家電製品ミニレビュー

大きな水タンクで一晩中使えるスチームファン式加湿器

空気の乾燥に備えて加湿器の季節

東芝のスチームファン式加湿器「KA-R35」

 冬が近くなり、空気も乾燥してきた。こういう季節は加湿器の出番だ。今回は東芝のスチームファン式加湿器を紹介する。「KA-R35」という製品で、コンパクトな本体ながら、水タンクの容量が4Lと大きいのが特徴だ。

 KA-R35は、東芝のスチームファン式加湿器のラインナップでは、下位に位置する。ただし、上位機種との差は、東芝のイオン技術で、殺菌などの効果があるというピコイオンが搭載されていないことや、対応する部屋の広さが最上位機種では14畳までのところが、10畳までになっているぐらいだ。個室で使う分には実力に不足はない。

 実売価格は8,000円台のことが多く、10畳まで対応するスチームファン式加湿器としては、割安な部類に入る。

左上の部分が加湿機の主要部分。底の部分から取り入れられた水が沸騰し、内部のファンにより、中央の部分から蒸気となって吹き出す

 ちなみに、スチームファン式というのは、水を沸騰させて出てきたスチーム(湯気)を、ファンで送り出す方式だ。湯気がそのまま外に出るスチーム式の欠点である、湯気の温度が高いことと、湯気が広がりにくいという欠点がカバーされる。沸騰することで湯気が殺菌されているというメリットはそのまま保たれているので、子供やお年寄りなど抵抗力の弱い人に向いた方式だ。

メーカー名東芝
製品名KA-R35
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格7,863円

立方体型のコンパクトは本体

 加湿器本体は、264×257×282mm(幅×奥行き×高さ)でほぼ立方体をしている。箱に入った状態でも一辺が30cmぐらいで、販売店で手提げをつけてもらえば持ち帰れる大きさだ。重さも約3.3kgと片手で提げられる範囲だ。

本体正面
本体の幅は、約24cm。本体は、一辺が25cmぐらいの立方体をしている
コンパクトでシンプルなデザインなので、部屋の隅に置くと邪魔にならない
本体の背面
本体の右側面に、タンクの水位を見る窓が開いている
本体の左側面にファンの吸気口がある

 加湿器を箱から出したら、まず、取り外し式の水タンクに水を入れる。タンクの高さが抑えられているので、浅い洗面台やシンクでも水が入れやすいのは美点だ。

 水タンクには手提げが付いているが、容量が4Lと大きいので、水を入れると重さが約4kgと重くなる。持ち運びには注意してほしい。

フタを開けると大きな水タンクが見える
水タンクは、容量を増やすために複雑な形状になっている
水タンクの口は、女性なら手が入るほど大きく作られている
水タンクは、横に大きいが高さがないので、浅い洗面台でも注水できる
持ち運ぶときは、水タンクにキャップをはめてから、上下を逆さまにして、取っ手を握る
水タンクは重くなるので、持ち運び用の取っ手が付いている

 加湿器本体に水タンクをセットしたら、電源コードをつなぐ。電源コードはマグネット式で、コードに力がかかると、すぐに本体から外れる。電源コードに引っかかって、本体を倒す怖れがない。

電源コードの差込口は、本体の背面にある
電源コードはマグネット式で、コードに力がかかるとプラグが抜ける

 水と電気が準備できたら、「運転」ボタンを押すと運転が始まる。運転を始めて、だいたい5分ほど経つと、蒸気が出てくる。お湯を沸かす時間が、それぐらいかかるのだ。

操作パネル。右下の「運転」ボタンを押すと、「連続」モードで動作が始まる
左下の「切タイマー」を押すと、1、2、4時間の3通りの設定でOFFタイマーが動く

 なお、使い始めから、最初の数時間は、樹脂が熱せられたときに特有の匂いがする。強い匂いなので、使い始めのときは、窓を開けた部屋で1回運転しておくと良いだろう。水タンク1回分ぐらい運転すると、匂いがしなくなる。

使うときは「自動」モードがお勧め

 基本的な使い方は、これだけだが、「運転」ボタンを押しただけだと、常に水蒸気を発生する「連続」モードに設定されている。部屋がすごく乾いている状態ならば、これで良いのだが、一晩中、動かしている場合などは、「自動」モードにした方が良い。「自動」モードにするのは簡単で、「加湿切替」ボタンを押すだけで良い。モードが変わったのはLEDランプで確認できる。一度モード設定を行なうと、電源コードを抜くまでは覚えている。

 ちなみに、「自動」モードにすると、温度と湿度のセンサーによって、適度な湿度の状態を保ってくれる。具体的には、室温18℃未満では湿度約60%、18℃~23℃では約55%、23℃以上では約50%に湿度が保たれる。

 「連続」モードで長時間使っていると、部屋の湿度はぐんぐん上がり70%以上になることもある。「自動」モードにすると、だいたい50%~52%ぐらいに保たれていた。室温は、20℃以上に保っていたので、だいたいカタログ値通りだ。

 「連続」モードと「自動」モードで異なっていることが、もう2つある。1つは水の補給で、「連続」モードだと約11時間ぐらいで水が切れる。一晩中動かしていると、翌日は必ず水を補給するというサイクルだ。しかし、「自動」モードにすると、水の補給が2日に1回か、場合によっては3日に1回ですむ。かなり頻繁にヒーターの運転を休止しているので、水の消費が少ないのだ。

 もう1つ、電気の消費も少ない。「連続」モード時は、常に310Wを消費しているが、「自動」モード時は30W以下まで下がっている場合も多い。ヒーターが止まり、ファンだけが回っているときがあるようだ。

 というわけで、「自動」モードで動かしておくほうが、手間も電気代もかからないのでメリットは大きい。水を交換したときなどは、LEDでモードを確認するクセをつけて「自動」モードで使うことをお勧めする。

排気温度は低く、55℃を越えることはなかった

 ちなみに、排気温度は「連続」モードでも55℃を越えることはなかった。手をかざすと熱いとは感じるが、やけどをする程ではない。これなら、子供部屋に置いても問題ないだろう。「自動」モード時には、30℃以下まで下がっている場合も多く、さらに安全だ。なお、排気温が低いので、よほど寒い時でないと、湯気は見えない。

コストパフォーマンスが高い実用品

 東芝の加湿器を使ったのは初めてだったが、使い方がわかりやすく、迷うところがなかった。派手なイオン放出機能はないが、部屋の湿度を適度な水準に保つという機能は、十分に果たしてくれる。水タンクの容量が4Lと大きく、夜中に水切れを起こして、ピーピー泣くことが無いのも良い。

 ちょっと調べてみると、いまの製品の原型になった「KA-J35S」が出たのが4年前の2009年で、それから毎年、マイナーチェンジを行なっているので、機能や使い勝手が成熟しているということだろう。

 先に紹介したマグネット式の電源コード以外にも、抗菌処理された水タンク、吸気口に用意されたエアフィルターなど、細かいところに気配りが感じられる。また、暖かい湯気が出るというスチーム式のメリットを生かして、アロマポットも用意されている。

吸気口には、エアフィルターが装着されていてホコリなどが入らないようになっている
蒸気の吹き出し口。上にアロマポットが載っている
開いたアロマポット。ここにアロマオイルを数滴垂らして、本体に装着する

 個人的には、本体がコンパクトなことと、重心が低くて簡単に倒れたりしない、本体のデザインも気に入っている。いろいろな意味で、実用的でまっとうな製品だ。

 また、スチームファン式という方式も、スチーム式の欠点を良くカバーしていると感じた。特に、スチームの温度が低めなので、ペットが居る部屋でも安心して使える。スチームファン式の欠点であるファンの音は、深夜の寝室では聞こえるが、日常的な使い方では気にならなかった。耳ざとい人以外は、あまり問題にならないと思う。

 唯一の欠点は、最大310Wという、やや大きめな消費電力だろう。殺菌されたきれいな蒸気というスチーム式の利点と電気代とを秤にかけて、どちらを取るかで判断すれば良いだろう。

伊達 浩二