第9回:加湿器にはいろんな方式があるけど、どれを選べば良い?
ただでさえ乾燥しているこの季節、ノドが腫れて痛い思いをしている人は多いだろう。特に、エアコンやファンヒーターなどを使っている場合は、部屋の湿度はどんどん下がって、「のどが渇いてしょうがない」「肌がパサパサ」なんてことも起こりうる。
そんなときの強い味方が加湿器だが、いざお店に行ってみると種類がありすぎて困る。特に悩んでしまうのが、「気化式/スチーム式/超音波式/ハイブリッド式」といった、加湿方式のタイプによる違いだ。どれがどうイイのか悪いのか、さっぱり分からん!
実験した加湿器のラインナップ。左からハイブリッド式、スチーム式、超音波式、気化式の加湿器。つーか左(ハイブリッド式)と右(気化式)は白いヤツが出てないのに、本当に加湿できてんの? |
そこで当連載「実践! 家電ラボ」の出番だ。「気化式/スチーム式/超音波式/ハイブリッド式」という、種類の異なる4つの加湿器を実際に使ってみて、それぞれの機能や特徴を見て、結果からどういう違いがあるのか、購入の際にはどのような部分を気をつければ良いかを調べてみよう。
Do it oneself!
分からんことは、自分で調べる、やってみる!それが家電ラボのポリシーであるっ!!
■気化式/スチーム式/超音波式/ハイブリッド式で比較。加湿能力は毎時300mlに統一
まずは実験の概要から説明しよう。今回調べる加湿器の方式は、「気化式/スチーム式/超音波式/ハイブリッド式(ヒーター + 気化)」という、市場に多く出ている4タイプだ。これら4つのタイプの中からそれぞれ1つの加湿器を代表として選び、加湿のスピードなどでどのように違いがあるかを比較する。
しかし、比較するためには、前提条件がある程度同じでないといけない。そのため今回選んだ機種は、すべて1時間当たりの加湿能力が300ml(木造和室5畳、プレハブ洋室8畳向き)の機種を選択した。
まずはそれぞれの機種について、短評も交えて以下に紹介しよう。それぞれの加湿方式の詳しい解説は、テストが終わった後半で詳しく述べる。
(1)超音波式:アピックス「SHIZUKU AHD-010」
超音波式:アピックス「SHIZUKU AHD-010」 |
・定格加湿能力:300ml/h
・水タンク容量:3.3L
・定格消費電力:38W
・重量:2.2kg
・大きさ:幅227mm×奥行き220mm×高さ330mm
・実勢価格:3,500円前後
超音波で水を震わせてミスト(霧)のようにするのが超音波式の加湿器だ。まるで湯気のようにミストがモクモクと出るので、見た目に「加湿してっぞ!」感が高い。
この「SHIZUKU」は、水のしずくをデザインした面白い形で、今回の機種では一番オシャレに感じられた。価格もほかのタイプに比べると安い。
加湿の強弱は無段階調節ができる。操作はこのダイヤルだけなので簡単この上ない | 水タンクは安定性が悪く、給水時は手で支えないと倒れてしまう |
(2)スチーム式:象印マホービン「EE-QA30」
スチーム式:象印マホービン「EE-QA30」 |
・定格加湿能力:300ml/h
・水タンク容量:1.0L
・ 定格消費電力:300W
・ 重量:1.8kg
・ 大きさ:215×260×205mm(幅×奥行き×高さ)
・ 実勢価格:7,000円前後
スチーム式は、沸かしたお湯の蒸気、つまりスチームで加湿する。電気ポットのフタをスチームの吹き出し口に替えたようなものだ。
この「EE-QA30」では、65℃の蒸気が本体から吹き出る。小さい子どもがいる家庭ではチョット危険に思われるかもしれない。しかし、今回選んだ4製品の中では、倒れても水漏れしない唯一の加湿器だった。
なお、ファンでスチームを飛ばす「スチームファン式」というものもあるが、本製品はファンを使わない、純然たるスチーム式の加湿器になる。
構造はほとんど電気ポットと同じ。横に倒れても熱湯がこぼれないようになっている点は◎ | スイッチ類はシンプルで強弱の2段階。長押しでチャイルドロックができる。フタも2つのレバーを同時に操作しないと開けられないようになっている |
(3)気化式:VICKS「V3900」
気化式:VICKS「V3900」 |
・定格加湿能力:300ml/h
・水タンク容量:4.0L
・定格消費電力:33W
・重量:3.6kg
・大きさ:280×280×268mm(幅×奥行き×高さ)
・実勢価格:12,000円前後
気化式は、水を含んだフィルターに風を当てて空気を加湿するという、単純な機構が特徴だ。消費電力は少ないが、水を一切温めないので、出てくる風が冷たいことが難点とされる。
「VICKS V3900」は、海外メーカー製のためやや大きめだが、そのぶん水タンクが大容量で4Lも入る。朝のうちに給水すれば、一日中運転していても水を継ぎ足す必要がない。風量を強くするとうるさいので、テレビを見ている時は運転音が気にならない弱か中で使うと良い。
なおこの製品については、過去にレビューで紹介している。
送風は3段階に調整できる。最大にするとかなり風がうるさく感じられた | 水タンクは大容量4L。給水口が大きく中も清掃しやすい |
(4)ハイブリッド式:DAINICHI(ダイニチ) HD-300A
ハイブリッド式:DAINICHI(ダイニチ) HD-300A |
・定格加湿能力:300ml/h
・水タンク容量:2.5L
・定格消費電力:161W
・重量:3.1kg
・大きさ:幅322mm×奥行き160mm×高さ325mm
・実勢価格:9,000円前後
「ハイブリッド式」は、水を含んだフィルターに風を吹きかけるという点は気化式と同じだが、送風する空気をヒーターで温める点で決定的に異なる。そのため気化式よりも吹き出る風が冷たくない点が特徴(ただし、暖かくもない)。
今回選んだ「HD-300A」は、ストーブや石油ファンヒーターで知らせるダイニチ製。4製品の中で唯一センサーを搭載し、湿度の指定ができる。
なおハイブリッド式には、超音波式とヒーターを組み合わせて“ハイブリッド式”を謳う機種もある。今回は「気化式 + ヒーター」によるハイブリッドである点をあらかじめご理解いただきたい。
湿度センサーを内蔵しており、目標湿度の設定ができる。タイマーに運転切り替えスイッチなどがある。今回選んだ中ではインテリジェントな加湿器だ | 水タンクは取っ手が付いていて持ち運びやすく、給水口も大きいので清掃しやすい 【お詫びと訂正】初出時、機器内部は洗えない旨の記述がありましたが、内部トレイは本体から引き出して洗えます。お詫びして訂正いたします |
■測定条件も統一した
実験で使用するのは上記の4機種だが、これらを運転させる舞台も、できるだけ同じ条件で測定できるように、次のような条件で実験した。
奥にあるのが加湿器。実際には1台のみをおいて実験している。左横にあるのがガスファンヒーター。温度と湿度センサーは、手前に写っているテーブルの上に置いて測定した。なお写真には写っていないが、手前側がキッチンもある |
・部屋は12畳 + 2畳のダイニングキッチン(高気密住宅・一戸建て)
・測定開始は夜中の0時~1時の間
・湿度はおよそ30%からスタート
・室温はおよそ20℃からスタート
・暖房と併用する状況を想定し、ガスファンヒーターも使っている
・ファンヒーターの設定温度は22℃
・加湿器は指定できる最大能力に設定
・測定中はドアなどを一切開けない
・測定はスイッチONから3時間行なう
・測定器は加湿器とファンヒーターから3m離れた高さ1mの場所に設置
なお、今回選んだ定格加湿能力300mlの加湿器の適用床面積は、プレハブ洋間で8畳(木造和室5畳)。しかし、我が家には実験に都合の良い8畳の部屋がなかったため、12畳 プラス キッチン2畳のダイニングキッチンとなった。スペックと実際の部屋の大きさに差があるが、事前の実験で乾燥を感じない50%前後まで湿度が上がったため、この条件でテストしている。
測定時間を3時間としたのは、理由が2つある。1つは、予備実験でほとんどの加湿器が3時間程度で安定するという点。もう1つは我が家の問題で、実験開始時刻から3時間ほどすると早起きの爺ちゃんが起きちゃう場合があるからだ(笑)
なお、実際に加湿器を使う場合は、部屋のドアの開け閉めなどが頻繁にあると考えられる。すべての環境でこの実験通りの結果にはならない。あくまでもひとつのサンプルとして考えていただければ幸いだ。
【突然コラム】対応床面積を示す「プレハブ」や「木造」の意味
エアコンや加湿器、空気清浄機なの対応床面積で「プレハブ○畳向け」という表記をよく見かける。筆者は最初「なぜ仮設住宅のようなプレハブでの能力なんだろう? 」と前々から疑問になっていたが、実はこの「プレハブ」、いわゆる一般的なプレハブ小屋とは違う。
対応床面積で使われている「プレハブ」の意味は、建築用語で「あらかじめ工場で精度の高い壁や構造体などの部品を作り、現地でそれを組み立てた家」という意味。なので、木造のツーバイフォー住宅なども、木造ではあるが「プレハブ」に属する。
一方「木造」と言うのは「大工さんが現地で木を削ったり切ったりして立てた家」のこと。プレハブに比べると精度が低いので、機密性が低くなるぶん、エアコンや加湿器の対応床面積が狭くなっているのだ。
■実験の結果、素早く加湿できるのは「ハイブリッド式」「超音波式」
さて、上記の条件で実験をした結果、湿度の変化は次のグラフのようにとなった。順を追って、各加湿方式ごとに見てみよう。
使用開始~3時間後の各加湿方式における湿度変化 |
3時間後に一番湿度が高くなったのは超音波式。スイッチONから、素早く加湿しているのが分かる。また、2時間半を過ぎてもさらに加湿し続けている。
しかし、それよりもスイッチONから素早く加湿しているのがハイブリッド方式だ。超音波式は霧が見えるので加湿している感があるのだが、湯気の見えないハイブリッド式がこれほどまでに加湿しているとは驚きだ。
ただし、2時間半を過ぎると、湿度は50%で頭打ちになってしまった。本体のセンサーの設定は湿度70%にして運転していたのだが、これは機器のせいというよりも、部屋が広すぎたせいだろう。
左からハイブリッド式のダイニチ「HD-300A」、スチーム式の象印「EE-QA30」、超音波式のアピックス「SHIZUKU AHD-010」、気化式のVICKS「V3900」 |
気化式も、水に浸したフィルターに風を当てるだけという単純な機構ながら、湿度が低い状態だとハイブリッドや超音波式にも負けない加湿性能を見せた。湿度は3時間以内に50%を超えることはなく、超音波やハイブリッド方式に比べると、やや加湿のパワーは劣るようだ。しかし、使用から1時間後には45%を超えており、空気が乾燥している感じはしなかった。
加湿に一番時間がかかったのはスチーム式だ。お湯を沸かしてその水蒸気で加湿するためか、他の加湿器より時間がかかってしまうようで、2時間後にやっと45%を超えた。こちらも3時間以内に湿度が50%を超えることはなかったが、最終的には気化式を追い抜いた。なお、10分と1時間40分のところで湿度がいったん落ち込んでいるが、これは沸かしすぎを防止するために、自動的に一時停止状態になったことによる。
まとめれば、立ち上がりのスピードが早く、パワフルに加湿できるのは「超音波式」「ハイブリッド式」ということが言えそうだ。
ちなみに温度についても同時に計測したが、グラフ化していない。というのも、温度変化に各方式間に大きな変化は見られず、どれもファンヒーターの設定温度である22℃を維持していた(細かいことを言うと、スチーム式[象印]と気化式[VICKS]では、3時間後に22.5℃だった)。今回の実験においては、加湿方式による室温の差はない、という結果になった。
■方式によって数値に差が出たけど、空気はちゃんと潤う
さてこの実験では、最大で約10%の湿度の差が出る結果となったが、加湿器の本質である空気を潤すという点ではどうだろう。個人的な感覚でいえば、どの機種においても、特に空気の乾燥を感じることはなかった。もちろんスタート序盤の30%くらいはやや乾燥が感じられたが、40%を超えたあたりで特にそういった感覚はなくなった。
今回の4機種による3時間後の湿度を、夏の蒸し暑さを表す「不快指数」に当てはめて計算してみたが、指数は大多数の人が「快適」と感じられる、65~70レベルに収まる結果となった。不快指数は夏の基準のため、あくまでも参考ではあるが、60~65レベルの「何も感じない」、55~60レベルの「肌寒い」よりも良い結果となった。空気を潤すという観点からは、どの機種も性能に大差はない、と言って問題はないだろう。
夏の蒸し暑さを表す「不快指数」に当てはめると、どれも「快適」の範疇に入った |
また、加湿器で湿度を上げ過ぎると、今度は結露という厄介な問題も出てくる。
空気は気温が下がるほど、空気中に含む水蒸気の量が少なくなる性質がある。リビングの温かい空気は、加湿器が放出する水分をどんどん吸収するけれど、窓押入れなど温度が低いところは、空気が水分を吸収しきれず、水滴となって姿を表す。これが結露だ。この水滴を放っておけば、カビなどの原因にもなってしまう。
今回の実験では、湿度60%を超えなかったこともあってか、窓や壁に結露はほとんど見られなかった。ただし、より長時間続けた場合、加湿しすぎの機器も出てくるかもしれない。そう考えると、ダイニチのハイブリッド式のように、湿度センサーが付いている機種は、結露を抑える点で役に立つだろう。
■消費電力と実際に部屋に放出された水の量を比較。一番省エネは気化式と超音波式
どれも快適なレベルまで加湿できることがわかったが、それならば、電気代を加味したうえでの効率はどうだろう。それぞれの省エネ性や放出した水分量などを調べ、もっとも加湿効率が高かった製品を選んでみよう。
まず省エネ性は、気化式と超音波式が優勢だ。3時間運転しても、電気代は気化式が1.32円、超音波式は2.42円と、次の行で紹介する2つの方式に比べ桁違いに安い。
一番電力を消費するのは、お湯を沸かすスチーム式で、3時間の電気代は17.16円。ハイブリッド式も温風を使うため、11.22円と、気化式・超音波式に比べてかなり割高になるようだ。
最大出力で3時間運転した時の【消費電力量】 |
最大出力で3時間運転した時の【電気代】 |
また、3時間でどのぐらいの水を部屋の中に放出したかを、タンクに残った水の量を元に算出したのが次のグラフだ。
最大出力で3時間運転した時の水放出量(タンク残量より算出) |
結果、超音波式が一番水を放出していることになった。ただし、加湿器の周りが濡れており、空気中に溶け込むことができなかった水分もそれなりにあったと思われる。続くスチーム式は、実験した機種のタンクが1Lと小さく、3時間でタンクがほとんど空になってしまった。とはいえ放出した水の量は900mlで、キッチリ定格加湿能力の毎時300mlという結果となった。
ここで驚いたのが、気化式が360mlと、異常に少ない点。それでも湿度が45%まで上がるということは、水分が空気によく溶け込んで効率的、ということなのかもしれない。
■各方式を分析するとこんな違いが!
実験はこれまでだが、超音波式が本体価格も安く、かつ電気代もほとんどかからず、それでいて加湿もパワフル、ということが読み取れるが、これはあくまでも加湿能力に限った話であることを付け加えたい。それ以外の加湿方式が多数発売されているのは、超音波式にはあるデメリットがあるからなのだ。
ここからは、冒頭でサラっとしか触れなかった各加湿方式の違いを、今回の実験結果も踏まえたうえで、各方式のメリットとデメリットを説明しよう。なお、筆者の独断で、各代表機種の評価もしている。
3時間のテストの際に、透明な板を吹き出し口にセットした。これで放出される水にカルシウムやミネラルが含まれているかをチェックしようという狙いだ |
なお各方式の中で、透明な板の写真を掲載しているが、これは加湿器の吹き出し口から10cm上部にセットし、3時間運転した結果だ(写真右)。板が濡れていた場合は、これを乾かした後で写真を撮っている。この透明な板は、水道水に含まれるカルシウムやミネラルなどの成分が加湿器から出ていないかを調べるためのもの。もしこれらが出ている場合は、板に白い粉上のものが浮き出るというワケだ。
・【超音波式】 加湿は早く消費電力も少ないが、安全のためにはこまめなメンテナンスが重要
超音波方式は、超音波を発生する小型スピーカーを加湿器内部に備え、これを水に浸すことで水を超音波で細かく砕いて、煙のように見えるミスト状にするというものだ。“煙”が目に見えるのは、気化式に比べると水滴が大きいためだ。
白い部分が、超音波を発生させるスピーカー部分。超高速で振動するので、水を霧状のミストに砕いて加湿する | お湯を沸かした湯気は天井に向けて昇っていくが、超音波式で発生したミストは水滴が大きく重いのでゆっくりと床に落ちてゆく |
超音波式のデメリットは、水が傷みやすい点だ。ある医療機関によれば、水道水の殺菌をする塩素が、超音波ですぐに蒸発してしまい、後には殺菌成分のない水が残ってしまうため、水が傷みやすいらしい。さらに、超音波式は水滴が大きいため、水にカビなどが発生していると、水滴に乗って部屋全体に菌を撒き散らかしてしまう恐れもあるという。おまけに、加湿器内部をこまめに清掃しないと“加湿器病”というアレルギー性疾患にかかってしまう場合があるらしい。
次の写真は、吹き出し口にセットした透明板の写真だ。水道水に含まれるカルシウムやミネラルをそのまま放出していることがわかる。
最近の機種では、水を浄化する抗菌カートリッジなどを備えたものもある。そのような仕組みがない超音波式の加湿器は、恐らくかなり安価であるだろうが、安全性を優先するのであれば、使用を控えた方が良いだろう。また、抗菌作用がなくなったカートリッジを使い続けるのも避けたほうが良い。
・【スチーム式】消費電力は高く加湿スピードも遅めだが、沸騰するため菌は少ない
スチーム式は水を沸騰させてその蒸気で加湿する方式。超音波式と同様、煙のように見える水蒸気が出てくる。水滴は大きめだが、いったん水を沸騰させた時点で滅菌される。そのため、蒸気に生きたままのカビなどの菌が入る可能性は低い。
デメリットは、水を沸かすため消費電力が高い点と、素早く加湿できないという点。この2点については、本文を読んでいただければお分かりいただけるだろう。
なお、今回は短い期間だったので問題として現れなかったが、スチーム式ではタンク内に白いミネラル分、いわゆる「カルキ」が発生することがある。ちょうど、電気ポットを使っていると溜まってくるのと同じだ。これを取り除くには、電気ポット用のクエン酸の洗浄剤などを使う必要がある。
スチーム式は電気ポットと同じで、内蔵したヒーターでお湯を沸かす | 超音波式のミストより水滴が小さいので、湯気は見えにくく、天井に向かって登っていく |
吹き出し口の湯気チェック。超音波式ほどではないが、わずかに白い斑点が見える | 拡大写真。ホコリのような白いものが見えるが、これは水道水のカルシウムやミネラルなどの成分。大半はポットの中に残るようだが、ごく僅かに放出しているようだ |
・【気化式】加湿スピードは遅いが、消費電力が少なくて省エネ
気化式は、加湿器内部のフィルターに水を通し、そこにファンで送った空気を送り込む。空気清浄機やイオン発生器などに搭載されている加湿機能は、この方式を採用している場合が多い。
メリットは消費電力が少ない点。省エネをしたい場合にはピッタリだろう。また、水滴が目に見えないほど小さいため、カビなどの菌を部屋に撒き散らしてしまう心配も少ない。念のためタンクの水を消毒したり、フィルターが除菌仕様の製品がいいだろう。なお、今回紹介したVICKS VC3000では、紫外線を当てて滅菌している。
デメリットは、スチーム式と同様、素早く加湿できないという点と、ファンを使うため比較的運転音がうるさめな点。加湿器から出てくる風が冷たい、というのもデメリットではあるが、今回の実験では暖房と併用していることもあって、室温は下がらなかった。
水タンクを外したところ。左側がフィルターとなっていて、右側の波打っている部分にファンが内蔵されている | 左側が本体背面、右側が全面となっている。左側のフィルターは常に水で湿っているので、ここを通った乾いた空気が加湿され、ファンで右側から送風される | 吹き出し口の板には、特にこれといった跡は残らなかった |
・【ハイブリッド式】 消費電力は高いが加湿は早い。全体的にバランスが良い
気化式にヒーターを加えた“ハイブリッド式”は、気化式のデメリットである「素早く加湿できない」「風が冷たい」というデメリットを、フィルターに温風を当てて克服している。加湿スピードも早く、水滴の付着も見られないので、全体的にバランスが取れていると言って良いだろう。
難点は、ヒーターを使うため、消費電力が多いこと。また気化式同様に、ファンの音がうるさく感じられるかもしれない。
■こんな人にはこのタイプの加湿器がオススメ!
さまざまな方式の加湿器を実験結果を交えながら紹介してきたが、これらを踏まえて「どんなヒトにはどんな加湿器が最適か? 」というまとめをしよう。
・小さい子どもやお年寄りのいる家庭では、[気化式]か[ハイブリッド式]
安全性を重視するなら、気化式かハイブリッド式を選ぶといい。加湿の速さならハイブリッド式を選択するのがベストだが、ランニングコストを優先するなら、ヒーターを使わない気化式がオススメだ。
一日中運転するなら、ランニングコストが安い気化式がオススメ | 素早く加湿する場合は、ハイブリッド式がオススメだ。 |
・素早く加湿したい場合は[ハイブリッド式]、[超音波式]
朝起きて通勤、通学に出かけるまでの短い間、また帰宅して素早く加湿したい場合は、立ち上がりが早いハイブリッド式か超音波式がオススメだ。
・静かさで選ぶなら[スチーム式]、[超音波式]
どちらもファンがないので、たとえば寝ている間に寝室で使う場合など、静かさを求める場合は超音波式かスチーム式のどちらかになるだろう。個人的には内部の掃除がしやすい象印のスチーム式がオススメ
超音波式は音が静か | スチーム式も音は静か。今回使用した象印「EE-QA30」は、フィルターもなく、内部にフッ素加工が施されているため汚れがこびりつきにくい。メンテナンスが楽でオススメだ |
・超音波式は手入れを怠らないこまめな人に
超音波式は先程指摘したとおり、水が傷まないように水を取り替えて定期的に洗浄するなど、メンテナンスが重要になる。手入れを怠らないこまめな人にこそ向いている。
最後にオマケとして、今回実験で使用した4機種について、加湿方式の特性も考慮したうえで、筆者による5段階評価をしてみた。表中の数値が高いほど、性能が優れていることを表す。もしこの中でほしい機種があった場合は、参考にしていただければ幸いだ。
超音波式:アピックス「AHD-010 SHIZUKU」の総合評価 | スチーム式:象印「EE-QA30」の総合評価 |
気化式:VICKS「V3900」の総合評価 | ハイブリッド式:DAINICHI(ダイニチ)「HD-300A」の総合評価 |
というわけで、今回の実験は以上だ。買い物の際に「この加湿方式ってどういう特徴があるんだっけ? 」と迷うことなく、自信を持って購入していただきたい!
2012年1月20日 00:00