家電製品ミニレビュー
寿命37年、LED照明業界に一石を投じるダイソン「CSYS desk」
by 藤原 大蔵(2015/6/30 07:00)
寿命37年を謳う異例のLED照明が登場した。今回は、掃除機のあり方に多大な影響を及ぼしたダイソンが手がける、LEDデスクライト「CSYS(シーシス) desk」を紹介しよう。
メーカー名 | ダイソン |
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製品名 | CSYS desk |
購入場所 | ダイソンオンラインストア |
購入価格 | 69,120円 |
シーシスには、顕著な特徴が2つ挙げられる。
1つは、LEDにヒートパイプテクノロジーを施し、1日12時間連続使用しても照明の寿命は37年間(16万時間)という破格の長寿命を謳っている点だ。ヒートパイプテクノロジーとは、熱伝導率の高い銅製のヒートパイプをLEDに施し、LEDを適切に冷却してそのポテンシャルを維持する技術だ。
もう1つは、光の方向が意のままにスムーズに調節できる3 Axis Glide(3軸動作)だ。数学や物理学で物体の位置をXYZ座標で表す用語の「CSYS」が商品名にもなっているだけに、滑車や錘(おもり)を使って光の位置を縦、横、水平方向に、指先だけで滑らかなで正確な調節ができる。その力学的動作は、シーシス全体のデザインをより洗練されたものにしている。
カラーは(ブラック/ブラック)、(ホワイト/シルバー)、(ブラック/シルバー)の3色。今回はヘッド、ベースがホワイト、ボディがシルバーのものを使用した。
組み立ては簡単。点灯、調光、消灯は触れるだけ
シーシスは、使う前に組み立てる必要があるがとても簡単だった。
開梱すると、支柱の付いた本体と、LEDヘッドとヒートパイプ内蔵のアーム、ネジセット、ACアダプターが現れる。アームを支柱のプレートに当て、付属の六角スパナで3箇所ネジ止めをする。ベースの裏側に電源コードを差し込む。あとは任意の場所に置いて、コンセントに差し込むだけだ。
組み立てた大きさは、527×653mm(幅×高さ)で、重さは4.5kg。ベースは大きさ176×38mm(直径×高さ)の亜鉛合金製でずっしりと重く、安定した光の位置の動作を支える。支柱とアームは、太さ20mmのアルミ製だ。
設置する際は、アームプレートが壁を擦ったりしないように、ベースを壁側から130mm以上離した方がいい。コードの長さは2.5mだ。
点灯・消灯・調光は、ベースの円形のプレートに触れるだけのタッチセンサー方式。プレートに、タンッと1度触れるたびにON/OFF、触り続ければ連続で調光できる。
こんなの今までなかった! ストレスフリー&メンテナンスフリーの快適な操作性
操作性はこの上ないほど軽快かつ快適だ。指先2本だけで、光源の位置がスルスルと滑らかに動き、止めたいところで文字通り「ピタリ」と止まる。数ミリだけ動かすのも可能なほど、思い通りの正確な位置調節ができる。これまで体験したことのない快適な操作性は、特筆に値する。
アームは水平方向に275mm、高さは錘(おもり)とバランスを保ちながら、机上面54~603mmの間で調整できる。さらに、ベースから伸びる黒い電源コードを一切巻き込むこと無く、ベース自体を360度、何回転でも自由にできる。
この操作性は、重力を利用した滑車の原理を用いた機構(3Axix Glideモーション)で生み出される。水平用、高さ用にそれぞれ3個のベアリングを用い、滑るような動きを実現。動きに応じて、アームや支柱に収められた白い電源コードは、ブレもなくそれぞれに沿い続ける。
シーシスのデザインは、建設用クレーンやエレベーターにヒントを得たと言われている。だがそれは見た目だけでなく、操作性にも洗練された動きとして表現されているようだ。
一般的なデスクライトに見られる、ヒンジやバネなどを一切使用していないので、メンテナンスの必要はホコリを払うぐらいで済みそうだ。
ヒートパイプテクノロジーが支える、明るさ、拡散性
デスクライトに求められる明るさ、拡散性は十二分に備わっている。明るさは、机上から光源部を最大603mmにセットした直下の照度は1,418lx。これは細かな手仕事にも十分(800~1,000lx)な明るさだ。
拡散性も申し分ない。603mmの光源位置から、新聞全体をくまなく照らす。直下から300mm離れた場所で677lx、500mm離れても230lxとしっかり明るい。幅1,200×奥行き600mmのデスク中央を照らすだけで、手元付近はたっぷりとした明るさが広がる。最小まで調光した直下照度は132lxで、最大時の約1/10になった。
十二分に明るく拡散するライトだが、不快なグレア(眩しさ)はコントロールされている。シーシスのLEDヘッドの大きさは96×20mm(幅×高さ)。ほぼ真下から覗きこめば当然眩しいが、8つのLEDはすり鉢状の凹みの奥にあるので、ほんの少し離れれば光源はもう見えない。
厳密に言うと、LEDを8個組み合わせているシーシスは多重影はできる。だがそれも、一般的なデスクワークならほとんど気にならない程度だった。
光色は、白熱電球よりも暖かみのある色合いだった。演色性も良好。照らされた物の色の偏りは特に感じられず、あくまでも自然な見え方だった。
広範囲をたっぷり照らすシーシスのLEDに、放熱を効率的に促す、長さ約500mmの銅製のヒートパイプが施されている。ヒートパイプはLEDの熱を素早く吸収して、アルミ製アームに伝え、アーム全体から放熱する。ヒートパイプは主張せずに、あくまでも細く美しいアームの中に収まっている。
放熱をアーム全体でするので、アームは熱を帯びる。だが、その温度は触れてもまったく問題ない程度だった。もちろん、アームが顔の前にあってもほとんど気にならなかった。
消費電力は最大で10W、最小でワットチェッカーでは計測不能の0Wだった。待機電力も0Wだった。点灯中は一切モスキートノイズも無ければ、AMラジオに雑音が入る事も起きなかった。
長~く、飽きずに使えるデスクライト
価格の面から言うと、今や1万円前後で質の高いLEDデスクライトが出揃った中で、7万円近い価格は相当敷居が高い。
しかし、実際に使ってみて、長く愛用したいと思わせるだけの魅力を感じた。
デスクライトに求められる明るさ、拡散性を十二分に満たし、直線と円で構成されたミニマルなデザインは、空間にスッと馴染む。37年の長寿命を実現するヒートパイプ、指先だけで軽快かつダイナミックに正確な位置決定ができるムーブメントは、奇をてらわず、無駄な主張もせず、1台の照明器具の中にスルリと静かに溶け込んでいる。
使えば使うほど、「優秀なエンジニアリング、優秀な技術は決して安くない」という、ジェイク・ダイソンの言葉を「当然!」と納得できるほど、至極快適なデスクライトだ。
長時間のデスクワークを、長期間に亘って快適に支えられる優秀なデスクライトとして、シーシスはきっと賢い選択になるだろう。