家電製品レビュー

街乗り向きな見た目でオフロードも走れる!! サイクルスポット初のe-bike「eVITA」レビュー

 近年、多くのメーカーが参入し、一気に選択肢が増えているe-bike。選べる車種が多いのは嬉しいことですが、どのモデルを選べばいいのか迷ってしまう人も少なくないでしょう。今回取り上げるのは、関東を中心に100店舗以上の販売店を展開するサイクルスポットが初めてリリースしたe-bike「eVITA(エヴィータ)」。どんなシーンを得意とするモデルなのか、いろいろなシチュエーションで乗ってみました。

メーカー名サイクルスポット
製品名eVITA
実売価格279,800円(税抜)

ドライブユニットはシマノSTEPS「E6180シリーズ」を搭載

 「eVITA」の搭載するドライブユニットは、シマノSTEPS「E6180シリーズ」。今年シマノが新たにリリースしたもので、3種類あるシマノSTEPSの中では中間グレードに当たります。トップグレードの「E8080シリーズ」が、MTBタイプなど本格的なスポーツモデルに搭載されるのに対して、街乗りやトレッキングに適したタイプ。アシスト時のモーター音が静かになっているのが特徴です。

ドライブユニットは、今年からシマノSTEPSのラインナップに加わった「E6180シリーズ」を搭載
バッテリー容量は36V-11.6Ah。「ECO」モードで約118km、「NORMAL」モードで約108km、「HIGH」モードで約84kmのアシスト走行が可能です
フレームはアルミ製で、ワイヤー類はフレーム内を通す方式を採用。車体重量は20.8kg

 車体の構成は、前後に27.5インチのタイヤを採用し、フロントには路面からのショックを吸収するサスペンションフォークを装備。ブレーキも前後油圧式のディスクブレーキを採用し、一見するとMTBのようなパーツ構成です。ただフレームをよく見ると、ドライブユニットの搭載位置がMTBにしては低めだったり、タイヤがブロックのないスリックタイプだったり、基本的にはシティライドを狙いに開発されたモデルであることが感じられます。

ホイール径は27.5インチ(650B)で、タイヤは47Cという太めのWTB製「Horizon Road Plus TCS」を装着
フロントサスペンションは100mmトラベルのSR SUNTOUR製「SF-19-XCR32」が付いています
前後とも油圧ディスクブレーキでシマノ製の「デオーレ」グレードを装備。MTBなどにも使われる制動力の高いもの
ブレーキレバーも同じく「デオーレ」グレード。グリップはヒダが付いていて握りやすい
変速ギアはリアのみで9速のシマノ「アルタス」コンポーネンツを使っています
金属製で大きめのMTBっぽいペダルを装備

 ただ、シティライド向けのクロスバイクとして考えると、一般的に採用される700Cと呼ばれるタイヤ径(29インチ相当)ではなく、27.5インチのタイヤを装着し、フロントに重量のかさむサスペンションを装備している点がやや気になります。少し装備が過剰なのではないか、と。そのあたりを実際の試乗で確かめたいと思います。

サドルはクッションが厚めで、長時間座っていてもお尻が痛くなりにくい
街中で乗る際に重宝するスタンドも標準で装備されている
バッテリーから給電されるCROPS製のヘッドライトも装備
ハンドルはMTBほど幅広ではないが、クロスバイクよりはちょっと広めな感じ。中央にディスプレイが装着される

舗装路での快適な乗り心地を実感

 まず平地の舗装路で乗ってみましたが、フィーリングは想像していた以上に良好。新型ドライブユニットのシマノSTEPS「E6180シリーズ」は、上位グレードの「E8080シリーズ」に比べると、ペダルを漕ぎ出した際に車体をグッと前に進めるようなトルクは抑え気味に感じますが、アシストフィーリングはとても自然です。

 e-bikeと従来の電動アシスト自転車の大きな違いは、発進時のアシストが唐突過ぎず、ペダルを踏んだ力に対してアシストがキレイに上乗せされていくようなフィーリングにありますが、シマノ製の新型だけあって「E6180シリーズ」も違和感がありません。さらに、アシスト時の「ウィーン」というモーター音がかなり静かになっているので、普通のクロスバイクに乗っているような感覚で走ることができました。

フラットな舗装路では、重心位置が低めで乗りやすい。アシストのフィーリングも好印象

 太い27.5インチのタイヤに対して、ネガティブさはまったく感じませんでした。むしろ、メリットのほうが大きいと思えるほど。e-bikeはアシストがあるため、発進時に使う力は少なくて済みますが、速度が10km/hを超えるとアシストが減っていくためにスピード維持はあまり得意ではありません。

 そのため、速度を維持しやすい外径の大きなタイヤと相性が良いのですが、「eVITA」のタイヤは太くてエアボリュームが大きいため、27.5インチではありますが外径は700Cタイヤと同等。一度転がり出してしまえば、速度を維持するのもラクなのです。エアボリュームが大きいと、路面の凹凸によるショックも吸収してくれるので、乗り心地も快適。人力だけで進む普通の自転車だと、太いタイヤは抵抗も大きいので脚に負担がかかってしまいますが、アシストがあるとその点も気になりません。太いタイヤの長所だけを享受できるのは、e-bikeだからこそのメリットでしょう。

ちょっとした未舗装路なら、問題なく走れてしまう感じ

 フロントサスペンション搭載による重さも、アシストがあるので特に感じることはありませんでした。逆に段差などを乗り越える際、ショックを吸収してくれるので、乗り心地の良さに貢献してくれていると感じるほど。サスペンションの動きを制限するロックアウト機構も付いているので、フラットな舗装路を走る際は、ロックしてしまえば余計に動いてしまうこともありません。

フロントサスペンションにはロックアウト機構を装備。反対側には減衰力の調整機構も
ロックアウト機構はハンドルの左手側のレバーで操作できるので、走行中でも操作可能

 ただ、ストロークが100mmもあるので、街乗りだけだとその性能をフルに引き出す場面がなくもったいない感じ。これだけの性能があれば、凹凸のあるオフロードも走れるはずです。ということで、未舗装路も走ってみよう!! と山のほうにも足を伸ばしてみることにしました。

オフロードも走れるので“探検ライド”が楽しい

 向かったのは関東近郊の峠道。舗装路で上って行くと、いくつか分岐して入って行ける林道がある場所です。初めて訪れるスポットでどんな道があるのかもよくわからず、ちょっとした探検気分です。走行距離にすると片道10kmちょっとですが、結構な上り坂もあるので水分と補給食はしっかり持って行きます。そのため、「eVITA」の車体に取り付けるタイプのポーチやバッグを取り付けてみました。

少し足を伸ばすので、ハンドルまわりとサドルにバッグを装着。このスタイルも結構似合う
ハンドルまわりにはドリンクボトルなどを入れるポーチと、スマホホルダーを付ける
大きめのサドルバッグには防寒ウェアを入れ、休憩時に使うエアマットを括り付ける
試乗車にはありませんでしたが、市販車には着脱可能なCROPS製のキーロックを搭載。キーはバッテリー着脱と兼用

 まずは川沿いの気持ちいい田舎道を走って、山への上り口へ向かいます。バッグを取り付けても車体は重くなることもなく、漕ぎ心地は軽快。ちょっとひんやりしてきた風が気持ちいい。

秋風の気持ちいい季節だったので、こういう道を流すだけでも楽しい

 そして、山に入って行くと予想どおり、結構急な上り坂が続きます。台風の影響か、路面には落ち葉や枝がかなり落ちていて、それなりに荒れています。でも、太めのタイヤとフロントサスペンションのおかげで不安なく走ることができました。こういう道に来ると、MTBのような装備が役に立ちますね。

つづら折れの道を折り返しながら上って行く。写真ではわかりづらいですが、結構な斜度です
路面は舗装路ですが、かなり落ち葉や木の枝があってオフロードに近い状態
写真の上のほうに見えるガードレールのところまで上って行きます。e-bikeでなければ到達できなそうな高さ

 平坦な道ではあまり気にならなかった抑え気味のアシストも、延々と続く上り坂の後半になってくると「もう少し強いと助かるな……」と感じるようになりました。同時に試乗したわけではないため不確かですが、MTBタイプのe-bikeなどに搭載されるシマノSTEPS「E8080シリーズ」のドライブユニットは、もう少し踏み始めのアシストが強かったような……。とはいえ、アシストがなければ絶対に難しいだろう激坂続きの道のりを上り切り、山頂付近まで辿り着くことができました。

下から見えたガードレールのところまで上ってきました。上まで来たからこそ見える絶景に感動!!

 そして、山頂付近で林道につながる分岐を発見! 早速、オフロードでの走破性を試すべく入って行きます。もともとクルマも走っていた道のようですが、長らく通行がないようで草も伸びて路面もかなり荒れています。ただ、そんな道でも「eVITA」はスイスイと走って行くことができました。というのも、このモデルが採用するWTBの「Horizon」というタイヤは、本格的なグラベルバイク(オフロードも走れるドロップハンドルのスポーツ自転車)にも採用されているもの。一見するとスリックタイヤのようですが、太さとしなやかさを活かしてオフロードでも走れる走破性を持っているのです。

山頂近くで見つけた林道に分け入って行く。太いタイヤのおかげで問題なく走れてしまった
フロントサスペンションのおかげで多少の段差や下り斜面もラクにこなせる

 山頂から逆側に少し下ったところで、2本目の林道に出会います。結構クルマも走っているようですが、土の路面はそれなりに荒れていて、斜度も急な道です。今度は同行した友人に乗ってもらいましたが、荒れた急角度の道をラクラク上り切っていました。

「こんなスイスイ上れるなんて信じられない!!」といいながら、荒れた坂道を上って行く友人

 本当はこのあたりで引き返す予定だったのですが、さらに林道を探して、もう少し反対側に下ってみることにしました。普通の自転車だと、帰りにもう一度上る体力を心配して、なかなか足を伸ばせないのですが、e-bikeだと体力を温存できるので「もっと行ってみよう」という気持ちにさせられます。

 下りの道はさらに荒れていたのですが、サスペンションと太めのタイヤのおかげで怖さは感じません。残念ながら、それ以上の林道への入口は見つけられませんでしたが、まだ見ぬ道を探す“探検ライド”を満喫できました。

路面にいろいろなものが落ちている下り斜面も恐怖感なく降りて来られます。ハンドル幅もちょうどいい感じ
ブロックのないスリックタイヤですが、しなやかな設計のため、凹凸を絶妙にいなしてくれます

 帰り道では、山の元いた側に通じるトンネルを発見。ルートとしては遠回りですが、一番激しい坂は上らずに元の場所に戻ることができました。少し走り足りないので川沿いをサイクリングしたり、結局走行距離は30kmちょっと。それでもバッテリーは半分以上残っていました。

少し遠回りして川沿いをサイクリング。アシストがあると体力に余裕ができるので、こうした寄り道もできます
川沿いで見かけた橋の上での1枚。普通の自転車だと1日がかりの行程を半日ほどで回れます

 舗装路でのサイクリングと、未舗装路も含めた山道を上る“探検ライド”で使用してみましたが、「eVITA」はどちらも対応できる懐の広いモデルでした。普段は通勤や通学などで使用し、休日にはちょっと郊外の里山まで足を伸ばしてみる。そんな使い方がピッタリきそうですね。

 街乗りだけで使ってもまったく問題ありませんが、せっかくフロントサスペンションやオフロードも走れる太いタイヤが付いているので、せっかくなら河原の未舗装路や農道なども走ってみてほしいところです。ちなみに、同行した友人はよっぽど楽しかったのか、帰ってきてからも「また行こう!! 今度はキャンプ道具を持って行って、河原でキャンプしよう!!」と言っています。確かにそれも楽しそうです。いつもよりもちょっと足を伸ばす冒険にも、e-bikeなら気軽に出かけることができるので、ぜひみなさんも体験してみてください。

増谷茂樹

乗り物ライター 1975年生まれ。自転車・オートバイ・クルマなどタイヤが付いている乗り物なら何でも好きだが、自転車はどちらかというと土の上を走るのが好み。e-bikeという言葉が一般的になる前から電動アシスト自転車を取材してきたほか、電気自動車や電動オートバイについても追いかけている。