家電製品ミニレビュー

新年はタニカ「ヨーグルティアS」で醸し放題。甘酒もガブリ!

納豆、温泉玉子、熱燗などなど、ヨーグルトに止まらない最強発酵食品づくり

 新年を迎えると、初詣のついでに板状の酒粕500gを2パックほど購入し、それを元に鍋で2Lほどの甘酒を何度も作って、1週間かけて1人で全部(8L)飲みきるくらいの甘酒党である。2017年の年明けを見据え、よりおいしく、リーズナブルに大量の甘酒を生産する方法を探していた筆者の目にとまったのが、タニカ電器の「ヨーグルティアS」だった。

タニカ電器「ヨーグルティアS」で発酵食品生活
メーカー名タニカ電器
製品名ヨーグルティアS
購入価格10,800円

甘酒と、圧倒的容量のヨーグルト、納豆を安価に作りたい

 ヨーグルティアSは、その名の通りヨーグルトが作れるヨーグルトメーカーである。ちょっとのヨーグルト(菌)と牛乳を混ぜて一定の温度に保ったまま放置すれば、それが丸ごとヨーグルトに変化して気持ちもお腹も(便通的な意味で)ハッピーになれるというアイテムだ。

温度設定と時間設定のみの簡単操作

 このヨーグルティアSは、コンシューマー分野ではもはやヨーグルトメーカー専業と言っても過言ではないタニカ電器が、2016年夏に発売した最新製品。ヨーグルトの発酵のみに絞った低価格なヨーグルトメーカーが多いなか、タニカ電器のヨーグルティアSは抜群の高性能で(温度設定範囲が25〜70℃と広い)、ヨーグルト以外にも甘酒、味噌、納豆、温泉卵なんかも作れるという。もちろんその分お値段も1万円超とハイエンドだ。

 筆者が年明けの甘酒生産を検討し始めたのとちょうど同じ頃、4人家族である我が家のヨーグルト消費量と納豆消費量が尋常ならざるペースで増え始めた。家計を圧迫しかねない勢いだったこともあり、本体価格は高くても、ヨーグルトや納豆を全て自家培養できるヨーグルティアSを購入した方が、結果的にコストパフォーマンスは高くなるのでは、と考えた。

超カンタンに、クリーミー&マイルドなヨーグルトが完成

 ということで、ヨーグルティアSを購入した後、最初に基本となるヨーグルトを作ってみた。ヨーグルティアSで作れる発酵食品のなかでも、ヨーグルトは最も簡単な部類に入る。2セット付属している透明の内部容器を1つ使い、まずは底が隠れるくらいの少量の水と付属スプーンを入れ、内蓋をかぶせて電子レンジ600Wで1分半ほど加熱、殺菌する。この殺菌作業は、どんな発酵食品を作る時も同様で、ほとんど儀式みたいなものである。

電子レンジで殺菌したら、ヨーグルトづくりの開始である

 残った水を捨ててある程度冷ましたら、ヨーグルト1に対して2程度の牛乳を入れてかき混ぜ、均一に混ざったようならさらに牛乳を8入れる。例えば我が家御用達の「ダノン ビオ」(80g×4個)を使う場合は、1個丸ごとと1,000ccの牛乳を混ぜるとちょうど良い。正確には1対10ではないけれど、これくらいの差は許容範囲内のようだ。

ビオと牛乳を入れてかき混ぜる

 十分にかき混ぜたら内ぶたと外ぶたを付け、ヨーグルティアSにセット。カバーをかぶせて温度設定を「40℃」に、時間設定を「7時間」もしくは「8時間」にしてスタートボタンを押す。あとはひたすら待てば、ヨーグルト菌が増え続け、7〜8時間後には全体がヨーグルトになっている。最後に冷蔵庫で冷やせば完成だ。

ふたを全てセットして40℃、8時間醸して冷蔵庫で冷やせばできあがり

 ちなみにヨーグルトに限らず発酵食品を作る時は、一定時間同じ温度に保って菌を培養することから、間違って雑菌が入ると温度設定によってはその雑菌も大量に繁殖してしまうことに注意しなければならない。

 これを防ぐには、今回のように個別包装されたヨーグルトを使うのがおすすめ。雑菌の混入を最小限に抑えられるだけでなく、内容量が明らかなので、牛乳と混ぜる際に重さを測る手間を省けるというメリットもある。

 できあがったヨーグルトは、まさにビオらしいクリーミーさ。発酵時間が長いほど酸味が増すということだが、8時間程度の発酵だと酸味は少なくマイルドな口当たりで、まあ、要するに、おいしい。市販の(ビオではない)ヨーグルトの酸味が口に合わず続けられないと言っていた妻も納得の出来栄えであった。

はちみつをかけておいしくいただく

 ちなみにヨーグルト作りにかかる費用は、下記の通り1,000ccオーバーでだいたい256円程度。1,000ccというとダノン ビオ 4個セット×3以上ということで、スーパーで同じ量を買った時の1/2〜1/3の費用で済む計算になる。このおトク感はすばらしい。

ヨーグルトづくりの材料と費用

温度設定:40℃
時間設定:7〜8時間

材料
ダノン ビオ(1個80g)50円
牛乳(1,000cc)200円
電気代約6円
計256円(約1,100〜1,200cc分)

※参考:ダノン ビオ(80g×4=320g)…200円弱

これまでにない舌触り! 米こうじと炊きたてご飯から、甘い甘酒が誕生!

 とりあえずヨーグルトを作って家族にひとしきり喜んでもらったところで、当初の目的である甘酒づくりに挑戦。用意するものは米こうじ(200g)、炊きたてのご飯(320g)、水(400ml)。米こうじは今回乾燥タイプのものを用意したが、生のこうじでも(用量は変わるが)作ることができる。

甘酒づくりに必要な材料を用意。ご飯は山盛り、320gというとだいたい米1合分か少ない程度

 作り方の手順は、これら3つの材料を全て混ぜ合わせ、ヨーグルティアSにセットするだけ。わざわざ炊きたてご飯を用意するため手間がかかる気がするが、60℃の温度で6時間発酵させるだけと、わりと短時間で済む。

全部入れてかき混ぜる。黄色めの粒が米こうじ
60℃、6時間にセット
6時間経過。米粒と米こうじの違いが分からなくなった

 ヨーグルティアSで作った甘酒は、そのままだと若干濃いので、水で1.5倍程度に薄めて温めてから飲むと良い。市販の酒粕から作るのとは全く違って、アルコールを感じさせる風味はほとんどなく、酒粕のあのねっとりするような舌触りももちろんゼロ。浮いて見える米粒っぽいこうじは、実際に口に含むとふわっと軽く、粒感は口の中に残らない。

 これまで飲んだことのあるどんな甘酒とも違うが、それでもしっかり甘酒だ。最も驚いたのは、砂糖などは全く入れていないのに、かなり甘いこと。酒粕から作る甘酒も慣れ親しんだ味わいで好きだが、このヨーグルティアSで作る甘酒もクセになる。米の銘柄や水によっても大きく味が変わりそうなので、探求しがいがありそうだ。

1.5倍程度の水でのばし、温める。粒は舌で感じないほど軽い

 甘酒づくりにかかる費用は、酒粕を原料にした場合が1,000ccあたり125円ほど。ヨーグルティアSではだいたい1,000ccほどの出来上がりになり、水で1.5倍に薄めた場合はおよそ1,500cc飲めることになる。1,000cc分の費用は176円前後だろうか。

 ただし、酒粕から作る場合はガス代や大量に消費する砂糖の費用も別にかかるので、おそらく大差ないコストになっているはずだ。

甘酒づくりの材料と費用

温度設定:60℃
時間設定:6時間

材料
米こうじ(乾燥200g)233円
米(320g)60円
水(400cc)0円
電気代約4円
計297円(約1,500cc分)

※参考:市販甘酒(酒粕500g、約4,000cc分)…500円

3日間かけて作った納豆は失敗だった!

 ヨーグルトに次いで家族の消費量が多い納豆。これはヨーグルティアSを使ってもそこそこ手間のかかる発酵食品だった。

 原材料は大豆と少々の市販納豆のみ。まず大豆を洗って12時間ほど水に漬け、その後2時間以上火にかけて柔らかくする。その後、ヨーグルティアSに市販納豆とともに混ぜ入れ、45℃の温度にセットして24〜48時間待つ。それが終わったら冷蔵庫に保管して一晩か丸1日くらい寝かせて熟成させ、ようやく完成だ。

150gの大豆を12時間水に浸す
大豆が大きくふくらんだ
2時間以上煮込んだ
指でつまんでつぶれるくらいに柔らかくなったら次の工程へ
市販の納豆、パックの1/4ほどを投入
45℃で48時間発酵させる

 苦労して作った納豆だったが、粘りも糸の引きも少ない、なんというか「THE 大豆」という味である。おかしいなと思い付属のレシピをよく読むと、間違えてヨーグルティアSの内ぶたをしたまま発酵させていたことが判明した。

 本来、納豆を発酵させるには空気に触れさせることが必要で、正しくはヨーグルティアSの内ぶたを外した状態でセットしなければならないのだ。正味3日間かかった仕込みが水の泡……。

なんか糸を引かない、豆豆しい納豆になったぞ
うん! おいしくない! でも捨てるわけにもいかないので、作った筆者が出来上がりの500gを責任をもって消費した

 2回目のチャレンジで無事納豆らしい納豆を作ることに成功したものの、どうにも大豆自体の味が強く、市販の納豆のような発酵食品感(納豆臭)は薄い気がする。大豆の粒が大きいのも敗因の1つかもしれない。

 費用はともかく、かかる手間と時間を考えると市販品を購入したほうがよほど楽でおいしいのではないだろうか、と思ってしまった。当然ながら、これはヨーグルティアSの問題ではなく、筆者の作り方の問題なのだが。

2回目のチャレンジで作った納豆。まあまあ納豆っぽくはあるが、大豆の選定から考え直す必要がありそうだ

 ちなみに、ヨーグルティアSは30分〜48時間の時間設定に対応する。付属レシピによれば、納豆を作るには48時間の発酵が必要とのこと。だが、それより短くても十分に発酵してくれるし、徹底的に発酵させたい場合は本体操作を繰り返して48時間以上醸すのもOKだ。

 また、圧力鍋を使うことで大豆を煮る時間を短縮できる。いずれ近いうちに、大豆の銘柄を厳選し、圧力鍋を用意したうえでリベンジしたい。

納豆づくりの材料と費用

温度設定:45℃
時間設定:24〜48時間

材料
納豆(1パックの1/4程度)8円
大豆(150g)150円
電気代約32円
計190円(約500g)

※参考:市販納豆3パック(120g)…100円前後

高温保温に対応しているからこそ作れる、珠玉の温玉

 ヨーグルティアSは、最大70℃という高温設定が可能な点も大きな特徴。ヨーグルト作りに特化した安価なヨーグルトメーカーだと、一般的なヨーグルト菌が活性化しやすい40℃台までしか設定できないものもある。だが、より高温の温度設定まで対応することで、「低温調理」というものが可能となる。

 その代表格が温泉玉子だ。鍋で卵を茹でた場合は黄身部分がとろとろの半熟玉子を作れるのがせいぜいだが、ヨーグルティアSでは白身も黄身もトロットロの温泉玉子が作れる。温泉玉子づくり専用のオプション品「温玉スタンド」もあるが、これを使わなくても大丈夫。

 作り方は、生卵を容器に入れ、全て隠れるまで熱湯を注ぎ、温度設定を65℃、時間を30分にセットするだけだ。

温玉のためにふんぱつした高級卵。なのに……
1個割ってしまった
割れた卵を取り除き、残りの5個を入れて熱湯を注ぐ
もう1つヒビが入っていることも判明したが、これは最終的にきちんと温玉になった

 ただ、試しにレシピ通り30分間保温したところ、黄身が中まで固まってしまった。好みにもよるが、15分か20分程度で引き上げてもいいかもしれない。とはいえ、できたての温玉を釜揚げうどんに乗せて食べると、やみつきのうまさ。納豆の失敗を忘れそうになるくらいである。

温玉釜揚げうどん。うますぎる

温泉玉子づくりの材料

温度設定:65℃
時間設定:30分以下

材料
生卵(6個)
熱湯

安く、こだわって作りたい人におすすめできる最強発酵食品メーカー

 このように、ヨーグルト、甘酒、納豆、温玉と、一部は失敗したものの手軽にさまざまな発酵食品や低温調理食品を作れるのが、ヨーグルティアSだ。しかし、手軽に作った場合はそれなりの完成度になり、材料や発酵の温度・時間にとことんこだわれば、こだわった分だけさらにおいしい発酵食品を作ることもできる、懐の広いアイテムであるとも感じた。

 最もポイントとなるのは高温設定が可能なことで、温玉のように発酵食品に限らずさまざまな使い方ができるところだろう。例えば筆者の場合、日本酒を熱燗にするのときも便利に使っていたりする(時間は少しかかるけれど、確実に一定の温度にしてくれる)。このハイスペックをヨーグルト作りだけに使うのはもったいない。いろいろ工夫したり、低温調理に活用したりして、ヨーグルティアSを使いこなしたいではないか。

日本酒を熱燗にする時にも大活躍

 2016年の年末、公式オンラインショップでは品不足気味になっているようだが、最近話題の発酵食品に興味がある人、ヨーグルトを大量に食べたい人、新年に甘酒をがぶがぶ飲みたい人など、いろいろな人にヨーグルティアSの便利さと楽しさを味わってほしいと思う。

日沼 諭史