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全固体電池の長寿命化へ、マクセルが容量劣化メカニズム解明

硫化物系全固体電池における容量劣化のメカニズムを解明した

マクセルは、硫化物系全固体電池における容量劣化のメカニズムを解明した。全固体電池は理論的に長寿命で寿命予測がしやすいと想定されているが、実際に長寿命化を実現するためには容量劣化メカニズムの解明とそれに基づく寿命予測が重要だという。

同社が、全固体電池の容量劣化メカニズムを詳細に分析した結果、材料自体はほとんど劣化せず、電極間の「SOC(State Of Charge)バランスずれ」が主な容量減少要因であることが判明したとする。

また、対称セルを用いた実験により、電極固有の副反応速度を定量化することに成功。全固体電池における副反応電流が液系電池より1桁以上低いことを実証したという。

同社は「全固体電池が本質的に寿命特性に優れるのは、電極での副反応電流が非常に低いことに起因することが明らかになりました」としている。

さらに、全固体電池においては、105℃においても液系電解液で観測されるクロストーク反応がみられず、副反応速度を見積もる場合に、材料固有の副反応電流のみを考慮するだけで良いことが分かったという。これにより、従来の液系リチウムイオン電池と比較し、寿命予測が容易になる可能性を示した。

同社は「本研究では全固体電池の容量劣化メカニズムを解明し、さらに電池容量の減少速度について速度論的解析を行っており、これら一連の成果は、全固体電池において定量的かつ理論的な寿命予測の道を拓くものです。今後、副反応生成物などが明らかになっていくことで、寿命予測にもとづいた安全性・信頼性に優れた全固体電池の設計が可能になることが期待されます」としている。

なお、本研究成果は、「Journal of Power Sources」に論文掲載されている。

同社は、本技術を応用し、150℃耐熱の全固体電池開発を継続するとともに、今後電気自動車などの次世代モビリティ、再生可能エネルギーの蓄電システム、インフラ監視用IoTセンサー電源、産業機器の長期メンテナンスフリー電源、過酷環境で使用される特殊機器などの分野に向け開発を進めていく考え。