神原サリーの家電 HOT TOPICS

キッズから高齢者まで、家族みんなで使いたい“電動歯ブラシ”のススメ

昔は虫歯、今は歯周病予防が第一

 6月4日から10日は「歯と口の健康週間」だ。ひと昔前までは、虫歯を防ぐための歯磨き習慣を促進するためのものだったのが、今は歯周病のリスクを減らすための施策が注目されている。というのも、幼いころからの歯磨きの徹底やフッ素の塗布などによって、日本では子どもたちの虫歯は年々減少し、今では半減しているのだ。

 その一方で、世界で最も患者が多い病気は歯周病で、日本においても20代の約75%、30歳以上の約80%が歯周病ともいわれている。歯周病の影響は、口腔内の健康だけでなく、心臓病や妊娠合併症など全身のさまざまな病気を引き起こす可能性があるというから放っておけない。最近は、アルツハイマー病を引き起こす要因の1つとして、歯周病の原因菌が作り出す“酢酸”にその一因となる可能性があるという仮説も発表されている。また、アルツハイマーでなくとも「噛む」ことで脳が活性化して認知症の予防に役立つとも言われている。

 歯周病はすぐに生死に関わる病気ではないので、放っておきがちだが、早めの治療はもとより、歯周病対策のためにもきちんとした口腔ケアを心がけたい。そこで、今回は「歯周病対策のための“電動歯ブラシ”のススメ」と題して、各社の電動歯ブラシの特徴と最新のラインアップをご紹介する。キッズ向けや高齢者にも抵抗なく使えそうなものもピックアップしたので、家族みんなの口腔ケアに役立てていただければと思う。

歯周ポケットのケアを提唱するパナソニックのドルツ

<パナソニック 音波振動ハブラシ ドルツ EW-DE55>
実売価格:14,026円(編集部調べ)

 歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきのすき間に潜む歯周病の原因菌を除去するため、歯周ポケットのケアを提唱し続けているのがパナソニックの音波振動ハブラシ「ドルツ」。歯周ポケットの奥まで届く「極細毛」と、微細な振動で歯周ポケットをやさしく磨く「音波振動」、歯周ポケットに沿ってブラッシングできる「ヨコ磨き」を3原則としている。

 最新モデルのEW-DE55では、植毛密度を高めた細さ約0.02mmの極細毛ブラシを採用した「イオン用密集極細毛ブラシ」が毎分約31,000回の音波振動によって歯周ポケットを優しく、すみずみまで磨くとしている。デリケートな歯周ポケットに必要以上に極細毛が入り込まないよう、毛先に3mmの段差を設けるなど、歯周ポケットに対する熱意には並々ならぬものがある。

パナソニック「音波電動ブラシ ドルツ EW-DE55」

 強めに押しつけても、常にブラシの振幅を維持できるようにパワーを制御し、充電がなくなるギリギリまでその最大振幅を維持するなど、2015年発売モデル以降は、かなりパワフルになっているが、基本的には「ゴシゴシ」や「ツルツル」を目指さす、「すみずみ」まで丁寧にやさしく磨けるところが魅力。1時間でフル充電が可能と高速充電タイプ。万が一の充電切れの際にも、2分間の充電で約2分間磨けるところもうれしい。

 また、口腔内の汚れを隅々までジェット水流で洗い流す「ジェットウォッシャー」シリーズとの併用も促している。

奥歯までしっかりと磨けるオムロンのメディクリーン

<オムロンヘルスケア メディクリーン HT-B315>
実売価格:11,110円(編集部調べ)

 1978年4月に電動歯ブラシ「エレデント HT-B10」を発売してから、今年で40年目を迎えるオムロンヘルスケア。2007年からは、音波式電動歯ブラシ「メディクリーン」の発売を開始している。最新モデルとなる「メディクリーン HT-B315」では、これまでの歯ブラシでは届きにくく、磨きにくい奥歯のケアに注目し、まっすぐでなく11度傾いた独自のヘッドの仕様に刷新した。

オムロンヘルスケア「メディクリーン HT-B315」

 これは歯科医の使用するデンタルミラーをヒントに設計したもので、高性能なマイクロモーターを搭載したことによってこの傾斜が実現できたという。最大33,000回/分の音波振動とタテヨコの振動によって、落としにくい奥歯の歯垢も徹底的に除去できるのが特徴。

 歯の側面を磨く時には歯茎にやさしい「ソフトケアモード」(約13,000回/分)、奥歯の奥を磨く時には縦と横の振動で楕円運動する「クリーンモード」(約25,000/分)、噛み合わせ面には溝に溜まりやすい歯垢をかき出す「ポイントケアモード」(約33,000/分)と、磨く場所に応じて使い分けながら磨くと効果的だ。奥歯のケアをさらに徹底的にしたいなら、別売品となる「トリプルブラシコンパクト」を使うのがおすすめ。女性や子どもなど口の小さい人にも向く。

 また、電動歯ブラシを初めて使うエントリー層には、シンプルで軽い「HT-B302」もあり、価格も上位モデルに比べて求めやすくなっている。

歯垢除去&ステインも落とすフィリップスのソニッケアー

<フィリップス ソニッケアー フレックスケアー プラチナ HX9195/29>
実売価格:12,980円(編集部調べ)

 歯科医が選ぶナンバーワンブランドとして知られるフィリップスの「ソニッケアー」は、毎分31,000回の高速振動と唾液を活用した音波水流によって、毛先の届きにくい歯のすき間や奥歯の歯垢まで除去するとしている。磨いた後の、ツルツル感が印象的だ。

 歴史をたどると、歯科医院で使われていた音波技術を応用した電動歯ブラシとして、1992年に米国のオプティバ社から発表。2000年にオランダのロイヤルフィリップス社が同社を買収し、全世界への展開を開始しているが、日本ではそれより前の1996年に販売が始まり、現在に至る。

フィリップス「ソニッケアー フレックスケアー プラチナ HX9195/29」

 2015年9月に日本での発売が開始された「ソニッケアー フレックスケアー プラチナ」は、付属する新開発の「アダプティブクリーンブラシヘッド」で、これまでよりも歯垢除去力が10倍になったとされる。これはブラシ毛の根元にゴム素材を採用したことで毛先の稼働領域が広がるというもの。また、このゴム素材は余分なブラッシング圧を吸収してやさしく磨くのにも役立つという。

 また、クリーン、ホワイト、ディープクリーンという3つのブラッシングモードと、3つの強さ設定を組み合わせた9通りの中から、自分の口腔内の状態に合わせたオーラルケアをできるのも特徴だ。ソニッケアーのエントリーモデルとしては、2分間の強力なステインオフの動作など“歯の白さ”を訴求するホワイトモード搭載している「ヘルシーホワイトプラス」がある。

子どもの正しい歯磨きを促すソニッケアーキッズも

<フィリップス ソニッケアーキッズ>
実売価格:8,108円(編集部調べ)

 Bluetooth搭載で歯磨きアプリとの連携で子どもたちに正しい歯の磨き方と2分間の歯磨き習慣を自然に身につけさせることができるのが、ソニッケアーの子ども用モデル「ソニッケアーキッズ」だ。毎回の歯磨きの前には、キャラクターのスパークリーが上手なブラッシングのコツを指導し、歯磨き中はわかりやすいガイドでどこを磨くか説明。アプリ内には日々の歯磨きを記録していくカレンダー機能もある。

歯磨きアプリと連携してつかう子供向けのフィリップス「ソニッケアーキッズ」

 歯磨きが上手にできると、スパークリーは喜んで、ごほうびをもらえるなどゲーム感覚で歯磨きができるのが特徴だ。実際の歯磨き機能も大人向けのソニッケアー同様、毎分31,000回(毎秒500回)の高速振動による音波水流で手磨きよりも最大で75%多く歯垢を取り除くとしている。ゴム素材のヘッドと、2つのやさしいモードで電動歯ブラシに慣れない子どもでも、抵抗なく使える仕様になっている。

円形のブラシですみずみまできれいにするブラウンのオーラルB

<ブラウン オーラルB ジーニアス9000>
実売価格:17,102円(編集部調べ)

 歯科クリーニング器具に発想を得た丸型ブラシが一本一本の歯を包み込み、たたくような前後振動と左右反転運動の3D丸型回転で優れた歯垢除去力を持つのがブラウンのオーラルB。毎分約48,000回の高速上下振動で歯垢をたたいて浮かし、毎分10,500回の左右反転運動で、歯垢をしっかりかき出すため、歯ぐきの際まできれいにしてツルツルの仕上がりになるとしている。「物理的にこすらなければ歯垢は落ちない」という考えのもと、パワフルに磨き上げるのがブラウンの特徴といえるだろう。

ブラウン「オーラルB ジーニアス9000」

 最高峰モデルとなる「オーラルB ジーニアス9000」では、Bluetooth接続によってリアルタイムで磨き具合をフィードバックし、2分間タイマーで口腔内の各箇所のブラッシング時間をモニターして、理想的な歯磨きをサポートしてくれる。例えば、ブラシを押し付け過ぎるとスマートフォンの画面と本体のランプで知らせるのに加え、自動的に「やわらかクリーンモード」に切り替わるなど、歯と歯茎にやさしく磨ける仕組みも。磨き忘れや磨きぐせに気づけるのも新しい。

 そのほか、オーラルBアプリを使うことで、自分の口腔ケアに即した集中プログラムを選択したり、歯科医院で必用なケア設定をしてもらったりという使い方もできる。

初心者や高齢者、出張時にも取り入れやすい無印の音波電動歯ブラシ

<無印良品 音波電動歯ブラシMJ‐ET1>
実売価格:2,490円(編集部調べ)

 上記4メーカーの電動歯ブラシとは価格も仕様も異なるが、充電式でないので洗面所もすっきりとし、軽くて出張や旅先にも持っていきやすいモデルとして、無印良品の「音波電動歯ブラシMJ‐ET1」を最後に紹介したい。

無印良品の「音波電動歯ブラシMJ‐ET1」

 専用のブラシを取り付けて使うのではなく、無印良品ブランドの歯ブラシを挿して使う方式なのが斬新。そのため、歯ブラシは別売りとなる。毎分約30,000回の音波振動ということだが、運転モードは1つだけとシンプルで、実際の使い心地としては、ツルツルの磨き上がりというよりは、手よりも丁寧にすみずみまで磨けるといった印象だ。パワフルな高級モデルを使い慣れている人にはやや物足りないかもしれない。

 でも、やさしい磨き心地で、いつも使っているような歯ブラシを挿しこんで使う方式のため、電動歯ブラシに抵抗のある高齢の方や初心者にいいのではないだろうか。選ぶ歯ブラシの種類によっても磨き心地が変わるので、しっかりとした磨き心地を好む人なら、極細毛タイプでなく、コシのある普通毛タイプをおすすめする。

神原サリー

新聞社勤務、フリーランスライターを経て、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。現在は家電+ライフスタイルプロデューサーとして、家電分野のほか、住まいや暮らしなどライフスタイル全般の執筆やコンサルティングの仕事をしている。モノから入り、コトへとつなげる提案が得意。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、メーカーの現場の声を聞くことを大切にしている。 テレビ・ラジオ、イベント出演も多数。