家電製品レビュー

リモコン操作から解放してくれる次世代AIエアコン、富士通ゼネラルの新「ノクリア」Xシリーズ

 19年間、愛用してきた富士通ゼネラルのエアコン「シルフィード」とお別れし、2代目のリビング用エアコンに、また富士通ゼネラル製を迎えることにした。「富士通ゼネラルのエアコンは壊れにくい」と聞くが、その信頼性を実感しての選択だ。

 新しいエアコンの名前は「nocria(ノクリア)」。逆から読むと「aircon(エアコン)」。"エアコンの常識をひっくり返す"、"エアコン業界をひっくり返す"……そんな富士通ゼネラルの意気込みを感じる名前だ。

 新しい「ノクリア」Xシリーズを迎えるにあたって家電量販店でもらってきたカタログを見ると、「AIエアコン」「ノクリアBluetoothリモコン」「アップデート機能」など、エアコンとは思えない用語がたくさん並び、まさにエアコン最前線を切り開いていっていると感じた。

 実際に新しいXシリーズを2週間ほど使用してみたので、これらの最先端な部分や、エアコンの根幹機能の性能について、レビューをお届けしよう。

メーカー名富士通ゼネラル
製品名「ノクリア」Xシリーズ
型番AS-X56J2
適用畳数冷房:15~23畳/暖房:15~18畳
実売価格(編集部調べ)276,920円(税込)

もう「ガンダムエアコン」とは言わせない! リビングへ溶け込む美しいフォルム

 富士通ゼネラルの「ノクリア」といえば、家電 Watchで定評の「ガンダムエアコン」という名前を思い浮かべる人は多いだろう。エアコンの両サイドに装着された「デュアルブラスター」は、近未来のメカメカしさを強調していた。しかし、2019年モデルの新Xシリーズは、ダイナミックにフルモデルチェンジ。

 全体的に丸みを帯びたスタイリッシュな形状となり、最大の個性である「デュアルブラスター」も、ジェット機の噴射口のようなイメージを払拭すべく、スマートなフォルムに変更されている。全体的にマットな質感になり、テカテカした異物感もなくなった。ちょうど我が家の壁紙と馴染む感じでもあり、高級感が出たように感じる。

柔らかな感じにまとめられた優しいフォルム。室内機サイズは798×395×293mm(幅×奥行き×高さ)
19年間使ってきた「シルフィード」と新「ノクリア」X。取付位置も変更してもらい、快適度アップを狙う
本体左右に搭載される「デュアルブラスター」は、吹出口の停止時位置が正面から下面に変更された。動作時の出っ張りも最低限に抑えられており、メカメカしさが大幅に軽減されている

 本体正面のカバーを開けると、大概のエアコンでは「フィルター」がバーンとあるのが一般的だ。しかし、本機ではフィルター類が一切見えない。カラフルなパーツで覆いつくされた内部構造を見るに、フィルター清掃も含め、すべてがオートメーション化されているのがよく分かる。

エアコンとは思えないスマートな前面内部

 ベランダに設置した室外機は、5.6kW出力のエアコンとしては一般的な大きさだ。内部の羽根をよく見ると特殊な形状をしており、風を送る効率や静音性などに配慮した富士通ゼネラルの技術の一端が垣間見える。実際に動作させているときの室外機は非常に静かで穏やかな送風だ。

室外機サイズは約820×320×720mm(幅×奥行き×高さ)で、5.6kW出力のエアコンとしては標準的。内部の羽根の形がとても独特だ

「持つ」から「置く」になってカッコイイ! ノクリアBluetoothリモコン

 「これがエアコンのリモコンなの?」というくらいにインパクトのある付属リモコン。この円形のリモコンは、なんと通常は画面が真っ暗。手をかざすと画面が点灯する。点灯時、上下左右に表示される矢印をタッチして操作し、メニューの項目を選択するという仕組み。

 従来のエアコンのリモコンとほぼ同じメニュー項目なので、迷うことはないだろう。便利な機能としては、手をかざして画面を点灯させたあと、手を振るように1往復させるだけでエアコンをオン/オフできる。そのほかの操作は、リモコンをタッチして行なう。使ってみると、思った以上に手軽なうえ、確実に操作できた。

「持って操作する」から「置きっぱなしにして操作する」に変わったスタイリッシュなリモコン。手のひらサイズの大きさは、90×50mm(直径×高さ)
動作状態は、色で識別できる
お子さんや高齢者の方でも、リモコン上で手を振るだけで簡単オン/オフできる

 このリモコンは、一般的なリモコンで使われる赤外線通信ではなく、パソコンやスマートフォンなどでも利用される「Bluetooth」を採用している。エアコン本体と双方向で情報のやりとりが可能となるため、例えばリモコン以外の方法(後述のIoT機能など)でエアコンをオン/オフした場合でも、リモコン上にも正確な現在の状態の表示が可能となり、動作表示に不統一が起こらない。また、温度・湿度センサーが内蔵されており、リモコンが置かれる場所=実際に人がいる場所の温度・湿度の情報を収集するデバイスとしての役割も担っている。

リモコン前面に温度と湿度を計測するセンサーが内蔵されている。これにより、リモコンが置かれた場所の快適度も鑑みて、温湿度を管理できる

富士通ゼネラルならパワフルにお部屋を快適にしてくれる!

 家に帰ったらムワッとジメジメ、そして暑い……。さらに、エアコンをオンにしてもなかなか部屋が快適にならない……。こういう経験は誰しもあるはずだ。

 旧機「シルフィード」にも搭載されていた、富士通ゼネラル製エアコンではお馴染みの「ハイパワー運転」モードは、新「ノクリア」Xでも健在だ! リモコンで「ハイパワー運転」を選択すれば、すぐに強烈な風が吹き出し、部屋を一気に快適にしてくれる。下のグラフでも分かる通り、実際に18畳程度のリビングダイニングを、27.5℃から25.5℃までに下げるのに20分も掛からなかった。

富士通ゼネラル製エアコンのパワフルさを一番体感できるモード「ハイパワー運転」
室温変化の様子。1回目の温度下降が「ハイパワー運転」、2回目の温度下降が「自動」運転モード。一気に室温が下がっていくのが一目瞭然だ

L字型の部屋もすみずみまでキッチリ快適に!「デュアルブラスター」の効き目は絶大

 本機を取り付けたリビングダイニングキッチンは、18畳の広さがありL字型をしている。今まで使っていた「シルフィード」では、エアコン直下のダイニングは快適だったが、リビング部では物足りず、夏は長時間運転していても「少し暑いなぁ」という感じだった。この不満が、本機に入れ替えたことで一気に解消された。

 どこにいても快適だし、爽やかな風の流れを感じるのだ。実際に線香の煙をいろいろなところで立ててみたのだが、どこにいても「空気が微妙に動いている」のが分かる。例えるなら、窓を全開にしてそよ風を部屋の中に取り込んでいるような状況になっている。「ノクリア」最大の武器であるサイドファン「デュアルブラスター」の恩恵と言えよう。

室内のどこにいても空気が微妙に動いている。これは、部屋の隅々まで涼しさや暖かさが届けられることを意味している

 そして、少し驚いたのが妻の反応だ。妻が座るダイニングの真正面に本機がある。なので、風が直撃して「寒い~」と言われることを想定していた。しかし、本人に聞くと「え? 全然寒くないよ?」と言う。確かに彼女の席に座っても強い風を感じない。これも「デュアルブラスター」が気流を調整してくれている恩恵だろうか。

「デュアルブラスター」の効果だろうか。エアコンの真正面に座ってもキツい風を感じない
電気代については、2週間程度では判断しがたく、天気や気温にも左右されるため、詳細は控えるが、我が家の運転結果では、5~8時間の動作で20~60円程度、完全フルオートの「おまかせノクリア(毎日快適)モード」で、24時間つけっぱなしで250円程度だった

いま流行りの「AI」&「IoT」な機能を使ってみた!

 新Xシリーズの目玉機能として「AI」と「IoT」がある。山﨑 賢人君が出演するTVCMで「オーダーメイド快適」と謳われているが、これが「エアコンとAI」の融合だ。そして、スマートフォンやスマートスピーカーからの操作を実現しているのが「エアコンとIoT」の融合である。

 本機は標準で無線LANによるインターネット接続機能を搭載している。自宅に無線LAN環境が必要になるが、ネット接続することで、富士通グループのAI技術「Zinrai(ジンライ)」と接続される。エアコン本体自身にもAIが内蔵されており、AIをダブルで駆使して、ユーザー自身のエアコン操作傾向/居住地域の天候・気候情報など、大量のデータから自動解析された「最適な動作」を実現してくれる。

 使えば使うほど賢く動作してくれるようになるとのことだが、実際に「AIが効いているのかな?」と実感するには、2週間や1カ月程度では難しそうだというのが率直な感想だ。四季の移り変わりとともに、半年~1年と使い続けることで、我が家のノクリアも成長してゆくことだろう。

搭載されるダブルのAIは「エッジ&クラウドAI」と命名されている。「エッジ」がエアコン本体自身のAI、「クラウド」がZinraiだ

 とはいえ「専用アプリでの操作」と「スマートスピーカー操作」からなる「IoT」機能については、明確に「これは便利!」と感動できる。スマートフォン専用アプリの名称は「どこでもエアコン」。

 iPhoneとAndroidに対応しており、1台のエアコンを複数のスマートフォンでも操作可能だ。そして、目立たないながら便利なのが、現在のエアコンの動作状況がアプリ上でリアルタイムに分かること。例えば、妻がスマートフォンでエアコンをオンにしても、私のスマートフォンからも「動作中」であることが確認でき、操作の重複を回避できる。

外出先からオン・オフや設定モードを操作できる。また、室温・湿度や外気温、電気代なども確認可能
私のiPhoneと妻のXperia(Android)で、それぞれ「どこでもエアコン」アプリを起動したところ。動作状況はリアルタイムに共有される
アプリをインストールしておけば、すべてのオン/オフ操作ごとに通知が届く。例えば、両親宅に設置したノクリアの遠隔操作も設定しておけば、高齢者の見守りデバイスとしても使えるわけだ

 2番目の「IoT」機能は、Google HomeやAmazon Echoといったスマートスピーカーでの音声操作だ。これも非常に便利で、「OKグーグル、エアコンをつけて」「アレクサ、ノクリアを使ってエアコン消して」と、声だけで操作ができる。我が家では、テレビや照明なども音声で操作しているので、エアコン操作もそこに加わったというわけだ。

 先述のスマートフォンアプリをインストールした状態であれば、すぐにスマートスピーカー連携が可能になる。設定の方法については、藤山 哲人氏の記事にて詳しく説明されているので、そちらを参考にさせてもらった。操作できる項目や話かけ方は、富士通ゼネラルのホームページにまとめられているので、そちらも参考にしてほしい。

 さらに、新規の「IoT」機能として、「アップデート機能」がある。今後はアップデートにより、新機能の追加やAIの精度アップ、システムの最適化などが予定されているという。まさに、エアコン自体も成長していくということだ。購入後の製品であっても改良しようというメーカーの姿勢は、ユーザーにしてみれば嬉しい。

Google アシスタントの「ノクリア アクション」、Amazon Alexaの「ノクリア スキル」を使って、それぞれ音声による操作が可能になる
スマートスピーカーで操作可能な操作の一覧(一部)

充実したお掃除機能で、いつでもキレイな送風を実現!

 エアコンを使い続けていると、エアコンからの空気が生臭くなった経験は誰にでもあると思う。それでも臭いがとれず、業者に依頼してエアコン洗浄をされた方もいるだろう。その点ノクリアは、内部の熱交換器を加熱除菌する機能と、フィルター自動おそうじ機能が実装されており、常に内部を清潔に保ってくれる。

 実際に、「熱交換機加熱除菌」機能を使ってみたが、リモコン操作後はまず「加熱除菌を開始します。お部屋の温度と湿度が上がります」とアナウンスされ、動作開始。徐々に室内が蒸してきて、窓が曇るほどの状態となり、50分で動作が停止した。

「熱交換器加熱除菌」機能で、エアコン内のカビや細菌を除去できる。クサくなるエアコンとはオサラバだ!

 説明書等の解説によると、一旦、内部の熱交換器(フィン)を冷却して湿らせて、汚れや菌を洗い流す。残った水滴を55℃まで加熱し、カビ菌や細菌類を除菌する。北里環境科学センターでの試験結果として「細菌・カビ菌ともに99%以上の減少を確認」と記載されている。すばらしい! 今回は、通常の生活時間帯にこの機能を実行したが、実際は外出や就寝等で不在になる時間帯に実行すると良いだろう。

「熱交換器加熱除菌」の動作時間は50分。動作中は室温が約2℃上昇し、湿度は70%を超えた。除菌中はとても蒸し暑くなるので、外出中などに実行しておきたい

 また冒頭でも書いたとおり、エアコンのフロントパネルを開くとフィルターが見えず、代わりにオレンジ色のレバーと水色のダストボックスが見える。フィルターの掃除機部分だ。フィルターのおそうじ機能は、運転40時間ごとに自動で行なわれるようになっており、1回7分で完了する。おそうじの間隔は変更可能。

 ホコリは水色のダストボックスに溜まっていき、10,000時間ごとにこれを捨てるよう指示されるが、簡単に掃除できるので、シーズンオフごとにキレイにしておこうと思う。なお、両サイドにある「デュアルブラスター」にもフィルターが付いており、これも簡単に取り外して掃除できるようになっている。

中央にある水色の部分が、フィルター掃除機のゴミが溜まっていく「ダストボックス」
室内機上部からフィルター掃除の様子を見てみた。ゆっくりとフィルターが動いているのがわかるだろうか
手動で掃除できる部分は、簡単に取り外せる

リモコン操作の回数がみるみる減っていく! これが次世代の富士通ゼネラルのエアコン

 本機をレビューした2週間(6月第2~3週目)は、あいにくエアコンなしでも過ごしやすい気候が続き、本機をダイナミックに動作させることはできなかった。とはいえ、基本的に毎日「オート運転」または「おまかせノクリア」モードで動作させたところ、エアコン動作時の室温は26℃前後、湿度は55~60%でしっかり保たれ、操作は帰宅時・就寝前のオン・オフしか行なわずに済んだ。しかも、Google Homeによる音声操作のみだ。旧機「シルフィード」のときのように、頻繁にリモコンで設定温度を上下させることもなく、夫婦ともにすこぶる快適に過ごせたと思う。

 きめ細かなセンシングやAIとの連携、気流の最適化などによって実現された「操作レス」な「ノクリア」Xシリーズは、私たちの生活をさらに快適にしてくれるデバイスとして、大いにオススメしたい1台だ。

協力:富士通ゼネラル

畑中 二四