そこが知りたい家電の新技術

築20年のマンションをスマートホームにしたら共働き夫婦の生活がこう変わった!

 横浜市の郊外に住む谷 征夫さんは、仕事先から自宅マンションの玄関ホールに帰ると、ポケットからボタン式スマートコントローラー「Qmote S」を取り出して、ボタンを1回押す。部屋の前に着く頃には玄関の鍵が開いているから、疲れている時でもカバンの中から鍵を探し、鍵穴にキーを挿す必要もない。

 自宅に入るとすぐに、玄関の脇に置いてあるキースイッチ「Hackey」を回す。するとリビング&ダイニングの灯りが点き、冬にはコタツが温まり始める。玄関からリビングに移動しながらコートを脱ぎ始め、ハンガーにコートを掛けながら「ねぇGoogle テレビをザッピング」と言えば、テレビの電源が入って、地デジ番組が数秒単位でザッピングし始める。ザッピングしながら見ようと思った番組を決め、部屋着に着替えながら、Google Homeに改めて「○○チャンネルにして」と指定し、温まったコタツに入って帰宅後のひとときを過ごす。

多彩なセンサーやデバイスによってスマートホーム化されたリビング。外見上は、一般的なリビングと変わらない

 谷さんでなくても、誰もが帰宅時に行なうルーティンがあるはず。上記の例をスマートホーム化されていない場合、「鍵をカバンから取り出す」→「玄関ドアの鍵穴に挿して回す」→「玄関の電気を点ける」→「リビング&ダイニングの電気を点ける」→「コタツの電源を付ける」→「テレビのリモコンを探してテレビを付ける」→「チャンネルボタンを数秒ごとに押す」などの作業が必要だ。書き出すだけでも(おそらく読むのも)億劫になるが、実際にはそれぞれ壁のスイッチを押したり、リモコンを掴んでボタンを押したり、しゃがんでコタツを付けて立ち上がるなど、様々なアクションが付随する。

 こうした数々のアクションを、谷さんの場合は、自宅をスマートホーム化することで最小限にしている。実際のアクションは、ボタン式スマートコントローラーを1回押すこと、キースイッチをひねること、Google Homeに話しかけることだけ。

 そして、谷さんのお宅で実現しているスマートホームの核となっているのが、イッツ・コミュニケーションズの「インテリジェントホーム」サービス。谷さんは同社の社員であり、自社のサービスを自宅に取り入れることで、築20年を過ぎたマンションをスマートホーム化させているのだ。

インテリジェントホームの導入で簡単に自宅をスマートホーム化

 それでは、谷さんがスマートホーム化のために、どんなシステムを組み込んでいるのかを細かく見ていくことにしよう。

 前述の通り核となるのが、イッツ・コミュニケーションズが提供する、自宅を手軽にスマートホーム化するためのパッケージ「インテリジェントホーム」サービス。同サービスの基本となるデバイスが、ホームゲートウェイ。スマートフォンとホームゲートウェイが連携し、その先の様々なIoTデバイスや、エアコンなどの家電製品と繋がっていく。

インテリジェントホームのイメージ

 インテリジェントホームにより、接続された各種センサーを含むIoTデバイスや家電製品などを、手元のスマートフォンで簡単に操作できるようになる。さらに、谷さんの場合はスマートスピーカー「Google Home」を追加(ちなみにAmazon EchoがあればEchoとの連携も可能だ)。

 現在、谷さん宅には、Google Homeと直接対応した家電製品はない。だが、Google Home単体で天気や音楽を聞くための情報端末の1つとして使う以外に、Google Homeをインテリジェントホーム(その中でも家電コントローラー)につなげることで、同機を音声認識デバイスとして利用。これによって、部屋内の赤外線操作可能なエアコンなどの家電製品を、音声によって操作可能にしているのだ。

 インテリジェントホームを核とした谷さん宅を、さらに詳しく見ていくと、下図の通り、多彩なセンサーやデバイスが散りばめられている。

谷さん宅に設置された、インテリジェントホーム関連のセンサーやデバイス類
スマート室内空気モニター「Awair」

 温度や湿度、二酸化炭素などを計測する5つのセンサーを搭載したモニター。通信は無線LAN接続、IFTTTを介してインテリジェントホームと繋げられている。「Awair」を利用し、室温が16℃を下回るとエアコンを暖房20℃設定でON、逆に28℃以上になると冷房25℃設定でONするように設定している。

スマート室内空気モニター「Awair」
玄関の「Hackey」

 無線LANに接続する鍵の形状をしたスマートキー。鍵を右や左にひねることで、対応するWebサービスを操作できる。谷さん宅では、「外出モード/在宅モード」の切り替えができるようにしている。「外出モード」にすると、部屋のライトやエアコン、コタツなどがOFFになる。逆に「在宅モード」では、ライトが点いたりする。インテリジェントホームとは関係ないが、沿線の電車が遅延している場合は、同機内蔵のライトが赤く光るように設定されている。

スマートキー「Hackey」
リビングとダイニングの「スマートライト」

 Zigbee対応のLED電球。調光も可能。谷さん宅では、リビングのコタツの上のライトの他、ダイニングテーブル上にもスマートライトを複数個配置している。「Hackey」で「在宅モード」にした時には100%の明るさで点灯。その他、Google Homeに「ライトを30%にして」などと指示することで、細かく明るさを変えたり、消灯/点灯の操作も可能だ。

リビングとダイニングの「スマートライト」
ボタン式スマートコントローラー「Qmote S」

 スマートフォンの操作を可能にするボタン式のスマートコントローラー。Bluetoothでスマートフォンと接続し、クリック操作だけで、あらかじめ設定したスマートフォン(アプリ)の操作が可能になる。谷さんは「Qmote S」をワンクリックすると、インテリジェントホームアプリを介して、玄関のスマートロックが開くように設定している。

ボタン式スマートコントローラー「Qmote S」
玄関の「スマートロック」

 設置には施工が必要となる、ホームゲートウェイとZigbeeで接続するドアロック。スマートフォンのインテリジェントホームアプリで外出先からでも操作できる。谷さん宅では、「Qmote S」によって解錠できるようにも設定されている。

スマートロック
家電コントローラー

 赤外線リモコンで操作できるエアコンやテレビなどを、スマートフォンで操作できるようにする、無線LAN搭載のコントローラー。Google Homeを利用すれば、音声での操作も可能になる。

家電コントローラー
エアコンに取り付けた「ドア・窓センサー」

 インテリジェントホームのホームゲートウェイと繋がる、ドアや窓の開閉を検知するセンサー。通常は、家族の帰宅を確認したり、セキリュテイ目的で使用することが多いが、谷さん宅では、なんとエアコンの吹出口に取り付けていた。こうすることで、エアコンのON/OFFを外出先から確認できるという。

ドアや窓の開閉を検知するためのドア・窓センサーをエアコンの吹き出し口に設置。センサーは2つに分かれており、離れることで開閉を検知するという仕組み
運転を開始すると、吹き出し口が開き、センサーが反応する。こうすることで、エアコンがつけっぱなしになっていないか、外出先から確認できる
コタツと繋げられた「リモコンコンセント」

 赤外線リモコンで電源のON/OFF操作が可能になるコンセント。谷さん宅ではコタツのコンセントに付け、家電コントローラーで操作可能に。インテリジェントホームアプリで、23時になるとコタツが消えるように設定(消し忘れ防止)。

リモコンコンセント

ルーティン作業をインテリジェントホームでスマート化

 冒頭では、谷さんの帰宅時について書いたが、もちろん外出時にも色々な動きをパターン化することで、毎朝スムーズに出社している。朝、谷さんが行なうのは、スマートキー「Hackey」をひねって「外出モード」に切り替えることだけ。これで自宅の電気製品のほとんどがOFFになる。

 一般的な家庭では、各部屋の灯りや、コタツやエアコンなどがOFFになっているか、多くのチェックポイントがあるだろう。そのため、つけっぱなしにしていた! と、帰宅時にガッカリすることも1度や2度ではないだろう。だが、谷さんの家のようにスマートホーム化していれば、チェック項目が劇的に減らせるから、つけ忘れのリスクも減らせるのだ。鍵はオートロックなので閉め忘れの心配もない。

谷 征夫さん

 「最初はホームゲートウェイと、家電コントローラー、スマートライト、ドア・窓センサーの基本セットを設置しただけでした。その後、徐々に便利そうなデバイスを増やしていきました」

 設定は、ものすごく簡単とまでは言えないという。デバイスを増やしながら、インテリジェントホームアプリの設定方法や使い方にも慣れていった。徐々に自分の、いつもする動きを考えてアプリのシナリオを増やしていき、トライアンドエラーを繰り返してきたという。

 「昨年末に、スマートスピーカー(Goggle Home)を導入してからは、さらに便利になりましたね。それまではアプリを開かないといけなかった操作も、声に出すだけで操作できるようになったので。特に、機械操作が得意とはいえない妻にとっては、一気にスマートホームが身近になったようです。はじめはそれほど使っていませんでしたが、Google Home導入後は、かなり活用頻度が高まっています」

 谷さん宅で「インテリジェントホーム」の活用事例を見せてもらうと、自分たちが日常で様々なアクションを取っていることに改めて気付かされた。1つ1つのアクションは、1秒もかからないものが多い。だが、そうしたアクションが1日のうちで1分や2分以上になるはず。考えてみれば、それが1カ月の累計では1時間、1年では12時間と、まさに「塵も積もれば……」という感じで、膨大なタイムロスになっている。

 そうしたタイムロスをスマートホームで解消できれば、より有意義な時間を、自宅で過ごせるようになるだろう。

河原塚 英信