難波賢二のe-bikeアラウンド

EcoFlowの電源システムでe-bikeや趣味のための秘密基地を作りたい

オフグリッド&キャンピングカー向けの電源システムに黒船がやってきたと言っても過言ではないかもしれません。中国のテクノロジー産業の本拠地・深セン発の「元」スタートアップ企業のEcoFlow社の「EcoFlowパワーシステム」がいよいよ国内導入されました。

EcoFlowパワーシステムのキャンピングカー設置イメージ

e-bikeの連載コラムで電力システム? と思う方もいるでしょうが、その理由は後述します。まずは「なぜ黒船なのか」を解説しましょう。電力会社の送電網から切り離されたオフグリッド環境で、電源システムを構築するのはかなり大変なのです。経験された方ならご存じだと思いますが、さらに専門知識と大量のスペースを必要とするものでした。

これまでは鉛蓄電池(自動車のスターターバッテリーに使われる12Vのバッテリーのようなもの。船舶やキャンピングカーなど電圧の上げ下げの多い用途に最適化したディープサイクルバッテリーなど)を大量に使用してオフグリッドシステムを構築するのが一般的でした。

そして、以下のような機械が必要になります。

・充電するための機械
・直流12Vを家庭用の交流電源としてパワーを取り出すための機械
・ソーラーパネルを使用するシステムなら電力を効率良く充電するための機械
・ソーラーパネルを複数回路を使うなら、その数に合わせた機械

頭の痛くなるような準備が必要で、家庭で実用的なシステムを構築しようとすると、大量の鉛蓄電池が必要で、さらに雨風に当たらずに保管できる場所を確保しないとなりませんでした。ちなみに鉛蓄電池は、大型乗用車のバッテリーぐらいの重さと大きさです。これが複数必要になるのです……。

従来の構築イメージ
EcoFlowパワーシステムはより簡単に

オフグリッドシステム構築を驚くほど簡単に!

今回登場したEcoFlowパワーシステムは、同社のリチウムイオンバッテリー技術を活用。前述した機械類がすべて1つのパワーハブにまとめられており、接続関係も専用ケーブルをコネクタに差すだけの非常にシンプルなシステムです。ここ数年、バッテリーは安全性とサイクル放電回数の多さ、コスト面で自動車用とポータブル電源用のリチウムイオンバッテリーが主流ですが、その中でもシェアを大きく伸ばしているリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用しています。

パワーハブ
専用ケーブル
設置作業も簡素化

このシステムによって、最小構成の2kWh(6畳用エアコンを約2.5時間ほど動かせる電力量)の場合は、パワーハブと従来の12V鉛蓄電池1個分ほどのコンパクトなシステムでオフグリッドシステムの構築が可能です。バッテリーは2kWhと5kWhの2種類が用意されており、同容量のバッテリーを3セットまで並列に増やしての構築も可能です。2kWhから始まり、4、5、6、10、15kWhとキャンピングカーから自家用車まで、自分の使いたい電力量に合わせてシステムの構築が可能なしくみです。しかも簡単に。

スマート分電盤
スマート分電盤の内部

リチウムイオンを使用したオフグリッドシステムは少し心配……という方もいるかもしれません。家電 Watch読者のみなさんはご存じでしょうが、EcoFlow社はドローンの最大手・DJIのバッテリーエンジニアたちが独立して始めたブランドです。一世を風靡したMavicあたりからはリチウムイオンを搭載しており、ドローンユーザーは信頼性も実感していることでしょう。

実は筆者自身もEcoFlowユーザー。「EFDELTA(イーエフデルタ)」が発表されると同時に購入しています。ほぼ最初のロットを購入して3年が経っており、途中でバッテリー残量ゼロでしばらく放置したこともありましたが、まったく何のトラブルもなく現在も元気に動いています。正直、購入する前は半信半疑でしたが、あまりに気に入ったので追加購入しています。

筆者が愛用中のEFDELTA

ポータブル電力業界においてリーディングカンパニーの1つにまで急成長しましたが、しっかり日本の法規に対応した製品作りも特徴です。例えば、先日発売されたポータブルクーラー「EcoFlow WAVE」も日本の法規に適合させるためにアース付きの固定ケーブルを装着したり、常にPSEなどの日本の安全規格を取得しています。トラブルの少ないリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用していますが、48Vシステムとして運用することでシステム自体の発熱も熱損失も少ない仕様としています。また、5年間の保証も付帯されます。

アース付きの固定ケーブルを装着するポータブルクーラー「EcoFlow WAVE」

キャンピングカーや住宅にオフグリッドシステムを検討するなら

一番ミニマムな2kWhのバッテリーとパワーハブのセットが572,000円、4kWhシステムで792,000円、15kWhシステムの場合は1,903,000円と決して安くはありません。しかし、スペースが限られて重量によるデメリットが大きいキャンピングカー(エアコンがないと夏はとんでもなく暑い)でのシステムと考えると、2kWhもしくは4kWhならば途方もない金額ではないとも言えます。実際にキャンピングカー用のオフグリッドシステムを構築した人なら理解できるのではないでしょうか。実際に他のリチウムイオンを採用したシステムと比較してみると、内容も保証も相当にリーズナブルな印象です。

内容や保証を考えるとキャンピングカーへの導入も高くない
車内の設置イメージ
従来のようにスペースを取らない

住宅用のオフグリッドシステムをすでに構築している場合は、わざわざ乗り換えるメリットはないでしょう。ただし、新築住宅に合わせて検討中であれば、このスペース的なメリットは非常に魅力的です。とはいえ、12V鉛蓄電池システムも含めて住宅内への設置はちょっと不安……という方もいるでしょう。たしかにリスクがゼロとは言い切れませんし。その際には新築に併設するコンパクトなオフグリッドシステム倉庫などを作る方法もあります。その倉庫をエアコンの効いた自分だけの秘密基地にしたら最高ではないでしょうか。

タッチパネルモニター
スマートフォンのアプリから操作も可能

e-bikeや趣味のミニマムな秘密基地計画の妄想が膨らむ

筆者が「EcoFlowパワーシステム」に興味津々なのは、日頃からEFDELTAを活用していることに理由があります。e-bikeの遊び方を国内に広めるミッションがあるため、日本中でe-bikeに適した場所を見つけては走りつくすという遊び方をしていますが、毎回クルマにe-bikeを乗せて移動するのは大変です。そこで、近年はハイシーズンの短期間だけ遊び場所に近い駅の月極駐車場を借りて、クルマもe-bikeも置いて休みのたびに電車で通う生活を送っています。e-bikeの充電はどうするの? と思われるでしょうが、この問題をEFDELTAで解決しています。

日本中をe-bikeで走っていますが、バッテリーの充電にEFDELTAが活躍

e-bikeに乗っている間にソーラーパネルでEFDELTAを充電。ホテルで充電したり、クルマでの移動中に車内で充電。遊び終わると帰り際にEFDELTAでe-bikeのバッテリーを充電しておくわけです。e-bikeのバッテリーを満充電状態で長期間放置しないために、市販のタイマーコンセントを使ったりと涙ぐましい努力で遊び方を構築してきました。数年前には想像できなかった世界で、今e-bikeで遊べている現実があります。

e-bikeで遊ぶエリアの最寄り駅の月極駐車場を拠点にして電車で通う日々
遊び終えたら駐車場でe-bikeのバッテリーを充電。写真はスペシャライズドのスペアバッテリー「レンジエクステンダー」

そうした経験もあり、「EcoFlowパワーシステム」発表時にふとアイデアが浮かびました。電線も通っていない、法律上建物が建てられない、でも超絶景。そんな土地を購入して、中古のキャンピングトレーラーかバンを置いておく(土地と郵便があればその場所を車庫法の使用の本拠の位置とすることが可能)。「EcoFlowパワーシステム」とソーラーパネルを組み込んだe-bike&趣味の秘密基地を作ったら……絶対に楽しいでしょう。

もちろん、e-bikeでなくても、パラグライダーでもサーフィンでも好きな趣味や遊びでいいのですが、いつでも電力とエアコンが使えるミニマムでエコな秘密基地という妄想が掻き立てられます。こんな妄想も不可能でない夢のアイテムが現れたのではないかと興奮しています。たしかに金額だけ見ると高いかもしれません。しかし、みなさんも趣味と合わせてオフグリッドのある暮らしを考えてみると、農業でもイベントでも生活のクオリティが300倍になる使い方を思いつくかもしれません。

ちなみに、超大容量ポータブル電源でデビューしたEcoFlow社ですが、先日はその電源技術を活かしたポータブルエアコンにも参入しました。今後もバッテリー技術を活用したさまざまな製品の発売予定があるといいます。次はどんな製品が登場してくるのか、もしかしたら移動系のガジェットも? と期待が高まります。

難波賢二

国際派自転車ジャーナリスト 1979年生まれ。20年近く昔のe-bikeの黎明期よりその動向を取材してきた自転車ジャーナリスト。洋の東西を問わず自転車トレンド全般に詳しく世界の自転車業界に強いコネクションを持つ。MTBの始祖ゲイリー・フィッシャーの結婚式にアジアから唯一招待された人物として知られる。