e-bike試乗レビュー

【自転車を楽しもう!】自分に合ったe-bike車種はなんだろう?

昨今のサイクリングブームで自転車の購入を検討する読者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか? 特にe-bikeはアシスト付きであることで普通のスポーツバイクよりもハードルが低い自転車です。各ブランドからもさまざまなe-bikeが登場していますね。社会情勢による車体不足や値上がりなどもあり、いろいろと悩みも尽きないはず。

そんな状況でe-bike購入を検討中のみなさまが安全に自転車生活を始められるお手伝いをできたらと思います。第1回目は基本的な「自転車の種類」についてご紹介します。どの種類がいいのか、本当に必要な自転車はどれなのか。e-bikeなどを選ぶひとつの参考にしていただければと思います。

車種選択はなぜ必要? 自分に合った自転車は?

車種によって何が違うのか分からない……。そんな言葉を耳にすることがあります。自分に合った自転車はどれなのだろう……というお悩みがあるかもしれません。そもそもなぜ選択する必要があるのでしょうか?

私はよくクルマ選びを例にアドバイスします。近所のスーパーマーケットに買い出しに行きやすい、荷物を積みやすい、高速道路を走りやすい、荒れた道を走りやすいなどなど、用途に応じて決めることを考えると分かりやすいと思います。例えばファミリー向けなのに2人乗りスポーツカーを買う人はいないでしょう。

実は自転車も用途によって車種が変わります。e-bikeかノンアシストの通常の自転車かも選択のひとつになります。e-bike Watchの読者の方は、もちろんe-bikeに興味があると思いますが、まずは「自転車」としてどの車種が何に向いているのか。順番にご説明します。

コナステイ伊豆長岡でのe-bike Watch試乗会時の写真

クロスバイクは万能、初心者にもオススメ

まず、スポーツバイクを始めるにあたって、もっともオススメなのがクロスバイクです。30km/h程度までのサイクリングのほか、通勤や通学など荷物などの荷物がある場面でもとても便利です。

ハンドルがフラットバータイプで前傾姿勢にもなりにくいため、心身ともにハードルが低く初心者でも扱いやすい自転車になっています。視界が比較的確保しやすく、通勤・通学などでバックパックを利用しての走行が可能です。前傾がキツい場合は、荷物の重みが体にしっかり乗ってしまうので、上半身に大きな力が必要となります。

カゴがないのがネガティブポイントに感じる人もいるでしょう。オプションなどでキャリアなどを付けることができますが、個人的にはバックパックのほうが自由が効くイメージです。

そんなクロスバイクはクルマに例えると、「ツーリングワゴン」のようなイメージでしょうか。比較的長い距離も走行(高速道路での遠出など)できて、それなりに小回りも効きながら(買い物もへっちゃら)、軽いスポーツ走行も楽しめる。誰もが一番万能に使える自転車だと思います!

日本でも早い段階で発売されたミヤタ「CRUISE」。コナステイ伊豆長岡でガイドツアーやレンタルで活躍しています。現在はバッテリーがインチューブタイプの「CRUISE i 6180」になっています

ロードバイクは「走りを楽しみたい」人に

スポーツバイクが欲しい! と思ってまず「ロードバイク」を調べてみたり、自転車好きな人に勧められた経験もあるかもしれません。

大きな特徴はドロップハンドル(下に丸くなったハンドル)ですね。そして、セッティング次第にはなるものの、全体的に深い前傾姿勢になりやすい自転車。前述のクロスバイク同様に深い前傾姿勢では、バックパックを背負ったとしても荷物が運びにくいというネガティブポイントがあります。

ドロップハンドルのイメージ

ただし、空気抵抗の軽減によりスピードが自ずと出やすくなるほか、走れる距離も大幅に伸びます。タイヤも細く、重量も走行感も「軽さ」も特徴です。

ちなみに、ロードバイクをクルマに例えると「スポーツカー」になります。慣れるまでは多少取り扱いにくい場面もあります。“ロードバイク=スピード”を出すと思われがちですが、必ずしもそうではなくのんびり走ればスピードも出ません。

走ることを楽しむにはうってつけですが、買い物や通勤通学などの街乗りにはあまり向かない車種になります。荷物の問題もありますし、スタンドが付いていないため駐輪時などは非常に不便なのも事実です。

現状の日本ではロードバイクタイプのe-bikeはまだ少なく、今後選択肢が広がってくれることを個人的にも期待しています。選ぶ際に「悩む」楽しさも増えるのではないでしょうか。

日本ではロードバイクタイプのe-bikeはまだ少ないです。写真はe-bike専門メーカー・BESV「JR1」。コナステイ伊豆長岡でも乗っていました
2019年にはフカヤ「DAVOS E-601」というクロモリフレームでDi2仕様のe-bikeが発売されていたそうです。店頭在庫限りだそうで乗ってみたかった……

グラベルロードはキャンプにも便利

最近では、タイヤが太めのグラベル(日本語での「砂利」)ロードも注目を集めています。特徴としては、MTBのような凸凹した太いタイヤとロードバイクに似たドロップハンドル。

つまり、両方のハイブリッド車種になります。舗装路だけでなくダートも走れるのが特徴です。ドロップハンドルがゆえに、慣れるまで時間がかかる場合があるかもしれませんが、走行自体は至って快適! クルマに例えるとSUV。昨年の夏に初めてグラベルロードe-bikeで伊豆を旅しましたが、実感しました。

タイヤが太いぶん、路面抵抗が大きいのでスピードは出にくいというのも事実です。とはいえ、走れるフィールドが広がるのは魅力でしょう。工夫次第で荷物も運んでキャンプなども楽しめます。

自転車業界では非常に人気の車種で、e-bikeでもグラベルロードが増えて来ているので、個人的にももっといろいろ乗りたいと思っています。

伊豆の「塩すくい」体験でも快適に乗りました

ミニベロ(小径車)は保管しやすくデザインも個性的

かわいい! 乗りやすそう! 駐輪場や部屋にも保管しやすそう! という人も多いかもしれません。20インチ以下の小さなタイヤ径で小回りが利く自転車がミニベロです。ミニ(小型)とVELO(自転車)というフランス語ですね。

タイヤが小さいので車体重心が低くなるため、自転車に乗り慣れていない人や体が小さい人にも乗りやすい傾向にあります。ただし、タイヤが小さいぶん段差には弱かったり、不安定さも出やすいのがネガティブポイントでもあります。

ただし、自宅内の狭いスペースで収納しやすいため自転車を守れる。クルマへ積載しやすい、公共交通機関を使った輪行などで旅を楽しみやすいのが特徴です。クルマというよりは原付バイク(原動機付自転車)に近いイメージを持っており、近場でのサイクリングがオススメです。日本でも個性的なミニベロe-bikeも増えていますね。

MTB(マウンテンバイク)は自然の中で思い切り楽しみたい

その名のとおり「山を走るための自転車」がマウンテンバイク。荒れた路面などの悪路を本格的に走るために必要なバイクです。前後にサスペンションを搭載するフルサスタイプ、前のみのハードテイルタイプがあります。タイヤも太く荒れた路面でも確実に衝撃を吸収してくれるのが特徴です。

そのために推進力が吸収されてしまい、舗装路での走行には向かない現実もあります。また、ハンドル幅が広いため、購入段階では「普通自転車」に当てはまらないことがほとんどです。日本の法律ではハンドル幅が60cmを超えると歩道は走れないため、都心での街乗りなどでは注意が必要です。

ただし、自然の中での特別なアクティビティを楽しめるのはMTBならでは。見た目のカッコ良さなどは、個人的にも男心をくすぐるロボットのようなスタイルで人気も高いです。

日本でも各メーカーがハイエンドモデルのe-MTBを展開しており、個人的にも興味津々です。

メリダのハイエンドモデル「eONE-SIXTY 10K」

実用的で乗りやすいシティサイクル

最後に「ママチャリ」の愛称でもっとも馴染みのある自転車がシティサイクルでしょう。e-bikeの先駆けとなった電動アシスト自転車。世界で初めて1993年に電動アシスト自転車を商品化したのがヤマハ発動機ですね。

カゴやスタンドが付き、低い重心で誰でも乗りやすい。ザ・トラディショナル自転車です。クルマに例えると「軽自動車」。近場での行動や荷物の持ち運びなど、生活に沿った実用性のある自転車です。行動がしやすい反面、速さには対応しきれない部分もあります。

e-bikeでもトップチューブのないステップインの乗りやすいモデルが増えています。通勤や街乗りなど実用性を重視する人はぜひチェックしてみてください。

ヤマハが1993年に世界初の電動アシスト自転車を商品化。こちらは先行開発試作車だそうです
スポーツバイクはカゴやスタンドは装着していないモデルがほとんどですが、トップチューブのない跨ぎやすいモデルも増えています。カゴはありませんが、リアキャリアにバッグなども装着して荷物も運べます。写真は来春に発売が延期になったミヤタ「CRUISE i 5080 URBAN」

ほかにも選ぶ条件はいろいろ

車種の違いで用途が変わることはご理解いただけたかと思います。もちろん、「所有欲」という意味で好きな自転車に乗ってもいいかと思います。ただ、より楽しむためには、しっかり用途を再確認することをオススメします。

そして、e-bikeの核となるドライブユニットも各社個性があります。個人的にはナチュラルなアシストをしてくれるシマノSTEPSが好みですが、パワフルさが売りのモデルも楽しいです。そうした違いも体験できると、より自分に合ったモデルを絞り込めるのではないでしょうか。

2018年に初めてe-bikeを体験。その時はシマノSTEPS「E8080シリーズ」を搭載するミヤタ「CRUISE」でした。その後もコナステイ伊豆長岡でのガイドでも活躍していたモデルです。ドライブユニットのアシストの味付け(設定)もメーカーによって違います

昨今ではe-bikeをレンタルしているメーカーや施設、ショップなども多数あり、しっかりと楽しむためにまずは試乗を体験してほしいです。通勤・通学に使うバックパックを持ち込むなど、実際のシチュエーションを想定することで、さらに実りある試乗になるでしょう。

また、車体サイズ感やオプション品などもしっかり確認する必要もあるため、初めての人こそ自転車屋での購入をオススメします。

次回はオプション品なども含めた準備編をお届けします。

平塚吉光

元プロロードレーサー。引退後、サイクルツアーなどを中心にe-bikeにハマり、自分の中での自転車の可能性を広げ続けるサイクリスト。ロードもトラックもMTBも、もちろんe-Bikeも大好きです。Instagram:@yoshimitsu_hiratsuka Twitter:@yokkun1113