家電レビュー
「中身が見える冷蔵庫」は何がいいの? 家で使ってみました
2023年1月26日 08:05
冷蔵庫は現代社会において、なくてはならない必需品。ですが、実はちょっと使いづらいという“プチストレス”を抱えたまま、我慢して使っている人も多いのではないでしょうか。
たとえば、冷蔵室の一番上の段がよく見えず、手も届かない。
一般的な中〜大型冷蔵庫の高さは、170〜180cmと多くの日本人の身長より高いため、最上段の奥は使いにくくなっています。その結果、ここに入れられてしまったものは消費期限をとうに過ぎても気づかれず、腐敗もしくはミイラ化することに。“死蔵ゾーン”です。
冷蔵庫の扉を開けてしばらくすると、ピーピー鳴り始めて焦る。
冷蔵庫は節電のため、さらに食品の鮮度を保つためにも、開閉時間をできるだけ少なくする必要があります。開けてから「あれ、どこに入れたっけ」と探しているうちに、ピーピーと警告音が鳴り出すプレッシャー。近年は電気代も上がっているので、余計に神経質になってしまいます。
これらの共通の問題は、“冷蔵庫の中が見えにくいこと”にあります。冷蔵庫の扉を開けないと中が見えないから、扉を開けている時間が長くなってしまうし、開閉回数も増えてしまいます。また最上段の位置が高すぎるから、見えない場所が生まれてしまうのです。
そんな問題を解決してくれる冷蔵庫が昨年11月、ツインバードから登場しました。その名もずばり、「中身が見える冷蔵庫」。さっそくお借りして、自宅で1カ月ほど使ってみたので、使用感をレビューします。
タッチすると……中身が浮かび上がるように見えてくる!
「中身が見える冷蔵庫 HR-EI35B」の定格内容量は354Lで、2人暮らしにちょうどいいとされている大きさの中型冷蔵庫。本体サイズは約685×630×1,648mm(幅×奥行き×高さ)で、一般的な冷蔵庫より幅を広くする代わりに、高さと奥行きを抑えました。店頭予想価格は23万円です。
ちなみに幅685mmは、容量600L台の大型冷蔵庫クラスの幅のため、設置スペースが昔の冷蔵庫サイズ仕様の住戸には置けない可能性もあります。筆者宅の場合も、以前住んでいたマンションには置けなかったでしょう。今回はダイニングに置いたので、幅は気にする必要がなく、むしろ薄型でスッキリ置けたのがよかったです。
高さが低いメリットは、実際に扉を開けてみるとわかります。身長にもよりますが、筆者(身長169cm)にとっても、目線の下に最上段があり、冷蔵庫内をくまなく見渡せたのは新鮮でした。「最上段は見上げて使うもの」「奥まで手が届かないもの」という常識は、あくまで今まで、そのような冷蔵庫ばかりだったからなんですね。
なお日本人女性の平均身長は、30代で158.2cm、60代で154cmですので、一般的な冷蔵庫の高さがいかに使いづらいかわかります。もちろん設置スペースと容量の両立を目指すと、上に伸ばさざるをえない事情もあるわけですが、ツインバードはあえて、無理に両立を目指さず、使いやすさに重きをおいた、ということでしょう。
そして、この「中身が見える冷蔵庫」の真骨頂が、扉を開けなくても中が見えること。フレンチドアの右側の扉下を軽くタッチすると、右側の扉が透過して、庫内がくっきり見えるのです。
実際に使ってみると、中が見えるインパクトはすごい! 今まで見えなかったものが、浮かび上がるように見えるので、おしゃれなお店に置いてあるワインセラーのようにも見えます。
仕掛けとしては、中が見える部分だけガラスになっており、庫内とドアのLEDが明るく点灯すると、中がよく見えるというもの。そういえばわが家のリビングも、電気をつけなければカーテンなしでも外から見えませんが、電気をつけた瞬間丸見えになる……あれに近い感じでしょうか(笑)。
なお一度庫内が点灯した後は、30秒を過ぎると自動で消灯します。早く消したい時は、もう一度タッチセンサーに触れれば、ゆっくり消灯していきます。
扉を開けずに中が見えるメリットは?
一見すると、デザイン性の高い冷蔵庫で、筆者としてはそれだけで大満足なのですが、実は扉を開けずに中が見えるようにしたのは、「扉の開閉回数を減らし、冷気のムダを抑える」「中を確認しやすく食品ロスを減らすのにつながる」といった狙いもあるそうです。
確かに、冷蔵庫から何かを取り出そうと思った時、扉を全開して、「えーっと」と探している間、冷気は逃げ続けます。また買い物前に、冷蔵庫に何があるか、何がないかを確認するために開けるのも、ムダといえばムダ。
その点、扉を開けずに庫内が見えれば、使いたいものの位置を確認してから開けられるので、短時間で済みますし、在庫を確認するだけなら、扉を開ける必要がありません。ちなみに扉が透過してみえるのは、フレンチドアの右側だけですが、ここから左側まで見渡すことができます。
ふと「あらかじめ置き場所がわかると、どれくらい扉を開ける時間が短くなるんだろう」と興味が湧きました。3つの食品を取り出す場合、庫内を事前確認していない場合と、事前確認した場合では、どれほど時短になるのか息子に試してもらったところ、やはり3割ほど時短になりました。
ただ実使用では、LEDを点灯しても中が見えにくいと感じるときもありました。まず扉(ドアポケット)に飲み物などが入っていると、それが邪魔で奥まで見えにくくなります。かといって、のぞき込むのもちょっと面倒。また下段のチルドケース内もよく見えないので、扉を開けたほうが早いと思うこともあります。
また、これは人それぞれ好きにすればいいことですが、中が見える扉のポケットに入れるものは、正面(ビンのラベルなど)を外側に向けた方がいいのかな、でも扉を開けたときには、内側を向いていたほうが手を伸ばしやすいし……と迷います。どちらでもいいのでしょうが。
“見える”という意味では、演出としても大活躍しました。実は昨年末に、引っ越し祝いを兼ねて高級シャンパンをいただきました。これはディスプレイにぴったり! と思い、さっそく次の来客が来たときに浮かび上がらせたところ、感嘆の声が上がりました。
冷凍室が大きく、まとめ買いに便利
その他の仕様はごくシンプル。前述のように奥行きが狭いので、いつも使っている冷蔵庫とは食材の置き方が少し変わるかもしれません。奥行きは、10個入りの卵パックや、チルドピザがちょうど入るサイズ感です。
冷凍室には、思った以上に多くの冷凍食品が入りました。確認したところ、定格内容量は約103L。これは、中型冷蔵庫(310~360L)の中では最大クラスだそうで、冷凍食品をまとめ買いをしたときも、たっぷり収納できます。
自動製氷機はついていませんが、ユニークな製氷皿がついていました。製氷皿といえば、トレイ自体がブロック型に仕切られているものが一般的ですが、浅いので水を入れるとこぼれやすく、そーっと冷凍室に移動させ、そーっと置かなければいけません。それでも何かの弾みでこぼれちゃうこともしばしば。
その点、今回付属していた製氷皿は、仕切りのないトレイに水を入れた後、仕切りのあるフタをするという逆転の発想で開発されたもの。水がこぼれる心配が少なく、これまた“プチストレス”を解消してくれるアイテムでした。
これは本当に目からウロコ! 考えてみたら、製氷皿もちょっとした使いにくさを感じながら、もう何十年も変わっていなかったので、今よりもっとよくなることって世の中にはたくさんあるんだろうな、と感心してしまいました。ちなみに現在、特許出願中だそうで、今後は製氷皿だけの購入もできるそうです。
“見えない”冷蔵庫より、断然“見える”冷蔵庫
「中身が見える冷蔵庫」を使ってみて、筆者がまず気に入ったところは、見た目のカッコ良さでした。今回はスペースの都合上、キッチンカウンター近くのリビングダイニングに置きましたが、置くだけで空間がスタイリッシュに引き締まります。LEDを点灯させると、さらにリビングが格上げされたような雰囲気に。
もちろん中が見えると、今までの見えないストレスからも解放されます。正直いうと、中が全て見えるとは限らず、のぞき込んで探すより、扉を開けた方が早いと感じることもありました。それでも扉を開ける前に中の様子がわかれば、開けてからの行動がスムーズ。少なくとも右側になさそうなら、左側にあると想像でき、動作のムダが減ります。
実は以前、整理収納アドバイザーに冷蔵庫収納のアドバイスをいただいた際、「どこに置いてあるか分からないと、まずフレンチドアの片側を開けて、なければもう片側を開けることになり、開けっぱなしの時間が長くなる」と言われました。このときのアドバイスは、「家族がよく手に取る食材をどちら側に置くか決めておけば、両側を開けるムダがなくなる」というもの。中身が見えれば、やはり片側だけ開ければ済むようになりそうです。
いずれにしても、見えない冷蔵庫より見える冷蔵庫のほうが断然ストレスフリー! そこに、節電や食品ロス低減などの結果がついてくれば、さらに新たな意義が付加されていくことでしょう。