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2つのドラム槽で洗い分け、乾燥フィルターは掃除不要、生活を変えてくれる洗濯機「LG DUALWash」に迫る
2018年11月30日 06:00
LGエレクトロニクスが10月に日本で発売した、2つのドラム槽を縦に並べた洗濯機「LG SIGNATURE DUALWash(エルジー シグネチャー デュアルウォッシュ) SGDW18HPWJ」。衣類を同時に分け洗いできるという、これまでにない機能が特徴だ。例えば大人と赤ちゃんの衣類、白物と色物、はたまた、お父さんと娘の衣類を別々に!? など、人によってさまざまな洗い方が考えられる。
なぜ、2つのドラム槽を搭載したのか。そして2018年、同社は掃除機、洗濯機と次々に白物家電を日本市場に投入。今後の日本市場への展開についても話を聞いた。
デュアルウォッシュの誕生は、「分け洗い」が目的ではなかった!?
そもそもデュアルウォッシュは、最初からドラム槽を2つ搭載しようとしてできた製品ではない。
「はじめに出てきたアイデアは、“小さい洗濯機を作ろう”というものでした。韓国やアメリカ、ヨーロッパで洗濯機を展開していると、容量が20kgもある大型モデルが主流になってきます。もちろんまとめ洗いという需要もあるのですが、大容量モデルは衣類をちょっと洗いたいときには不便です。そこで、小さくて簡単、すぐに終わる洗濯機というアイデアが生まれました」と、LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティングチーム 金 敬花(キム キョンファ)氏は話す。
こうしたアイディアから、容量3kgの子供用洗濯機「コマンス」というモデルが実際に発売された。家に洗濯機を2つ置くことになるため、蛇口も2つ用意しなくてはならない。洗濯パンや排水など設置のハードルは高かったが、販売してみると好評で、かなりの人気製品になったという。
「小さい洗濯機は、チャレンジングな製品だったにもかかわらず、実際には受け入れられるという結果になりました。特に赤ちゃんがいる家庭ではとにかく洗うものが多いので、やはり普通の洗濯機とは別で洗いたいという需要があったようです。しかし、水道や設置の問題は、変わらず改善すべき問題としてありました。そこでさらに開発を進め、洗濯機を2つ置くのが難しいなら、小さい洗濯機をくっつけてしまおうとなり、ドラム槽が2つあるデュアルウォッシュが生まれたのです」(金 敬花氏)
分け洗いしたい衣類も2つのドラム槽で同時に洗濯
デュアルウォッシュが発売されたのは2015年。アメリカとカナダで販売を開始し、現在は世界で50以上の拠点で展開している。
日本仕様の「SGDW18HPWJ」は、洗濯/乾燥容量が11kg/6kgのメイン洗濯乾燥機の下に、2kgのミニ洗濯機を搭載。
分け洗いのパターンはさまざまだが、「大人用/赤ちゃん用」、「白い衣類/色物衣類」、「バスタオルなどの大物/靴下などの小物」などを想定。一緒に洗いたくない衣類を、洗濯槽を分けることで同時に洗えるため、時短・節水につながるのだ。
ミニ洗濯機には乾燥機能を備えておらず、単独で運転することも可能。少量の衣類をサクッと洗いたいときや、ニットなどデリケートな衣類を個別で洗いたいときにも便利だ。このほかシワをつけたくないYシャツはミニ洗濯機で洗濯だけして、タオルなど乾燥までするものはメイン洗濯機で洗うなど、幅広い使い方ができる。
LGエレクトロニクス・ジャパン マーケティングチーム 部長 金 東建(キム ドンゴン)氏は、「デュアルウォッシュの良いところはやはり“時短”という点です。2つの洗濯を同時並行できますからね。さらに洗濯槽が2つある洗濯機というのは珍しいですし、洗う衣類によってさまざまな使い方ができます」と話した。
一般的な洗濯機の場合、洗濯時間は30分ほど。洗い分けをして2回洗濯するとなると1時間は掛かってしまう。それを1回にまとめられるというのは、共働き家庭や子育て世代など、限られた時間内に家事を終わらせねばならないときも助かるだろう。
「私の場合、今まで使っていた洗濯機では、休日はまず10時までに1回洗濯機を回していました。さらに分けて洗いたい衣類もあるので、洗濯機を2回運転させることが多かったんです。そうすると結局13時すぎまで洗濯していて、午後も家事をして過ごすことになります。デュアルウォッシュだと洗濯が1回で済むので、時間を有効に使えるようになりました」(金 敬花氏)
なお洗濯目安時間は、洗濯のみは32分、洗濯~乾燥時は最大147分。使用水量においては、メイン洗濯機で洗濯した場合は約78L、ミニ洗濯機のみで洗濯した場合は約41Lだ。
また、分け洗いしたいものに“お父さんの衣類”が挙がったのは、日本独自の視点だ。
乾燥フィルターは手入れ不要、自動洗浄機能でホコリの付着を防ぐ
分け洗い以外にも、デュアルウォッシュには新しい機能がたくさんある。特に印象的なのは、乾燥フィルターの自動洗浄機能だ。
一般的に乾燥機能付きの洗濯機は、乾燥運転をしているとフィルターにホコリが付くため、使用後は必ず掃除する必要がある。ホコリが溜まると乾燥時間が長くなったり、フィルターにとどまらず手が届かない内部までホコリが入ってしまうからだ。
そこでデュアルウォッシュではフィルターの自動洗浄機能を搭載し、乾燥フィルターの掃除を不要とした。フィルターについたホコリは、熱風とジェット水流で断続的に自動洗浄。洗浄タイミングは、洗濯のすすぎ工程後半と、乾燥工程開始時、フィルターが目詰まりを検知したときや乾燥終了後も行なわれる。
これにより目詰まりでフィルターの性能が劣化することなく、面倒な手入れ不要で常に清潔に保てるという。このほかヒートポンプ式の最上位モデルでは、熱交換器の自動洗浄機能も搭載する。
実際にデュアルウォッシュの外観を見ると、一般的なドラム式洗濯乾燥機の上部にある乾燥フィルターが見当たらない。直線的でシンプルなデザインになっている。
洗剤の自動投入機能も搭載、スマホ連携でさらに便利に
また日本では最近見るようになった「洗剤自動投入」機能も、LGエレクトロニクスの海外モデルではかねてより搭載。液体洗剤と柔軟剤をあらかじめケースに入れておき、洗濯の度にセンサーが洗濯物の量や汚れ具合に応じて適正量を自動で投入する。
洗剤投入ケースにまとめて入れておける洗剤の量は、標準コース6kgで約20回分。洗剤が空になったときはアラームで知らせてくれる。
なお粉末洗剤や漂白剤、おしゃれ着用洗剤は洗剤投入ケースに入れられない。デリケートな衣類を洗うときにおしゃれ着用洗剤を使う場合は、その都度投入する必要がある。
「デュアルウォッシュを日本で発売するにあたり、洗剤の研究も行ないました。日本の洗剤は濃縮タイプが多く、粘度が高いので投入ケースに対応するか何度も調べました。海外の洗剤はサラサラとしたものが多いので、自動投入機能を搭載しやすいという面もあります。日本は洗剤の種類が多いので、不具合がないよう念入りに実験しました。濃縮タイプの液体洗剤も問題なく使えます」(金 敬花氏)
Wi-Fi経由による、スマートフォンとの連携機能も搭載。洗剤自動投入機能を備えているため、槽内に洗濯物を入れておけば、外出先からも運転可能だ。タイマー機能のある洗濯機は多いが、帰宅時間が読めないことも多い。スマホから遠隔操作できるなら、帰宅時間に合わせて洗濯を開始させられる。
またダウンロードコースも用意し、本体に搭載されていない洗濯コースもアプリから追加可能。色落ち防止/ダウンジャケット/シルク/1枚だけ洗濯/30分乾燥などがあり、細かなニーズに対応している。
「私がスマホ連携で特に便利だと思ったのは、洗濯終了を教えてくれることです。洗濯終了時にリビングにいたりテレビを見たりすると終了音に気づかず、濡れた洗濯物をうっかり放置してしまうことがありますよね。スマホ連携で知らせてくれると、気づきやすくなります。また、乾燥運転まで設定しているけど、乾燥させたくない一部の衣類を途中で取り出すときも便利です。シンプルな機能ではあるのですが、洗濯の失敗を確実に減らしてくれます」(金 敬花氏)
DDモーターで手洗いの動きを再現、低騒音・低振動化も
洗浄性能についてもこだわりがある。洗濯槽の回転を細かく制御する、独自開発のDD(ダイレクトドライブ)モーターを搭載しており、手洗いのような動きを再現。メインドラム槽の洗浄方法には、「たたき/もみ/押し/ゆらし/こすり/おどり」を組み合わせた「6モーション洗浄」が採用されている。
例えば「たたき」は、水を衣類にたたきつけて繊維の編み目に絡みついた汚れを落とし、「もみ」では洗濯槽が回転/反回転を繰り返して衣類同士をもみ合わせて力強く洗う。「おどり」は最小限のモーターの動きで衣類をゆらゆらと踊らせるように洗濯するため、摩擦による傷みも防ぐことができる。
これにより、衣類に最適な動きで洗浄でき、落ちにくいガンコな汚れもキレイに落とすという。コースごとに動きの組み合わせは異なり、標準コースのほかガンコ汚れコースやデリケートコースなど、それぞれに合わせて最適なドラムの動きで洗浄してくれる。
「海外でLGは、“モーターに強い企業”とよく言われます。このDDモーターは洗濯機だけでなく冷蔵庫にも搭載していて、細かいコントロールができるのでドラムの動きだけでなく、低騒音・低振動にもつながっているのです」(金 敬花氏)
低騒音・低振動化においては、DDモーターのほかにも独自機構を採用。本体背面には「振動感知センサー」を備え、大きな振動が発生したときにはセンサーが自動で回転速度を調整する。
また一般的なドラム式洗濯機は、ドラム槽を上部から吊り下げる方式が多いが、デュアルウォッシュでは下部のサスペンションとダンパーでドラム槽を支える構造を採用することで、振動を緩和している。
上部からドラム槽を吊り下げた場合、ドラム槽が大きく回転すると支えきれずに振動が激しくなってしまう。一方デュアルウォッシュでは、床面とドラム槽を3つのサスペンションで垂直につなげることで上下の振動を緩和。さらに2つのダンパーは床面とドラム槽をななめにつなげているため、さまざまな方向に振動を分散させられるのだ。
なお運転音については、洗濯時が約33dB、脱水時が約43dB、乾燥時が約47dBとしている。
高級感があり洗面所に溶け込むデザイン、購入前の設置サポートも
2つのドラム槽で分け洗いができる構造は画期的だが、問題なく設置できるかどうかも気になるところだ。
上・下2層を合わせた本体サイズは約600×730×1,215mm(幅×奥行き×高さ)で、重量合計は約137.5kg。一般的なドラム式洗濯機と比較すると、幅は同等で問題ないが、ドラム槽が縦に2つあるため高さが出てしまう。
「確かに高さがあるので、蛇口とうまくつなげられないという相談もありました。なので購入前に自宅の洗濯パンに収まるか、設置サポートにも力を入れています。設置可能サイズか確認するチェックシートもありますが、家電量販店によって業者さんが、購入前に自宅に訪問して設置できるか確認するサービスもあります。
ちなみに日本投入の洗濯/乾燥容量が11kg/6kgのモデルは、グローバルでは一番小さいモデルです。海外では容量20kgのドラム式洗濯乾燥機も売っていますが、日本の住宅に合うように今回は11kgモデルでの展開となりました」(金 敬花氏)
洗面所に違和感なく設置できるよう、デザインにも力を入れている。本体表面に施されたエナメルコーティングは高級感を演出するだけでなく、傷や汚れに強い耐久性も特徴。
さらに本体をよく見てみると、メイン洗濯機もミニ洗濯機も、洗濯ドアに取っ手がないのがわかる。これはいずれもプッシュオープン式を採用しているためで、軽く押すだけでドアが開く仕様となっている。
一見地味な機構だが、隣に取っ手がある洗濯機を並べてみるとその違いはわかりやすい。取っ手がないことにより凹凸がなくなり、ツルッとした見た目になる。直線的でシンプルな設計で、圧迫感も減らせるようだ。
さらに操作部はタッチパネル式で、直感的に操作可能。タッチ操作がしやすいように17度の傾斜角も付いており、洗濯時のストレスを感じさせないデザインを追求したという。
独創的な機能はどうやって生まれる? グローバルでの経験を開発に反映
乾燥フィルターの自動洗浄や洗剤の自動投入などは、日本のメーカーではようやく見られるようになった機能だ。しかし、LGエレクトロニクスではこれらの機能を、海外モデルでは何年も前から当たり前のように搭載している。
スマートフォンとの連携もそうだが、小窓を備えて少量の食材をすぐに取り出せる冷蔵庫や、パイプの長さを調整できる掃除機など、独特な機能がさまざまな家電で採用されている印象だ。
なぜ、こうした独自視点の開発が続けられるのか。
「やはりグローバルで広く展開していることが大きいと思います。デュアルウォッシュは現在世界で50以上の拠点で販売しており、ドラム式洗濯乾燥機全体においては2018年上半期時点で、LGは全米でシェア1位を獲得しています。
大切にしているのは、さまざまな市場に出すことです。多くの国で洗濯機を売っていると、本当に予想もしないようなニーズがあります。市場によってニーズも違えば環境も違うので、そのニーズに適合したものをどう作るか考えていると、ノウハウが溜まっていきます。
例えばヨーロッパだと90℃の温水洗いコースは一般的ですが、日本では60℃までが多いですよね。水質や電圧の関係もあるのですが、90℃で洗う文化がある国とそうでない国では、洗濯の考え方も違います。日本仕様の洗濯機に90℃の温水コースがあったとしても、何を洗っていいかわからない、縮んでしまうのではと考えてしまうでしょう。逆にヨーロッパでは、汚れ落ちの面から90℃コースは必須になります。さまざまな国で展開することで、その国の生活文化が見えてくるのです。
生活家電はないと困る、壊れるとすぐに必要なために、ユーザーの声が上がりやすいカテゴリーです。安全の基準値も高く設けていますし、経験を積むことが新しい機能開発につながっています」(金 敬花氏)
「日本で見たことのない商品を」、デュアルウォッシュを日本投入したワケ
同社は2017年に発売した「LG styler」を皮切りに、近年日本市場へ白物家電を本格投入。コードレススティック掃除機「A9シリーズ」に続いて、デュアルウォッシュは第3弾製品となる。日本市場への展開について、金 東建氏は次のように話した。
「LG styler、スティッククリーナーときて、次は洗濯機を展開したいという話になりました。なぜなら2つのドラム槽を搭載した洗濯機は、日本にない製品だったからです。
LGは日本で有機ELテレビやLG stylerを始めとして、日本で売られていない新しい発想の製品を出すことをポイントにしています。デュアルウォッシュはこれまで見たことのない機能だと思いますが、新しい切り口で市場投入することで、洗濯機というカテゴリー自体を盛り上げられたらと思っています」
デュアルウォッシュは生活が変わる洗濯機、価値を認めて消費する時代に
2つのドラム槽に高級感のあるデザイン、細かく配慮された機能など、魅力が詰まったデュアルウォッシュは、同社の高級家電シリーズ「LG SIGNATURE」の製品群の1つとして位置付けられている。
「LGエレクトロニクスは家電事業をはじめて60年になります。総合家電メーカーとして家電製品を全世界に展開するうえで、新しい価値を家電で提供できないかということを模索しました。そこで生まれたのがLG SIGNATUREで、プレミアムブランドとして世界で展開しています。
これまで家電を含めモノを買うというのは、必要だから買うという消費動向でしたよね。しかし今はそうではなく、付加価値を感じられるものにお金を払うという消費動向がトレンドになっています。
その中でLGは、「都市化」、「価値消費」、「経験と共有」という3つのキーワードを掲げています。価値を買うという消費に変わっている中で、価値を認めてそこに投資する、消費するユーザーに対して提供するブランドが、LG SIGNATUREになります。
デュアルウォッシュは、機能としてももちろん優れていますが、さらに付加価値も感じられる製品だと思います。分け洗いによる時間短縮は、便利なだけでなく生活が変わるということです。“同時に洗う”という体験を続けていくと生活の変化までも感じられるようになると思います」(金 敬花氏)
衣類を同時に分けて洗うという方法は斬新に思えるが、使い方を想像してみると理にかなっているのがわかる。実際に製品を前にすると、普段分けて洗っている衣類やタオルのことが浮かんでくる。少量すぎて洗うタイミングを見失うキッチン用の布巾や、分けて洗いたいけど後回しにしてしまうバスマットなど、洗濯の機会が少ないものもデュアルウォッシュとの相性は良いだろう。
洗濯機にとどまらず、同社には一歩先をいく家電製品がたくさんある。それらの日本投入は未定としているが、今後も生活を変えてくれる家電が登場することを期待したい。