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日立、家電のサブスクを'22年度後半に開始へ

日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)の大隅英貴社長

日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)の大隅英貴社長は、同社の事業方針について説明。コネクテッド家電の強化や、環境配慮型製品を拡大する考えを示したほか、サブスクリプションやリファービッシュといった新たな事業を2022年度後半からスタートすることを明らかにした。

大隅社長は、2022年4月より日立GLSの社長に就任。「デジタルとグリーンの観点からイノベーションを推進する」との基本姿勢を示すとともに、2024年度を最終年度とする中期経営計画においては、基盤プロダクト事業、IoTプロダクト事業、プロダクト資源循環事業、ソリューションサービス事業の4つの事業領域に力を注ぐ考えを明らかにしている。

また、中期経営計画の期間中には、研究開発投資を増やし、デジタルやグリーンに重点投資。具体的には、コネクテッド家電やサービス、循環型ものづくり、脱CO2化などを投資対象とする。

ネットにつながる家電は次のビジネスへ

日立GLSにおいて、成長領域と位置づけているのが、IoTプロダクト事業である。

ここではコネクテッド家電への取り組みが中心になる。

同社は2月にカメラ機能を搭載した冷蔵庫を発売。ドアを開けると自動的に内部を撮影し、買い忘れや自動購入を減らして毎日の食材管理を手軽に行なえるようにしている。

洗濯乾燥機では、洗剤や柔軟剤の在庫量が少なくなると、自動で発注し、購入の手間を減らせる。オーブンレンジは、日立独自のヘルシーシェフアプリを利用してスマホと連携することで、日々の献立や新しいレシピの提案を行なう機能を提供している。

スマホアプリと連携するカメラ付きの冷蔵庫などのコネクテッド家電を展開
洗濯機が持つデータをもとに、洗剤や柔軟剤を自動で再注文する仕組み
オーブンレンジと連携するアプリで料理のレパートリーを増やせる

大隅社長は「コネクテッド家電の拡大にあわせて、データ基盤の立ち上げにも取り組んでいる。コネクテッド家電から得られたデータをモノづくりに活かし、品質の高い商品を開発するほか、サービス品質の向上、新たなソリューションの創出にもつなげ、商品を売って終わりというビジネスからの脱却を図る」と語った。

新たなコネクテッド家電については、具体的には言及しなかったが、日立のソリューションサービスであるLumadaや、2021年度に日立製作所が買収したデジタルエンジニアリングサービスのGlobalLogicとの連携強化により、データ活用やサービス提供などを推進していく考えを示している。

IoTプロダクトを成長領域と見込む

また、環境配慮型商品の拡充に取り組む考えも示した。

大隅社長は「グリーン社会に貢献するために、循環型モノづくりを強化していく。廃棄物の削減に直結する再資源化率の向上にも取り組む」と述べた。

その一例として、2022年7月に発表した再生プラスチックの使用率を40%以上に高めたスティック掃除機「PV-BH900SK」に触れた。

再生プラスチックの使用率を40%以上に高めたスティック掃除機「PV-BH900SK」

「塗装についても配慮し、掃除機そのものをリサイクルしやすいようにしている」としたほか、「現在は材料価格が高騰しているため、割高だった再生プラスチックに挑戦しやすい環境が整っているともいえる。今後、リサイクルに関する回収や生産、開発といった点で技術を磨き、環境配慮型の商品を拡大したい。この領域でやれることは多いと考えている」と述べた。

家電のサブスク開始予定。海外との連携も強化

サブスクリプションやリファービッシュといったリカーリングビジネスを、2022年度後半にも立ち上げる計画を明らかにした。

大隅社長は「日本の家庭環境は多様化している。ひとつのものを長く所有したいというニーズがある一方で、生活スタイルの変化にあわせて家電を買い替えたいという若い世代もいる。より多くの人に使ってもらったり、喜んでいただいたりするためには、デジタルの活用やサブスクリプションの提案は必要だと考えている。たとえば、日立GLSが得意とする高付加価値家電も、サブスクリプションによって試してもらいやすくなる。日立のファンを増やすためにも必要な仕組みであり、使い終わった家電の資源循環という点でもサブスクリプションは有効である」と語った。

また、リファービッシュ(メーカーによる再整備済み製品)への取り組みについては「日立ならではのメーカー品質により、安心して利用してもらえる仕組みを作りたい。リファービッシュ商品をエンドユーザーに届ける仕組みにおいてはパートナーとの連携も検討したい」とした。サブスクリプションによって、回収した家電を再整備して提供するといった仕組みの構築も想定できるだろう。

これまでにも関東エコサイクルにより再資源化率の向上へ取り組んだり、日立アプライアンステクノサービスを通じて、回収した素材をリサイクルしたりといった仕組みを構築しているが、さらに一歩進めた循環型社会や低環境負荷への取り組みになりそうだ。

一方、海外事業との連携も強化する考えだ。

日立GLSでは、2015年10月に、空調事業において、ジョンソンコントロールズとの合弁会社であるJCH/Johnson Controls Hitachi Air Conditioning Holdings (UK) Ltd.を設立。2021年7月には、海外家電事業に関して、トルコのアルチェリクとの合弁会社であるAHHA/Arcelik Hitachi Home Appliances B.V.を設立している。

JCHでは、エアコンにおけるコネクテッド家電の開発や、CO2を活用した冷媒の開発などの環境対応などを推進。中国や台湾を含めたアジアを中心にして、日立のブランドを活用した形で家庭用および業務用空調機器のビジネスを強める。欧米でのジョンソンコントロールズの販路を活用した販売も強化する。「空調分野は、カーボンニュートラルの観点からも世界的にも注目されている領域であり、グローバル展開を強化していきたい」と述べた。

AHHAでは、2022年度内には、アルチェリクが開発/生産している家電を、日立ブランドで海外展開する計画であるほか、アルチェリクの家電に、日立GLSが持つ技術を採用。さらに、アルチェリクのグローバルの販路の活用に加えて、日立GLSの海外既存販路の構造改革や効率化も進める。

また、アルチェリクおよび日立GLSの製造および業務プロセスを活用したコスト効果も見込む。なお、かつての日立GLSの海外生産拠点はアルチェリクに移管しており、そこで生産している洗濯機や冷蔵庫は、日本でも販売を継続している。

「AHHAがスタートして1年を経過し、シナジーが徐々に発揮されている。アルチェリクが持つ欧州や中東での実績や、ボリュームゾーンに対応できる体制と、日立GLSが持つ、高付加価値で生産に手間がかかるものを得意としている特徴は、商品のラインナップや販路においても補完できる関係にあり、シナジーが発揮しやすい。また、アルチェリクは、カーボンニュートラルへの取り組みをはじめ、環境対応にも先進的であり、その点でもモノづくりを学ぶことができる」とする。

大隅社長は、2024年度までに両社による共同開発の家電を商品化する計画を明らかにしたほか、日本で展開しているコネクテッド家電を、デジタル化が進んでいる国を中心に展開する意向を示した。

上海ロックダウンで生産に影響。「洗濯機」「冷蔵庫」「掃除機」で巻き返しへ

先ごろ、日立製作所が発表した2022年度第1四半期(2022年4~6月)連結業績では、2022年3月下旬から5月末までの中国・上海のロックダウンの影響を受けて、日立GLSの業績は、売上収益が前年同期比26%減の819億円、Adjusted EBITA(調整後営業利益-買収に伴う無形資産等の償却費+持分法損益)は90億円減の43億円と減収減益になり、期初目標からも下振れしている。

具体的には、中国・上海で生産していた洗濯機を制御する基板が、ロックダウンの影響によって、生産が停止。茨城県日立市で進めている洗濯機の組み立てが行なえない状況に陥った。日立GLSでは、4月28日に全自動洗濯機の新規受注停止を発表したほどの影響ぶりだった。

これにより、日立GLSでは、2022年度の通期業績見通しを下方修正。売上収益は期初計画に比べて200億円減の前年比6%減の3,720億円、Adjusted EBITAは80億円減の前年比5%減の380億円とした。なお、前年割れの通期見通しには、海外家電事業のジョイントベンチャー化によるマイナス要因も含まれている。

大隅社長は「上海ロックダウンの影響があったが、2022年度の予算は達成したい」と意気込む。

大隅英貴社長

日立GLSでは、今後の注力分野として「洗濯機」「冷蔵庫」「掃除機」の3分野を挙げる。

これまでは電子レンジと炊飯器を含めた5分野を重点領域としていたが、「これは電子レンジや炊飯器をやめるというわけではない。収益性が高く、付加価値が高く、デジタルとの親和性が高い洗濯機、冷蔵庫、掃除機の3分野において、継続的に生産能力の向上を進めるほか、自動化などにより生産効率の改善などにも取り組むことになる」と説明する。

日立GLSは、日立製作所のコネクティブインダストリーズセクターに属しており、同セクターには、産業分野におけるロボティクスやAI、自動化などで実績がある。これらのノウハウを活用するとともに、サプライチェーン全体の強化、販売予測技術の活用などにも取り組む考えだ。

大隅社長は「2022年4月以降、白物家電の需要は堅調であり、行動制限がなくなるなかで、量販店の店頭では賑わいを取り戻している。また、高級家電を中心とした需要の高まりによって、平均価格も上昇傾向にある。2022年度第1四半期決算は厳しい内容だったが、ここから巻き返しを図る」と意気込みを語った。

6月からは、幅広い層に人気がある芦田愛菜さんをCMに起用しており、「そこで日立!」をキャッチフレーズに日立の白物家電の特徴を積極的に訴求。若い世代に対する日立ブランドの認知度向上も狙うという。

なお、日立GLSでは、2024年度を最終年度とする「2024中期経営計画」の業績目標は公表していないが、大隅社長は「売上収益については、国内家電市場は極端な成長は見込めないものの、海外白物家電事業の拡大によって成長を目指す。優先する経営指標はEBIT(利払前/税引前利益)であり、収益性を高め、EBIT率は10%以上とし、世界トップクラスの水準を目指したい」と述べた。

2021年までの実績と2022年見通し