家電製品レビュー

家の消費電力がスマホで簡単に分かるNature Remo E lite。家電制御で見えるIoTの未来

Natureの「Remo E lite」。家の電力をまとめて測れる電力計(太陽光発電の売電にも対応)。価格は14,800円(税込)

これから寒くなるとエアコン暖房の季節。気になるのは電気代という人も多いはず。とくに、お子さんがいる家庭は大変。それは子供部屋の“つけっぱなし”がありがちだから。何度言っても、子供部屋のエアコンと照明をつけたままで、リビングで何時間もゲームをしていたり、夕食を食べたり。何度も、何度も、何度も「電気消せ」って言っても、つけっぱなし。

何度注意しても子供部屋はいつもエアコンつけっぱなし

とはいえ、自分も何度言われても、こまめに電気を消した記憶がない! (笑)。そもそも子供っていうのは、電気をつけっぱなしにする生き物なのかもしれない。

すると気になってくるのは電気代。冬場のエアコン暖房は夏の3~4倍の電気代がかかるので、しっかり無駄を把握しておきたい。

そんなときにオススメなのが「Nature Remo E lite」だ。

このデバイスは、家の外についている自宅の電気代を算出する電力計(スマートメーター)と通信して、リアルタイムの家全体の消費電力を表示、15分刻みでデータを記録する消費電力レコーダー。無償のアプリを使うと、年間(月刻み)、月間(週刻み)、週間(日刻み)、1日(15分刻み)の消費電力量をグラフ化してくれる。

専用アプリでは、リアルタイムの消費電力をほぼ1秒ごとにW数(1W刻み)で表示するので、どの機器をON/OFFするとどれだけ電力を消費しているのかが手元で分かる。コンセントにつける「ワットメーター」のように、メーターのあるところまで行って数値を覗き込む必要がなく、エレガントかつスマートに消費電力がわかるのだ!

壁コンセントにワットメーターをつけると、数値を読むのにDOGEZAするので大変!

これまでは、家庭の分電盤(ブレーカー)に測定器をつけたり(設置が超怖いし面倒)、HEMS(ヘムス)という太陽光発電などのモニタリングをする専用装置(高い!)が必要だった。「Nature Remo E lite」は、14,800円(税込)で家全体の消費電力を記録、リアルタイムの消費電力がわかる革新的なデバイスだ。

1日、1週間、1カ月、1年単位で電気代を分析!

専用のアプリを使うと、以下のようなグラフが表示できる。このグラフでは、1日の消費電力の推移と、その日の累積消費電力、そして現在の消費電力がわかる。

1日単位の表示。1本のグラフは15分単位、上に表示されている「ホーム」はグラフの累積消費電力量、「現在」はその瞬間の消費電力量

グラフ1本は15分に対応していて、何時に消費電力が多いのか? などがわかる。朝は6時あたりから朝食の準備で給湯器をつけて、トースターや電子レンジを使い、シャワー上がりにドライヤーを使うので瞬間的なピークがチラチラ見られる。うちは共働きなので、昼にかけて消費電力が少なくなる。夕方まで低い値で推移して、家族が帰ってくる18時過ぎから20時にかけて照明や夕食の準備によるピークがあり、テレビなどを見て過ごしている時間になる。寝る前の1本のピークは、おそらく娘がドライヤーを使った形跡だ。

本格的な夏や冬になると、ここにエアコンがベースとしてドン! と数百W乗ってくるようになる。

朝から夜までエアコン2台が稼動していると、ベースの消費電力がドン! と跳ね上がる

画面中央の日付の隣にある矢印を押すと、表示する日付を切り替えられる。このとき「ホーム」に表示されているのが、その日の累積消費電力だ。当日の0時~翌0時区切りになっていて、翌日0時を経過していない場合は、その時点までの累積消費電力となる。

電気料金は電気を買っている会社やプランなどによってまちまちだが、「ホーム」の電力量(kWh)に27円(1kWhあたりの電気代)をかけると、だいたい1日の電気代が算出できる。

注意してほしいのは、グラフの上限が日によって変わる点。このグラフは1日の相対的な電力推移を見るにはいいが、日付を切り替えるとグラフの上限が日によって変わるので縦軸の上限の数値に注意しておこう。

1日ごとの消費電力を見比べるなら、「1W」ボタンを押して直近1週間(7日間)の消費電力を表示させ、確認できる。これで縦軸の上限が同じ数値になり、日ごとの消費電力のトレンドが比べられる。また「ホーム」に表示される累積消費電力は、1週間単位の消費電力だ。

10/4(日曜)は月曜の締め切り案件で、朝から晩まで仕事をしていたので消費電力が高い(笑)。6/8/9日はメーカーの新製品発表会で家を空けていたので、消費電力は少なめ

「1M」や「1Y」はそれぞれ、ひと月や1年単位のグラフとなる。旅行で一週間家を空けていた場合や、季節の変わり目でエアコンを使ったときと使わなかったときの電力量の違いを調べるときは、月や年単位にするといいだろう。

週間の電気代で見たところ。9月末から10月中旬にかけて、だんだん涼しくなりエアコンを使わなくなったため消費電力が少ない
8月の途中から使い始めたので、まだ3カ月分のデータしかない

今その瞬間の消費電力が表示、消し忘れのチェックが可能!

Remo E liteが便利に使えるのは、消費電力の傾向を見るときだけではない。グラフのページに表示される「現在」には、リアルタイムの家全体の消費電力が1W単位で表示される。

だから電子レンジやドライヤーを使えば1,000W単位でガン! と消費電力が上がる。しかも表示は1W単位なので、LED電球1個をつけたり、スマホを充電するだけでも消費電力がヒョコ! っと数W上がるのだ。電気料金を算出するスマートメーターからデータを取得しているだけに、恐ろしく分解能が高い(笑)。

瞬間の消費電力は「568W」。温度調節をする家電などがONになっていると消費電力が上下するが、それらがOFFになっていて消費電力が安定した状態だと、スマホの充電をするだけでも反応が見られる。かなり分解能が高い

だから、子供がリビングにいるとき、ちょっと消費電力を確認すれば、わざわざ子供部屋へ見にいかなくてもエアコンの消し忘れが分かる。エアコンが2台稼動していれば、グラフに大きな差が出るからだ。

エアコンをONにすると、いきなりW数が跳ね上がる。エアコンをつける前は536Wだった(左)のに、ONでは2,328Wにまで1,792W増加した(右)

さらにNatureからは、家電を操作する「Remoシリーズ」というものが発売されている(「Remo Eシリーズ」は消費電力計)。詳細はメーカーホームページの「Remo 3」を参照してほしいが、簡単にいえば、スマホから家電をコントロールできるというデバイスだ。赤外線でさまざまな家電を操作できる。あらかじめ登録されている家電も非常に多く、自宅のWi-FiにRemoを接続すれば、エアコンにテレビ、扇風機に照明など、多くの家電に対応できる。もし未対応の家電や機能があれば、学習リモコンのように信号を覚えさせることも可能だ。

Nature Remo 3。赤外線の送受信ユニットが入っていて、スマホなどから家電をコントロールできる。Remo E liteとは別売で、価格は9,980円(税込)
画像左が専用アプリの画面。機器を選んでから、細かくコントロール。右は照明を選んだときの画面

もちろんスマートスピーカーにRemoを登録すれば、Remoでコントロールできる家電をごっそりそのまま音声でコントロールできる。スマートスピーカーに対応していない扇風機やサーキュレーター、部屋のシーリングライトやオーディオ機器などの家電でも、「OK Google」や「Alexa」と声をかけてコントロールできる。

Remo E liteと組み合わせると、電源ON/OFFの操作をしたときに、消費電力の数値をRemo E liteで確認できるので出先からでもきちんと照明が消えたかどうかを確認できるのが特徴だ。現在発売されているスマートリモコンのほとんどは「スマホ→機器」の一方通行だが、今回の組み合わせでは、機器の状態まで調べられる。

ウチではリビングのGooleアシスタント搭載スピーカーと連携させて、照明などをコントロールしている

ウチではRemo 3を使っているのだが、Googleアシスタント搭載スピーカーとの相性はバッチリ。通常はリモコンでしかコントロールできない部屋の照明を、「OK Google」とRemo 3経由で操作できてとても便利。机がリモコンだらけになったり、わざわざリモコンを取りにいかなくても、「OK Google。照明サブを消して」「OK Google。照明メインを暗くして」などもできれば、アクションをまとめて「OK Google。テレビを見る照明に!」とすることもできる。

なおRemoは赤外線を使って家電をコントロールするので、部屋全体が見渡せる天井などに取り付けると、広範囲の家電を制御できる。

Remo E liteを使うには、電力会社に「Bルート」のIDとパスワードを申請!

Remo E liteはスマートメーターの近距離用無線通信にアクセスしてデータを取得する。通常は太陽光発電などを導入すると、太陽光の発電量と家の消費電力をモニターできるHEMSという小さなモニターを取り付けるが、実はRemo E liteもHEMSと呼ばれる機器の仲間だ。

太陽光発電を導入するとリビングにつけてくれるHEMSモニター

通常は、太陽光発電などの工事をしてくれる電気屋さんが電力会社に連絡して、スマートメーターが計量したデータをHEMSへ送る「Bルート」のIDやパスワードを電力会社からもらうのが一般的。

一方でRemo E liteは、自分で電力会社に連絡してBルートのIDとパスワードを申請する。とはいえ手続きは簡単。月々の電気料金に記載されている「供給地点特定番号」が必要になるだけ。申請にあたって、手数料なども一切必要なし。

月々の電気代の請求書に記載されている「地点番号」が「供給地点特定番号」
Web明細を使っている場合は、下の方に記載されている(東京電力の場合)

あとは指定されたWebページで住所や名前など一般的な項目を埋めて、「供給地点特定番号」を指定するだけでいい。超簡単! 1週間ほどで電力会社から封書が送られ、IDとパスワードが届く。

申し込み申請するとメールで申請用URLが送られてくるので、そこから申し込むだけ。カンタン!
まず封書で「Bルート認証ID」が送られてくる
同日もしくは後日メールにて「パスワード」が送られてくる。これで自宅のスマートメーターとRemo E liteの通信が可能になる

もちろんWebだけでなく電話での申請も可能だ。電気とガスをまとめて別会社から購入している場合は、「供給地点特定番号」がわからない場合がある。そんなときは電気を購入している会社のサービスセンターに電話して、住所や名前から「供給地点特定番号」を調べてもらえる。

また、通常Bルートの申請は、電気屋さんが行なうのでオペレーターに「工事関係の方でしょうか?」と尋ねられることがある。その場合は「スマートメーターと通信して消費電力を調べるワットメーターを自分で取り付けるので、工事関係者ではありません」と申し出ればいい。「工事関係者ではない」とあまりぶっきらぼうに言うと不審がられてしまうかもしれないが、「工事関係者以外の申請は却下」ということはなく、安心して申請できる。

プログラマー垂涎! オープンなAPIでコードから家電制御!

【注意】ここは、プログラマー向けの情報です。プログラミングをされない方は次の段落まで読み飛ばしてもかまいません。

Natureの社長さんはバリバリの現役プログラマーだけに、プログラマーが喜びそうな機能が盛りだくさん(笑)。それだけでも他の家電コントロールデバイスとは異なる。

公開APIは大きく分けて、クラウドAPIとローカルAPIの二つ。クラウドAPIでは、クラウド経由でRemoを使って家電を操作したり、部屋の室温や湿度など各種ステータスの取得が可能。Remo E liteの消費電力量の取得もできる。

照明関係の制御メソッドAPI
テレビや照明のステータス
家電のステータス取得API

クラウドのAPIを使うには、まず自分のRemoのデバイスIDとアクセストークン(鍵)を取得。同社のデベロッパー向けのページから無償で取得できるので、これらを厳重に管理すること。漏れたら他人からアクセスされ放題祭り開催に!

デバイスID(Remo固有のID)とそれに対応するアクセストークンを使ってセキュリティを確保(出典:Wikipedia「OAuth」)

このデバイスIDとアクセストークンを使って、サーバーに対してHTTPS経由でGETリクエストすれば、ステータスを取得可能。しかもjsonで戻り値を返してくれるので、可読性も高く、コードからも何のステータスかがすぐにわかるので便利。

逆に、ステータスをセットしてサーバー側にPUTすれば、家電のコントロールが可能に。公開APIは以下のページにすべてまとめられているので、プログラマーは必見。APIを見ていると、いろんなことができそうで、妄想がふくらみNatureシリーズが欲しくなってくる(笑)!

Natureの公開API
Nature API Rev.1.00

さらに面白いのがローカルAPI。こちらはRemoが赤外線で飛ばす信号のパターンの取得や設定を行なうものだ。LANからRemoのIPアドレスを取得し、それに対してGET/PUTすることで赤外線信号を解析したり、セットできる。

これまた面白い仕様になっていて、信号の周波数と配列変数を用意して、リモコンの信号をGETすると、配列に赤外線のON/OFFのバイナリパターンが入るというもの。なのでNECフォーマットでも、SONYフォーマットでも、家電製品協会(AEHA)フォーマットでも対応可能というワケ。もちろん未知のフォーマットにも対応できる汎用性を持っている。

ローカルAPIは、クライアントとRemoの間でやり取りする
プリセットの赤外線信号だけでも十分対応機種が多いが、赤外線信号を直に扱うこともできるので、汎用性が高い

取得した信号パターンは、バイナリの配列なのでメモリも食わず、信号劣化も起こらない。一般的な学習リモコンのように、信号パターンをそのままサンプリングする方法に比べて、確実に信号を再現可能となっている。だから信号の劣化もなくRemoから出す信号を家電側で確実に拾ってくれるようだ。

またコードをフルで書かないままでも、クラウドから取得したデータを自動的にグラフ化してくれる「Ambient」などもあり、これらのサービスを使うとローカルを経由せず、クラウド間同士でデータを通信しログを取ることも可能だ。

Ambientのようなクラウドサービスを使うと、手軽にグラフ化できる
IFTTTとNature Remoの連携もOK!

もちろんIFTTとの連携も可能になるので、消費電力が一定数を越えたら、自動的に家族全員にLINEで通知したり、誰かが家電をコントロールしたら、ソレを一斉配信するなども可能だ。

Nature APIを使ったサンプルプログラム、AmbientとNatureを組み合わせた使い方などは、先人のハッカーの多くが優しく手順やサンプルコードを使い解説しているので、参考にしてほしい。プログラマーやハッカーにとってNatureシリーズは、かなり遊べる恰好のおもちゃになることを筆者が保証する!

最も手軽に、最も正確に、最も遊べるNatureデバイス

電力会社からBルートのIDとパスワードを取得する面倒さはあるが、コンセントにさすだけで、自宅のスマートメーターから、リアルタイムで消費電力データを取得できる「Nature Remo E lite」。一般的なHEMS機器に比べると格安で、自宅の消費電力パターンを可視化できる。さらに同社の家電コントロールデバイスRemoシリーズを使えば、家電をコントロールして本当にON/OFFできたのかを確認できるので便利だ。

コンセントにさすだけで、リアルタイムで消費電力データを確認できる

標準のアプリの使い勝手もよく、外出先から家電をコントロールして、正しく反応したかを確認できるデバイスはほとんどないので、Remo 3とRemo E liteをぜひセットで使いたい。

消費電力を正確に手軽にリアルタイムに調べられるRemo E lite(左)と、家電をコントロールするRemo3(右)を併せて使うと最強のIoT家電コントローラーになる

さらにNature Remoシリーズが威力を発揮するのは、あなたがプログラマーの場合。一般ユーザーが活用できる指数を100とすれば、プログラマーなら1,000にも10,000にも使える。公開APIを使うと、10年先のIoT家電を構築できるだろう。

藤山 哲人

家電の紹介やしくみ、選び方や便利な使い方などを紹介するプロの家電ライター。独自の測定器やプログラムを開発して、家電の性能を数値化(見える化)し、徹底的に使ってレビューするのをモットーとしているため「体当たり家電ライター」との異名も。 「マツコの知らない世界」(番組史上最多の5回出演)「ゴゴスマ」(生放送2回)「華大の知りたいサタデー」(生番組4回)「アッコにおまかせ」「NHKごごナマ」(生放送2回)「カンテレ ワンダー」(5回)「HBC 今ドキ!(生中継4回)」はじめ、朝や昼の情報番組に多数出演し、現在インプレスの「家電Watch」「PC Watch」やサイゾー「ビジネスジャーナル」などのWeb媒体をはじめ、毎月ABCラジオなどで連載やコーナーを持っている。 趣味は、鉄道、飛行機、バス、車の旅行や写真とシステム&構造。電子工作、プログラム。あと神社めぐり。

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