家電製品レビュー

電気ケトルでハンドドリップ? ハリオの3つのアイテムでコーヒーをもっと身近に

電気ケトルでハンドドリップ? 手軽にコーヒー抽出できる器具を紹介

以前からこだわっていたが、テレワークが続く中でより意識するようになったのが、コーヒー。求人情報サイトを運営するビズヒッツの調査では、テレワーク中の息抜きを500人に聞いたところ、「外出する」「ストレッチ・運動をする」に次いで3番目に多かったのが「飲み物休憩をとる」という回答だったそう。筆者も新しいコーヒーメーカーを購入したりと、仕事中に息抜きをしたいときにはコーヒーを楽しんでいる。

コーヒーメーカーで抽出するコーヒーもおいしいが、毎日飲んでいるうちに「好みにあわせて抽出したい」という欲がでてくるように。ハンドドリップであれば実現できると考えたが、なかなかハードルが高そう。用意する道具も多いうえ、何よりテクニックが要りそう。

そこで使ってみたのが、ハリオが2021年に発売した、いくつかのハンドドリップ用品だ。いずれも、ハンドドリップを行なう上でのハードルを下げてくれるもので、初めてハンドドリップをする人におすすめだ。ここでは、3種類のアイテムを紹介する。

ハンドドリップを身近にしてくれるHARIOのコーヒーグッズ3種。いずれも2021年発売

電気ケトルからハンドドリップできる「ドリップアシスト」。細口ケトルが不要

まず紹介するのは、「V60 ドリップアシストセット」。プラスチック製のドリッパーと、「ドリップアシスト」、円錐型のペーパーフィルター40枚がセットで1,650円と、購入しやすい金額だ。ドリップアシスト単体でも1,100円で販売されており、02サイズのドリッパーであれば組み合わせて使える。ドリップアシストの中央と周囲には小さな穴が開いており、ここから湯が垂れることで、細口ケトルをつかわなくても湯を注げるというわけだ。

2021年発売の「V60 ドリップアシスト」。単体で1,100円、ドリッパー/ペーパーフィルターとのセットで1,650円

穴の大きさは中央と周囲で異なり、中央のほうが大きくなっている。中央に湯を注いだときはドリップアシストにあまり湯が溜まらずに注いだ湯が穴から出ていくが、周囲に注いだ際には湯が溜まり、少しずつポタポタとドリッパーへと注がれていく。蒸らしでは勢いよく注がれる中央の穴、それ以外は周囲の小さな穴から注湯する。また、外側に注いだ湯が中央の穴へとあふれる形状のため、中央の穴と周囲の穴を両方用いて湯を入れることで、コーヒーの風味を調整できる。

製品の監修は、バリスタのピート・リカタ氏。説明書にはリカタ氏のオリジナルレシピ2種類が載っているので、それぞれの方法でコーヒーを淹れてみた。どちらも蒸らしでは中央の穴を使う。その後の抽出は、一方は周囲の穴に湯を注ぐときにあえて中央の穴ににあふれさせ、もう一方では中央の穴にあふれないよう外側の穴だけで湯を入れる。

中央の穴と周囲の穴の大きさが異なる
中央の穴からは勢いよく、周囲の穴からはポタポタと湯が注がれる

中央の穴に湯をあふれさせるレシピでは、湯を常に継ぎ足している状態となる。400mlの湯を使ったが、湯を注いでいる時間は蒸らしの30秒も含めて2分ほどと、手軽な印象を持った。一方で、周囲の穴だけで抽出するレシピは様子をみながら少しずつ継ぎ足すことから、湯をあふれさせるレシピに比べ抽出時間が1.5~2倍かかった。

同じコーヒー豆で抽出したが、それぞれのレシピで味に違いがあった。中央の穴にあふれさせるレシピのほうがさわやかで、周囲の穴に入れるレシピのほうが苦みや深みのある印象。抽出に使うケトルは細口ではない電気ケトルだが、湯を中央の穴にあふれさせるか否かだけで味に変化を持たせられるので、ハンドドリップ初心者の筆者でも違いの分かる淹れ方ができ、まるで上達したようにも思えた。

抽出したあとのフィルターの様子は、レシピによって異なった。中央の穴も使って抽出した場合は真ん中が大きく凹んだ状態
周囲の穴だけで抽出した場合はなだらかに中央へ向かって凹んでいる

蒸らしがいらない「V60 MUGEN」。いい意味で「サッパリ」とした味

ハンドドリップでは「蒸らし」や「一回の注湯での湯量」「1回の注湯にかける時間」など、気に掛けることが多くある。さまざまな条件に変化をつけることでコーヒーの味わいの変化の幅広さを楽しめるが、難しい部分でもある。また、テレワークや家事など他の作業をしながらハンドドリップをするのは手間がかかる。

次に紹介するドリッパー「V60 MUGEN」は、蒸らしがいらず、湯を注ぐ回数が1回で済むのが特徴。注湯が1回でいい仕組みは、ドリッパーの内側の形状にある。上からみると星形のような模様がついており、溝を湯が伝うようにしてコーヒーを抽出する。

V60 MUGEN。セラミックモデルは2,200円、樹脂モデルは880円
星形の溝がポイント

フィルターを湿らせてからコーヒー粉を入れ、40秒ほどかけてうずまきを描くように湯を注いでいく。2人分ほどのコーヒーを抽出したが、湯を注ぎ終わってから1~2分ほどで抽出は終了。抽出後のコーヒーは、蒸らしがなかったためか、やや色が薄く見えた。

色は薄いが味はどうか? と飲んだところ、いい意味で「サッパリ」とした印象だった。蒸らしてから抽出するコーヒーに比べてコクは少ないが、 サッパリさの中に香ばしさも感じた。軽い飲み心地のコーヒーが飲みたいときにはピッタリの味だ。

フィルターを湿らせると、ドリッパーにピッタリと付く

ところで、通常のドリッパーで同じように抽出するとどのような味がするのか。ハリオのスタンダードなドリッパー「V60」で試してみたところ、できたのは薄いコーヒー。深みや苦みはなく、コーヒー風味の水を飲んでいるような……。ドリッパーの溝が異なるだけでここまで味が変わるのかと驚いた。

V60 MUGENはサッパリとした味のコーヒーを抽出するので、一緒に食べる物や飲むシーンを選ぶかもしれない。しかし、在宅での仕事中に息抜きで飲むには、そこまで気にならない。また、蒸らしをせず1回だけで抽出できるのはかなり楽で、テクニックもいらないのもよい。

布製フィルターがなくてもネルドリップの味を楽しめる「ダブルステンレスドリッパー 粕谷モデル」

前述の2種類のドリッパーはいずれもペーパーフィルターを用いたものだが、最後に紹介する「V60 MUGEN」は金属製のフィルターながらネルドリップの味わいを楽しめるという。

ネルドリップは名前の通り、布(フランネル)製のフィルターで抽出するもの。抽出前のフィルターの準備や抽出時の湯の注ぎ方などこだわる部分が多く、すこしハードルが高そうに感じてしまう。しかし、ダブルステンレスドリッパーでは、ステンレスフィルターでネルドリップ風の抽出をできる。

ダブルステンレスドリッパー 粕谷モデル。価格は5,500円

ドリッパーの形状はネルフィルターに似た細長い形だ。フィルターの目は、触ったときに表面を滑らかに感じるほど細かく、底部には側面よりも少し大きな穴が開いている。ここに中挽き~粗挽きの粉を入れ、蒸らした後にうず状に湯を注いでいくことで抽出できる。一人分を抽出したく、12gの中挽きの粉に対して150mlの湯を注いだところ、抽出にかかった時間は5分ほど。フィルターの目が細かいためか、結構長い時間がかかってしまった。このあと粗挽きの粉で抽出したところ抽出時間は4分ほどになったので、使う粉は粗いほうがいいのかもしれない。

じわじわと穴から抽出され、ポタポタと水滴が落ちている

味はというと、一口飲んで「ペーパーフィルターで抽出したコーヒーとはまったく別物だ!」と実感した。とてもなめらかな口触りだ。油分や深みも感じ、カフェで飲むような味で、自分で抽出できたとはにわかに信じられないほどだ。先に紹介した2つの製品よりも高価だが、味は最も本格的で、飲んだ後は「5,500円でも安いのでは?」と思えた。

ちなみに、このドリッパーは世界的なバリスタの粕谷 哲氏の監修でつくられている。ドリッパーと同時に「プアコントロールケトル 粕谷モデル」を発売。通常のケトルは注ぎ口と対称的な位置に持ち手が付いているが、プアコントロールケトルの持ち手は手前に付いている。これにより注湯時に手首が曲がらず、ネルドリップに必要な湯のコントロールをしやすくなるそう。

プアコントロールケトルは持ち手の位置が独特
持ったときに手首が曲がらないため、コントロールしやすい

ハンドドリップならではの味の違いを手軽に

ここまで3種類のドリッパーを紹介したが、どれも難しいテクニックなしに抽出できる。粉の量と湯の量さえ気を付けていれば、なんとなく湯を注いでいるだけでコーヒーができあがる。ドリップアシストとV60 MUGENに関していえば、抽出時間も長くないため、朝食づくりの途中や仕事中などの片手間であったとしても抽出できる。

ただ、テクニックがいらない一方で、味の自由度はそこまで高くない。一番最初に紹介したドリップアシストでは、湯を注ぐ穴を変えれば味に変化をつけられるが、蒸らしがいらないMUGENでは、手を加えられる部分は粉や湯の量くらいだろうか。しかし、ハンドドリップに慣れていない筆者にとっては、簡単にコーヒーを淹れられるのでかなり助かる。ハンドドリップの奥深さに触れていく入り口になるグッズだ。

コーヒーのハンドドリップに興味のある、以下のような人にぜひおすすめしたい。

  • 細口ケトルを持っていない人、または、ハンドドリップ初心者だが抽出方法で味わいに変化をつけたい人に「ドリップアシスト」
  • テレワーク中にハンドドリップのコーヒーを飲みたいがあまり手間をかけたくない人に「V60 MUGEN」
  • 手軽にネルドリップの味を楽しみたい人、なめらかな口触りや油分を楽しみたい人に「ダブルステンレスドリッパー 粕谷モデル」
大塚 愛理