家電製品レビュー

さっと持ち運んでいつでも快適、ダイソンのパーソナル空気清浄ファン「Dyson Pure Cool Me」

 「Dyson Pure Cool Me」は、コンパクトで持ち運びできるパーソナルタイプの空気清浄機能付きファン。リビングにドンッと置いて部屋全体の空気を清浄するものではなく、寝室や玄関、子ども部屋などのスモールスペースで有効活用できるアイテムだ。持ち歩いてさっと移動できるというのが大きなメリットだろう。実際に長期にわたって使い込んでみたので、その使い勝手をレポートしたい。

ダイソン「Dyson Pure Cool Me」
メーカー名ダイソン
製品名Dyson Pure Cool Me
実売価格44,000円(税込)

 まず本機の概要を紹介しよう。ダイソンがはじめてパーソナル用と銘打った空気清浄機付きファンで、高さは約40cm、直径は約24.5cm、重さは2.8kgとコンパクト。リビングに置くとソファの足下にちょこんとおさまるサイズだし、ベッドサイドや机の上に置いても邪魔にならない大きさだ。重量の面でも、さっと持ち運んでテーブルの上に手軽に載せられる軽さ。空気清浄能力を示す適用床面積は7畳(清浄時間は30分)だ。

 デザインも従来の「羽根のない扇風機」系モデルとは異なっている。フィルターを内蔵する円柱の本体上に、球体風のドーム状ヘッドを搭載しており、スターウォーズのR2-D2を連想させるようなユニークなフォルム。円柱部分の周囲360度、全方向から空気を吸い込んで、内部フィルターで清浄した空気を球体部分から送り出す仕組みになっている。

 清浄された空気は、ドームのすき間から出るように設計されている。これは新開発の「Dyson Core Flowテクノロジー」で、ドームの凸面に沿って風を押し出し、ドーム前面で合流させることによって、集中したまっすぐな風を送り出せるという。

同社の従来のファンとは異なるデザインと仕組みで、ドームのすき間から風が送り出される
新開発の「Dyson Core Flowテクノロジー」は、ドーム凸面で合流する際に生じる圧力を利用して高出力の風を作り出すという

 風量調整は1~10まで細かくできるが、空気の汚れを検知して自動的に風量を変更するといった自動モードは搭載されていない。また本体の下部には液晶を搭載しているが、表示されるのは風量の強さやフィルター情報、スリープの時間程度だ。付属のリモコンでできることは、電源オン/オフ、風量調整、フィルター情報表示、左右首振り、スリープ設定だけと最小限。

 同社の最近のモデルのようにアプリに対応しているといったこともない。製品としての機能はシンプルで、あくまでも空気清浄機能が付いたファンだ。ただ、この潔さが、軽量で持ち運んで使えるという使い勝手の良さにもつながっている。

リモコンは本体正面にマグネットで付くようになっている。設置面積が少ないためか、脱着がうまくできないことがあった
リモコンでできることは最小限

送風能力と静音性の高さは魅力

 まずリビングの床に置いて使ってみたところ、コンパクトサイズの割に送風能力が高いことに気づいた。Dyson Core Flowテクノロジーのおかげか、風が拡散せずにまっすぐ飛んでいくように思える。それでいて風自体に若干のゆらぎというか、強弱のリズムを感じる。そこで風の噴出口に紙テープを貼り付けて、風の動きを視覚化してみた。

送風口に紙テープをつけて風の動きを視覚化した。風量が一定ではなく、ゆらぎがある

 動画を見ると分かるように風はずっと単調に吹き続けているわけではなく、微妙にゆらいでいるため、至近距離に置いたときもやわらかさを感じさせて、一定の風が当たり続けるような不快さがない。

 それでいて噴出口の外側には広がらずに送風されるので、風量1の微弱な風でも適切な風量を感じる。風量を上げていくと、かなりの風量で遠くまで強く送風されるので、サーキュレーターとしても十分な機能を持つ。

 真ん中のドーム部分を手でスライドさせることで、風向きを上下方向にコントロールできる。奥側にスライドさせると上方に、手前側にスライドさせると下方向に送風できる。上下の調整は45度までで、真上や真下の方向に風を送ることはできない。

 ピンポイントに風を送れば扇風機のように使えるし、上に向けて送り出せばサーキュレーターのようにも使える。左右方向は70度の首振り機能を持っているので、部屋中に清浄した空気を循環させることもできる。

送風口に風向きの上下を示す表示がある
ドーム部分を手でスライドして風向きを変える
下向きにするとまっすぐな風を送れるので扇風機的に
上向きにするとサーキュレーター的な使い方が可能

 パーソナル向けに設計されており、約20cmの距離での音量・音質テストを重ねるなど、静音性にも配慮されている。モーターからの雑音は、本体底部の音響減衰用防音材によって吸収されるという。たしかに1や2の風量なら、本体を耳元に置いてもほとんど気にならない。就寝時に静かな寝室で使っても、ほとんど気づかないくらいで利用できるだろう。

 試しにスマホの簡易音量測定アプリを使って、使用時の音量を測定してみた。1?2は数値がほぼ変わらず、3?6も微増、7以上になるとそれなりに増えるが、一般的な空気清浄機の強運転と同程度だろう。

風量による音量の違い
風量の強さオフ12345678910
音量(dB)3233353535363840424345

 風量によってどれくらいの音になるかを示すために、約1m離れた位置にカメラを設置して動画にしてみた。風量が弱いときの音の静かさが分かると思う。7以上になると音がだいぶ大きくなって、風量が強くなり風切り音も入る。

 実際に6畳の寝室で、ベッドから約1mの距離に置いて使ってみた。就寝時の静かな環境で風量2で使用すると、多少風が吹き出している音は聞こえてくるという印象だ。数日間使ってみると、起床時にほこりっぽさを感じないすっきり感があった。

 今まで特にほこりっぽさを意識したことはなかったのだが、数日間寝室で本機を使ってみると「あれ、なんだか呼吸器系が楽な感じがする」と起床時に思った。喉のざらざら感がない、という感じだろうか。わが家の寝室は思ったよりほこりっぽかったのだと気づいた。

音の大きさの違いとともに、音質にも注目してほしい。空気清浄機としてはかなり静かな方だろう
ベッドサイドにこれくらいの至近距離で置いても音は気にならなかった。起き抜けに喉のざらざら感がなく快適だった

 空気清浄の肝となるフィルターは、グラスHEPAフィルターで、PM0.1レベルの微細な粒子を99.95%除去するという。HEPAフィルターの内側には、活性炭フィルターが採用され、VOC(揮発性有機化合物)やアンモニアなどの有毒ガスやにおいを除去する。

 フィルター寿命は、1日12時間使用する場合で約1年。交換用フィルターは約6,000円だ。フィルターの交換は簡単で、ドーム部分の左右側面にあるボタンを押して持ち上げるとドーム部分が取れて、そのまま本体のフィルターを持ち上げれば外せる。フィルターを交換するだけなので手入れの面倒はない。

 空気清浄機のフィルターについては、メンテナンスなしで半年?1年程度で交換するタイプと、メンテナンスが必要になるものの長期間使えるタイプに分かれるが、ダイソンは前者の方式。ランニングコストはかかるものの、手入れの必要がなく性能をキープできる。

 後者の方式はメンテナンスをしていても初期の性能が維持できるわけではなく、長期間使ううちに性能が落ちていく(日本工業会の規格では50%の能力になった時点を交換の目安としている)。性能を重視するなら前者を選択するか、後者でも早めに交換することがベターだろう。

左右にあるボタンを押して引き上げると本体からドーム部分を取り外せる
本体からフィルターを取り出して入れ替えるだけ
フィルターの内側の活性炭フィルターがにおいを吸着する
リモコンでフィルター情報ボタンを押すと液晶にフィルターの汚れ度合いが表示される

さまざまな場所に持ち運んで活用できる

 コンパクトなサイズだけに、空気の汚れやにおいの気になるところにピンポイントで設置するのが良いだろう。たとえば玄関は、ドアをあけた時に各家庭のにおいを感じることもあるだけに、においが気になる場所だ。また外出先からほこりや花粉などを持ち込むことも多いので、玄関への設置は効果的だ。

サイズ感やデザイン的にも、玄関のシューズボックスの上に置いても違和感がなかった

 家庭内でにおいの気になる場所といえばキッチンもそうだ。調理のにおいが換気扇で排出しきれずに部屋に充満することがある。本機なら調理の際にちょっと持ち運んでキッチンに置ける。調理カウンターに載せて換気扇へ向けて送風することで、換気扇をサポートできる。また調理中にキッチンの温度が高くなったときでも、送風で快適に過ごせる。

 もちろんカレーなどの強いにおいの調理をしているときに、すぐににおいが消えるというわけではないが、部屋に残るにおいは明らかに軽減された。揚げ物をして油のにおいが気になる時に、夜に運転させておくと朝には改善されていた。コンパクトサイズながら、空気の汚れやにおいの除去には効果を実感できた。

軽量でコンパクトなので、キッチンにさっと持ち運んでカウンターの上に載せて使える

 自宅の仕事部屋には、パソコンが数台と液晶ディスプレイが3台並んでいる。これらが常時点灯しているので、部屋の中はかなり温度が高くなり、夏は冷房をかけていても顔の周りは温風が漂っているという状態になる。逆に冬場は暖房が効いているものの、上方ばかりが暖かくなり、足元が冷え冷えということも少なくない。したがって部屋の空気を対流させるサーキュレーターは、この仕事部屋では必須アイテム。

 今回、いつも床に置いているサーキュレーターの代わりに、机の上に本機を置いてみた。目前にある液晶ディスプレイからの熱がいちばん気になるので、作業を行なうすぐ横に設置してみた。本機と顔の距離は約50cmといったところだが、風量1だと音が気になることはまったくなかった。風量2だと音に気づくが、音量で言えばパソコンのファン音のほうが大きい。風向きを上にして、左右の首振りもオンにしておくと、いつもの液晶ディスプレイからの熱気を感じなくなった。

机上においてみると液晶ディスプレイの熱気を感じなくなって効果大

 気温が高く暑いときには、ファンの風を直接自分のほうに向けて使ってみたりもした。このときの風は顔に直接当たるだけに、ほこりなどにまみれた風でなく、空気清浄されていると思うとすがすがしさを感じる。明らかに気分的なものだが、安心してあびられる風という印象は心理的に大きかった。

 デスク上に置いた環境で1カ月あまり使ってみたが、今までなら液晶ディスプレイの上に積もっていたはずのほこりが目立たなくなった。サーキュレーターとして使っていたが、そこに空気清浄機能がついているという利点は確かに感じられた。

 またリビングルームなどでも、空調や空気清浄機の補助に使うことができる。たとえば暖房時に暖気が上にたまってよどんでしまうときに、棚の上などに置いて空気を環流させれば解消する。テーブルで焼き肉をするときなども、においや煙が天井にたまらないように、サーキュレーターとして使うと効果的だ。

思いついたときにさっと棚の上に設置できるのもコンパクトで軽量だからこそ

 本機の発表会では、書斎や寝室、洗面所などさまざまな場所で効果的、といったプレゼンテーションが行なわれていた。そのときは「そりゃそうだろうけど、数万円の機器をそんなにたくさん用意できない」と思った。だが実際に使ってみると、キッチンや寝室など必要な時に、必要な場所に持っていけばいいとわかった。それができるのもコンパクトで、軽量だからこそ。

 もちろん自動風量調整機能などがあればもっと使い勝手がよく、上下方向の風向きもリモコンで変更できれば便利だろう。だがシンプルな機能に限定し、基本性能の高さと機動力を重視したことで、幅広い使い方ができるようになっているように感じる。このあたりは機能と機動力のバランスなのだろう。

 空気清浄機は使っているが、今回紹介したようにさまざまな用途で活用したいといった家庭、あるいはワンルームや1DKなどに住んでいる独身世帯などにオススメのモデルだ。

栗山 琢宏