家電製品レビュー

そばに置きたくなるリモコンが超便利! 1年中快適な空調を実現する新生「ノクリア」Xシリーズ

 表参道にアトリエを構えた4年半前からずっと愛用している富士通ゼネラルのエアコン「ノクリア」Xシリーズ。広尾に移転してからも後継モデルを設置して使ってきましたが、このたび3年ぶりにエアコンをチェンジ。デザインを一新し、AIまで搭載された2019年モデルの「ノクリア」Xがやってきました。その使用感はいかに? 自宅では2018年モデルを息子が愛用中。歴代のXシリーズを知り尽くした立場だからわかる、その進化と使い心地をご紹介します。

メーカー名富士通ゼネラル
製品名「ノクリア」Xシリーズ
型番AS-X56J2
適用畳数冷房:15~23畳/暖房:15~18畳
実売価格(編集部調べ)276,920円(税込)

丸みがあってやさしい雰囲気の室内機と使い勝手抜群のノクリアBluetoothリモコン

 他社にはないサイドファンの動きから「ガンダムエアコン」の異名をとってきたXシリーズですが、作り出す気流はとてもやさしくて"女性や高齢者に喜ばれるエアコン"と言い切ってもいいほど。それなのに何だか男性向けの印象で本当の魅力が伝わりにくく、損をしているなあと思っていました。

 ところが、今回のXシリーズはラウンドフォルムを採用していて、そのイメージを一新。運転していない時はコンパクトに見えますし、運転時もサイドファンが目立ち過ぎず、とてもやさし気な感じです。サイドファン側面にパンチングされたドットのデザインも外側に向かうほど小さくなっていて美しく、インテリア性がぐっと高まっています。これなら、冷房時は高原にいるような心地よさ、暖房時には床暖房のような温もりを届けてくれるその機能性とマッチして、心惹かれる人も多いのではないでしょうか。

本体の前面もサイドファンも丸みを帯びたデザインに一新。とてもやわらかな印象を受ける
正面から見たところ。前に突き出している点は変わらないがコンパクトに見える
省エネ性能に優れるため室外機はかなり大きい

 そして何よりいいなと思ったのが、こちらもラウンドデザインを採用した新機軸のリモコンです。手で持ってボタンを押して使うのではなく、テーブルの上など身近に置いて使う仕様で手をかざしたり、触れるだけで操作できるのが特徴。赤外線リモコンではなく、Bluetooth通信方式なのでエアコンの方に向ける必要もなく、室内機から10m以内であればどこでも使えます。とはいえ、リモコンに温湿度センサーが搭載され、室内機と床温度と合わせて3つのセンサーで温度を見ていくため、使う人のすぐそばに置いておくのが理想的。

ラウンドデザインを採用し、手で持つのではなくテーブルの上など身近に置いて使う新しいコンセプトのリモコン。リモコンに温湿度センサーも搭載されている
手をかざしたり、触れるだけで操作できるのが特徴。オンオフは手を左右に一往復するだけで操作可能になっている

 手を左右に一往復するだけでオンオフできるのも便利ですが、手をかざすと室内の温度・湿度が表示され、今どんな運転をしているのかを目で確認できるのがとてもわかりやすくていいのです。有機ELディスプレイを採用していて斜め方向から見てもくっきりと見やすく、これまでのようにリモコンの蓋を開けて細かな設定をするということもないので、どんどん使ってみたくなる。設定が難しすぎて、宝の持ち腐れになるという心配がないのが素晴らしいと思います。

手をかざすと室内の温度・湿度が表示される。家のデザインがわかりやすい
室内の温度・湿度の表示の後は、今の運転状況が表示される。青いラインは冷房運転を示しており、「冷房26度で運転中」ということ

サイドファンが作り出すやさしい気流で除湿も冷房も快適

 まだ夏本番には時間があるので、この時期活躍しているのが除湿運転。室温自体は高くないもののジメジメした湿気を取り去って少しでもカラッとした室内で過ごしたいものです。除湿には弱冷房除湿と再熱除湿の2通りありますが、寒いのが苦手なので「再熱除湿」に設定しています。これは、部屋の湿った空気をエアコン内部に取り込み、それを暖めることで室温の低下を防ぐとともに、温度差を作り出して除湿量をアップさせる方式。その後、熱交換器で空気を冷やして湿気をカットし、冷たい風と暖かい風を織り交ぜて室温に近い温度の空気を作り出します。高気密、高断熱の住宅では早く設定温度にまで冷えるぶん、湿気を取り切れないことがあり、「再熱除湿」はそんなときにもおすすめ。

除湿運転中の様子

 たとえば、室温24℃で湿度62%の時に、除湿の強モードで運転を始めると、わずか30分~40分程度で湿度が52%まで下がったのに室温は24℃のまま……といった具合で快適そのもの。弱冷房の除湿に比べるとやや消費電力は上がりますが、快適な空間のためにエアコンを使っているのですから、そのあたりは了解済み。我慢をすることなく上手に使いこなしたいなと思います。

この日のアトリエの室温は24℃、湿度62%と気温は低めだがジメジメとしていた
除湿運転開始後30~40分程度で室温は変わらず、湿度だけが10%下がって快適な状態に
除湿モードをリモコンで設定できる
冷えすぎるのが苦手なため、「再熱除湿」を選択中。寒くならずに除湿できるので快適
なるべく早く除湿をしたかったので「強」モードで除湿

 30℃に近いような暑い日の冷房運転では、風量を「快適おまかせ気流」に設定するのがポイント。左右のサイドファンと本体の風量や風向きを自分で細かく設定することもできるのですが、慣れるまではなかなか難しいもの。まずは「快適おまかせ気流」を選び、風に当たるのが好きでないなら標準モード、風感があったほうがいいなら涼感プラスを選択すればOK。

 アトリエでは室温が設定温度になって安定してくるとサイドファンが上向きになり、冷気が体に直接当たらないやさしい冷房になる「快適おまかせ気流・標準」で運転していますが、来たばかりのお客様が涼みたいという場合には「涼感プラス」にするとサイドファンが下向きのままになるので、温度設定を変えなくても涼しさを感じやすくなります。こうしたちょっとした設定の変更も手元にあるリモコンで簡単にできるのがいいですよね。

冷房運転中のXシリーズ。運転開始直後は冷気は直接当てず室温の優しい風を送ることで、肌寒さを抑えて涼しさを体感できるようにサイドファンの向きは下向きになっている
「快適おまかせ気流・標準」での冷房運転時には、室温が設定温度になって安定してくるとサイドファンが上向きになり、風が体に直接当たらないやさしい冷房になる
気流の設定が難しい場合は、「快適おまかせ気流」にしておけば間違いない
アトリエでは「快適おまかせ気流・標準」で運転している。暑がりの人や来客が来たばかりで涼みたいという場合には「涼感プラス」にするとサイドファンが下向きのままになるので、温度設定を変えなくても涼しさを感じやすい

窓を開けて使いたい春・秋の送風運転

 歴代のXシリーズで愛用しているのが送風運転です。エアコンの機種によっては室内機の乾燥運転のためにのみ送風運転を使用して、普段は送風モードでは運転できないものもあるようですが、サイドファンがあるXシリーズの気流制御が大いに発揮できるのが、この送風運転。冷暖房をする必要のない春や秋などに窓を開けて送風運転をすると新鮮な外気を採り入れながら、外に風が吹いていないときでも室内にそよそよと心地のいい風が吹き、高原にいるようなさわやかさを体感できるのです。

 この時には、左右サイドファンの設定を「自然風」にするのがおすすめ。もしも風感が強いと思われるなら「自然風弱め」も選べます。窓が1か所しかなくて風が抜けないという時や、ドアを閉めたままの時でも外気を取り込めるのは本当に便利。新モデルではサイドファンの吹き出し口がやや小さくなったような印象を受けたので、「もしかして以前のモデルのほうが快適性が高いのでは?」と心配になったりもしたのですが、決してそんなことはなく、デュアルブラスター(サイドファン)の威力は健在です。

前のモデルの時からお気に入りの「送風運転」。冷暖房をする必要のない春や秋などに窓を開けて送風運転をすると新鮮な外気を採り入れながら、室内にそよそよと心地のいい風が吹き、高原にいるようなさわやかさを体感できる
送風運転時は左右サイドファンの設定を「自然風」にするのがおすすめ

使うほどに学習して使う人の好みに近づくAI機能と、遠隔操作もOKのスマホ連携

 新生「ノクリア」Xシリーズの最大の特徴は見た目ではわかりませんが、AI機能が搭載されていること。室温、湿度、リモコンの操作履歴などから、使う人の好みの温熱環境を予測して調整したり、タイマー設定時にムダのない立ち上げをするのだといいます。そのため、設定温度27℃で冷房運転していたとして、「なんだか暑いかも」と感じたら、リモコンで温度設定を26℃に下げるなど、こまめに温度調整をしていくことが大切なのですよね。

 体感に合わせて設定温度を上げたり下げたりしているのですが、自宅と違い、出張その他で留守にすることも多く、まだ使用頻度が少なすぎるようでAIによる体感温度予測は行なわれた形跡がありませんが、この夏のうちにどのように変化していくのかを楽しみにしています。

Xシリーズの新モデルの最大の特徴は「AI機能」
購入時の段階で「AI機能」は「入」になっているので特に設定しなくても学習機能は働くのでご安心を

 また、室内機に無線LANアダプターが内蔵されているため、富士通ゼネラルのスマートフォン専用アプリ「どこでもエアコン」で遠隔操作もできます。アトリエに到着する前に電車の中で室温や湿度を確認して、冷房や除湿運転を開始しておくのがいつもの使い方。天気予報のデータに応じて「今日の帰宅時間帯は暑くなりそうです。入タイマーを設定しませんか」というリコメンドもスマホのプッシュ通知でしてくれるので便利。このアプリ内には「AI履歴」という項目も新たに加わっていて、どんな運転変更をしたのか(温度設定など)が確認できるようでここに表示される日を心待ちにしています。

 ちなみにスマートスピーカー(Amazon EchoおよびGoogle Home)にも対応していて、アトリエではAmazon Echoと連携させていますが、リモコンの使い勝手がとてもいいので、ほとんど音声操作をしなくなってしまいました。遠隔操作はスマートフォンで、アトリエでの操作はそばにスタンバイしているリモコンでといった具合です。

 さらに「アップデート機能」では、新機能を追加したりAI精度をアップするほか、システムを最適化してくれるのだそう。購入後でも製品をバージョンアップしてくれるのは、ユーザーには嬉しいところですね。

エアコンの室内機に無線LANアダプターが内蔵されているため、富士通ゼネラルのスマホ用アプリ「どこでもエアコン」で遠隔操作が可能
登録しているエアコンを選択
冷房、暖房、除湿、自動、送風の中から運転モードを選ぶ
天気予報のデータに応じて「今日の帰宅時間帯は暑くなりそうです。入タイマーを設定しませんか」というリコメンドも。アプリの画面からすぐにタイマー設定もできるようになっている
現在の運転状況や湿度、外気温、電気代などをアプリで確認できるほか、「AI履歴」の項目も加わっているのがわかる。残念ながら、まだ使用回数が少なすぎるため、AIによる運転変更などは行なわれていない様子
大切なお手入れ設定もリモコンで

熱交換器の加熱除菌&内部クリーン、フィルター自動おそうじでお手入れも万全

 2018年モデルから搭載されている熱交換器の加熱除菌は、冷房や除湿運転によって発生した水滴を55℃以上に加熱してカビ菌や細菌までを除去するという心強い機能。新モデルでは運転時間が約半分の50分に短縮されていて、ずいぶん使いやすくなっています。

 基本的には、冷房・除湿運転後の送風運転と短い暖房運転をセットで約90分間行なう内部クリーン運転機能を「オン」にしているので、これから外出する(もしくは帰宅する)というタイミングの時にのみリモコン操作で「加熱除菌」をするといったお手入れ方法にしていますが、本当は毎回加熱除菌したほうがいいのかしらとそのあたりが少し悩ましいところです。

 在室している時にこの機能を使うと室内の温度が上がるため、自動でオンにするのは難しいのだと思いますが、不在検知と合わせて加熱除菌を遠隔操作できたり、促したりなどしてくれるといいのになと思います。

購入時には「自動内部クリーン」運転は「切」設定になっているので「入」に設定し直した
自動内部クリーン運転中の様子。冷房・除湿運転の後に毎回送風運転と短い暖房運転を約90分間行なう
リモコンにも「内部クリーン運転中」と表示されるので、何をしているのかわからない……ということがなくて安心。内部クリーン運転を中止にしたい時にも、右下の「●」ボタンを押すだけで止められるのが便利
Xシリーズならではの「加熱除菌」も、冷房・除湿運転後に外出するタイミングの時にはぜひ使いたい機能
従来よりも加熱除菌運転の時間が短くなり、約50分で終了する
加熱除菌運転中の様子

 「フィルター自動おそうじ機能」のパイオニアであるノクリア、このモデルにももちろん搭載されています。購入時の設定では40時間運転後に1回、エアフィルターの掃除を自動で行なうことになっていますが、ホコリが多いなど部屋の状況に応じて「間隔短め(24時間に1回)」「間隔長め(64時間に1回)」に設定することも。最近はずっとエアコンをつけっぱなしにしている家庭も多くなっているようですが、取説によればその場合も64時間を経過した時点でいったん運転を止めてフィルターの掃除をし、終了後に運転を再開するのだとのこと。これなら安心ですね。

フィルターのおそうじ機能も搭載されている。購入時の設定では40時間運転後に1回、エアフィルターの掃除を自動で行なうことになっている
強制的に(すぐに)フィルター掃除をすることも可能。リモコンで確認すると約7分で終わると表示された
フィルターの自動おそうじ中の音はほとんど気にならない程度

わかりやすい取扱説明書が秀逸!老若男女誰にでも使いこなせるスマートエアコン

 まだ1か月と少ししか使用していないのでAI機能については未知な部分がありますが、やさしいデザインになったXシリーズはこれまで通りに心地よい気流で快適な空調を実現し、お手入れの点などではぐんとパワーアップしているなと感じました。何より、新しいコンセプトのリモコンが使いやすく、AIの学習のためにこまめに調整していく操作がしやすいのが素敵です。

 また付属している取扱説明書がわかりやすく、シーン別の使い方を示したり、辞書のように引きやすい体裁にしていたりと"読みたくなるトリセツ"にかなり近づいていると思いました。リモコンと合わせ、機械に疎い女性や高齢者でも抵抗なく使えて、自分の好みの空気環境にできるスマートなエアコン、それが「ノクリア」Xシリーズ。ひと夏を過ごしたら、AIについてのご報告ができたらと思います。

ノクリアの取扱説明書。モノクロだがこれまでに比べてかなりわかりやすい仕様になっている
4~5ページではシーン別の使い方を示してあり、どこのページを見ればいいのかがすぐにわかる

協力:富士通ゼネラル

神原サリー

新聞社勤務、フリーランスライターを経て、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立。現在は家電+ライフスタイルプロデューサーとして、家電分野のほか、住まいや暮らしなどライフスタイル全般の執筆やコンサルティングの仕事をしている。モノから入り、コトへとつなげる提案が得意。企画・開発担当者や技術担当者への取材も積極的に行い、メーカーの現場の声を聞くことを大切にしている。 テレビ・ラジオ、イベント出演も多数。