老師オグチの家電カンフー

クラウド上に自分のお墓を作ってみた!

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
クラウドのお墓「Cloubo(クラウボ)」

お墓に関する悩みを抱えている人が多いです。自分の入るお墓がない、家のお墓の面倒をみる人がいない、自分の子供たちに負担をかけたくない等々。そういった事情から、リアルなお墓から撤退する「墓じまい」も増加しているようです。生きるだけでも大変なのに、死後のことに煩わされたくないですよね。

いずれは、ブロックチェーンに刻まれた故人の情報がお墓の代わりになると、個人的には予測しています。お墓参りは、メタバース空間で、故人が生前に残した大量のデータを元に、AIが霊のように話し、故人との擬似的な交流が可能になるかもしれません。デジタル恐山です。

その第一歩となりそうなサービスが、Thinking Power Projectの「Cloubo(クラウボ)」。その名前、クラウド+墓(ボ)からも分かるように、クラウド上にお墓を構築できるサービスです。

お墓へのアクセスは、QRコードもしくは専用のURLから。スマホでもパソコンでもアクセス可能です。作成は、スマホから編集用のQRコードを読み込み、名前や画像といった情報を入力するだけ。対象は人とペットで、故人はもちろん、存命中の人でも自分のお墓を作ることができます。

というわけで、自分のお墓を作ってみましたが、ものの数分で完成しました。まぁ、ホームページを作るのと大差はないです。宗教色がないのは誰もが利用しやすい点ではありますが、各宗教ごとにオプションがあれば面白いですね。課金したら戒名が付与されるとか、お経や賛美歌が流れるとか。

クラウボの利用には、QRコードを使用する。お墓にアクセスする読み取り専用のQRと、作成・編集のためのQRの2種類が提供される
作成は、編集用のQRコードを読み取って、メールアドレスとパスワードを設定、名前や生年月日などの情報を入力していく
お墓のページの完成。生前墓と同様に、名前が赤文字になっている

クラウボはWeb上で簡単に作れるだけでなく、「Handy Tomb Unit(ハンディートゥームユニット)」なる物理的なアイテムも用意されています。中に遺骨を入れた小型カプセルを収められる、手のひらサイズの擬似的なお墓、もしくは仏壇に近い存在です。

素材はケヤキと御影石があり、計3グレードが用意されています。価格は6,800円〜1万2,800円と、リアルのお墓の100分の1以下。これに、5年間の使用権がついていて、プラス2,000円で計10年使用できます。

小さいので置き場所にも困りませんし、小さくともモノとしてあれば、見る度に故人(やペット)のことを思い出しやすい。まだ多くの人類は、データのお墓だけでは納得できない段階にいるでしょうから、こういう物理アイテムとのセットは、現状で合理的な気がします。

Handy Tomb Unit。右から「欅 45」6,800円、「欅 55」8,800円、「御影 60」12,800円(いずれも5年使用権付)
少量のお骨が入る小さなカプセルを中に収められる

もちろん「物理は要らない、ネットだけでOK」という人は、QRコードシートだけ買うこともできます(5年間の使用権付きで4,800円)。逆に、お墓に行っても知らないご先祖様のことは具体的に思いようがなく、人類の承認欲求の強さを考えれば、こうした故人の情報が見られるサービスは今後増えていくでしょうね。

ワタシが生まれた1969年、人類で初めて月に降り立った宇宙飛行士のアームストロングは、「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」という名言を残しました。クラウボは、数分で作れてしまう小さなお墓ですが、人類の死生観を変える偉大な一歩なのかもしれません。

木製のユニットには遺影を立てるスタンド機能も付く
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>