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日立、再プラ活用やソニー共同物流などサステナブル経営 サブスクは休止

日立グローバルライフソリューションズのサステナビリティ推進室長兼DEI推進リーダー・丸山しずこさん(写真左)と大隅英貴社長(写真右)

再生プラスチック(再プラ)を活用した製品を販売するなど、サステナブルな取り組みを推進している日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)。社会課題の解決や経営基盤の強化を図るため、2024年度から本格的に“サステナブル経営”を始動させている。

重要課題(マテリアリティ)として、大きく分けて「環境」「DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」「レジリエンス」「安全・安心」「誠実な経営」の5つを定め、これらを軸にサステナブル経営を進めていくという。

日立が掲げる5つの重要課題(マテリアリティ)

家電にも再生プラスチック 社内で資源循環

環境課題については、自社の事業所で2030年度にカーボンニュートラルを達成することを目指し、再生可能エネルギーの導入などを実施。さらに営業車だけでなく、製造工場内のフォークリフトのEV化も進めているという。

顧客向けには環境負荷の低いサービスを提供。空調の遠隔監視、自動制御ができるIoTソリューション「exiida」では、AI予測により空調を制御することで電気代やCO2の排出量を削減する。また、地球温暖化係数の低い冷媒「R32」を使用した業務用空調機器も展開している。

再生エネルギーやEVを導入
R32冷媒使用の空調機器など環境配慮型製品を製造

生活家電部門では、再生プラスチックの利用を推進し、自社内での資源循環を強化。プラスチックにはさまざまな種類があり、それらが混ざっていると再生ができないことから、ミックスプラスチックの選別装置を設置。装置でポリプロピレンのみを選別し、再生プラスチックに利用している。

ミックスプラスチックの選別装置を設置
ミックスプラスチックからポリプロピレンのみを選別できるように

また、従来の掃除機にはシルバー塗装の製品ロゴを施していたが、再生時に剥がす必要があることから、製品への塗装や印刷などの二次的加工を極力排除している。こうして再生されたプラスチックは、同社のスティック掃除機や冷蔵庫の一部に採用されており、今後も再生プラスチックの利用率を高めていく考え。

このほか、段ボールや発泡スチロールといった梱包材も使用量を削減。さらに、製造過程で発生する廃棄物ゼロを目標に、一例としてプラスチック部品を作る際に発生する端材の回収・再生のほか、端材が出ないようにする工夫なども凝らしているという。

冷蔵庫ドアポケットにも再生プラスチックを使用。無色透明にするには洗浄工程などを増やす必要があり、環境負荷を高めてしまうことから、あえて色付きにしている

ソニーと連携の共同物流

日立GLSは4月より、ソニーマーケティングと連携した共同物流を開始している。北海道で両社の物流倉庫を統合し、各量販店の物流センターへ共同配送することで環境負荷と運送ドライバーの負担軽減を目指すもので、具体的な数字は明らかにされていないが、「確実にトラックの稼働台数は減らせています」と日立GLSの大隅英貴社長はコメントしている。

4月よりソニーマーケティングと共同物流を開始

家事シェアの時代 誰もが使いやすい家電目指す

多様性、公正性、包括性を意味する「DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」の課題においては、社会全体がDEIを実現できるように貢献することを目指し、誰もが使いやすい製品・サービスを提供する。

誰もが使いやすい製品・サービスの提供を目指す

同社は2022年、他社に先駆けてカメラ付き冷蔵庫を発売している。カメラで庫内を撮影することで外出先でも中身を確認でき、買い忘れや食材の重複を防ぐものだが、大隅社長によるとその本質は「家族で家事をシェアをすることで生まれる課題の解決」であるという。

家庭に料理をする人が複数いれば、冷蔵庫の中身の把握が難しくなる。こうした問題を冷蔵庫カメラとアプリの連携で解決し、使いやすさを向上させている。

大隅社長は「家電は『家事を電動化する』意味合いが強かったが、家事シェアをして家での時間を大切にしていくなかで『家具の一部』という要素として捉えることもできる」とコメント。2022年には、リビングなどにも置ける小型のデザイン冷蔵庫「Chiiil」を発売。さらに家具メーカーのカリモクとコラボレーションも展開し、家具としての要素をより強めている。

カリモクとコラボした小型冷蔵庫「Chiiil」。家具として使える一面も

リファービッシュ(再整備品)販売も サブスクは休止

日立GLSは資源循環や顧客満足度向上のため、2022年にリファービッシュ(メーカーによる再整備済み製品)の販売とサブスクリプション形式での家電のレンタルを開始。リファービッシュは、店頭展示品や購入者都合で返品された製品を点検し、問題のなかったものを清掃・再整備して、オンライン限定で新品より安価で提供している。

一方サブスクについては、運搬にかかるコストなどの問題に加え、清掃に多量の水を使用するなど必ずしも環境にとってプラスとなる要素だけではないため、サービスを休止中。まずは新品に近いものを廃棄せず、次の人に使ってもらう取り組みを進めているとする。

説明会で記者から「環境負荷を低減させるには、経営の面ではコストがかかると考えられることもある。またリサイクルを進める過程でCO2が排出されるなど、トレードオフになる部分についてはどのように考えているか」と問われた大隅社長は、「環境に配慮することが必ずしもコストアップになるわけではない」「トータルでCO2を減らすことが大きな指標」とコメント。

サステナブル経営について「日々悩みながら、知恵を出しながら進めている」と語る大隅社長

再生プラスチックの例では、原油価格が高騰し、円安傾向にある状態では、バージン材を使うよりも再生プラスチックのほうが安価になる場合もあるとしている。また、「社会の一員としてコスト最優先というわけにはいかない。経営とのバランスを図ることは、まさにサステナブル経営においての大きなトピックだと思っている」と、今後も試行錯誤しながらサステナブル経営を進めていくと語った。