気にしながら走るのは若干のストレスなんです。なので、多少車重が増えたとしてもバッテリーの大容量化は僕としてはウェルカムです。

長い上り坂の最後の方にある根っこなんかは減速してスタックすること多いですよね。e-MTBのアシスト力があれば、上りでフロントをあげてギャップを超えて行くといったモーターバイク的なテクニックも比較的簡単に使えます。そして、たっぷり遊べる大容量のバッテリーは魅力です

まとめ

10Kはフロントライトが標準装備になっていたり、バッテリー容量が増えていたり、全体的にアドベンチャートレック向けで、深い山に安心して入っていける仕様になっているのかな? と感じました。

もちろん山じゃなくても、ロングポタリングに使って気になる小道散策なんかにも向いてるかと思います。そういう意味では9000はスキルパークに持ち込んでもいいし、僕はダートジャンプなんかも飛んでいますので、フットワークの軽い位置付けなのだろうと思います。どちらもいい車体だなと思いながらライディングしていましたが、トータル的にやっぱ正常進化した10K良いな……って現9000ユーザーに思わせたってことはメリダさんとシマノさんの思うツボなのでしょう。

上りはトライアル的に楽しんで、下りは爽快なダウンヒル。これぞe-MTBの醍醐味です。一度乗ってしまうと、抜け出せなくなるFOX最高級グレードのサスペンションは上級者だけのモノじゃないのを再確認。フロント29インチ、リア27.5インチの前後異径ホイールもモーターバイク乗りにとっては馴染み深いジオメトリーです
カシワギユウタロウ

やっと最近趣味に復活できた万年中級ライダー。本業はカメラマンな37歳。スケボーからモトクロス、クライミングまでヨコ乗りタテ乗りスイチョク乗りまで重力と戯れる遊びが大好き。若い頃はオフロードバイク雑誌編集部員として海外レースなども走ってました。体力よりも体幹で乗るタイプ、エヴァンゲリオン体型とよく言われます。髪の毛は青。