家電製品レビュー
日本の声に応えたシャークのスティック掃除機EVOPOWER SYSTEM。“ちょいがけ”にも便利
2020年10月14日 08:00
2018年7月に突如、日本上陸した黒船・Shark(シャーク)の掃除機。シャークは本拠地を米国ボストンに置いており、「アメリカン」なイカツイ掃除機がまた日本市場に攻め込んできたか……。というのが最初の印象だった。
2018年9月に登場したハンディ掃除機は、無骨な印象を払拭し瞬く間に人気のハンディ掃除機となる。それが「Shark EVOPOWER」だ。これまでの掃除機にはなかったスタイリッシュなデザインで、テレビの横に置いてもアート作品のようで、片付ける必要なし。しかもパワフルな吸引力で汚れを見かける都度サッと掃除でき手軽で、軽い。
今回紹介する「EVOPOWER SYSTEM」は、日本独自モデルだ。ハンディ掃除機としての手軽さはそのままに、床もしっかり掃除したいという「日本の声」に応えたモデルとなっている。
ラインナップは、フローリング専用モデルと万能なマルチフロアモデル
日本向けに開発されたモデルは2種類で、主に床の違いで使い分けるようになっている。
フローリング専用モデル
このモデルは、極薄の床磨きヘッドを搭載し、フローリングや畳と密着してゴミを吸い取る。フローリング以外の先端ツールは、布団用の「ミニモーターヘッド」を付属しないことを除けば、万能モデルと共通だ。また専用スタンド&先端ツールを片付けられるスタンドも同梱されている。
直販価格は33,000円(税込)と安く、付属するバッテリーは1本のみとなっている。
マルチフロアモデル
このモデルは、フローリンクだけでなくカーペットやラグにも対応する汎用的なマルチフロアモデル。ヘッドには電動ブラシを搭載し、カーペットやラグの奥のゴミをかき出し吸引する。また、畳やフローリングにも対応。布団やファブリックの掃除に便利なミニモーターヘッドのほか、バッテリーを2本付属する。直販価格はバッテリーとミニモーターヘッドも含め49,500円(税込)だ。
専用スタンドはフローリング専用と共通で、1本目のバッテリーを本体に、2本目のバッテリーをスタンドにセットすると、2本同時(本体を終えると、スタンド側の充電に切り替わる)充電が可能になっている。
この2つの機種の違いを、一覧にまとめると次のようになる。
フローリング専用 | カーペット・ラグ用モデル | |
同梱バッテリー数 | 1本 | 2本 |
2本同時充電スタンド | ○ | ○ |
ハンディ運転時間(バッテリー/1本) | 20分 | 20分 |
スティック運転時間(バッテリー/1本) | 12分 | 12分 |
充電時間 | | |
ブラシ付きすき間ノズル | ○ | ○ |
布団ノズル | ○ | ○ |
ミニモーターヘッド | × | ○ |
フローリング専用ヘッド | ○ | × |
マルチフロア用ヘッド | × | ○ |
カラー | ルビーレッド、ノルディックブルー | ロイヤルブルー、メタリックグレイ |
重さ(ハンディ時) | | |
重さ(スティック時) | 1.5kg | 1.9kg |
価格 | 33,000円(税込) | 49,500円(税込) |
ハンディモデルのEVOPOWERに専用の延長ホースと簡易的なヘッドを付属した、2020年3月発売の「EVOPOWER Plus」との違いはヘッド。Plusはあくまで簡易的なもので、主にハンディとして使うことを想定した場合の製品だ。それゆえ持ち手の部分も直線的なハンディ仕様になっている。
一方、EVOPOWER SYSTEMはハンディとしても、スティック掃除機としても使えるように本格的なヘッドを持ち、持ち手の部分に角度がつけられ、スティック掃除機として使っても持ちやすい形状になっている。
フローリング専用モデルのクリーニング性能
フローリング専用モデルは、毎日チョコチョコと掃除機がけをする人向けの掃除機だ。ファミリーから一人暮らしまで、床はほとんどがフローリング、ゴミのメインは髪の毛やホコリという人向け。専用のヘッドでも硬いカーペットの上などは、スイスイ掃除できるが、その奥に入った砂ゴミを取るのは苦手だ。そのぶん本体価格が安く、軽くコンパクトにできている。
掃除機の性能をテストするために、まずは4種類のゴミを床に撒いて掃除してみた。
- 擬似花粉…花粉サイズと同じ微粒子状の粉
- 砂ゴミ…金魚用の細かい砂を利用
- 食べこぼし…大小さまざまな穀物などが入ったハムスターのえさを利用
- ほこり…おがくずで代用
擬似花粉
通常はフローリングの目に沿って掃除するところを、今回はより条件を厳しくし、目に対して直交するように掃除してみた。その結果、ヘッド中央部分は、厳しい条件でもきれいに吸い込めたが、ヘッドの左右1cmほどは少し残ってしまっている。ただ実際の掃除ではヘッドをずらして部屋全体を掃除するので、実用上、粒子ゴミが残るということはないだろう。
マルチフロアモデルのクリーニング性能
次はヘッドに回転するブラシを備えたマルチフロアモデルで、同様のゴミを掃除してみた。
擬似花粉
こちらも公平を期して、通常ならフローリングの目に沿って掃除するところを、目に対して直交するように掃除した結果だ。電動で回転するブラシを内蔵するヘッドなので、目に詰まった花粉もしっかり掃除できる。
砂ゴミ
フローリングの目に入っている砂ゴミも完璧に吸い込んでくれるが、若干ゴミを前に押し出してしまう傾向にある。使う際には、縦方向と横方向から掃除するとよりきれいになるだろう。
なおフローリングの掃除機も同様だが、この掃除機はヘッドの後ろにブラシが付いているため、バックさせた場合はあまりゴミを吸い込まない点に注意すること。前後に掃除するのではなく、常にヘッドを前進させながら掃除するのがポイントだ。
フローリング専用モデルでのカーペットの掃除は注意!
おそらく購入時に、フローリング専用にするのか、カーペットやラグも掃除できるマルチフロアモデルにするか迷うだろう。そこで、どのぐらい性能差が出るかをテストしてみた。
ここでは5gの砂ゴミをカーペットに撒き、どれだけ回収できたかを調べている。
まずはマルチフロア用で掃除してみたところ、3.3gの砂ゴミを吸い込めた。回収率は66%だが、100%回収できるスティック掃除機はまずないので、まずまずの性能というところだ。
次にフローリング専用モデルで同様に実験してみたところ、回収できたのは0.9g。回収率にすると18%とかなり低い。さすがにマルチフロアの回転ブラシには対抗できないようだ。
ただ、ひとつ伝えておきたい点がある。最近の掃除機は、ほとんどがヘッドに電動ブラシを内蔵しており、かなり回収率が高くなっている。しかし数年前から女性に人気の「ブラシを持たないヘッドのスティック掃除機」は、この実験と同じような回収率になるという点だ。回転ブラシなしの他社モデルと比べると、見劣りする性能ではないという点に注意してほしい。
裸足でカーペットやラグの上で生活している人は、迷わずマルチフロアモデルを選ぼう。靴下やスリッパで暮らす場合は、カーペットのジャリジャリ感が気になることはないが、衛生面や健康面からマルチフロアを選びたい。どうしても「フローリング用の薄型ヘッドのデザインがいい」という場合は、その限りではない。
壁際のクリーニング性能テスト
ダイソンや国産メーカーの掃除機は、回転ブラシをできるだけヘッドの前方に配置して、壁際ゴミの取り残しを少なくしている。しかしEVOPWER SYSTEMのブラシはヘッド中央に配置され、フローリング専用モデルではブラシがないので、壁際のクリーニング性能に問題がないかをテストした。
フローリング専用モデル
壁に向かって掃除した場合は、取りこぼしなくシッカリ掃除ができた。ヘッドの先頭のすき間の形状がうまく計算されているようだ。
一方、壁に沿って掃除した場合は、僅かに壁際に取り残しがある。それ以上に残るのは壁際の前方だ。ここにはヘッドの車輪があるため床との間にゴミを吸い込むすき間を設けられず、このような残り方をしている。
とはいえ、コーナーの掃除の仕方を工夫すれば、ゴミを残さず吸い込める。たとえば写真の場合は、まず左から右へと壁に沿って掃除したあと、下から上に向かって壁際を掃除した。左右に向かって移動したゴミが吸い取れるので、仕上げに上下で移動したゴミを左右に動かして取れば完璧だ。
片手で使える便利さとお手入れの簡単さは抜群!
回転ブラシを持つ掃除機で、最近各社が競っているのが、髪の毛やペットの毛などの繊維ゴミの絡まりにくさだ。そこで、まずは髪の毛など、繊維状のゴミの絡まりを調べてみた。
フローリング専用モデルは、回転ブラシがないので絡まりはまったくなし。問題はマルチフロアモデルだ。こちらはブラシの植毛に吸い込んだ毛が深く絡まないように、青い樹脂製(おそらくナイロン)の硬いへらを組み合わせている。ほとんどの掃除機は樹脂性のヘラが、薄いゴムでできているため、使っているうちにゴムが切れたり、これは後述するが、柔らかいため吸い込んだ毛の支持にならなくなってしまうようだ。結果、ブラシ全体に髪の毛が絡み付いて、お手入れが大変になる。
また、ブラシが当たるヘッドの内部には、クシ状の突起がある。青い樹脂のヘラがは、中央にいくほど細く、植毛も少なくなっている。そのため、クシと樹脂のブラシが、絡まった毛や繊維を徐々に中央へ集めて吸い込むようになっている。構造こそ違うが、先日発売されたパナソニックのパワーコードレスと似たような原理を使っている。
掃除機の吸引力はONかOFFかが基本だが、壁際や汚れのひどい場所は、一時的にパワーを上げられるようになっている。それが本体下についている「パワーブーストスイッチ」だ。ハイパワーにすると駆動時間が短くなってしまうので。ここぞというときに使うといい。また通常掃除している分には、誤って押してしまうことはない位置に配置されている。
さらに便利なのは、もともとはハンディ掃除機のEVOPOWERシリーズだけに、スティックからハンディへの切り替えが片手でできる点。本体脇にある左右のスライドスイッチを引きながらスタンドから取り出すと、片手でハンディタイプに切り替わる。もし先端にすき間ノズルをつけたい場合は、そのままスタンドのノズルに本体をカチッと差し込めばいい。もちろんノズルの切り替えもスライドスイッチひとつでOK。これはかなり便利に使えるだろう。
ゴミ捨ても指先ひとつでOK。電源ボタン上にあるスライドスイッチを、吸引口側にスライドさせると、ダストボックスがパカン! と開き、ゴミをワンタッチで捨てられる。とくに何も謳っていないが、実はこのEVOPOWERはサイクロン式になっていて、大きなゴミは中央にためて、微粒子状のゴミは外側のカップに溜まるようになっている。どれだけ微粒子状のゴミが取れているかは、写真を見ればお分かりの通りだ。
このように微粒子ゴミがカップの外側に溜まるので、長く使っていると微粒子で曇ってカップの中が見えづらくなる。そんなときはダストボックスを本体から外して水洗いすればいい。ダストボックスユニットには、排気をキレイにするためのフィルターを備えているので、こちも水洗いOK。水洗いでも汚れが取れなくなったら、数百円でフィルター交換をしてもいい。
EVOPOWER SYSTEMはこんな人に使ってほしい!
シャークのEVOPOWER SYSTEMは、もともとハンディモデルの掃除機からスティックモデルに進化したので、駆動時間にクセがある。ハンディとして使うなら最大20分使えるが、スティックとして使うなら最大12分だ。とある女性向けメディアのアンケートによれば、毎日軽く掃除する人の所要時間は10~15分。ガッツリやる場合でも掃除機がけする時間は10分程度だという。
ライオンの調べでは、毎日掃除をする場合、主婦でも1人暮らしの20~30歳男女のいずれも掃除時間が15~30分という人が7割を占める。ライオン調べの掃除時間は、片付けやトイレ掃除なども含まれるので、実際に掃除機を使っている時間は10分程度と見ていいだろう。これらを考慮すると、EVOPOWER SYSTEMをオススメしたいのはこんな人だ。
EVOPOWER SYSTEMシリーズをオススメしたい人
・毎日ちょこちょこお掃除する人(ファミリー世帯含む)
・自室のちょいがけに使いたい人
したがってEVOPOER SYSTEMをオススメするのは、毎日掃除をする、もしくは自室のちょいがけをする人というのが前提だ。仕事が忙しく1週間に1回まとめて掃除をする人にとっては、駆動時間がギリギリ、もしくは足りないので、コンセントから電源を取るタイプ、もしくは長時間駆動できるスティック掃除機がいいだろう。
続いてマルチフロアモデルを選ぶか、フローリング専用モデルを選ぶかについてだ。
フローリング専用モデルをオススメする人
・部屋すべてがフローリングか畳
・キッチンカーペットなどは洗濯する人
・ハンディタイプをメインで使う人
・駆動時間に不安がある場合は、別途バッテリーを追加購入
フローリング専用モデルは、カーペットやラグのゴミが非常に苦手。それゆえ「うちは全部フローリング(畳含む)で敷物は一切ない」という場合、またキッチンカーペットやリビングの敷物は洗濯機で洗うという場合は、価格も安くスタイリッシュなフローリング専用モデルをオススメする。またハンディタイプとして使うのがメインという場合も同様だ。バッテリーが1本ということに心配を覚える場合は、別途もう1本購入(直販4,400円/税込)すればいいだろう。付属スタンドでは、バッテリーを2本同時に充電できるので不便さはまったくない。