家電製品レビュー
掃除機に革命、からまないブラシで髪やペットの毛にも強いパナソニック「パワーコードレス」
2020年8月7日 08:00
“掃除機あるある”ナンバーワンといったら何だろう? おそらく誰しもが声にするのは「ヘッドのブラシに絡まった髪の毛やペットの毛」だ。
ある人はあきらめ、ブラシがタダの棒と化すほど髪の毛が絡まった状態まで放置。またある人は、ハサミやカッター、リッパーなどを使い、チマチマと切り汚いものをつまむようにゴミ箱へ捨てているのではないだろうか?
しかし先日発売されたばかりの、パナソニックの「パワーコードレス MC-SBU840K/MC-SBU640K」は、髪の毛が絡まない。ペットの毛も絡まない。「毛がからみづらい」と謳っている掃除機は数あれど、「からまない」と言い切るのがパナソニック。価格はオープンプライスで、実売価格は、それぞれ90,000円前後/75,000円前後。
筆者はさらに「絶対」と付け加えたい。1カ月ずっと使っているが、なんとペットの毛も髪の毛も1本も絡んだことがないのだ!
ここ10年の掃除機の革命といえば、サイクロン掃除機の登場ぐらい。各メーカーは軽さやパワー、駆動時間を競っていたものの技術革新はなかった。しかしパワーコードレスは、掃除機に「革命を起こした」1台だ。
とにかく髪の毛やペットの毛が絡まないのに仰天する!
性能をうんぬん語るより、ムービーを見てもらえばこの掃除機が一発で欲しくなる(笑)。とくにペットと一緒に暮らしている方や、女系家族が多い家庭であれば。どちらにしても、普通の掃除機なら髪の毛やペットの毛が、ヘッドのブラシに絡みついてスゴいことになる。1週間もお手入れしなければ、ブラシは毛でがんじがらめになり、ブラシではなくタダの棒になってしまう。
パワーコードレスであれば、ペットの毛も、長い髪の毛に見たてた糸も、まったくブラシに絡むことなく、面白いようにダストカップに吸い込まれていく。さらに驚くべきことに、ヘッドを支える小さなローラーにもあまり毛が絡まない。こちらは「まったく」というほどではないが、明らかに他の掃除機より絡みづらくなっている。
これまでも「毛がからみづらい」という掃除機は数多くあった。筆者もペットのブリーダーさん向けの勉強会などで、毛が絡みづらいとして、ある他社の掃除機をオススメしていた。しかしパワーコードレスはそれを過去のものにしてしまったのだ。これほど毛が絡まないスティック掃除機は世界にない。
刮目せよ! メチャメチャ工夫されている「からまない」仕組み
ここからは、本当に毛が絡まないのか? と、にわかに信じられない方への説明だ。何しろヘッド周りの技術革新は、ブラシが付いてから53年ぶりになるのだ。
主にエンジニア系向けなので、「結果が分かれば、それでよし! 」という方は、次の節まで読み飛ばしてもらって構わない。
仕組み自体はものすごく簡単。実用新案ではなく特許申請できる、身近な物理の法則を使ったもの。まずスロー映像を見てほしい。
見てわかるのは、ブラシの形状だ。通常は1本の円柱にブラシがついている。しかしパワーコードレスは、先が細くなった円錐型のブラシが2本ついている。さらにそれぞれのブラシが左右独立して、中央部は完全に切り離されている。
こうすることで、ブラシに絡んだ髪の毛やペットの毛は、ブラシが回転すると、どんどん細い先端部に寄せ集められ、最後は2本のブラシの隙間から、吸引口に吸い込まれるようになっている。言われてみれば超簡単なしくみだが、53年間誰も思いつかなかったアイディアだ。
しかしアイディアだけでは製品にできないのが家電の難しいところ。先の写真を見るとヘッドの先端に、円錐のフチが当たるようになっている。それだけでなく円錐のフチは床面に対しても全面が当たっている。
そのため円錐の根元は、左右両端に上下左右に傾いて支持されている。これだけ大きな円錐のブラシを左右2cm程度のモーター部分で片支持しているのだ。フローリングならいいが、毛足の長いラグやじゅうたんも掃除するので、それぞれのブラシには相当の負荷がかかる。そのため、ブラシの中には軸ぶれしないように金属製のシャフトが埋め込まれているのだ。
さらに、ブラシを斜めに支持しなけらばならない。これまた設計が難しい上に、今まで以上に太いブラシなので負荷も大きく、根元で支持する強度も求められるのだ。何年か使っても壊れない、多少の衝撃でも壊れない製品にするには、「円錐ブラシだ! 」というアイディアだけでは製品化できないのだ。
また、毛を中央に寄せるには、もうひとつ大事な機構が必要。それがヘッドカバーについているテフロンテープ(パソコンのマウスの裏についている滑るシール)だ。床面とブラシの間にペットの毛や髪の毛が引っ張られ、徐々に中央に寄っていくが、スベリが良すぎると中央に寄らない場合がある。このテフロンテープは、これらを確実に中央に集めるためにアシストしているのだ。しかもグレーのテフロンテープが見えるとデザイン的にダサイのか、わざわざこれを隠すように黒いテープで隠している(笑)
掃除機に詳しい方は、「普通のブラシはフローリング用とカーペット用など何種類もの毛を植毛しているのに、パナソニックは1つだけ」と思われるだろう。実はこれにも理由がある。一般的なブラシは、フローリング用の柔らかいブラシを多めに植毛、ラグ用の固めのブラシを少なく植毛している。なかにはこれに、毛ゴミ用のゴムを入れたり、静電気防止用に銀の糸を入れたりと色々趣向を凝らしている。
ここで問題になるのは、ラグ用の固めのブラシ。植毛が少ないのでブラシのすき間に毛を巻き込んでしまいがちなのだ。簡単に言うとクシのような役割をしてしまい毛をどんどん巻き込む。
パナソニックの「からまないブラシ」は、色が同じブラシなので1種類の毛にしか見えないが、注意してブラシに触れてみると、ラグ用の固めのブラシを柔らかいフローリング用のブラシでサンドイッチしているのだ。しかも植毛の量のエラく多いのが分かるだろう。
こうすると硬い毛の間に毛が入り込まなくなる。しかも植毛の量が多いので、ペットの毛や髪の毛はブラシの奥に食い込まず、常に表面に張り付いている状態になるのだ。
そこですかさず、表面の毛をテフロンテープで押さえてやると、あれよあれよとブラシの表面を毛が移動していくというわけだ。しかも、パナソニック以外のブラシは斜めに植毛されているが、パナソニックはV字に植毛してあるので、ヘッドの端で捕らえたゴミを吸い込み口の中央に集める。コレ、実はパナソニックの特許。
次に、新しい「からまないブラシ」を見てみると、円錐形を斜めに取り付けたので、結果的にV字植毛と同じ効果を得られるのだ。スゲー!
円錐型のブラシなので、吸い込み中央部分はそのままにしておくと大きな空間ができてしまい、空気の流れが遅くなり真空度も悪くなる。そこで、ヘッド裏面の中央に凸部を作り、ヘッド上部には凹みを作ることで、しっかりゴミが吸い取れるように気流と気圧の調整もしているのだ。カバー中央部はブラシとブラシのすき間ができてしまうので、これを補うようにV字の羽を設けて、中央のゴミも取り逃さないように工夫されている。
このようにアイディアとエンジニアリングと工夫がめちゃくちゃ盛り込まれたのが「からまないブラシ」なのだ。
ブラシ用のモーターが2個に増えたこと、ブラシの直径が太くなり負荷が高くなったこと、さらにブラシを一定の力で押さえ糸ゴミを中央へ手繰り寄せる機能が増えたことで、以前のパワーコードレスに比べ若干運転時間が短くなっているのは、この際仕方ないというのがエンジニア視線の筆者の考え。むしろ数分しか短くならなかったのが不思議なぐらいだ。
以前のパワーコードレス用に「からまないブラシ」のみを販売して欲しいという声も多数あるだろう。しかしヘッドに回す電流が増えているので、残念ながら以前のモデルでは利用できない(互換性はない)。
掃除機としての性能もカーペットからフローリングまで
これまでの1本の棒状のブラシから、2本の円錐型のブラシへと大きく変化した。冒頭でも少し触れたが、これらの棒状ブラシは50年以上研究されつくした完成している技術。ブラシが変われば掃除性能が変わるのは当然だ。
しかも2本に分かれたブラシの間にはすき間があり、一見したところ、これまでのブラシのように何種類かの植毛を使ったブラシになっていない。
パナソニックを信用しないわけではないが、「毛がからまない」という一点突破で、掃除機本来の性能に問題がないかを検証してみた。まあ、検証している時点で「信用していないからだろ! 」という突っ込みはナシで。
砂ゴミ
掃除機をフローリングの溝に対して直角に当てた場合は、溝にやや残る感じだ。ヘッド中央が取りこぼすなどの偏りはとくに見られない。ただ当然だが、ブラシがない左右両端はゴミが残ってしまう。くまなくキレイにするには、直前のヘッドの軌跡に3cmほどオーバーラップさせるといいだろう。壁際に関しては文句なくキワのキワまで掃除できた。
食べこぼしなど
ペットのごはんやお菓子の食べこぼしなど、比較的大きい粒ゴミを試してみた。5mm~1cm角の大きなゴミは確実に吸い込めるが、壁際までつけると、ヘッドのカバーをくぐれないモノがあるようで、キワに少しだけゴミが残った。
毛や髪の毛ゴミ
多くのデモでは糸を「川」状に配置していたので、「二」や「×」の形にも配置してテストしてみた。 とくに横に並べた毛は、2本のブラシをまたぐので、きちんと性能を発揮できるのか怪しいようにみえるためだ。結果はブラシにまったく糸が絡むことなく、すべてダストカップに回収できた。
カーペット上のネコの毛と糸ゴミ
数週間前からパワーコードレスを借りて使っており、髪の毛やネコの毛が「絶対」というほど絡まないのが分かっているので、ここではかなり意地悪をしてみた。それが下の写真のじゅうたんだ。ペットの毛が生え変わる換毛期でもさすがにココまで毛が抜けない(笑)。そこに人の毛の代わりとして糸ゴミを大量に撒いてみた。
結果はパワーコードレスの圧勝。ブラシにはまったく毛が絡んでいなかった。ただ両脇についている布状のシールに毛がくっついていた。しかしこれは手ですぐに取れるし、ここに毛がからまったといってしまうのは、いささかクレーマーのようでタチが悪いので、これは絡まないとしていいだろう。
ただ何回もハードに使っていると、ブラシとブラシの間にネコの毛が毛玉になって溜まる! これは、ヘッドの奥に押し込んで掃除機のスイッチをONにするか、手でスポ! っと取れるので、絡まったとは言いづらい。
唯一絡んだのは、ヘッドについている小さな車輪だ。左右あるうちの片方だけに毛が詰まってしまったが、これも手でスルスルと取れるほど緩い絡みだったことを記しておこう。
ちょっと重いがフローリングで毎日お掃除するには十分の性能
スティック掃除機でいちばん気になる重さだが、軽さ重視でパワーがない機種に比べると、ずっしりと重さを感じるだろう。最初はグリップをしっかり持って支えていても、握る手の力が緩むと、重量が親指や人差し指の根元辺りに乗ってくる。さらにグリップの上部を持つと、スイッチが押しづらくなる。
ただ腕とスティック掃除機が一直線になるので、力は伝えやすく、毛足の長いじゅうたんでも押し進める力はわずかでいい。また見えないゴミがまだ床に残っている場合は、手元のランプが赤に、完全にキレイになると青く光るので、汚れ具合を把握できて便利だ。
先端ツールは従来機を踏襲したつくりで使いやすい。特筆すべきは、「からまないブラシ」についているペダルを踏むと、ヘッドが外れて隙間ブラシに早変わりする点。わざわざ座り込んでヘッドを外す必要もなく、先端ツールを付け替える必要もない。
さらにLEDライトが先を明るく照らしてくれるので(MC-SBU840Kのみ)、家具のすき間の掃除にピッタリ。また壁際に残ってしまったゴミも、最後に「からまないブラシ」を外して掃除すれば、キワの際までキレイになる。ヘッドに戻すときも足でひと踏みすれば、「からまないブラシ」が合体する。
もちろん延長管を外せば、ハンディタイプになるほか、複数のツールが付属する。
そして便利なスタンドも標準添付(MC-SBU840Kのみ)。差込式で簡単に組み立てられるスタンドは、充電用のプラグもつけられるようになっていて、スタンドに戻すと充電が可能。もし既存のスタンドを使う場合は、普通のACアダプターとして利用できる。
なおフル充電で掃除できる時間は、「自動」モードで18~30分、「ロング」で40分になる。とある掃除用具メーカーの調べでは、掃除の時間はおよそ30分というから、毎日掃除するご家庭ならバッテリー駆動時間は十分だ。ただ部屋が全面フローリングになっている場合だと、途中でバッテリー切れしてしまうので、8月下旬発売のコンセント式のキャニスタータイプを購入したほうがいいだろう。
お手入れもコレまでどおり簡単! バッテリー交換も自分でできるから安心!
ゴミ捨てはワンタッチでカップの底がパカッ! と開くので簡単。ただゴミ圧縮機構などを持っていないので、ペットの換毛期はダストカップのすき間にゴミがハマって取れないときもあるかも。そんなときは上部のフィルターを外すと、中心のサイクロン機構が取り出せるので、そっとゴミ箱の上で抜けば、簡単に捨てられる。
お手入れについては、フィルターも含めてダストカップがすべて水洗い可能だ。ただこれまでのように、ヘッドのブラシは取り外しができず洗えないので注意。ヘッドの汚れが気になる場合は、ヘッドのカバーを開くと、大きくブラシが露出するので絞った雑巾などで拭き取るといい。また万が一にも毛が絡んだら、カバーを開けて取ればいい。確率的には、本当に万が一だと思うが。
さらにバッテリーを交換するときには、修理扱いではなく、自分で交換できるのもポイント。フタをあけてバッテリーを交換し、コネクタを差し込むだけで終了。コネクタも正しい方向にしか差し込めないようになっているから、メカや電気に弱い人でも安全確実だ。
革命的なパワーコードレス! ペットオーナーのみなさん買い替えを!
その吸い込むパワーゆえ、少し重いというデメリットがあるものの、それ以上にペットの毛や髪の毛が絡まないというメリットの方が大きい。それが革命児! パナソニックの新しいパワーコードレス。
この掃除機は、こんな人たちにオススメしたい! いや買い替えを強く推奨したい!
- ペットと一緒に暮らすご家庭に
- 女性の多いご家庭や女性の一人暮らしに
- 女子寮や女子更衣室に備えの掃除機として
- ペットショップやアパレル製造の現場の掃除機として
- ほうき&ちり取りを使う理髪店、美容室の掃除機として
今回発表されたのは、バッテリー駆動のスティック掃除機だが、順次紙パックやサイクロンにも「からまないブラシ」を搭載予定だ。
業務用として使いたいのでバッテリー式よりコンセント式にしたい! という方には、人気殺到するかもしれないので、今から予約することをオススメする。マジで。