e-bike試乗レビュー
メリダのフルサスe-MTBユーザーが、ハイエンドのeONE-SIXTYを比較試乗してみた
2021年6月7日 08:00
昨年秋頃、仕事の都合で試乗することになったメリダ「eONE-SIXTY 9000」。これは……理想の乗り物に近い……!! と奮発してからはや半年。しっかりe-MTB沼にハマってしまい、SNSで情報をディグりまくる日々です。そして、気がつけばe-MTBのインプレ記事を書くところまでやってきました。
はじめまして、カシワギと申します、本業はCMとか撮ってる人です。もともとは根っからのダートバイク乗りですが、自転車もキャンプツーリングからBMX、トライアルにダートジャンプまで、ロード以外はおサワリ程度にこなしてきた万年中級者。モーターバイク乗り&グラビティスポーツ大好きなので、今回はそんな目線から「eONE-SIXTY 10K」をインプレッションしていきますね。
愛車のメリダ「eONE-SIXTY 9000」を半年乗って感じたこと
僕が所有しているeONE-SIXTY 9000は、オールマウンテンと呼ばれるジャンルのe-MTB。その名のとおり、山で遊ぶなら上りも下りも全部これでOKな感じのモデルです。
半年乗ってきましたが、あらためてその完成度の高さを実感しています。特にドライブユニットであるシマノSTEPS「E8080シリーズ」には驚かされています。通常の登坂はもちろんですが、荒れた激坂を10km/h以下のスピードでトライアル的にヒルクライムチャレンジするのが、かなり面白いんです。
アシストパワーを上手に引き出せる足の回転数というのがあって、そこを探りながらグイグイ上るのは今までの自転車にはない遊びだと思います。そして、もうひとつ感動してるポイントが前後サスペンション。具体的に言えば、頭の位置がブレずにいつでも自転車の真ん中に乗れてるイメージです。今までいろいろな自転車やバイクに乗ってきましたが、ここまでサスペンションの動き出しやリバウンドを実感できたモデルは初めてかも、です。ホントFOX、すげーです。
eONE-SIXTY 10Kに乗ってみると……
そんなeONE-SIXTY 9000(以下、9000)の正常進化版となるeONE-SIXTY 10K(以下、10K)ですが、大きな変更点はバッテリー大容量化(500→630Wh)とコンポーネンツ強化のようですね。フロントサスペンション径が36mmから38mm、リアサスペンションもFLOAT X2へ変更するなど、サスペンション剛性強化も意識しているようです。最高峰グレードのXTR、カーボンホイール、電動ドロッパーシートなど、詳細はスペック表を見てもらうとして実走行はどうなのか? 前モデルのユーザー目線でインプレしてみました。
まず試乗前にサスペンションのサグを設定します。サグ出しというのは、前後サスペンションの基準点を作り、機械的パフォーマンスを最大限に引き出すために必要な工程です。これを取らないとライダーが正しい重心位置に乗ることができず、車体コントロールも難しくなってきます。ちょっとした工具は必要ですが、10分程度の作業で劇的にサスペンションと仲良くなれますので、ぜひお試しください。あとはタイヤの空気圧のチェックも忘れずに。
早速試乗してみると、予想外だったのは漕ぎ出しが軽くなっていること。例えば2~3km/hまで減速してタイトターン、そこからの立ち上がりなどでは、10Kのほうがグッと加速が良くなっていることが感じられるのです。勘違いかな? と思って即座に何度も9000と乗り比べましたが(多分10回以上)、やっぱり10Kが力強く感じるのです。
ドライブユニットのシマノSTEPS「E8080シリーズ」は継続されているので、前モデルと同じはずなのにコレはなぜ……。コンポーネンツの違い? カーボンホイールの違い? いやいや、ドライブユニットに何かしらの変更があったのでは? と感じるほどのアシストの立ち上がりなんです。詳しいことは分かりませんが、現場の印象としては本当に「変わった感じがする」です。教えてシマノさん。
最高級パーツがe-MTBの魅力をさらに引き出す
シングルトレイルを走って感じたのは、最高級パーツの実力。変速はチャキチャキと小気味良く、ブレーキはしっかり奥までコントロールできます。シマノ「XT」と「XTR」のはこんなに違うのか!! と驚かされました。そして、9000を所有する自分にはちょっと悔しい。サスペンションは9000同様に、細かいギャップからコーナーリング中の踏ん張りまでフワフワすることなくガッチリ地面を捉えてくれます。「さらにしっとり」と表現できる剛性の上がり方です。
ただし、バッテリーが大容量化されて重量が1.1kg増加されたこともあり、フロントは少し重く感じちゃいました。例えば、下りでフロントを上げて通過したいなと思った時に、少しだけ早く落ちてくるイメージです。前述したように僕はもともとモーターバイク乗りということもあって、自分の体重より重い乗り物をコントロールすることに慣れています。その感覚からすると、むしろ安心して身を任せられるといえるのかもしれません。上り坂では重さを感じることはなく、むしろ荷重ミスでフロントが「浮いてきてしまう=めくれて後転」というe-MTBあるあるが起きづらいのかなと。
バッテリー容量に関しては、半日ほどしか乗らなかったのでその恩恵に預かることはありませんでしたが、起伏の激しい山遊びをしていると、9000だと午前中早くから乗り始めて夕方前にはバッテリーがギリギリになってしまった経験があります(まぁ体力もギリギリになるのですが)。この日のライディング終わりも僕の9000が50%以下になってるのに対して、10Kは80%程度の余裕があったので、スペアバッテリーを持たないという選択肢は羨ましいです……。
余談になりますが、e-bikeはバッテリーが減っていくじゃないですか。いや使えば減るのは当たり前ですが(笑)。ペダルバイクの時にはなかった走行可能距離が減っていくという感覚は、あと何kmでアシストが切れるのか気にしながら走るのは若干のストレスなんです。なので、多少車重が増えたとしてもバッテリーの大容量化は僕としてはウェルカムです。
まとめ
10Kはフロントライトが標準装備になっていたり、バッテリー容量が増えていたり、全体的にアドベンチャートレック向けで、深い山に安心して入っていける仕様になっているのかな? と感じました。
もちろん山じゃなくても、ロングポタリングに使って気になる小道散策なんかにも向いてるかと思います。そういう意味では9000はスキルパークに持ち込んでもいいし、僕はダートジャンプなんかも飛んでいますので、フットワークの軽い位置付けなのだろうと思います。どちらもいい車体だなと思いながらライディングしていましたが、トータル的にやっぱ正常進化した10K良いな……って現9000ユーザーに思わせたってことはメリダさんとシマノさんの思うツボなのでしょう。