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世界初、人工衛星に搭載された赤外線センサー活用のエアコン「霧ヶ峰」 ~スマホで部屋の熱画像も

 三菱電機は、人工衛星に搭載された赤外線センサーを活用し、気流の到達状況を検証することで、より快適な自動運転を行なうルームエアコン「霧ヶ峰 FZシリーズ/Zシリーズ」の2020年度モデルを発表した。

 左右独立駆動プロペラファンを採用した「FZシリーズ」は4.0~9.0kWの6モデルを11月1日に、クロスフローファンを採用した「Zシリーズ」は2.2kW~9.0kWの12モデルを12月上旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は順に338,000円前後~458,000円前後、228,000円前後~408,000円前後(税抜)。

FZシリーズ
Zシリーズ

 人工衛星に搭載された赤外線センサーを活用した、世界初のルームエアコン。同社が設計・製造した陸域観測技術衛星2号「だいち2号」に搭載した赤外線センサー技術を活用し、高解像度・高感度の「サーマルダイオード赤外線センサー」を備えている。

 これにより、人工知能は「ムーブアイ mirA.I.+」に進化し、気流を高精度に検知できるようになった。家具などに遮られた空間の気流制御に役立ち、居住空間に合わせて風向きなども自動調整され、快適性が向上したという。

「ムーブアイ mirA.I.+」。センサーの画素数は2019年度モデルと比較して80倍、感度は2.5倍に向上

空調の3要素「湿度」「温度」「気流」に注目

 同社はこれまで「いつでも、どこでも、誰でも快適に」をエアコンのコンセプトに掲げ、技術的な進化を遂げてきた。その中でも核となる技術は、赤外線センサーによるセンシングとAIによる情報分析だ。

 2018年度モデルではAI(人工知能)を搭載。部屋にいる人の体感温度を予測する従来機能に加え、住宅性能(室温に影響する性能)まで分析。少し先の体感温度を予測する「ムーブアイ mirA.I.(ミライ)」を搭載。2019年度モデルでは、室内の温度・湿度から最適な運転モードを自動で選択して切り替える「おまかせAI自動」を搭載した。

 2020年度モデルで同社が注目したのは「気流」。三菱電機 ルームエアコン販売企画グループ・岩崎 慎司専任は次のように話す。

 「これまで、空調の三大要素のうち"温度"と"湿度"に注目して進化させてきたが、今年は"気流"に関する技術的なブレイクスルーを達成した。

 一般的な気流制御は、センサーやカメラで見つけた目標に向けて気流を送っている。しかし実際の生活空間では、窓からの日差しや間取りなど、室内の様々な影響を受けて、気流が目標に届かないことがあった。そうした課題はあるにも関わらず、これまでのセンサーでは、実際に目標が届いているかどうかを判断できなかった。そこで新製品では、気流の到達度を判定できるように進化させた」

 従来の赤外線センサーでは、室内に熱のかたまりがあることは感知できるものの、それが“人”なのか“気流”なのかというところまでは判断できなかったのだいう。新製品では、微細な温度変化や形状の変化を感知し、気流特有の"ゆらぎ"を判別。それにより、気流と他の熱源を見分けられるとする。

 「気流を送り出す方向だけでなく、その送り出した気流が届いているのかを判別することで、気流を確実に目標に届ける」と岩崎氏は説明する。

 これを実現するために搭載したのが、「サーマルダイオード赤外線センサー」だ。これは、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」に搭載された技術で、森林火災やヒートアイランド現象の観測などに使用されているもの。このセンサーとAI技術を備えたのが「ムーブアイ mirA.I.+」となる。

 高性能な赤外線センサーを家庭用の製品に活用するには、コストやサイズなどの課題があったが、「詳細は言えないが、総合電機メーカーの英知を結集することで実現できた」(岩崎氏)という。

従来は気流が目標に届いているかどうかまで検知していなかった
室内の様々な影響で、気流が届かないときがある
“ゆらぎ”を判別して、気流の到達度を検知する
新たに搭載した高解像度・高感度の「サーマルダイオード赤外線センサー」
総合家電メーカーの英知を結集したことで、家庭用エアコン用に技術転用できたとする

家具などで気流が届かなかった場所も暖かく

 「ムーブアイ mirA.I.+」の技術が発揮されるのが、家具などで気流が遮られている状況だ。

 暖房時を例に挙げると、「ムーブアイ mirA.I.+」で1分ごとに部屋全体を検知し、人の位置などを見ていく。さらに気流の到達度を見るために、5分ごとに暖まり具合を検知する。気流が人など目標地点に届いていない場合は、リモコンで調節できないくらい細かく気流を自動的に制御するという。

 ソファに座った人の足元を暖めようとする場合、人の位置を検知し、足元の暖まり具合(気流の到達度)を見て、暖まってないようなら気流を細かく制御する。家具などが邪魔をして、人の足元に直接気流を届けられない場合も、人の体感温度が上がるよう気流の最適なルートを探して届けるとしている。

 最適な気流のルートが見つかると、それを学習し、次回以降は学習結果に基づく最適な運転を行なう。気流の到達度を見るので、模様替えなどをしても最適なルートで気流を制御し、快適性を実現するというわけだ。

 実際に、家具で遮られた椅子に座って体感してみた。直接足元に風が当たらなかったものの、足元付近に気流が届き、その熱が伝わって暖かかった。

5分ごとに暖まり具合を検知し、気流の到達度を見る
足元が暖まる最適な場所に気流を送るよう制御する
間取りをかえても快適性を維持
間取りにあわせて気流を調整するので快適

無線LAN機能を標準搭載、外出先から部屋の状況を熱画像で確認

 このほか、エアコン本体に無線LANを標準搭載。スマートフォン専用アプリ「霧ヶ峰REMOTE」を使えば、エアコンを外出先から遠隔操作ができる。

 さらに赤外線センサーの進化に伴い、「サーモでみまもり」機能を搭載。子どもや高齢者、ペットなどがいる部屋の状況を、温度分布がわかる熱画像で外出先から確認できるとする。なお、従来品と新製品ではセンサーの性能が大きく異なるため、本機能は従来品では利用できないという。

熱画像で外出先から部屋の状況を確認できる