家電ラボの徹底「本音」レビュー

乾燥後のシワが少ない! 狭くても置けるアクアのドラム式を半年使った率直な感想

家電プロレビュアー・石井和美が、レビューハウス「家電ラボ」で徹底的に試した「本音」の製品レビューコーナーです。
アクア「まっ直ぐドラム AQW-DX12M」をじっくり使ってみました

我が家はずっと縦型洗濯機を使っていましたが、雨の日に洗濯物を乾かすのが面倒くさくなり、ついにドラム式洗濯機を導入することにしました。家電ラボでは最新ドラム式洗濯乾燥機を1台ずつお借りしてレビューしており、日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立)、東芝ライフスタイル(以下、東芝)、シャープ、パナソニックといった主要メーカーのドラム式洗濯乾燥機の特徴については理解しています。自分が買うなら「コレがいいなあ」と欲しいものがありましたが、選んだのは使ったことがないアクアの「まっ直ぐドラム AQW-DX12M」(2021年発売)でした。6月現在の実売価格は186,780円前後。

というのも、狭い一戸建てなので、置き場所が不安だったからです。コンパクトなアクアの「まっ直ぐドラム」はドラムを床と水平のまっ直ぐにしたことで本体内に無駄なスペースがなく、特に高さが低いのです。設置しても蛇口との間にゆとりがある高さで、縦型洗濯機を置いていたスペースに洗濯容量12kgのドラム式が置けるコンパクトサイズです。

半年以上使ってみて、良かった点とイマイチだった点についてレポートします。

洗濯容量12kgと大容量ながらコンパクトです

ドラムが「まっ直ぐ」によるメリットとデメリット

現在発売されているドラム式洗濯機は角度こそ違うものの、ドラムを斜めに傾けているものがほとんど。コインランドリー業界で高いシェアを誇るアクアが「まっ直ぐドラム」を発売したのは2021年。我が家では2021年の年末に入れ替え、使い始めて約半年が経過しています。

アクア公式サイトより。まっ直ぐドラムはムラなく洗えて洗濯物が絡みにくいのが特徴です

ドラムがまっ直ぐであることの利点は、ドラム内に均一に洗濯物が広がり、ムラなく洗濯/乾燥ができること。ドラムの傾斜が大きいタイプは常に団子状態で洗うので、洗いムラが起きるというデメリットがありますが、「まっ直ぐドラム」は均一に水が届き、乾燥時も傾いていないのでこんがらがることが少ないのです。

またドラムを傾けないので、余分なスペースがなく本体が小さいのも特徴です。洗濯/脱水容量は12kg、乾燥容量は6kgと大容量タイプですが、サイズは595×685×943mm(幅×奥行き×高さ)と、7kgサイズの洗濯機と変わりません。ヒートポンプ式で、乾燥時の消費電力は550W。ヒーター式と比較すると低めなところも気に入ったポイントです。

中のドラムもかなり大きめで、傾いていません

以前、各メーカーのドラム式洗濯機の最上位モデルを実際にお借りして試しましたが、いずれも角度が異なるもののドラムは斜めに傾いていました。アクアの「まっ直ぐドラム」の場合、ドラムが傾いていないので、洗濯物を入れる際に最初は戸惑いました。たくさん入れると、ポロポロと衣類が落ちてしまうのです……。

他社ではあまり気にしたことがなかったのですが、それはドラムが少し傾いているから。ななめドラムは立ったままポイポイ入れられるのですが、まっ直ぐドラムでは靴下などが飛び出て、ドアに挟んでしまうこともありました。入れるときはヒザをついて大量の洗濯物をしっかり押し込み、洗濯物が落ちていないか、チェックする習慣がついています。

また、扉は左開きのみ。我が家の間取りでは右開きのほうが使いやすいので、出し入れが少々窮屈になってしまいました。

ドラムが真っ直ぐだと入れにくいものですね……。少しの角度でこんなに違うとは

便利な洗剤自動投入機能も搭載されています。液体洗剤は約570ml、柔軟剤は約480ml入れておけます。他社では液体洗剤を1L以上入れられる製品もあるので大容量とは言えず、特大サイズの詰め替え用は一度に全部入れられませんでした。手動投入口もあるので、粉末洗剤などはそちらから入れます。

洗剤容器が引き出し式となっているのも珍しい。他社は本体上面に蓋があり、そこから容器を取り出すタイプが多い
このように詰め替えタイプを入れておけばOK。タンク容量は大きくはない

なお、自動投入機能を使う前に、量の設定を行なう必要があります。「洗剤量」ボタンを4秒以上タッチすると、水30Lに対して、洗剤が何mlなのかを指定できます。指定量は製品のパッケージに記載されているので、そちらを参考にするのですが、これが少々見にくいと感じました。

大手他社のフラッグシップモデルは操作パネルが大きく、量の指定も簡単です。さらにスマートフォンアプリに対応し、液体洗剤などの銘柄を選ぶだけで設定してくれるものもありますが、まっ直ぐドラムはそのような設定はできません。

洗剤量はパッケージに小さく書いてあります。ここを見て設定します
水30Lに対して液体洗剤は10gと設定。柔軟剤も同様に設定する必要があります

いつも同じ洗剤を使っていれば毎回設定する必要はないので、手間がかかるのは最初だけとなります。これさえ設定しておけば、後はボタンを押すだけで洗濯物に合わせて自動で計量してくれるのでとてもラクです。自動投入に慣れてしまうと、毎回洗剤を計量していた頃には戻れなくなりました。

わざと乾燥させた、ガンコな汚れを洗ってみた

ふだん、家族4人分の衣類やバスタオルを洗っていますが、汚れ落ちに関しては満足しています。「洗い~脱水」(洗濯)コースは、「標準/スピード/念入り/自分流/2度洗い/お好み柔軟剤/おしゃれ着/掛ふとん/毛布/槽洗浄」、「洗い~乾燥」(洗濯乾燥)コースはおしゃれ着/槽洗浄を除いて「洗い~脱水」コースと共通です。このほか槽乾燥コースも備えています。

操作パネルはゴチャゴチャしています

少し意地の悪い実験をしてみました。綿100%のやわらかいTシャツにしょうゆ、焼き肉のタレ、デミグラスソース、ケチャップをしっかり染み込ませ、さらに天日干しを3時間ほどしてカチカチになった状態で洗濯~乾燥をしました。ガンコな汚れになるので「念入り」コースを選択。「標準」モードと比較すると洗う時間は10分(標準は5分)で、乾燥は「標準」よりも長めです。3kgほどの洗濯物と一緒に洗ったところ、洗濯から乾燥までの時間は3時間6分と表示されました。

シミをつけてしっかり天日干し。カチカチに乾いた状態から洗濯を行ないました

洗い上がりをチェックしたところ、染みついてしまった汚れも醤油と焼き肉のタレはどこにあったかわからないほど、キレイになっています。デミグラスソースとケチャップは少し残ってしまいました。これは他社でも同じような結果でした。

左上から時計回りにしょうゆ、デミグラスソース、ケチャップ、焼き肉のタレを染み込ませました
念入りコースで洗濯乾燥後。あんなにしっかりつけたシミもこれだけ薄くなっていました

息子の靴下も、念入りコースでずいぶん白くなります。これくらいでも十分なので、いつも我が家は念入りコースを使っています。

洗う前
洗った後。完全に「白く」はなっていませんが、肉眼ではずいぶんキレイになった印象です

なお、運転を開始したら、あとから洗濯物を追加することはできません。ななめドラムの場合、標準コースでは水位がドアパッキンを越えないようになっているタイプが多く、洗濯物を途中で追加できる製品がほとんど。しかし、まっ直ぐドラムの場合は、水位が高いと一時停止してもドアロックが解除されず開かなくなります。

そのため、うっかり洗い忘れの洗濯物があった場合は、あきらめて次回に回しています。電源を入れ直し、脱水「1分」を行ない、排水後に衣類を追加して再スタートをすればやり直すこともできますが、そこまでして衣類を追加したことは一度もないです。

運転音は洗濯のときで34dB、脱水時で46dB、乾燥時で47dBと取扱説明書にありましたが、音よりも振動が気になります。特に脱水時はガタガタと揺れる音がするので、もし音が気になる方は、導入前にあらかじめ足元に振動を防ぐゴムなどを用意しておくことをおすすめします。

お湯洗いで襟元の黒ずみもスッキリ

衣類や汚れに応じて、水温を選ぶこともできます。設定温度は20℃/30℃/40℃/60℃。新陳代謝の激しい中学生の息子は、制服のシャツが黄ばんだり、襟元が黒くなったりするのですが、60℃に設定することでスッキリと白くなります。

また、衣替え前に40℃以上で洗濯しておくと、黄ばみ予防にもなるので我が家では活用しています。なお、色柄物やプリントがついているもの、芯地があるもの、ゴム素材を使用した伸縮性のあるものは、60℃では洗えません。

汚れてしまったYシャツ
お湯洗いしました。予洗いなどはしていませんが、黒ずみが目立たなくなっています

60℃コースでは洗濯物の量が2kg以下の場合に除菌もできます。バスマットなどもキレイになるので重宝しています。

シワが少ない乾燥機能に感激

乾燥方式はヒートポンプ式。除湿しながら空気を循環して、乾いた低温風でやさしく乾燥します。そのため、衣類の傷みや縮みを抑えられるとのこと。

ドラムがまっ直ぐなので、洗濯物が偏ることなく、乾燥後はスッと洗濯物を取り出すことができます。取り出す際に絡まって団子状態になる製品も珍しくないのですが、そういったことはありません。シワの少なさでは風アイロン機能を搭載した日立「ビッグドラム BD-STX110G」も優秀でしたが、乾燥においてはアクアのまっ直ぐドラムも負けずに優秀でした。

洗濯完了後、スッと取り出せるので感動しました。洗濯物同士がこんがらがっていません

洗濯物同士が絡まってしまうことがないので、しっかりと槽内で広がって乾燥されており、シワがとにかく少ないので驚きました。特に袖などは蛇腹状にしわしわ……ということもよくありますが、きれいなハリのある状態に仕上がっています。

日立「ビッグドラム BD-STX110G」で乾燥したシャツ
「まっ直ぐドラム」で乾燥したシャツ。シワが少ないので、普段着はアイロンがけをしていません
シワだらけになりやすい袖も、こんなにキレイ

ただ、乾燥状態には不満も。「標準」コースで洗濯乾燥を行なうと、全体的にしっとりした感じに。あとから乾燥時間を追加する場合はもう一度「乾燥」モードに設定しなおし、仕上げ乾燥をすることも可能ですが、それも面倒なので、我が家はあらかじめ乾燥が少し長く設定されている「念入り」コースを使っています。「念入り」コースにすると全体的に30分から1時間ほど長くなりますが、満足できるレベルで乾いています。

乾燥容量は6kgですが、それでもバスタオル、厚みのあるトレーナー、ゴム入りズボンのゴム部分などは乾きにくいので、5kg以下で乾燥するようにしています。

標準モードだと濡れた感じがするゴム部分。いつも「念入り」コースで乾燥時間を長めにしています

縮みについては、やわらかいニット系の綿、靴下は少し縮みます(これはまっ直ぐドラムに限ったことではありませんが……)。新品のやわらかい綿シャツは、平置きで両脇の直線距離は5cmほど縮んでいました。

41cmありましたが、乾燥後は36cmに。ヒートポンプだからといって、全く縮まないわけではなく、布地によっては縮むことも。どのメーカーも同じような結果でした

エアウォッシュ機能でシワを伸ばす

よく使っているのが「エアウォッシュ」機能。超音波により発生させたミストを槽内に充満させ、ふだん水洗いができない衣類なども温風を循環させて除菌と消臭ができます。また、シワを伸ばせるのも便利です。

シワがついてしまったワイシャツをエアウォッシュ機能でケアしました。約30分で、シワはほとんど気にならなくなりました。朝の忙しい時間、シャツを放り込んでまかせておけばシワがとれるので、息子の制服のYシャツはいつもこの機能を使っています。

エアウォッシュ前。大きなシワがいくつもついています
エアウォッシュ後。シワがかなり少なくなりました。これなら普通に着ていけます

お手入れは自動洗浄フィルターでカンタン

お手入れが簡単なところも魅力のひとつ。ふだんは排水フィルターと、週1回程度で補助フィルターをお手入れすればOKです。

補助フィルター。けっこうホコリが溜まるので、2回に一度はチェックして掃除しています
ティッシュでサッと拭けばすぐに終わります

他社は乾燥フィルターと補助フィルターを両方お手入れしなければならないものがほとんどですが、小さな補助フィルターはホコリを取るのも短時間でできるのでとてもラクです。

乾燥フィルターを掃除する必要がないのは、フィルター自動掃除機能を設けているから。熱交換器の自動洗浄はしていないのですが、熱交換器にホコリが行かないようにするため、乾燥フィルターのホコリをワイパーブラシとシャワーで洗い落としています。

ドラム式洗濯機は4~5年経過すると、中にホコリが詰まって乾燥機能が低下することはよくありますが、同製品はそういった心配がないとのこと。半年ほどではその点について評価することはできませんが、現時点では特に乾燥機能は問題なく、ホコリが排水口に詰まることもありません。

排水フィルターは毎回お手入れしないとニオイの元になります。扉やゴムパッキンにもホコリなどが溜まりにくく、お手入れは全体的にカンタンです。

排水フィルターはどんどん色素沈着するのが気になります……。汚れがもっとキレイに落ちるようにしていただきたい
ゴムパッキン裏にはホコリが少し溜まっていますが、これも拭けばOK。他社と比較しても少ないほうです

半年間使ってみて、一番気に入ったのは「シワの少なさ」

残念なポイントはIoT対応ではないこと。他社の上位モデルにはIoT機能が搭載されており、洗濯が終わったり、洗剤がなくなったりするとスマートフォンに通知が届きます。これはとても便利で感激したのですが、「まっ直ぐドラム」には非搭載。例えば、今は使いにくい機能があったとしてもIoT対応であれば、「ソフトウェア更新でアップデート」することで将来的には改善できるかもしれないのです。最上位モデルでは、ぜひ搭載してほしかった……というのが正直な感想です。

操作性についても、あまり良いとは言えません。電源ボタンはタッチパネルで、長押しする必要があります。他社の場合、電源ボタンは一発で押せる物理ボタンが多いのですが、そちらのほうが使いやすいと思いました。

また操作パネルの中に小さな文字でびっしりとコースなどが書いてあり、そこをタッチして操作するのも少々ストレスです。運転切替ボタンをタッチするたびに運転内容が変わるので、目的の運転内容になったらそこで止めます。念入り、スピードなどのコースについては、パネルに表示されたコースをダイレクトにタッチします。

このあたりの操作性もわかりにくく、文字が小さいので見にくいということもあり(こちら側の老眼もあります……)、我が家の洗濯係である50代夫は「わかりにくい」と嘆いていました。日立、東芝の操作パネルがとても使いやすく、コースを変えるときも迷わずできるのですが、「まっ直ぐドラム」は何か変更するときに取扱説明書を引っ張り出していました。現在はほぼ覚えたので取扱説明書を見る回数は減りましたが、お世辞にも直感的な操作ができるとは言えません。

連続して押す場所、ダイレクトに押せる場所、単なる表示だけの場所が混在していて最初迷いました

とはいえ、我が家には「まっ直ぐドラム」が合っており、満足しています。実際に使ってみて、ドラムがまっ直ぐであることのメリットが大きいことがわかったからです。

ドラムが水平で洗浄力という点では理にかなっており、大容量でコンパクト。上にモノを置けるのも便利です。ちょっとカゴを置いたり、着替えを置いたり、ドライヤーの一時置き場としても使えます(ただし、特に脱水時の振動は大きいので上にモノを置いておくと振動で落ちたりすることもあったので注意が必要です)。

天板はかなり広く、カゴも置けます
高さも低いので、ドライヤーの仮置き場にしてもちょうどいい。子供がよくここに置いています

特に気に入っているのは、乾燥後のシワがとても少ないこと。「ドラム式の乾燥はシワが多いから使わない」という声もたまに聞きますが、そういう方にこそ、ぴったり。自信を持っておすすめできる製品です。

洗濯槽と外槽の間に、UVライトを配置しています。除菌消臭効果があるとのこと

【番外編】ドラム式洗濯機を置く前に、排水口の掃除をお忘れなく!

製品とは直接関係ないのですが、我が家で縦型洗濯機からドラム式洗濯機に変更して一番驚いたことを最後にお伝えしておきます。

「まっ直ぐドラム」に変更し、初めて乾燥まで行なった後、取り出したところで気分が滅入りました。とても臭かったのです……。まさに強烈な「ドブのニオイ」でした。

縦型洗濯機で洗濯物にニオイがつくということはなかったので、ドブ臭に衝撃が走りました。当然、ドラム式洗濯乾燥機から匂っているわけではなく、どの製品を使っても同じことになっていたと思います。まともに排水口の中を掃除していなかったので、ドラム式に変更して乾燥を行なったことで、排水口のニオイが一気に上がってきました。そんなわけで、排水トラップを外してピカピカになるまで掃除し、排水口の中にも薬品を入れてしばらく放置、その後に取り付けて再開しました。

その後も数回は若干ニオイが残りましたが、現在は気になりません。特に縦型洗濯機からドラム式洗濯乾燥機に買い換える方は、我が家のようにならないためにも、先に排水口の掃除をしっかり行なっておきましょう。

石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

http://kaden-blog.net/