家電製品ミニレビュー

寿命37年、LED照明業界に一石を投じるダイソン「CSYS desk」

ダイソン「CSYS desk」

 寿命37年を謳う異例のLED照明が登場した。今回は、掃除機のあり方に多大な影響を及ぼしたダイソンが手がける、LEDデスクライト「CSYS(シーシス) desk」を紹介しよう。

メーカー名ダイソン
製品名CSYS desk
購入場所ダイソンオンラインストア
購入価格69,120円

 シーシスには、顕著な特徴が2つ挙げられる。

 1つは、LEDにヒートパイプテクノロジーを施し、1日12時間連続使用しても照明の寿命は37年間(16万時間)という破格の長寿命を謳っている点だ。ヒートパイプテクノロジーとは、熱伝導率の高い銅製のヒートパイプをLEDに施し、LEDを適切に冷却してそのポテンシャルを維持する技術だ。

 もう1つは、光の方向が意のままにスムーズに調節できる3 Axis Glide(3軸動作)だ。数学や物理学で物体の位置をXYZ座標で表す用語の「CSYS」が商品名にもなっているだけに、滑車や錘(おもり)を使って光の位置を縦、横、水平方向に、指先だけで滑らかなで正確な調節ができる。その力学的動作は、シーシス全体のデザインをより洗練されたものにしている。

 カラーは(ブラック/ブラック)、(ホワイト/シルバー)、(ブラック/シルバー)の3色。今回はヘッド、ベースがホワイト、ボディがシルバーのものを使用した。

洗練されたデザインの器具の中に、複数の革新的なテクノロジーが凝縮している(HPより抜粋)

組み立ては簡単。点灯、調光、消灯は触れるだけ

 シーシスは、使う前に組み立てる必要があるがとても簡単だった。

 開梱すると、支柱の付いた本体と、LEDヘッドとヒートパイプ内蔵のアーム、ネジセット、ACアダプターが現れる。アームを支柱のプレートに当て、付属の六角スパナで3箇所ネジ止めをする。ベースの裏側に電源コードを差し込む。あとは任意の場所に置いて、コンセントに差し込むだけだ。

 組み立てた大きさは、527×653mm(幅×高さ)で、重さは4.5kg。ベースは大きさ176×38mm(直径×高さ)の亜鉛合金製でずっしりと重く、安定した光の位置の動作を支える。支柱とアームは、太さ20mmのアルミ製だ。

 設置する際は、アームプレートが壁を擦ったりしないように、ベースを壁側から130mm以上離した方がいい。コードの長さは2.5mだ。

開梱した様子。左からACアダプター、本体、ネジセット、そしてヒートパイプが内蔵されているアームセット
組み立て方。支柱の先のプレート、アームの電気接点側を合わせ、3本のネジで固定する(2本のネジは予備)。ベースの裏側に電源コードを差し込めむだけで完了
アームから伸びるプレートが壁に触れないように、ベースは壁から130mm以上離して設置する
スイッチはタッチセンサー方式。点灯・消灯・調光は、ベースの円形プレートに触れるだけ

 点灯・消灯・調光は、ベースの円形のプレートに触れるだけのタッチセンサー方式。プレートに、タンッと1度触れるたびにON/OFF、触り続ければ連続で調光できる。

点灯の様子。一度選んだ明るさは、次に点灯した時に呼び出される

こんなの今までなかった! ストレスフリー&メンテナンスフリーの快適な操作性

 操作性はこの上ないほど軽快かつ快適だ。指先2本だけで、光源の位置がスルスルと滑らかに動き、止めたいところで文字通り「ピタリ」と止まる。数ミリだけ動かすのも可能なほど、思い通りの正確な位置調節ができる。これまで体験したことのない快適な操作性は、特筆に値する。

 アームは水平方向に275mm、高さは錘(おもり)とバランスを保ちながら、机上面54~603mmの間で調整できる。さらに、ベースから伸びる黒い電源コードを一切巻き込むこと無く、ベース自体を360度、何回転でも自由にできる。

アームは水平方向に275mm、高さは54~603mmの間で調整できる。動きがスムーズで、止めたい所でピタリと止まる
ベースは底にある電源コードをまったく気にせずに、何回転でも360度自在に回転する。こんなフレキシブルな動きをする器具が、今まであっただろうか?

 この操作性は、重力を利用した滑車の原理を用いた機構(3Axix Glideモーション)で生み出される。水平用、高さ用にそれぞれ3個のベアリングを用い、滑るような動きを実現。動きに応じて、アームや支柱に収められた白い電源コードは、ブレもなくそれぞれに沿い続ける。

アームの水平方向の動きを支える3つのベアリング(左上)。支柱に沿う別の3つのベアリングは、アームの高さを支える(左下)。どちらの動きもとても滑らかだ
アームと錘はバランスを保ち、止めたい位置でピタリと止まる
ベースから得た電気は支柱に沿う白い電源コードを辿り、アームに伝えられる。白い電源コードは普段はまったく目立たない。錘を固定してアームを動かした時に電源コードがアームと錘を繋いでいるのがわかる

 シーシスのデザインは、建設用クレーンやエレベーターにヒントを得たと言われている。だがそれは見た目だけでなく、操作性にも洗練された動きとして表現されているようだ。

 一般的なデスクライトに見られる、ヒンジやバネなどを一切使用していないので、メンテナンスの必要はホコリを払うぐらいで済みそうだ。

ヒートパイプテクノロジーが支える、明るさ、拡散性

 デスクライトに求められる明るさ、拡散性は十二分に備わっている。明るさは、机上から光源部を最大603mmにセットした直下の照度は1,418lx。これは細かな手仕事にも十分(800~1,000lx)な明るさだ。

 拡散性も申し分ない。603mmの光源位置から、新聞全体をくまなく照らす。直下から300mm離れた場所で677lx、500mm離れても230lxとしっかり明るい。幅1,200×奥行き600mmのデスク中央を照らすだけで、手元付近はたっぷりとした明るさが広がる。最小まで調光した直下照度は132lxで、最大時の約1/10になった。

光源部を最大603mmにセットした直下の照度は1,418lx。見開きの新聞を余裕で照らす。手作業に十二分な明るさが得られる
光源直下から300mm離れた場所でも照度は677lx(左)、500mm離れて230lxだった
最小時の直下照度は132lx。最大時の約1/10まで調光できる
幅1,200×奥行き600mmのデスクの左端にシーシスを設置した様子。アームをディスプレイの高さに合わせたところでも、デスクの広範囲まで光が広がる

 十二分に明るく拡散するライトだが、不快なグレア(眩しさ)はコントロールされている。シーシスのLEDヘッドの大きさは96×20mm(幅×高さ)。ほぼ真下から覗きこめば当然眩しいが、8つのLEDはすり鉢状の凹みの奥にあるので、ほんの少し離れれば光源はもう見えない。

 厳密に言うと、LEDを8個組み合わせているシーシスは多重影はできる。だがそれも、一般的なデスクワークならほとんど気にならない程度だった。

 光色は、白熱電球よりも暖かみのある色合いだった。演色性も良好。照らされた物の色の偏りは特に感じられず、あくまでも自然な見え方だった。

グレアコントロールされたLED部。8個のLEDはすり鉢状の凹みの奥にあり、少し離れただけで光源は見えなくなる
デスク前に座って光源部を少し見上げても、眩しさはほとんど感じない
多重影はできるが、実際の使用ではほとんど気にならないだろう(上)。光源にペンを近づけた時多重影はできるが、影の濃さは相殺され薄い

 広範囲をたっぷり照らすシーシスのLEDに、放熱を効率的に促す、長さ約500mmの銅製のヒートパイプが施されている。ヒートパイプはLEDの熱を素早く吸収して、アルミ製アームに伝え、アーム全体から放熱する。ヒートパイプは主張せずに、あくまでも細く美しいアームの中に収まっている。

 放熱をアーム全体でするので、アームは熱を帯びる。だが、その温度は触れてもまったく問題ない程度だった。もちろん、アームが顔の前にあってもほとんど気にならなかった。

 消費電力は最大で10W、最小でワットチェッカーでは計測不能の0Wだった。待機電力も0Wだった。点灯中は一切モスキートノイズも無ければ、AMラジオに雑音が入る事も起きなかった。

放熱の様子。LEDの熱は熱伝導に優れた銅製のヒートパイプが吸収し、アームを伝わって素早く放出される(HP動画より抜粋)
ヒートパイプは、アームをロゴプレートよりも先まで水平移動させた時に見える
光色は、白熱電球よりも暖かみが強い。だが、色の偏りやくすみ感は無く自然な色合いに見えた
点灯時の消費電力は最大で10W、最小で0Wだった。消灯中の待機電力も0Wだった

長~く、飽きずに使えるデスクライト

 価格の面から言うと、今や1万円前後で質の高いLEDデスクライトが出揃った中で、7万円近い価格は相当敷居が高い。

 しかし、実際に使ってみて、長く愛用したいと思わせるだけの魅力を感じた。

 デスクライトに求められる明るさ、拡散性を十二分に満たし、直線と円で構成されたミニマルなデザインは、空間にスッと馴染む。37年の長寿命を実現するヒートパイプ、指先だけで軽快かつダイナミックに正確な位置決定ができるムーブメントは、奇をてらわず、無駄な主張もせず、1台の照明器具の中にスルリと静かに溶け込んでいる。

 使えば使うほど、「優秀なエンジニアリング、優秀な技術は決して安くない」という、ジェイク・ダイソンの言葉を「当然!」と納得できるほど、至極快適なデスクライトだ。

 長時間のデスクワークを、長期間に亘って快適に支えられる優秀なデスクライトとして、シーシスはきっと賢い選択になるだろう。

長時間過ごすデスクワークの照明こそ、長く使っても飽きのこない、明かりの質が高いものを選びたい
アームをダイナミックに動かせるので、テーブルランプ、インテリアライトとしても活用できる

藤原 大蔵